●安保法制の整備は急務
安保法案は5月15日に国会に提出され、与野党の論戦が行われている。政府は6月24日までの会期を大幅延長して、今夏までの成立を目指している。法案は成立すれば、戦後70年の安全保障政策を大きく転換するものとなる。
新たな安保法制は、集団的自衛権を行使できるようにすることで、格段と戦争抑止力を高める。また、自衛隊の海外活動を拡大することで、日本及び世界の平和と安全を確保することを目指している。
安倍首相は米国での議会演説で、安保法案を今年の夏までに成立させると公言した。野党やマスメディアから、国会軽視、国民軽視という批判が上がった。だが、昨年12月の衆院選で安倍内閣はアベノミクスだけでなく、外交・安全保障等について国民の審判を受け、国民多数の支持を得ている。また昨年来、安保法案づくりの与党協議は正式なものだけで25回を数えた。国会での質疑も事実上、行われた。その集大成が今回の2法案である。国会への提出が拙速という批判は当たらない。
反対派が安保法制に「戦争法案」というレッテルを貼り、戦争に巻き込まれると主張しているのは、大きな誤りである。集団的自衛権の行使容認による日米同盟の強化は、何より中国等の侵攻による戦争を防ぐ抑止力を高める。逆に、現在の欠陥だらけの法制では、その隙を突かれて、中国による尖閣諸島・沖縄等への侵攻を許すおそれがある。反対派は、自衛隊が海外に派遣されると、そこで戦争に巻き込まれるという可能性を強調するが、中国が尖閣諸島や新潟・佐渡を侵攻する差し迫った危機については、語らない。北朝鮮がわが国に向けてミサイル攻撃をしたり、あるいは韓国に攻め入ったりすることは、語らない。安保法制に反対することによって、結果として中国や北朝鮮を利する言動を行なっている。
自衛隊の海外派遣が際限なく広がりかねないという不安から反対している人もいるだろう。だが、自衛隊を派遣する国際平和支援活動は、例外なき国会事前承認を義務付け、国会提出後7日以内を努力義務とする。集団的自衛権の行使や重要影響事態への対処も、原則的に事前承認を必要とする。緊急時の対応であれば、例外的に事後承認も可とするが、その場合、国会が承認しなければ、撤退命令が出される。
ところで、私は、今回の安保法案をその限りで高く評価するが、いくつか課題があることを指摘したい。
湾岸戦争で、日本は130億ドル(約1兆円)出したが、クエートの米紙への感謝広告に日本の名がなかった。カネだけ出して人を出さないのでは、国際社会では評価されない。そこで自衛隊を海外でも活動できるようにした。カンボジア復興支援、イラク復興支援、インド洋米軍支援(洋上給油)等で活躍し、世界で高く評価されている。
今回の安保法制では、自衛隊が世界中で活動できるようにする。ただし、現行憲法のもと、自衛隊は軍隊ではないので、各国の軍隊と同じ基準を持っていない。この状態での法制の整備には限界がある。
武力行使の新要件等を法に定める場合、「明白な危険」「必要最小限度」等と言う言葉を使うが、厳密な定義はできない。むしろ、あまり細かく定めると、それに縛られてしまう。できることを決めるよりも、できないことを決め、それ以外はできるような定めにする方が良い。これをネガティブリストという。諸外国では、それが普通である。できることを細かく決めるポジティブリストでは、複雑になりすぎる。
自衛隊員は22万人しかいない。「自衛隊員」は大臣・副大臣・政務官・事務次官を除く全員。そのうちの階級のある制服組は「自衛官」。この人数で出来ることは限られている。日本の領土の防衛や災害支援活動が主である。なんでも海外に出ていくことはできないし、その必要もない。自衛隊を外国、特に米国の求めになんでも応じる便利屋のようにしてはいけない。
次回に続く。
安保法案は5月15日に国会に提出され、与野党の論戦が行われている。政府は6月24日までの会期を大幅延長して、今夏までの成立を目指している。法案は成立すれば、戦後70年の安全保障政策を大きく転換するものとなる。
新たな安保法制は、集団的自衛権を行使できるようにすることで、格段と戦争抑止力を高める。また、自衛隊の海外活動を拡大することで、日本及び世界の平和と安全を確保することを目指している。
安倍首相は米国での議会演説で、安保法案を今年の夏までに成立させると公言した。野党やマスメディアから、国会軽視、国民軽視という批判が上がった。だが、昨年12月の衆院選で安倍内閣はアベノミクスだけでなく、外交・安全保障等について国民の審判を受け、国民多数の支持を得ている。また昨年来、安保法案づくりの与党協議は正式なものだけで25回を数えた。国会での質疑も事実上、行われた。その集大成が今回の2法案である。国会への提出が拙速という批判は当たらない。
反対派が安保法制に「戦争法案」というレッテルを貼り、戦争に巻き込まれると主張しているのは、大きな誤りである。集団的自衛権の行使容認による日米同盟の強化は、何より中国等の侵攻による戦争を防ぐ抑止力を高める。逆に、現在の欠陥だらけの法制では、その隙を突かれて、中国による尖閣諸島・沖縄等への侵攻を許すおそれがある。反対派は、自衛隊が海外に派遣されると、そこで戦争に巻き込まれるという可能性を強調するが、中国が尖閣諸島や新潟・佐渡を侵攻する差し迫った危機については、語らない。北朝鮮がわが国に向けてミサイル攻撃をしたり、あるいは韓国に攻め入ったりすることは、語らない。安保法制に反対することによって、結果として中国や北朝鮮を利する言動を行なっている。
自衛隊の海外派遣が際限なく広がりかねないという不安から反対している人もいるだろう。だが、自衛隊を派遣する国際平和支援活動は、例外なき国会事前承認を義務付け、国会提出後7日以内を努力義務とする。集団的自衛権の行使や重要影響事態への対処も、原則的に事前承認を必要とする。緊急時の対応であれば、例外的に事後承認も可とするが、その場合、国会が承認しなければ、撤退命令が出される。
ところで、私は、今回の安保法案をその限りで高く評価するが、いくつか課題があることを指摘したい。
湾岸戦争で、日本は130億ドル(約1兆円)出したが、クエートの米紙への感謝広告に日本の名がなかった。カネだけ出して人を出さないのでは、国際社会では評価されない。そこで自衛隊を海外でも活動できるようにした。カンボジア復興支援、イラク復興支援、インド洋米軍支援(洋上給油)等で活躍し、世界で高く評価されている。
今回の安保法制では、自衛隊が世界中で活動できるようにする。ただし、現行憲法のもと、自衛隊は軍隊ではないので、各国の軍隊と同じ基準を持っていない。この状態での法制の整備には限界がある。
武力行使の新要件等を法に定める場合、「明白な危険」「必要最小限度」等と言う言葉を使うが、厳密な定義はできない。むしろ、あまり細かく定めると、それに縛られてしまう。できることを決めるよりも、できないことを決め、それ以外はできるような定めにする方が良い。これをネガティブリストという。諸外国では、それが普通である。できることを細かく決めるポジティブリストでは、複雑になりすぎる。
自衛隊員は22万人しかいない。「自衛隊員」は大臣・副大臣・政務官・事務次官を除く全員。そのうちの階級のある制服組は「自衛官」。この人数で出来ることは限られている。日本の領土の防衛や災害支援活動が主である。なんでも海外に出ていくことはできないし、その必要もない。自衛隊を外国、特に米国の求めになんでも応じる便利屋のようにしてはいけない。
次回に続く。