ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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米国はパリ協定離脱宣言を撤回すべし4

2017-06-27 09:23:30 | 地球環境
●科学者の警告を無視した政策が強行

 トランプ氏は大統領選出馬表明前の2012年ごろから、ツイッターで「気候変動という概念は中国が米国の製造業を弱くするために作りあげたものだ」などと主張してきた。選挙期間中は、気候変動問題は存在せず、過剰な環境規制が経済を圧迫していると主張した。ツイッターに「気候変動の話は中国のでっち上げだ」と書いて話題になった。出馬表明後の2015年11月に出版された著書でも「地球には氷河期もあった。気候変動が人為的なものだとは簡単には信じられない」と言及し、パリ協定からの離脱を政策として掲げた。
 こうしたトランプ氏に対し、2016年9月、宇宙物理学者のスティーブン・ホーキング博士をはじめ375名の科学者が、トランプ氏に警告する公式書簡に署名したことが、世界的に報道された。
 トランプ氏が大統領選に勝利すると、科学者の間で次期大統領の科学政策を不安視する声が上がった。
 本年1月20日、トランプ氏が大統領に就任すると、直後にリニューアルされたホワイトハウスのWebサイトから気候変動に関するページがなくなった。翌週、トランプ新大統領は、環境保護局に対して研究資金援助と新しい契約を即時停止し、Webサイトから気候変動に関するページを削除するように命じた。気候変動に関わりの深い環境保護局、内務省、保健福祉省、農務省に対しては、メディアを含む一般向けの情報提供を一時的に停止するように箝口令を出した。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、以前から予定されていた気候変動と健康に関する会議を突然中止した。さらに、今後は環境保護局から発表される科学的な成果やデータについては、政府から出向した職員が事前にチェックするという方針が出された。
 こうした政策に対して、気候変動の研究者を中心に大きな批判の声が上がり、トランプ政権に対抗する動きが起った。第一に「科学者たちの行進」の提唱。「科学的な成果やデータを政治的な意向で検閲すべきではない」と訴える研究者とそれに賛同する人々のデモの呼びかけである。第二に、データアーカイブ・プロジェクト。気候変動のデータが消される前に有志によって保存しようという取り組みである。第三に、アル・ゴア元米副大統領や共同主催者だった公衆衛生協会(APHA)などが中心となり、CDCが中止した会議と同様の会合が有志の手で開催されることになった。
 これらの動きがきっかけとなって、箝口令が敷かれた政府組織に属する職員らしき人々が非公式アカウントを作り、気候変動とトランプ政権に対する批判をツイートし始めた。それらのアカウントは1日で数万人のフォロアーを獲得し、先の三つの動きとともに大きな社会運動となっていった。
 これが、トランプ政権の発足から、わずか1週間の間に米国で起きたことだった。新政権は、最初の1週間で気候変動の研究者だけでなく、米国及び世界の多くの研究者の反発を買った。サイエンス・ライターで編集者の柏井勇魚氏は、2017年1月当時、次のように書いた。
 「研究者というのは基本的にオープンであることを是とする人たちです。それはサイエンスそのものがオープンであることにその正しさの論拠をおいているからです。論文が公開され、データが公開され、その研究手法が明らかにされて初めて、誰もがその研究の妥当性を評価できます。とくに気候変動の研究は、全世界規模で長期間、広範囲に渡って継続的に取られた様々なデータを突き合わせて、ようやく何かが見えてくるという分野です。その意味では気候学はサイエンスの持つオープンさに支えられているといってもいいでしょう。そういう彼らに対して「口をつぐめ、政府のチェックを受けるまでは研究成果もデータも公開するな」といえば、怒るのは当然です。サイエンスをなんだと思っているのか?」と。 
 トランプ大統領は、環境保護庁の長官に、スコット・プルート氏を任命した。プルート氏は、オクラホマ州の司法長官時代に、主な石油&ガス生産会社、電力会社、政治グループと緊密に協力し、多数の環境規制の撤廃に努めていた。同氏は、2017年3月、「CO2の排出量が気候変動の直接的原因であるとは思わない」と述べ、「気候変動を懸念する科学者および環境グループはCO2の排出量を強調しすぎる」と主張した。これに対し、3月13日、30人の著名な気象科学者は、プルート宛てに抗議の手紙を送った。彼らは「崖から落ちると、重力から逃げる方法はないことと同様、余分な二酸化炭素や他の温室効果ガスを大気に加えると、それに続く温暖化を免れることはできない」と書いた。このグループには、カリフォルニア大学サンディエゴ校のノーベル賞受賞化学者マリオ・モリーナ博士及び国立科学アカデミーの8人の科学者が含まれていた。
 トランプ政権の閣僚の中で、ジェイムズ・マティス国防長官は、「気候変動は本物であり、アメリカの国益とペンタゴンの資産をどこにでも脅かす」と主張していると伝えられた。レックス・ティラーソン国務長官も、エクソン・モービルの元CEOだが、気候変動を信じていると報じられた。
 しかし、トランプ大統領は、地球温暖化を「でっちあげだ」と主張し、科学技術予算を大幅に削減する方針を示した。これに対し、科学者団体や環境団体などが、さらに行動を起こすようになった。

次回に続く。

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