ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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米中が競う東南アジアと日本の外交1

2013-01-07 08:55:52 | 国際関係
 東南アジアは、インド洋から太平洋への通路に位置し、昔から交通の要衝にある。この地域の主要国で構成する東南アジア諸国連合(ASEAN)は、計6億2000万人の人口を抱え、安い労働力と豊富な消費者が存在する。わが国にとっても、米国や中国にとっても、ASEANの重要性は増す一方である。
 中国は、東南アジアへの経済・外交・安全保障面での影響力を拡大している。とりわけ、南シナ海のほぼ全域の領有権を主張し、覇権の確立を目指している。米国は、アジア太平洋における中国の行動をけん制するため、ASEANとの関係の強化を図っている。冷戦時代に、米国と中国はインドシナ半島で激しく勢力争いをした。ベトナム戦争やカンボジア内戦は、米中の勢力争いの舞台だった。今日その争いの再現を思わせるほど、東南アジアは再び米中が激しく競い合う地域となっている。本稿は、その事情について書き、わが国の取るべき外交について述べるものである。6回の短期連載を予定している。

●米国はアジア太平洋地域に積極的に関与

 米国のオバマ大統領は、平成21年(2009)11月14日、東京・赤坂のサントリーホールで歴史的な演説を行った。大統領は「日米同盟が発展し未来に適応していく中で、対等かつ相互理解のパートナーシップの精神を維持するよう常に努力していく」として日米同盟の重要性を述べ、「米軍が世界で二つの戦争に従事している中にあっても、日本とアジアの安全保障へのわれわれの肩入れは揺るぎない」として日本とアジアの安全保障への取り組みに変わりはないことを強調した。
 その上で特に注目すべきは、オバマ氏が「私はハワイで生まれ、少年期をインドネシアで暮らした米国の大統領だ。環太平洋地域は私の世界観を形成してくれた」「私は米国初の『太平洋大統領』として、この太平洋国家が世界で極めて重要なこの地域においてわれわれの指導力を強化し持続させていくことを約束する」と述べたことである。オバマ大統領は、自分がアジア太平洋地域で生まれ育ったことを強調し、合衆国を「太平洋国家」と呼び、「太平洋大統領」と自称して、アジア太平洋地域に積極的に関与することを明言したのである。
 文明史的にみると、20世紀以降、世界の中心は、西洋・欧米から東洋・アジアに移ってきている。米国が初めての黒人大統領のもとアジア太平洋重視の方針に転換したことは、この文明史的な転換に沿った動きとなっている。
 オバマ大統領について私が最も評価できるのは、このアジア太平洋重視の外交である。平成20年(2008)スタートの政権当初には、中国を2大パートナーとして過大評価する傾向があったが、途中でこの姿勢を改め、中国の危険性を意識した政策を行ってきた。私は、世界の平和と安定にはアジアの平和と安定が不可欠だと考える。そのためには、日米が連携し、アジア太平洋における中国の覇権主義を抑える必要がある。オバマ氏は、東南アジア諸国にも積極的に働きかけ、中国に対する外交を展開しており、この点は高く評価できる。

 次回に続く。

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