ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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参院選:憲法改正託せる人物を~百地章氏

2013-07-20 12:06:12 | 憲法
 参議院選挙は、いよいよ明日となった。今回の参院選は、憲法改正を争点とする選挙となるべきところ、憲法改正についての国民的な議論が高まらないまま、投票日を迎える。残念な状況である。
 現行憲法には、主権在民が規定されているが、国民の多くは自らが主権者であるという意識が薄い。その原因は、主権在民と定めている憲法そのものにある。現行憲法は、日本人が自ら起草したものではなく、GHQが秘密裏に英文で起草したものを押し与えられ、銃砲による威嚇と情報統制の監視のもとで、制定されたものだから、国民は自ら憲法を作ったという意識を持ちようがない。さらに、現行憲法は、極めて厳しい改正要件を第96条に定めており、国民は憲法改正に直接かかわる機会がいまだかつてない。主権の構成要素に憲法制定権があり、主権者は憲法制定権者だが、わが国では主権者が主権者の役割を果たしたことがない。そのため、国民の多くは自らが主権者であるという意識が薄いのである。
 この状況を変えるには、国政選挙が最もよい機会である。各党が憲法に関する政策を公約し、有権者の前で大いに議論する。有権者はその議論に参加し、また様々な機会に互いに議論する。こうした題材の一つが、第96条の改正要件の見直しである。改正要件の緩和は、憲法を主権者である国民の手に取り戻すという意義がある。だが、今回の参院選では、その議論がまだよく盛り上がっていない。残念な状況である。
 さて、日本大学教授の百地章氏は、憲法改正及び96条改正を主張する有識者の一人だが、今回の参院選について書きのように述べているので、参考に紹介する。
 「参議院議員の任期は6年であるから、今回選出される議員の任期中に、憲法改正の発議がなされる可能性は高いと思われる。したがって、その時、参議院に憲法改正に通じた人材が確保できているかどうかは、国の命運にかかわる。候補者の政見にじっくり耳を傾けて、真に憲法改正を託すに足る人物かどうか、よくよく吟味したうえでの投票を期待したい」。
 現時点の参院選予測では、私の見るところ、改憲勢力は憲法改正発議要件の3分の2以上に、19議席ほど不足すると予想される。選挙は、結果を見るまで分からない。大衆の心理は、1日の内にも変化する。だが、仮に選挙結果が先の予想に近いものとなり、このまま衆院では3分の2以上が維持された場合、次のチャンスは3年後となる。その時こ衆院・参院とも改憲勢力が3分の2以上となっても、国会が具体的にどう改正するかの案をまとめ、国民投票に諮るには、また数か月なり1年以上なりの時間がかかるだろう。
 問題は、これからの3年ないし4年なりの間にも、わが国の主権を揺るがす事態が生じるおそれがあることである。私は、特に中国による尖閣諸島への武力侵攻、北朝鮮の冒険主義的行動または体制崩壊によるわが国への影響を懸念する。第9条を改正しなければ、日本は守れない。焦点を絞れば、9条2項である。それを日本人自身がどうするかである。
 日本国民は、主権者として、日本の現状及び将来をよく考え、参院選で貴重な一票を投じよう。
 以下は、百地氏の記事。

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●産経新聞 平成25年7月19日

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130719/elc13071903170023-n1.htm
【正論】
日本大学教授・百地章 「憲法改正」託せる人物を選ぼう
2013.7.19 03:16 [憲法改正論議]

 参議院選挙の投票日まで、残すところわずかとなった。当初、国政選挙における初めての本格的な改憲論議を期待していたが、残念ながらさして盛り上がらないまま終盤に入ったようだ。そこで改めて、改憲論議の現状と今後の課題に触れてみたい。

≪先行改正慎重論に反論続々≫
 4月11、5月28両日付本欄で憲法96条改正反対論への様々な疑問や批判を述べ、『正論』8月号でも詳細な反論(「憲法を国民の手に 96条改正はその第一歩」)を加えたが、その後、96条改正反対論に有力な反論が現れた。
 一つは、京都大学の大石眞教授によるものである。教授は「96条改正は立憲主義の破壊」という批判について、「96条を見直すとどうして立憲主義が破壊されてしまうのか、その理屈がよくわからない」「憲法改正は政治の一つの仕組みに過ぎない。仕組みが存在しているのに動かしてはいけないという主張はおかしい」と反論、96条の見直しは「クーデターだ」「裏口入学だ」といった批判を、「レッテル貼りに近い」としている(7月2日付読売新聞)。
 また、北岡伸一東大名誉教授も「96条改正反対論の中には、憲法の個々の条項ではなく、手続きを先に変えるのはルール違反だという人がある。しかし、現行のルールはGHQが日本に押しつけたものであるから、この批判はナンセンスである」と一蹴している(7月1日付日本経済新聞)。
 さらに、96条改正反対の急先鋒(せんぽう)で、「絶対ダメだよ。邪道」「縛られた当事者が『やりたいことができないから』と改正ルールの緩和を言い出すなんて本末転倒、憲法の本質を無視した暴挙だよ。近代国家の否定だ」(4月9日付毎日新聞)と述べていた小林節慶応大学教授も、筆者との対談では、「9条などの改憲がなされた後なら、96条の改正をしてもいいと思います」と発言しておられる(別冊宝島『憲法大論争』)。

≪優先すべきテーマ絞り込め≫
 96条改正は、連合国軍総司令部(GHQ)により課せられた拘束から日本人を解放し、憲法を国会から主権者国民自身の手に取り戻すという、独自の意義を有する。それゆえ、96条の先行改正について決して姑息(こそく)などといった批判は当たらないことは、以上からも明らかであろう。ただ、96条改正後に何を変えるのか、具体的に明確な方向を示さないまま先行改正を行うことに対し疑問や批判が提起されているのも事実である。
 であれば、この際、96条と同時に、改正の中身についても優先テーマを絞ったうえで、具体的な目標をはっきりと提示していくべきではなかろうか。というのは、憲法改正の発議は、「内容において関連する事項ごとに区分して行う」ことになっており(国会法68条の3)、現実問題として全面改正は不可能だからである。
 優先テーマを決定する際の基準は、まず国家的な重要課題であることと、何よりも緊急性を要すること、になると思われる。とすれば、一刻を争うテーマとして真っ先にあげられるべきは、緊急事態対処規定と9条2項の改正による「軍隊の保持」であろう。

≪緊急事態対処規定と9条2項≫
 昨年7月19日に、国の中央防災会議の作業部会が、「首都直下型地震は国家の存亡にかかわるものであり、その対策は喫緊の課題である」旨の中間報告を発表した。「国家の存亡にかかわる」という警告は尋常ではない。しかも、京都大学の藤井聡教授(内閣官房参与)によれば、「首都直下型地震は、8年以内に間違いなく起きるだろう」という。だとすれば、速やかに憲法に緊急事態対処規定を盛り込む必要がある。これなら、大方の国民の賛成を得ることも決して困難ではないだろう。
 もう一つの9条2項の改正だが、新聞やテレビのほとんどの世論調査では、「9条の改正」に賛成か反対かを尋ねており、「9条1項の平和主義は維持したうえで2項を改正し軍隊を保持すること」の是非を聞こうとはしない。なぜこれを問わないのか。
 また、9条改正の目的は、自衛隊が対外的には「軍隊」とされながら、国内的には「軍隊」ではないとされている矛盾を解消するためであること、さらに現在の自衛隊が法制度上は「警察」組織にすぎず、「軍隊」にしなければ「武力攻撃」に至らない武装ゲリラなどによる領土・領海の侵犯に有効に対処できないことなど実例を挙げて、なぜ軍隊としなければならないかを分かりやすく説明していくべきである。そうすれば、中国や北朝鮮などによる軍事的脅威を前に、常識ある国民は必ずや耳を傾けてくれるはずである。
 参議院議員の任期は6年であるから、今回選出される議員の任期中に、憲法改正の発議がなされる可能性は高いと思われる。したがって、その時、参議院に憲法改正に通じた人材が確保できているかどうかは、国の命運にかかわる。候補者の政見にじっくり耳を傾けて、真に憲法改正を託すに足る人物かどうか、よくよく吟味したうえでの投票を期待したい。(ももち あきら)
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