●権力によって実現する要素
権力を構成する要素として、意思、能力、強制力を挙げた。これらの要素で構成される権力は、他者に能力を付与したり、正当性を保障したり、利益を分配したり、また法を実効あるものとしたりする。次に、権力によって実現する要素について述べたい。それらの要素は、③正当性、④利益、⑤法である。丸文字の番号は、権利の要素に振ったものと同じである。
③正当性
権利関係とは、一方の意思が他者の意思に対して、事実上または法律上優越する正当性を持つ関係である。権利の正当性が及ぶ対象には、人・もの・カネ・情報がある。人が他者及び他者の所有物を支配・管理する正当性つまり権利を持っている場合、権力を持つということができる。
権力関係は、一方の意思が他者の意思に優越し、他者の意思に支配的な影響力を振るう関係であれば、支配―服従の関係となる。これを正当性という観点からとらえると、権力関係は権利の正当性に基づく関係であると言える。優位者は自らの権利の正当性を主張し、その正当性をもって劣位者に強制力を振るう。
権力は、権利関係の存在しないところで、権利を主張する者が闘争または交渉によって権利を獲得し、これを正当化する力でもある。権力は、権利の正当性を実現し、保障する。権利は、その正当性を実現するもの、保障するものがなくては、権利たり得ない。ここで権利を権利足らしめるものが、権力である。
④利益
権力は、権利を持つ者の利益を実現し、利益を保障する力でもある。利益の実現は、共同的な利益の場合、相互の合力が相互に利益をもたらす。対立的な利益の場合は、優位者に利益、劣位者に損害をもたらす。前者は権利及び権力の共同的側面であり、後者は闘争的側面である。権利の主体の社会的な関係が、共同性と闘争性となって表れる。
⑤法
権力は、法を法として機能させる力でもある。法は利益を確定し、これを保護する。それを裏付けるものが、力である。
正当性は、法の形態を取ることによって、一般化される。権利を定める法は正当性の根拠とされ、法に照らして権利の正当性が判断される。法は「権利=法」の客観的な側面であり、意思の客観的な表れである。法は集団の意思を表現する言葉の体系である。法に基づいて、命令や禁止、裁判が行われる。これは法に表現された集団の意思に、成員を従わせる行為である。この法を実際に裏付けるものは、力であり、権力である。
同時に、権力を制度的に支持するものが、法でもある。権力は、主に優位者の権利の作用を力の観念でとらえたものとされており、権力は法を正当性の根拠とする。物理的実力の行使は、法に定められ、法の規定に基づいて、合法的に権力は行使される。
権利の6つの要素と関係付けて、権力を構成する要素と権力によって実現する要素について述べた。
権利と同様に、権力は意思を現実化する能力であり、他者の行為に対する強制力である。その点で、権力は権利の相互作用を力の観念でとらえたものである。そして、権力は、その働きによって、他者に能力を付与したり、正当性を保障したり、利益を分配したり、また法を実効あるものとしたりする。すなわち、権利の他の要素を現実化する。言い換えれば、権利を権利たらしめる力が、権力でもある。
ここで権利を人権という本稿の主題となる語に置き換えて表現しておくと、権力は人権を人権たらしめ、人権を生み出し、保護し保障する力である。人権は発達する人間的な権利であり、権力に対抗して発達するとともに、権力によって保障され、発達する権利でもある。
次回に続く。
権力を構成する要素として、意思、能力、強制力を挙げた。これらの要素で構成される権力は、他者に能力を付与したり、正当性を保障したり、利益を分配したり、また法を実効あるものとしたりする。次に、権力によって実現する要素について述べたい。それらの要素は、③正当性、④利益、⑤法である。丸文字の番号は、権利の要素に振ったものと同じである。
③正当性
権利関係とは、一方の意思が他者の意思に対して、事実上または法律上優越する正当性を持つ関係である。権利の正当性が及ぶ対象には、人・もの・カネ・情報がある。人が他者及び他者の所有物を支配・管理する正当性つまり権利を持っている場合、権力を持つということができる。
権力関係は、一方の意思が他者の意思に優越し、他者の意思に支配的な影響力を振るう関係であれば、支配―服従の関係となる。これを正当性という観点からとらえると、権力関係は権利の正当性に基づく関係であると言える。優位者は自らの権利の正当性を主張し、その正当性をもって劣位者に強制力を振るう。
権力は、権利関係の存在しないところで、権利を主張する者が闘争または交渉によって権利を獲得し、これを正当化する力でもある。権力は、権利の正当性を実現し、保障する。権利は、その正当性を実現するもの、保障するものがなくては、権利たり得ない。ここで権利を権利足らしめるものが、権力である。
④利益
権力は、権利を持つ者の利益を実現し、利益を保障する力でもある。利益の実現は、共同的な利益の場合、相互の合力が相互に利益をもたらす。対立的な利益の場合は、優位者に利益、劣位者に損害をもたらす。前者は権利及び権力の共同的側面であり、後者は闘争的側面である。権利の主体の社会的な関係が、共同性と闘争性となって表れる。
⑤法
権力は、法を法として機能させる力でもある。法は利益を確定し、これを保護する。それを裏付けるものが、力である。
正当性は、法の形態を取ることによって、一般化される。権利を定める法は正当性の根拠とされ、法に照らして権利の正当性が判断される。法は「権利=法」の客観的な側面であり、意思の客観的な表れである。法は集団の意思を表現する言葉の体系である。法に基づいて、命令や禁止、裁判が行われる。これは法に表現された集団の意思に、成員を従わせる行為である。この法を実際に裏付けるものは、力であり、権力である。
同時に、権力を制度的に支持するものが、法でもある。権力は、主に優位者の権利の作用を力の観念でとらえたものとされており、権力は法を正当性の根拠とする。物理的実力の行使は、法に定められ、法の規定に基づいて、合法的に権力は行使される。
権利の6つの要素と関係付けて、権力を構成する要素と権力によって実現する要素について述べた。
権利と同様に、権力は意思を現実化する能力であり、他者の行為に対する強制力である。その点で、権力は権利の相互作用を力の観念でとらえたものである。そして、権力は、その働きによって、他者に能力を付与したり、正当性を保障したり、利益を分配したり、また法を実効あるものとしたりする。すなわち、権利の他の要素を現実化する。言い換えれば、権利を権利たらしめる力が、権力でもある。
ここで権利を人権という本稿の主題となる語に置き換えて表現しておくと、権力は人権を人権たらしめ、人権を生み出し、保護し保障する力である。人権は発達する人間的な権利であり、権力に対抗して発達するとともに、権力によって保障され、発達する権利でもある。
次回に続く。