ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

安全保障関連法制の整備を急げ3

2015-06-12 09:58:52 | 時事
●平時における対応

◆在外邦人の救出を行う
 日本に軍事的な脅威が差し迫っていない「平時」においても、日本の平和と安全を守るための取り組みが必要である。
 その一つが、国外でテロが発生した場合の在外邦人の保護である。今まで自衛隊は海外に日本人の救出に行けなかった。新法制では、一定の要件を満たせば、現地の警察・軍と一緒に救出活動を行うことができるようにする。
 政府が想定する邦人救出は、平成8年のペルー日本大使公邸占拠事件のように在外公館がテロ組織に占拠されるケースや、治安悪化によって国外退避する邦人を警護するケースなどである。政府は、平成25年1月のアルジェリア人質事件を機に、自衛隊に在外邦人の陸上輸送を可能とした。だが、自衛隊は、テロ組織に拘束された邦人の救出に行くことはできない。武器使用権限が正当防衛や緊急避難など「自己保存型」に限られているからである。新法制では、在外邦人を救出する任務に必要な武器使用を認める。武器使用権限を武装集団などを排除する「任務遂行型」に改め、国際標準の使用基準に近づける。
 救出任務の実行には、当該国が同意しているほか、当該国の権限がその地域に及んでいることなど3つの要件を満たす必要があるとしている。

◆PKOでの駆け付け警護を行う
 新安保法制では、国連平和維持活動(PKO)に派遣される自衛隊の役割を拡大する。現法制下では、日本人の非政府組織(NGO)やJICAの職員等が武装勢力に襲われた場合、遠方にいる自衛隊は、助けに行けない。それどころか、離れた場所で活動中の自衛隊員が襲われた場合にも、助けにいけない。新たな安保法制では、自衛隊に日本人や自衛隊員、他国軍等を救援する「駆けつけ警護」を可能とする。また、現地住民を混乱から保護する「安全確保業務」を追加する。そのために必要な武器使用権限を拡大するとしている。

◆非国連統括型の国際連携平和安全活動に参加する
 国連が主導するPKO以外に、国連が統括しない国際協力にも自衛隊が参加できるよう「国際連携平和安全活動」を新設する。国連決議がない場合でも、欧州連合(EU)など国際機関の要請があれば、人道復興支援や治安維持活動のために自衛隊を派遣する。
 活動の正当性を確保するため、PKOに自衛隊を派遣する際の「参加5原則」を満たすことを必要とする。政府は、自衛隊が平成16~20年に派遣されたイラクでの人道復興支援活動のようなケースを想定している。

◆国際平和共同対処事態には戦闘地域の近くでも活動する
 日本の平和と安全は世界の平和と安全と切り離せない。世界の平和と安全が維持されてこそ、日本の平和と安全も維持される。それゆえ、新安保法制では、「国際平和支援法案」という新法を設けて、「国際平和支援」の活動のため、自衛隊が多国籍軍等への燃料や弾薬の提供などの後方支援を随時可能にする。
 平成13年のアフガニスタン戦争に参加した米軍など有志連合軍に対する自衛隊による後方支援は、時限立法のテロ対策特別措置法で対応した。必要な事態が生じてから法律を制定するために迅速な反応は難しかった。新法は、恒久法を作ってそれを基に対応しようというものである。
 新法では、国際社会の平和と安全を脅かし、日本が協力する必要がある事態を「国際平和共同対処事態」と定義する。自衛隊の派遣は、国連総会か国連安全保障理事会の決議を要件とする。
 今までは戦闘地域と非戦闘地域に分け、その間に中間的な地帯を想定して、自衛隊は非戦闘地域で後方支援をするとしていた。他国軍の武力行使との「一体化」を避けるためである。だが、戦闘地域は移動するものだから、非戦闘地域にも戦闘が広がらないとは限らない。新法では、自衛隊は「現に戦闘行為が行われている現場」以外で活動できると改める。より戦闘地域に近いところで自衛隊が活動できるようにする。
 留意したいのは、現に戦闘行為が行われていない場所で、物資の補給等の後方支援を行っていても、相手が敵とみなして攻撃してくる可能性はあることである。もし攻撃されれば、正当防衛で反撃する。その判断は現場の指揮官が行う。これまでは外国軍を後方支援する場合、近くで戦闘行為が始まれば自衛隊は撤退することとしていた。これでは、外国から真の信頼は得られない。自国の平和と安全だけでなく、世界の平和と安全に貢献するには、この点の改善が必要となっている。

 次回に続く。