●死亡者が少ないのは「日本の奇跡」
武漢ウイルスへの感染者は、5月23日現在、世界全体で約521万人、死亡者は約33万8千人に上っている。このパンデミックで、日本は目立って死亡者が少なく、死亡率が低い国に入る。
日本は米国、イギリス、イタリア、スペイン、フランスに比べて、死者数が二桁少ない。具体的には日本は死者数が799人。最も被害が大きい米国は、9万5490人、次いでイギリス3万6393人、イタリア3万2616人、スペイン2万8628人、フランス2万8289人となっている。
WHOシニアアドヴァイザーの進藤奈那子医師は「圧倒的に死亡が少ない日本は、ほぼ奇跡。世界からジャパニーズ・ミラクルと考えられている」と述べている。世界の医療の専門家たちが「日本の奇跡」と呼んでいるのである。また、米外交誌「フォーリン・ポリシー」は、日本は、中国からの観光客が多く、ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)の確保が中途半端、ウイルス検査率も国際社会と比べて低いが、「死者数が奇跡的に少ない」と評価し、「結果は敬服すべきものだ」が「単に幸運だったのか、政策が良かったのかは分からない」と書いた。
https://foreignpolicy.com/…/japan-coronavirus-pandemic-loc…/
私もそう思う。「日本の奇跡」と呼ばれるに値する。「日本の奇跡」を生んだ文化的要因として衛生観念の強さ(マスクの着用、清潔好き)と社会道徳・公徳心の高さ(法的強制なくとも自粛)、医療的要因として医療従事者の優秀さと献身性(他国もそうでは?)と高齢者社会での高度な介護技術、制度的要因として国民皆保険制度(低負担で医療を利用可能)などが挙げられよう。だが、私が「日本の奇跡」と呼ばれるに値すると考える最大の理由は、政府が、台湾のように即座に中国人の入国を拒否せず、逆に1~2月に計約100万人の中国人を入国させるという大失策をし、また憲法に緊急事態条項がなく、すみやかに法的強制力のある緊急事態宣言を出すこともできなかったにもかかわらず、感染による死者数が少なく、死亡率が低いからである。
最も注目すべきは、人口当たりの死者の数を示す死亡率である。日本の死亡率はヨーロッパの100分の1に留まっている。このことを、「100分の1の謎」と呼ぶことにしたい。5月7日現在の数字だが、人口100万人あたりの死者数は、スペインが553人、イタリアが490人、フランスが396人であるのに対し、日本は4.4人である。スペイン・イタリア・フランスの死者数の平均が480人であるのに対し、日本の4.4人は109分の1である。
政府の専門家会議の副座長・尾身茂氏は、5月14日に日本の感染者数と死亡者数が米欧と差があることについて、次のように語った。
「今のところBCGが有効とのエビデンスはない。日本の感染者数と死亡者数が米欧と差があるのは、①医療制度が充実し多くの重傷者の適切ケアされ・医療崩壊も防げている、②初期のクラスター対策が有効だった、③国民の健康意識が高いの3つが大きいと思う」と説明している。しかし、仮に①②③が相乗効果を生んだとしても、それが決定的な要因となっているとは考えにくい。
本件について、経済学者でアゴラ研究所所長の池田信夫氏が「アゴラ」で、次のように考察している。
「BCG接種がコロナに有効だという臨床試験の結果がないのは事実だが、これを『エビデンスがない』というなら、彼(註 尾身氏)のいう要因のエビデンスはあるのだろうか。
①医療制度が充実して医療崩壊が防げた:これは日本の重症患者が少ない原因ではなく、結果である。たとえば日本より医療が充実しているドイツでは、日本の50倍以上の重症患者が出たので医療は対応できなかった。
②初期のクラスター対策が有効だった:これも因果関係が逆だ。人海戦術で患者に聞き取り調査するクラスター追跡が有効なのは、日本の患者が少なかったからだ。たとえばイタリアのように毎日6000人以上の新規感染者が出たら、そんな調査はできない。
③国民の健康意識が高い:これは何もデータがない。
ここには専門家会議が主導してきた自粛の効果があげられていない。日本のゆるゆるの自粛が有効だとすれば、それよりはるかに厳格なロックダウンをやったヨーロッパで日本の100倍死んだことが説明できないからだ。要するに彼のあげた要因は、BCG仮説ほどの根拠もないのだ」(註 丸文字の数字は、ほそかわが加筆)
http://agora-web.jp/archives/2046069.html?fbclid=IwAR25pF17xkwUoi-l4HPzJqS5jxYar4sR8Lyga_P0dOrl7i3BHYEetcdYcvk
池田氏は、BCG接種と死亡率の相関について、Facebookグループに投稿された論文の中では「今のところ圧倒的多数の論文が肯定的だ」として、記事の中で肯定的な統計分析の例を挙げている。そして「BCGの効果は感染率にきくのか致死率にきくのかは未解決の問題だが、これだと感染率にきく結果、死亡率が低いことになる」と述べている。ここで致死率とは、感染者のうちの死亡者の比率である。人口当たりの死亡者の数である死亡率とは異なる。
次回に続く。
************* 著書のご案内 ****************
『人類を導く日本精神~新しい文明への飛躍』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/d4dac1aadbac9b22a290a449a4adb3a1
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武漢ウイルスへの感染者は、5月23日現在、世界全体で約521万人、死亡者は約33万8千人に上っている。このパンデミックで、日本は目立って死亡者が少なく、死亡率が低い国に入る。
日本は米国、イギリス、イタリア、スペイン、フランスに比べて、死者数が二桁少ない。具体的には日本は死者数が799人。最も被害が大きい米国は、9万5490人、次いでイギリス3万6393人、イタリア3万2616人、スペイン2万8628人、フランス2万8289人となっている。
WHOシニアアドヴァイザーの進藤奈那子医師は「圧倒的に死亡が少ない日本は、ほぼ奇跡。世界からジャパニーズ・ミラクルと考えられている」と述べている。世界の医療の専門家たちが「日本の奇跡」と呼んでいるのである。また、米外交誌「フォーリン・ポリシー」は、日本は、中国からの観光客が多く、ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)の確保が中途半端、ウイルス検査率も国際社会と比べて低いが、「死者数が奇跡的に少ない」と評価し、「結果は敬服すべきものだ」が「単に幸運だったのか、政策が良かったのかは分からない」と書いた。
https://foreignpolicy.com/…/japan-coronavirus-pandemic-loc…/
私もそう思う。「日本の奇跡」と呼ばれるに値する。「日本の奇跡」を生んだ文化的要因として衛生観念の強さ(マスクの着用、清潔好き)と社会道徳・公徳心の高さ(法的強制なくとも自粛)、医療的要因として医療従事者の優秀さと献身性(他国もそうでは?)と高齢者社会での高度な介護技術、制度的要因として国民皆保険制度(低負担で医療を利用可能)などが挙げられよう。だが、私が「日本の奇跡」と呼ばれるに値すると考える最大の理由は、政府が、台湾のように即座に中国人の入国を拒否せず、逆に1~2月に計約100万人の中国人を入国させるという大失策をし、また憲法に緊急事態条項がなく、すみやかに法的強制力のある緊急事態宣言を出すこともできなかったにもかかわらず、感染による死者数が少なく、死亡率が低いからである。
最も注目すべきは、人口当たりの死者の数を示す死亡率である。日本の死亡率はヨーロッパの100分の1に留まっている。このことを、「100分の1の謎」と呼ぶことにしたい。5月7日現在の数字だが、人口100万人あたりの死者数は、スペインが553人、イタリアが490人、フランスが396人であるのに対し、日本は4.4人である。スペイン・イタリア・フランスの死者数の平均が480人であるのに対し、日本の4.4人は109分の1である。
政府の専門家会議の副座長・尾身茂氏は、5月14日に日本の感染者数と死亡者数が米欧と差があることについて、次のように語った。
「今のところBCGが有効とのエビデンスはない。日本の感染者数と死亡者数が米欧と差があるのは、①医療制度が充実し多くの重傷者の適切ケアされ・医療崩壊も防げている、②初期のクラスター対策が有効だった、③国民の健康意識が高いの3つが大きいと思う」と説明している。しかし、仮に①②③が相乗効果を生んだとしても、それが決定的な要因となっているとは考えにくい。
本件について、経済学者でアゴラ研究所所長の池田信夫氏が「アゴラ」で、次のように考察している。
「BCG接種がコロナに有効だという臨床試験の結果がないのは事実だが、これを『エビデンスがない』というなら、彼(註 尾身氏)のいう要因のエビデンスはあるのだろうか。
①医療制度が充実して医療崩壊が防げた:これは日本の重症患者が少ない原因ではなく、結果である。たとえば日本より医療が充実しているドイツでは、日本の50倍以上の重症患者が出たので医療は対応できなかった。
②初期のクラスター対策が有効だった:これも因果関係が逆だ。人海戦術で患者に聞き取り調査するクラスター追跡が有効なのは、日本の患者が少なかったからだ。たとえばイタリアのように毎日6000人以上の新規感染者が出たら、そんな調査はできない。
③国民の健康意識が高い:これは何もデータがない。
ここには専門家会議が主導してきた自粛の効果があげられていない。日本のゆるゆるの自粛が有効だとすれば、それよりはるかに厳格なロックダウンをやったヨーロッパで日本の100倍死んだことが説明できないからだ。要するに彼のあげた要因は、BCG仮説ほどの根拠もないのだ」(註 丸文字の数字は、ほそかわが加筆)
http://agora-web.jp/archives/2046069.html?fbclid=IwAR25pF17xkwUoi-l4HPzJqS5jxYar4sR8Lyga_P0dOrl7i3BHYEetcdYcvk
池田氏は、BCG接種と死亡率の相関について、Facebookグループに投稿された論文の中では「今のところ圧倒的多数の論文が肯定的だ」として、記事の中で肯定的な統計分析の例を挙げている。そして「BCGの効果は感染率にきくのか致死率にきくのかは未解決の問題だが、これだと感染率にきく結果、死亡率が低いことになる」と述べている。ここで致死率とは、感染者のうちの死亡者の比率である。人口当たりの死亡者の数である死亡率とは異なる。
次回に続く。
************* 著書のご案内 ****************
『人類を導く日本精神~新しい文明への飛躍』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/d4dac1aadbac9b22a290a449a4adb3a1
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