ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

21世紀の「日英同盟」復活へ

2013-06-13 08:54:49 | 国際関係
 日本とNATO(北大西洋条約機構)、特に英国との安全保障の連携強化の動きがあり、注目される。
 安倍首相は、前任時の平成19年(2007)1月、ブリュッセルのNATO本部で開かれたNATO理事会に日本の首相として初めて出席した。NATOは北米諸国・欧州諸国・トルコの28カ国が加盟する軍事同盟。安倍氏は、NATO幹部を前にした演説で、「日本とNATOは平和構築や復興支援、災害救援などで役立つ知識や経験を共有できる。新たな協力の段階へと移行すべきだ」と訴えた。安倍氏のNATO訪問は、欧州諸国のアジアの安全保障への関心を呼び覚ました。以後、日本とNATO間で、戦略的協力とパートナーシップの強化が目指されている。
 この点に関し、産経新聞論説副委員長・高畑昭男氏が、同紙本年1月5日号に書いた「日米プラス英で対中連携を」という記事は、戦略的な思考に立つ秀逸なものだった。
 高畑氏は言う。「日本の領土や主権を守り、地域の平和と安定を確保するには、日米同盟の強化と充実だけでは足りない。欧州や世界に安保協力のネットワークを広げていく努力が一層欠かせない時代になった。NATOとの協力の中でも、とりわけ大切なことは英国との関係を強化することだろう」と。
 わが国は、1902年から23年まで日英同盟を結んでいた。日露戦争の勝利は、日英同盟に負う所が少なくなかった。日本の台頭を警戒した米国は、1922年ワシントン会議で四か国同盟を成立させ、日英同盟を解消させた。米国に敵視され、また英国との同盟を失ったわが国は、以後、国際社会で徐々に孤立する方向に進んだ。
 わが国は大東亜戦争で敗北し、戦後は米国に国防を依存する形で安全保障条約を結んでいる。一方、英国は、NATO諸国の主要国の一つであり、米国とは強い紐帯で結ばれている。こうした中で、わが国がNATO諸国の中でも英国との協力関係を強化することは、日米英へと連携を広げることとなり、有益と思う。
 高畑氏は言う。「習近平体制の中国はキバをむき出しにした。対抗する日本は日米同盟を立て直すと同時に、日英協力を活用して欧州や豪州、インドなどとグローバルな協力を拡充していく工夫が欠かせない。かつて強力な同盟を通じて帝政ロシアを破った歴史も日英にはある。今また大国の無法な挑発にさらされる中で、日英同盟を実質的に復活させ、日米英でスクラムを組むことは大きな意義がある。日米、米英の同盟に、日英協力の太いパイプが加われば、中国の危険な行動を抑止する日米英の外交パワーを飛躍的に高めることができるだろう」と。優れた見方だと思う。
 安倍首相は昨年12月就任後すぐ、日米同盟に加えて欧州との安保関係を重視する姿勢を表明した。安倍政権は、北朝鮮のミサイル問題や中国の海洋進出の積極化など東アジアの安全保障の環境変化に対し、NATOにも理解や協力を呼びかけてきている。NATO加盟国も東アジア情勢に高い関心を見せているという。なかでも英国との間では、わが国は、安保協力を拡大させつつある。野田政権の昨年4月キャメロン英首相が訪日し、日英防衛協力で合意した。以後、両政府間で戦略対話や武器禁輸三原則の緩和、兵器の共同開発、情報の共有などについての協議が行われている。
 こうしたなか、英国のヨーク公アンドルー王子が今秋訪日し、21世紀型の新たな「日英同盟」を模索する国際会議を東京で開催する計画があるという。会議開催を計画しているのは、王立防衛安全保障研究所(RUSI)。アンドルー王子が事実上の会長職にあるRUSIは、米国及び英連邦諸国と緊密な情報交換ネットワークで結ばれ、英政府に外交安保政策を助言する「特別な研究所」とされる。
 東京で開催予定の会議では、日英両国の防衛・外交の当局者や防衛産業関係者のほか、安保問題の専門家らが出席し、東京で2日間にわたり、日英安保の枠組みのあり方、防衛装備品の共同開発、サイバー・セキュリティー、英国の情報活動等について意見交換を行う計画と伝えられる。暴走する北朝鮮、軍拡を進める中国を念頭に、日英間の安全保障強化に向けた動きとして注目される。英国との連携は、オーストラリア等、英連邦諸国との関係発展につながる可能性もあり、わが国政府は積極的に日英同盟復活に取り組んでもらいたいものである。
 以下は、高畑氏の記事。

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●産経新聞 平成25年1月5日

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130105/plc13010503290004-n1.htm
【土・日曜日に書く】
論説副委員長・高畑昭男 日米プラス英で対中連携を
2013.1.5 03:28

 安倍晋三氏の首相再登板で思いだすのは、前任時の2007年1月、ブリュッセルの北大西洋条約機構(NATO)本部で開かれたNATO理事会に日本の首相として初めて出席し、日・NATO間の戦略的協力とパートナーシップの強化に先鞭(せんべん)をつけたことだ。
 NATO諸国の代表らを前に行った「さらなる協力に向けて」と題する演説で、安倍氏は「日本とNATOは平和構築や復興支援、災害救援などで役立つ知識や経験を共有できる。新たな協力の段階へと移行すべきだ」と訴え、アフガニスタン復興支援などで連携を深める道へ踏み出した。

欧州の関心呼び覚ます
 安倍氏のNATO訪問がアジアの安全保障に欧州側の関心を呼び覚ます伏線となったのは言うまでもない。NATOも前年の首脳会議で日本、豪州、ニュージーランド、韓国などアジア太平洋の非加盟国と連携を強める方針を打ち出し、日欧が安保協力を深める姿勢の醸成に結びついていった。
 北朝鮮の核・ミサイル開発は当時も東アジアの脅威だったが、6年後の今は、それに加えて中国による強引な海洋進出や沖縄県・尖閣諸島の奪取を狙った攻勢が強まり、日本の安全保障環境はさらに険悪化の度を強めている。
日本の領土や主権を守り、地域の平和と安定を確保するには、日米同盟の強化と充実だけでは足りない。欧州や世界に安保協力のネットワークを広げていく努力が一層欠かせない時代になった。
 NATOとの協力の中でも、とりわけ大切なことは英国との関係を強化することだろう。
 英国はNATOの欧州側同盟国の中核を占め、歴史的、文化的に米国と「特別な関係」にある。しかも日英は、地政学的にユーラシア大陸の欧州側とアジア側の両端に位置する海洋国家だ。自由と民主主義の価値を共有し、ともに米国と緊密な同盟を維持してきた点でも共通要素が多い。
 昨年4月、安倍氏の路線を引き継ぐ形で野田佳彦首相は来日したキャメロン英首相と首脳会談を行い、新たに「世界の繁栄と安全保障を先導する戦略的パートナーシップ」関係を確認した。
 北のミサイルやイランの核問題などで戦略的対話を深め、緊密な連携で一致したほか、武器輸出三原則の緩和を受けて防衛装備の共同開発に踏み出すことでも合意した。6月には防衛担当閣僚による「防衛協力覚書」を交換し、英海軍と海上自衛隊の共同演習、海洋安全保障、サイバー・宇宙での協力、防衛装備の共同研究・開発などを取りまとめた。
民主党政権下では日米同盟の空洞化など多くの面で日本の国益を損なったが、こと日英協力に関しては野田外交を評価していい。

米国以外と開発の意義
 中でも、日本が米国以外の国と初めて防衛装備の共同開発へ乗り出した意義は大きい。戦闘機開発などの例をみても、一国で行うよりも共同開発のほうがはるかに費用対効果が上がる。多様な発想を組み込むことができ、互いの経済・技術交流にもつながる。
 技術や経済の利点に加え、戦略的メリットも重要だ。そもそも敵国同士が共同開発することはあり得ず、国家の防衛にかかわる共同事業に取り組むこと自体、同盟のような関係に向けて協力を深める第一歩でもあるからだ。
 習近平体制の中国はキバをむき出しにした。対抗する日本は日米同盟を立て直すと同時に、日英協力を活用して欧州や豪州、インドなどとグローバルな協力を拡充していく工夫が欠かせない。
 かつて強力な同盟を通じて帝政ロシアを破った歴史も日英にはある。今また大国の無法な挑発にさらされる中で、日英同盟を実質的に復活させ、日米英でスクラムを組むことは大きな意義がある。
 日米、米英の同盟に、日英協力の太いパイプが加われば、中国の危険な行動を抑止する日米英の外交パワーを飛躍的に高めることができるだろう。

日英同盟復活させたい
 日英防衛覚書を受けて、日本の主要防衛産業で組織する経団連防衛生産委員会は今月末、大手20社による調査団を英国とイタリアに派遣する。防衛装備の国際共同開発には、各国の事例や体験が役に立つ。同委員会は平成22年から欧米に調査団を派遣しており、直ちに共同開発が始まる段階ではないが、そうした官民の研究や調査協力を着実な成果に結びつけていくことが大切だ。新たな安倍政権にもそのための十分なバックアップを期待したい。
 今日の日英協力の展開は、6年前のNATO訪問が大きなきっかけとなっている。再び日本の政治のトップに立った安倍氏には、改めて当時の感慨を胸に日英関係の強化と活用に力を注いでほしいと思う。(たかはた あきお)
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