ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

中国の沖縄略奪工作と琉球独立運動2

2013-06-03 10:43:14 | 国際関係
 中国は、その後も予想通り、一段一段エスカレートしてきている。それが本年5月の動きである。
 5月8日、中国共産党機関紙、人民日報は、沖縄の帰属は「歴史上の懸案であり、未解決の問題だ」とする論文を載せた。論文は政府系の中国社会科学院の研究員らが執筆。琉球王国が歴代の中国王朝に対して朝貢を行う「冊封国」だった経緯を説明した上で「琉球王国は明清両朝の時期には中国の属国だった」とした。その上で「(当時は)独立国家だった琉球を日本が武力で併合した」とし、尖閣と同様、日本が敗戦を受け入れた時点で日本の領有権はなくなったとの認識を示した。尖閣については「歴史的にも台湾に属している」と指摘した。
 続いて11日人民日報傘下の環球時報が社説で、人民日報に掲載された先の沖縄の帰属は「未解決」とする論文の主張に言及し、沖縄の独立勢力を「育成すべきだ」と中国政府に提案した。社説は「日本が最終的に中国と敵対する道を選んだならば、中国はこれまでの政府の立場の変更を検討し、琉球(沖縄)問題を歴史的な未解決の懸案として再び提出しなければならない」と主張。その上で「中国は琉球への主権を回復するのではなく、今の琉球の(日本に帰属している)現状を否定できる」と強調した。そして、この問題で日本政府に圧力を加えるため、具体的に3つの方策を中国政府に提案している。
 第一段階は、「琉球問題に関する民間レベルの研究・討論を開放し、日本が琉球を不法占拠した歴史を世界に周知させる」。第二段階は、「中国政府が琉球問題に関する立場を正式に変更し、国際会議などで問題提起する」。第三段階は、それでも日本政府が中国と敵対する姿勢を続けるならば、「琉球国の復活を目指す組織を中国が育成し、支持すべきだ」「20~30年がたてば、中国の実力は強大になる。決して幻想ではない」との提案である。
 人民日報の論文に対しては、中国や台湾の一部専門家から批判の声が上がった。中国では上海・復旦大学の馮●(=偉のにんべんを王に)教授が中国版ツイッター「微博」で、人民日報論文は「学術上、根本的欠陥がある。米国が1962年3月に、日本が沖縄の主権を有することを公認しており、この事実を抜きにして何を論じることができるか。かえって日米接近を促進するばかりだ」と批判した。また台湾では、林泉忠・中央研究院副研究員が5月20日、香港のフェニックステレビのホームページ「鳳凰網」のブログで、「沖縄の帰属未解決論や独立論の重大な盲点は、沖縄で独立運動が多くの支持者を集め、彼らが『反日親中』だと勘違いしている点にある」と批判。林氏は沖縄県での調査をもとに、「人民日報論文の翌日、中国に悪印象を抱く沖縄住民が89%にのぼった」と報告した。また林氏が2005~07年に琉球大学と共同実施した沖縄県民へのアンケートでは、自分は「沖縄人」との回答が約42%、「日本人」が26%、「沖縄人で日本人」が30%との回答が多数だったという。「沖縄民衆は、中国社会が沖縄独立論で盛り上がっていることに不快感を強めている」と批判している。林氏は北京大学で客員教授の経験もあり、中国内でもネットなどを通じ、沖縄問題をめぐって活発に発言しているという。
 本年5月15日、沖縄は本土復帰41年を迎えた。人民日報や環球時報がこの日の前に記事を掲載したのは、計画的な行動だろう。また5月15日、沖縄で「琉球民族独立総合研究学会」が設立されたこととも関係がありそうである。日本国内では、「琉球民族独立総合研究学会」設立に呼応して、衆院沖縄2区選出の社民党の照屋寛徳国対委員長が自身のブログで『沖縄、ついにヤマトから独立へ』と題した文書を公表した。照屋氏は、4月1日同学会の設立を伝える地元メディアの報道に対して、同日付のブログで「明治いらいの近現代史の中で、時の政権から沖縄は常に差別され、いまなおウチナーンチュ(沖縄出身者)は日本国民として扱われていない」「沖縄は日本国から独立した方が良い、と真剣に思っている」と述べ、学会設立に「大いに期待し、賛同する」との意思を表明していた。
 沖縄在住の惠隆之介氏は、「照屋氏の見方は一部の左翼勢力の歴史観をもとにしたもの。県民の7、8割は今のまま日本の統治下にあるのがいいと思っている」と反論している。惠氏は、明治以降の沖縄に対して日本が国を挙げて近代化に努め、当時の県民が感謝していた事実を挙げ、「歴史の中で日本もアメリカもすべて敵というのは尋常な感覚ではない」と指摘すし、「照屋氏は議員のバッジを返上して主張すべきだ」と批判している。県民からも「独立が『沖縄の総意』とは思わないでほしい」と危惧する声が上がっている。
 惠氏は「県民の7、8割は今のまま日本の統治下にあるのがいいと思っている」と言うが、この点は台湾の林氏が沖縄県民の約7割が自分は沖縄人ないし日本人とアンケートに回答していると伝えるところと通じる点である。
 中国側は、5月16日環球時報が「琉球民族独立総合研究学会」について「中国の民衆は支持すべきだ」とする社説を掲載した。「琉球国は日本に滅ぼされた」とし「沖縄の独立には正当性がある」と主張し、「(独立に向けた運動が本格化すれば)中国側は国際法が許す範囲内で後押しすべきだ」と呼びかけている。
 既に中国は既に沖縄略奪工作を計画的に進めている。その実績をもとに、官制メディアが公然と主張と呼びかけをしているのである。今後、中国は略奪工作を一層大胆にかつ執拗に進めてくるだろう。沖縄の独立運動を育成し、沖縄県民の意識を誘導し、本土の反日左翼を利用し、沖縄と中央のメディアを操作する。その一方で、尖閣諸島周辺で武力による威嚇を繰り返し、国民の間に厭戦気分を醸成し、同時に反戦思想を高揚させ、憲法改正や集団的自衛権行使が進まぬようにする。そして、戦わずして勝つ孫子の兵法によって、兵を動かさず、米国と衝突せず、民主的に沖縄県民多数の意思によって、沖縄が独立し、中国の勢力圏に入ってくるよう謀る。だが、もしこの最善の策が国内外の事情によって遂行できないと見極めるや、牙をむいて襲い掛かってくるだろう。
 日本国民は、沖縄県民同胞がチベットや新疆ウイグルの人民と同じ悲劇を遭うことのないよう、尖閣を守り、沖縄を守り、日本を守らねばならない。

関連掲示
・拙稿「中国で沖縄工作が公言~石平氏」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/a3ac2550ec7308d805acfe732eb25d4a
・拙稿「中国は沖縄に独立宣言をさせる~惠隆之介氏」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/04d54eddda25a619aab628d9be7cca9a
・拙稿「『フランス敗れたり』に学ぶ~中国から日本を守るために」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion08l.htm