goo

「さいころコロ助」-益子かつみ-

 

 僕が「さいころコロ助」を読んだのって、雑誌長期連載·大長編漫画の「さいころコロ助」の終盤も終わりの方だけだ。「さいころコロ助」が連載されていたのは集英社の児童漫画雑誌「日の丸」誌上だが、僕が読んだことがあるのは「少年ブック」誌上でだ。

 戦後月刊児童雑誌の中で「少年ブック」(当時はおもしろブック)の弟雑誌として、1953年「幼年ブック」が誕生した。集英社発行の小学校低·中学年程度対象の漫画雑誌だ。僕にははっきりしたことは解らなかったが多分、「さいころコロ助」はこの「幼年ブック」創刊号から連載が始まっている。

 「幼年ブック」は1958年に「日の丸」と誌名を変える。「さいころコロ助」を連載したまま月刊誌「日の丸」は1963年2月号で休刊(事実上の廃刊)になる。「さいころコロ助」は同じ集英社の「少年ブック」に掲載がスライドしてまだも連載が続いた。

 僕が「さいころコロ助」を読んだのはこの「少年ブック」に連載されてた終盤の終わりの方です。僕には「さいころコロ助」の雑誌連載終了=物語の終了がいつ頃だったのかはっきりとは解らないのですが、多分1964年まで「少年ブック」誌上に連載されてます。

 「さいころコロ助」は「幼年ブック」から計算すると実に11年間という大長編の長期連載ですね。僕が漫画本を愛読し始めたのって、1962年の終わり頃か63年初頭からですから、「日の丸」連載時も「日の丸」最末期に「日の丸」誌上で読んでいるかも知れません。

 「さいころコロ助」を僕が読んだと言っても7歳当時ですからね、ストーリーなど内容はほとんど覚えていないと言っていいくらいです。ただ主人公·コロ助のサイコロの四角い身体のサイの目から首、手足が出てて、腰に日本刀を帯刀した格好という独特の形状は印象深く記憶に残ってました。また物語は時代劇で、それも徳川幕府の江戸時代ではなくて、戦国時代が舞台で、合戦の中で城を守るコロ助たちの戦いが描かれたシーンをおぼろげながら記憶しています。僕が読んだ記憶は「少年ブック」連載当時の「さいころコロ助」のエピソードの断片の記憶です。

 ネットで「さいころコロ助」を調べている内に、大長編漫画の「さいころコロ助」の舞台設定は戦国時代だけではなく、連載されてた時代とエピソードによっては、どーも江戸時代ぽい舞台だったり、中には明治維新後の明治初期や初めて蒸気機関車がお目見えした時代が舞台のエピソードもあるようですね。基本、時代劇漫画ですが、お話によっては敵が西欧外国人だったり、けっこう自由な発想で描かれているようです。

 「さいころコロ助」の主人公、コロ助自体がサイコロに首や手足が生えてて、チャンバラ戦闘シーンや危機一髪逃げるシーンでは、首や手足をサイコロの中に引っ込めて転がって行く場面も多い。敵側やライバルには、トランプカードに首や手足の生えたトランプ小僧や、将棋の駒に首·手足の生えた敵、麻雀パイに首·手足の生えた麻雀小僧なんかもいたそうです。コロ助の相棒は偵察役の、人間のように喋るカラスのカア公。(トランプ小僧はトランプカードというよりも四角い箱が胴体で胴体四面にトランプマークが入ってる姿みたいですね。コロ助と同じ形。)

 ネットを回っていたら子供の頃愛読した年配の方が、さいころコロ助は木下藤吉郎の配下として活躍したと書き込んでました。やはりエピソードの主要テーマの舞台は戦国時代で、お話によっては自由な発想で時代背景や舞台を変えてたみたいですね。

 「さいころコロ助」は登場人物がサイコロやトランプや将棋の駒や麻雀パイの擬人化で、一見ギャグ漫画調ですが、れっきとしたストーリー漫画です。時代劇ヒーローもののチャンバラ·アクション漫画ですね。冒険活劇のストーリー漫画。

 益子かつみさんというと一番世に知られた作品は「快獣ブースカ」になるのかなぁ。週刊少年サンデーの最初期に連載された「快球X-エックス-あらわる」も有名ですけどね。僕が漫画をじゃんじゃん読み出したのは63年に入ってからですが、60年代前半は益子かつみ先生の作品はいろんな児童雑誌で読みましたね。僕が益子かつみ先生の作品で最後に読んだのが「快獣ブースカ」かな。

 「快獣ブースカ」は円谷特撮の実写テレビドラマで、講談社の月刊「ぼくら」誌上で益子かつみさんがコミカライズを連載されてました。当時の僕は毎月「ぼくら」を購読してたので、連載中はおそらく全編読んでますね。「快獣ブースカ」は「ぼくら」では別冊付録での掲載が多かったですね。変形B5判大型別冊付録で着いてた。

 益子かつみさんといえば「快球Xあらわる」というくらいに「快球Xあらわる」は有名な作品で、後の「ドラえもん」や「オバケのQ太郎」の先駈けといわれる作品ですね。僕が少年サンデーを読み始めた63年、もう「快球Xあらわる」の連載は終了した後で、僕は名作「快球Xあらわる」を後の懐かし漫画グラフティ本や昭和漫画解説本などで断片的にしか見ていません。貸本でまとめて全4巻できんらん社から刊行されたようですが、小学生当時毎日貸本屋に通ってた僕も、このきんらん社版単行本を読んだ記憶はありません。

 益子かつみさんは1925年(大正14年)生まれで兵役を経ていて、戦後本格的に漫画を描き出し、1950年代を通して大活躍された漫画家さんですね。益子かつみ先生の黄金期は「快球Xあらわる」が大ヒットした59年から62年頃以降の60年代というよりは、50年代の児童雑誌ですね。

 益子かつみ先生は非常に器用な作家さんで、50年代の児童雑誌界では、ストーリー漫画、ギャグ調漫画で、時代劇·SF ·動物もの·少女漫画まであらゆるジャンルをこなして、雑誌記事や小説のカットや挿し絵まで描いてたらしい。

 僕は「快獣ブースカ」以降は漫画雑誌で作品を見たことがないので、益子かつみ先生は60年代後半からは失速して行ったのかな。60年代後半に入ると“劇画”の時代がやって来ますからね。絵柄や作風的に時代にマッチしなくなったのかな。

 益子かつみ先生は1971年に46歳という若さで病気でお亡くなりになられてます。日本児童漫画界の戦後ストーリー漫画(ギャグ調漫画も含む)黎明期のいろいろな雑誌や貸本で、たいへんな作品数の漫画作品を執筆されて来てますね。

    

      

少年漫画劇場 6巻 武内つなよし「赤胴鈴之助」、益子かつみ「さいころコロ助」、白土三平「死神剣士 コミック (紙) 筑摩書房 (著)

赤塚不二夫が語る64人のマンガ家たち (立東舎文庫) (日本語) 文庫 赤塚不二夫 (著)

快球Xあらわる!! (ペップおもしろまんがランド 3) (日本語) 単行本 益子 かつみ(著)  

 
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●小説・・「じじごろう伝Ⅰ」狼病編..(19)

 19.

 市の総合運動公園は入り口から直ぐに二ヶ所の広い駐車場があり、その直ぐ先に野球·ソフトボール用とサッカー用に二面のグランドがある。またグランド近くに二ヶ所の遊具やアスレチック設備を設けた広場があり、バーベキューなどが楽しめる多目的広場もある。

 市の公園は広大で、野球用グランドの奥は小山が二つ連なり、森林のようになっている。その森林の中を迷路のように散策のための遊歩道があり、この遊歩道は二つの山の中をあちこち入り組んで伸びて、それらの道を合わせた全長だとかなりの距離になる。

 遊歩道の歩き方は何通りもできて、山と山の間の谷合いに下り、また山の頂上付近まで登りとぐるぐる回る細道は、歩き方に寄ってはかなりしんどい。散策利用者の大半は足腰の訓練を目的とした年配の人たちだから、それほど高低差を感じず比較的開けた道を選んで歩いている。

 その散策利用者によく使われる、比較的幅広で舗装され整備された、遊歩道メインロードからはあちこちに枝道として、また細い遊歩道が伸びている。滅多に人の入らない枝道は樹木の落ち葉が降り積もり腐葉土となり、上は無数の樹木の葉が覆っているので年中湿気が多く、厚い泥道になっている。

 この、ジャングルの中を思わせるような、遊歩道からの引き込み路に一人の男性が入って来た。九月の初めで、まだ戸外は夏場の暑さを保っているが、このひとけの全くない細い道はひんやりとしていた。まだまだ蝉の音が騒がしくこだましている。

 男はサラリーマン風の格好をしていて、小太りで薄くなり掛けた頭髪をきれいに分けて整髪している。柔和な顔立ちで穏やかそうな印象を与え、背格好もそんなに大きな男性ではない。

 男は落ち葉で覆われて踏むとブヨブヨした泥道を歩いて、ぽつんと一本立つ外灯の下まで来た。上は樹木の葉で覆われ薄暗いが、まだ昼前で外灯は灯っていない。男がキョロキョロと辺りを見回す。細い道の両側はうっそうと生い茂る木々や笹ばかりだ。木々の間の向こうは暗くて見えない。

 男は奥の森林に向かって、大きな声を出した。

 「じじごろう先生、ジャックの旦那、ハチさん!」

 道の奥の林がガサゴソと音をたてたと思うと、林の中から一匹のイノシシが出て来た。この公園は山林を切り開いて作り、手付かずの山林もほとんどそのまま残してある。鹿や猪などの野生の獣が多数棲息しているのだ。しかしこれら獣は遊歩道のメインロードなど、人間の出入りする場所には滅多には顔を出さない。

 藪から出て来たイノシシは立ち止まって数秒、男の顔を眺めたが、いそいそとまた林の中に戻って行った。イノシシも最初は警戒心から敵意を持ったが、一見、穏和なサラリーマン風のこの人間が、実はとても怖い存在で向かって行っても到底敵わないと、野獣の勘で認識したのだ。

 男は立ったまましばらく待った。やがてガサガサと音がして、イノシシが去った方とは別の藪から大きな白い犬が出て来た。ジャックだ。

 「何だ?」

 ジャックが言った。といっても大きな犬が言葉を喋ったのではない。サラリーマンふうの男の頭の中に聞こえたのだ。

 「ハチさんは?」

 男が犬に向かって、こちらは声に出して言った。すると、樹木の枝葉で覆われた上から降って来るように、中型犬が現れた。茶色い犬はフワリと腐葉土の上に着地する。

 「なんだ、ヒトオオカミか」

 茶色い中型犬が喋った。これも音声ではない。男の頭の中に聞こえたのだ。

 「ジャックの旦那、ハチさん。この度は本当にお世話になりました」

 ハチがヒトオオカミと呼んだ、サラリーマンふうの人間は二匹の犬に向かって深々と頭を下げる。

 「もういいよ、別に。お礼はこの前してたじゃないか」

 ハチがヒトオオカミの頭の中に言う。ヒトオオカミといっても今の姿は何処から見ても、三十代後半くらいの普通の人間のオッサンだ。

 「ああ。この前、何だフライドチキンだの焼き肉だのイロイロ持って来て礼を言ってたじゃないか」

 ジャックが話す。これもいわゆるテレパシーみたいなものだ。

 「いえいえ、お二人は命の恩人ですし、あんなもんではとてもお返しできませんが」

 ヒトオオカミと呼ばれる男は恐縮して言った。先程から二匹の犬に向かって、何度もペコペコと頭を下げている。

 「いや、あんたを土の中から掘り出したのは僕たちだけど、あんたの胸から銀の弾を取り出したのは、あのヨーロッパ·オオカミの奴だ」

 ハチが言った。横に並ぶジャックもじっと男を見ている。

 「あぁ、あいつですか…」

 「何か面白くなさそうだな?」

 ジャックが男に問い掛ける。男は渋い顔をしている。

 「まぁ、あいつにはあんまり借りは作りたくなかったんですがね…」

 「ライバルって訳か」

 ジャックが言うと、ヒトオオカミは面白くなさそうな顔つきのまま樹上を見上げる。

 「あいつは帰ったんだろ?テレビで“狼病”の世界的権威のオーストリア人の医者が帰国したとかニュースで言ってたから」

 ハチの話にヒトオオカミが応える。

 「そうみたいですね」

 あんまり関心のなさそうな口ぶりだ。

 ジャックが男に向かって訊いた。

 「あの蛇女一味は何処行ったんだ?都市部の繁華街のビルに巣くってたが、もう居なくなってたんだろ」

 「はい、ジャックの旦那。私が不覚を取った古ビルですが、人間の警察が入ったときは奴らはもぬけの殻で。“狼病”の犠牲者はいっぱい倒れてたようですが」

 「テレビでやってたね。あの人らも狼病の薬で助かったんだろ?」

 ハチが訊く。

 「みたいですね…」

 今の姿はアジア人男性のヒトオオカミは、白人のヒトオオカミの活躍話が面白くないようだ。

 「おまえは蛇女を追わなくていいのか?」

 ジャックが言った。

 「いや、勿論です。それで今日はジャックの旦那やハチさん、じじごろう先生にお別れを言いに来たんです」

 ヒトオオカミが改まって話す。態度も姿勢を整えた。

 ハチが訊く。

 「で、蛇女の逃げた先は解ってるの?」

 「はい。まぁ、魔物のネットワークで、香港まで飛んだようですね。香港から先の足取りは行ってみないと解りませんが」

 ヒトオオカミが答えた。さらにジャックが訊く。

 「あのヨーロッパオオカミの奴も追って香港に行ったのか?」

 この問いにはハチが答えた。

 「いや、ニュースではあの男はヨーロッパに帰ったって言ってたよ」

 「ふん。あいつは表側の職業の医者の仕事が忙しいんでしょ。馬鹿ですね。人間に知れ渡るような表の身分でいるから」

 ヒトオオカミが答えた。ヨーロッパの銀色オオカミを蔑むような態度で話す。

 「はっはっは…。おまえ、よっぽどあのヒトオオカミが嫌いなんだな」

 ジャックが笑った。勿論、ジャックは音声として喋ったのではない。ここでは声を出して話しているのはヒトオオカミだけだ。ハチとジャックはテレパシーを使っている。ヒトオオカミも今は普通の人間の姿そのものだ。もし近くに他に人が居て、この現場を見ていたら、一人の人間の男が独り言を発して、二匹の犬に語り掛けているように見える。

 スーツ姿のヒトオオカミが、緩めてよれたネクタイを真っ直ぐに直し、背広の裾を引っ張り、居住まいを正した。

 「ではジャックさん、ハチさん。短い間ですがお世話になりました。私は日本を離れ、取り敢えず香港に渡ります。じじごろう先生に会えないのは残念ですが、蛇女の奴を倒したことを土産話にまた戻って来ます。それまではしばらくですが、お三方ともお元気で」

 ヒトオオカミが改まって二匹の犬に挨拶し深々と頭を下げた。

 「おまえ、今度は返り討ちに合わないようにしろよ」

 ジャックが声掛ける。

 「ヒトオオカミ、今度はちゃんと作戦立てて慎重にね」

 ハチが声掛けた。

 「それでは」と踵を返して森林の出口の方へ向かおうと一歩踏み出したときに、思い出したようにハチが言った。

 「そう言えばヒトオオカミ、今、空き家になってる吉川和也の家で寝泊まりしてるんだろ?」

 ヒトオオカミが振り返る。

 「ハチさん、ご存知だったんですか。へへへ。今、空き家になってますからね。ちょっとお邪魔させて貰って。一階のあの家の親父が寝てたベッドを拝借して、まぁ、寝床にさせて貰ってるんで」

 ヒトオオカミはまたハチとジャックの方に向き直って喋る。

 「あの部屋はクモの巣だらけになってたろう?」

 「はい、勿論綺麗に掃除しましたよ。あそこの親父は蛇女のこの地域の最初の犠牲者で、クモ男にされてしまって、あの寝室をクモの巣でいっぱいにしてましたからね。掃除は大変でしたが、寝ぐらを借りるせめてもの礼儀でね」

 ハチとジャックは、地面にちょこんと座ったまま、黙って聞いている。しばし沈黙があった後、ヒトオオカミはもう一度「では」と言って、くるりと身体を返して、森林の方から公園出口へ向かう道へと歩き始めた。ハチとジャックはヒトオオカミの後ろ姿を見送った。

                  

 広大な運動公園の出入口の一つから自転車を漕いで10分ほどのところに、吉川愛子·和也姉弟の家が立つ新興住宅地がある。この住宅地の中心地近くに立つ吉川家の二階家は、現在無人で空き家状態になっている。家の主である吉川和臣が人が変わったようになってしまい、不気味に思い何やら危険を感じた妻、智美が子供を連れて隣町の実家に戻ってしまい、その後、和臣が行方不明になっていたからだ。

 この二階家も智美が二人の子供を連れて出て、もうかれこれ三ヶ月になる。しばらくは和臣が一人で住んでたようだが、和臣が帰って来なくなって、事実空き家になってから二ヶ月は経つ。その空き家に一週間近く前から、一人の男が無断で寝泊まりしていた。

 ごく普通のサラリーマンふうの男が、無人の吉川家の二階家に近付いて来た。穏やかな顔立ちの中年近い年齢の小肥りの男性だ。くたびれたグレイの背広にワイシャツの襟は開き、ネクタイは緩めてある。

 「何日か世話になったが、この家ともお別れだな」

 サラリーマンふうの男が二階家を見上げながら、独り言で言った。サラリーマンふうの男は、ヒトオオカミの昼間のふだんの姿である。ヒトオオカミは翌日から日本を発つ思いでいて、最後の一泊をして、この家に自分が寝泊まりした痕跡を消して、簡単な荷物を持って出て行くつもりなのだ。

 人間姿のヒトオオカミが道路に面した短い階段を上がって、家の玄関先へと続く小さな鉄柵門扉を開けた。そして玄関の前まで来ると、ピタリと動きを止めた。

 妖気を感じる。ヒトオオカミは突然、緊張を覚えた。ヒトオオカミには解った。家の中には人間ではない者が居る。ドアノブに手を伸ばして、その手を止める。ヒトオオカミは迷う。

 ヒトオオカミがモンスターとしてのパワーを発揮できるのは夜だ。しかも月が照っていればなお良い。ヒトオオカミのパワーは満月の夜に近付くほど強くなる。満月の夜がパワーのピークで、そのときは人間の十倍以上、猛獣なども簡単に倒してしまう力を持つ。だが昼間は違う。昼間はほとんど人間並みの力しか出せない。

 今は月齢が満月には少し日がある。しかし半月くらいの夜でもかなりのパワーは出せる。だが昼間はからきし駄目だ。ヒトオオカミは家の玄関ドアの前で伸ばした手を止めたまま、どうするか迷っていた。

 いったい何者が中に居るのか?蛇姫の婆ァは香港に逃げた。いったい誰が…?

 ヒトオオカミは不死身だ。ここで負けてもまた次で勝てば良い。それよりもいったい何が中に居るのか確かめたい。それにここで恐れをなしたように退却するのは悔しい。ヒトオオカミは思い切ってドアノブを掴んで引いた。

 ガチャリとドアは開いた。鍵は掛かっていない。人間の姿のヒトオオカミはドアを開いて中に踏み込んだ。今は人間並みのパワーしかないが、一応身構えながら家の中に入って行く。

 一応、他人様の家なので靴を脱いで上がり、廊下を行く。家の中の電灯は点いてないが、昼間なので窓からカーテン越しに明かりが入り薄暗い。リビングのソファーに大きな男が座っていた。

 ヒトオオカミは驚いた。大きな男は口と鼻先が少し出っぱりぎみで、口の両端は耳元近くまで裂けている。両目はギョロリとして吊り上がって大きく、目蓋の上の骨が出っぱっている。人間並みの肌色はしているが、少々ゴワゴワとして見える。頭には毛髪が全く無く、やはり皮膚がゴワゴワとしている。

 怪物の相貌だ。横のソファーの上には冬物コートと黒い革手袋、大きなソフト帽と白い大きなマスクが置いてある。

 「これでも人間に寄せているんだがな。昼間はこれだ。夜中には本物の格好に戻る。おまえと同じだ、ヒトオオカミ」

 怪物はドスの効いたダミ声で喋った。ヒトオオカミが応える。

 「何だ、おまえは蛇姫の婆ァと海外に逃亡したんじゃなかったのか?トカゲ男」

 ヒトオオカミはリビングの端に立ったままトカゲ男と対峙した。トカゲ男が、ソファーで組んでいる足に革靴を履いたままなのが気に入らなくて、腹が立った。ヒトオオカミは吉川親子の家に無断で寝泊まりさせて貰っているので、家の中の扱いはいろいろと気を使っていたのだ。

 ソファーで腰を動かして座りなおし、足を組み替え、やおら、トカゲ男が答える。

 「あの婆さんは、ヨーロッパオオカミの奴の特効薬で狼病患者がどんどん治って行くと、自分にヨーロッパオオカミの手が迫ってると感じて、ろくに戦うことも考えずに独りで逃げちまった。俺には何の連絡もせずにな」

 「何だ、一番の部下のおまえは置いてきぼりか」

 「あぁ。あの婆ァにはつくづく愛想が尽きた。ヨーロッパオオカミの野郎だって戦ってみれば勝てるかも知れないものを」

 「蛇姫の婆さんは香港に飛んだとかいう話だが、おまえは追い掛けないのか?」

 「あぁ、あんな身勝手な婆さんの下に着いとくのはもうヤメだ。ヨーロッパオオカミの奴も俺がやってやろうと思ったが、奴は欧州に飛んだみたいだな」

 「あいつは仮の人間の姿が世界的な医者とか、あまりに有名になり過ぎた。表の人間の仕事が忙しくなり過ぎたのさ。馬鹿だよ。俺たち闇に生きる者は、人間社会であんまり目立っちゃいけないんだ」

 「まぁ、そうだな。おまえも突っ立ってないで座れよ」

 自分もよその家に勝手に上がり込んでいるくせに、トカゲ男は自分の家の中のように椅子を勧めた。アジア系ヒトオオカミも馬鹿正直な感じに椅子に腰掛けた。

 「で、何しに来たんだ?」

 「解ってるだろう。これじゃ気が納まらねえんだ」

 ヒトオオカミは黙っている。

 「俺もその内日本を経つ。何処へ行くか決めてねえけどな。ここの土産にせめておまえの首を取る」

 「やはりそういうことか」

 ヒトオオカミは座ったまま落ち着いて聞いていたが、内心では今ここで戦ったら人間そのものの姿の自分は、如何に人間に寄せた姿といえどトカゲ男のパワーに負けてしまうだろう、と焦る気持ちも起きていた。

 「この家に入って、俺を待ち伏せしてた訳か。このところ俺がこの家で寝泊まりしてるのは調べてた訳か…」

 「ああ。それとこの家にはガキが二人居るだろう?もし居ればガキをいただこうと思ってな。子供の肉は軟らかくてうまいからな。しかしここは完全に空き家になってるようだな?」

 「ふん、外道が」

 ヒトオオカミは嫌な物を見るように顔をしかめた。

 「何を言う。おまえだって人間は食うだろう?」

 「たまにはな。だが俺が食らうのは、人間社会に害をなしてるような連中だ。どうしようもない凶悪犯とかな」

 「ふん、人間は同じだ。良いも悪いもない、同じ肉だ」

 ヒトオオカミは返事をせずに黙った。これからどうするか考えていた。今から逃げるにしろ逃げ切ることができるか?この家の造りから逃走経路や武器になりそうな物を、頭の中で巡らせていた。

 黙っているヒトオオカミの態度から、何を考えているのかを察したトカゲ男が、また足を組み替えながらおもむろに喋る。

 「ふふふ…。安心しろ」

 トカゲ男がくぐもった声で不気味に笑う。

 「今の人間の身体のおまえをひと思いに殺しても良いが、それではつまらん。おまえも夜には狼に戻るんだろう?俺は夜まで待ってやることにした」

 トカゲ男の言葉を聞いて、ヒトオオカミは内心ほっとした。思わず表情が弛みそうになるのを必死に堪えた。

 「このあたりは空き家も多いんだろう?どうだ、夜にこの近くで勝負を着けんか?そのときは俺もパワー全開でおまえを殺す」

 ヒトオオカミは願ってもないトカゲ男の提案に一も二もなく返事をした。

 「よかろう。この住宅地には空き家が多い。家を立てたはいいが会社のリストラや倒産で家を手離して出て行く家族が多くてな。中には夜逃げする連中も居る」

 「そんな人間の事情は知らん。俺はおまえを八つ裂きにする静かな場所が欲しいだけだ」

 そう言いながら、トカゲ男はソファーから立ち上がり、横に置いた冬物のコートを羽織り始めた。

 「では、夜の10時にこの先の空き家に挟まれた路地だ。奥が土手になってて袋小路になっている」

 「あぁ、解った。あそこなら知っている」

 トカゲ男は両手に革手袋を嵌めてソフト帽を頭に乗っけた。大きめのマスクは手に持ってヒトオオカミの座る椅子の後ろを通る。

 「あぁ、それとな…」

 ヒトオオカミが座ったまま、玄関口へ向かうトカゲ男の広い背中に声掛けた。

 「蛇姫の婆ァだが、昔々から思ってたんだが…」

 話し掛けられてトカゲ男が立ち止まった。

 「いったいぜんたい、どうしてあの婆さんは千年も昔から世界中で狼病を流行らすんだ?」

 トカゲ男が振り返った。ヒトオオカミはトカゲ男に向かってなおも自分の疑問を話す。

 「数十年とか百年に一度とか、狼病ウイルスをばら蒔いて、世界のあちこちの都市で狼病のパンデミックを起こして来ただろう?それをまぁ、いつの頃からかヨーロッパオオカミの奴が病気の蔓延を防ごうと立ち回って来たんだろうが、ときどき人間社会の一つの地域に伝染病流行らせて人間どもをパニックに陥れて、蛇姫の婆ァに何の利益があるんだ?」

 ヒトオオカミが一気に喋った。トカゲ男はヒトオオカミの方に向きなおって、しばし無言だったが、おもむろに話し始めた。

 「それはおまえ、この世界の根元的な話さ。よく人間が天使と悪魔って言うだろう?善と悪でもいい。あの婆さんは悪魔の使いなのさ。意識してかしないでか、悪魔の使いとしての役目を果たしてるのさ」

 トカゲ男の答えが意外な話だったので、ヒトオオカミは面食らって両目をパチパチさせた。

 「あの婆ァは悪魔が地上に寄越したって言うのか?すると婆ァの邪魔をしてるヨーロッパオオカミは天使が遣わせたとでも言うのか?あいつだって人間を殺したり食べたりしてるぞ。だいたいこの世界に天使だの悪魔だのって存在するものなのか?」

 「そんなことは俺は知らない。悪魔にも会ったことはないし、蛇姫が自分は悪魔の使いだって言ってた訳じゃない。ただそういうことだろうと思うのさ。俺だって爪にも牙にも猛毒があってもうどれくらい人間を殺して来たか解らない。俺も多分、悪魔が作ったんだろうよ。少なくとも神様も天使も俺は作らないだろう。で、ヒトオオカミ、おまえは何なんだ?」

 長々と喋ったトカゲ男の最後の問い掛けに、ヒトオオカミは何と答えていいか解らず黙ってしまった。ヒトオオカミはこれまで自分は何者か?などと哲学的な自問は考えたことがなかった。

 下を向いて考え込んでしまったふうなヒトオオカミを尻目に、トカゲ男はもう何も言わずに玄関へとひたひたと歩き、玄関ドアの閉まる音をさせて去ってしまった。

 ヒトオオカミは椅子に座ったまま面を上げて足組みし、腕を組んでまた、答えの出ないことを考え込んだ。頭の中をぐるぐる回っているのは、自分はどうして蛇女を殺すために追い掛けているのか?俺はいったい何者か?

 妖怪であるヒトオオカミはもうかれこれ300年近く生きて来ている。もう100年150年以上昔のことなぞ憶えてはいない。蛇姫をいつ頃から追い掛け始めたのかも覚えていない。これまで、いったい自分は何者なのか?いつ頃どんな場所でどうやって生まれたのか?そんなことは一切知らないし考えたこともなかった。

 同じ妖怪であるトカゲ男に言われて初めて気が付いたように、そのような自分自身のことを考えた。多分、生まれて初めて考えてみたのだろう。

 「俺はいったい何なんだ?蛇女を追い掛けることに何の意味があるんだ…?」

 ヒトオオカミの口から自然と独り言の問い掛けが出た。だが勿論、この家に居るのはヒトオオカミ一人だし、そんな疑問に誰かが返答してくれる訳もなかった。

 ヒトオオカミは空き家然となっている家のリビングの椅子にじっと腰掛けたまま動かなかった。

                  *

 新月から数えて九日目ほどの半月が夜の空にあった。月の周りにはわずかにちぎれ雲が浮いている。住宅地の中を縦横する道路には一定の距離を置いて街灯が点り、深夜に入った時刻とはいえ薄闇という明るさがあるが、住宅と住宅の間の路地は暗い。もっとも家の窓々から漏れる明かりで比較的明るい路地もあるが、ここの路地は真っ暗だった。

 路地の両側の二階家は空き家なのだ。長引く不況で、家を立てたものの会社の倒産やリストラでローンが払えなくなり、泣く泣く家を手離す者や中には夜逃げする家族まで居る。この地方には中小企業に勤める者が多い。中小企業の倒産や店じまいが続いているのだ。住宅地の中にはぽつぽつとまだ建って新しい空き家が点在した。

 空き家に挟まれた路地の奥は高い土手の壁面で塞がれている。袋小路なのだ。その奥の闇の中に大きな人影が立っていた。 

 この暗い路地に一人の男が入って来た。この男もけっこう大きな男だ。白いワイシャツにスラックス、顔は深く野球帽を被りサングラスを掛け、顔の下半分は白いマスクで覆っている。そして顔の覆いきれてないところや首の部分には獣のような毛が生えている。

 男は路地の奥に向かって歩いて行く。路地は奥に行くほど暗くなる。袋小路の果てに大きな人影を見定めると、男はピタリと歩を止めた。

 路地奥の大きな影は羽織っているコートを脱いだ。同じように顔を覆っているソフト帽やマスクを取った。顔の下半分が爬虫類のように出っ張り、ギョロリとした丸い目は吊り上がっている。大きな影はトカゲ男だ。人間に寄せてある昼間の姿と違い、トカゲ男は爬虫類そのもののような顔をしていた。

 トカゲ男と6、7メートルの間を空けて対峙する男も、帽子やマスクを取りワイシャツを脱いだ。半月の夜のヒトオオカミだ。人間と狼の間のような顔をしている。顔の周りにびっしりと獸毛が生えている。

 トカゲ男の出っ張った口にはズラリと尖った牙が覗いていて、チロチロと細く先が二つに割れた舌が動く。

 「よく来たな。おまえ一匹でも始末せんと腹の虫が納まらんからな」

 トカゲ男が低音でガラガラしたひび割れ声で喋った。普通の人間には聞き取り辛い声音だ。

 ヒトオオカミは黙っている。実はヒトオオカミは昼間に初めて自分を襲った“苦悩”にとらわれたままだった。自分は何故人生懸けて蛇姫を追い回しているのか?自分はいったい何者だ?自分に取って蛇姫を殺すことに何の価値があるのか?ましてや蛇姫の子分のトカゲ男を倒すことに意味があるのか?

 そういった重たい思いを胸に抱えたまま、ヒトオオカミはこの場にやって来た。もう別にトカゲ男を倒すことなぞどうでもいいような気分になっていた。ただ昼間、トカゲ男から決闘を挑まれたからそれに従って指定場所に来たまでだ。

 しかし、闇に生きる怪物どおしの戦いだから命懸けで戦う。ヒトオオカミはそう決心してまた一、二歩トカゲ男に近付いた。

 トカゲ男は最後に両手に嵌めていた分厚い手袋を取った。五本の指に長くて頑丈そうな尖った爪が生えている。コートを脱いだトカゲ男は下半身には不恰好なズボンを穿いていたが上半身は裸で、背中の腰のあたりから大きな尻尾が伸びている。これは昼間の人間の姿のときには見当たらなかったものだ。

 トカゲ男が両手を肩の高さに構えて仁王立ちしている。正に立ち上がった大トカゲやコモドドラゴンか、怪獣映画のゴジラなどを思わせる厳めしい姿だ。ヒトオオカミとトカゲ男との間は5メートルもない。勿論この二匹の怪物には一足跳びで簡単に相手に飛び掛かれる距離だ。

 狼男が不死身といえど、倒されて失神したり身動きできない状態になったとき、銀の弾丸を撃ち込まれたら時間を掛けてそこから腐って行くし、身体をバラバラに切り刻まれたらもう助からない。相手は何をするか解らない。ヒトオオカミは負けられないと構え、相手を睨み付ける。

 長爪の両手を広げ、肩の上辺りに構えたトカゲ男がザザッと地面の砂に音をさせて早足で迫って来る。腰を落として構えるヒトオオカミ。

 その瞬間、ヒトオオカミの目の前に突風が吹いた。ビュンッ!闇の中の空気を切り裂く音。ヒトオオカミの野獣の目にも形を捉えることはできなかったが、突風と共に何か黒い影が通ったような気がした。正に一瞬の出来事だ。

 ヒトオオカミの直ぐ目の前、一間ちょっとの前にトカゲ男の大きな身体が立っていた。その横でドンッという物が地面に落ちた音がした。目の前のトカゲ男には首から上がなかった。そして隣に転がっているのはトカゲ男の頭だった。

 突っ立ったままのトカゲ男の身体の首からはゴボゴボと液体が吹き上げていた。半月の月明かりでは液体の色が解りづらいが緑色をしているようだ。首のないトカゲ男の巨体はゆっくりと後ろに倒れ、地面でズシンと音を上げた。暗闇で見えづらいが砂ぼこりが上がっているだろう。

 沈んだ巨体の足元にはトカゲ男の生首が転がっている。両方の首の切断面からは緑色の液体が流れ、異様な血だまりができてる筈だ。

 しばし何が起こったのか解らないヒトオオカミは茫然として、目の前のトカゲ男の死体を見下ろしていた。

 そしてハッと気が付いたように顔を上げた。ヒトオオカミの視線は路地の奥、袋小路の土手の上に向いた。土手の高さは12、3メートルはある。ヒトオオカミの視線は一つの影を捉えた。ヒトオオカミの立つ地点から見上げれば小さな影だ。その影は四足獣の形をしている。大き目の犬だ。

 狼男の姿になっているときは人間の言葉が出にくい。ヒトオオカミは「ガルルルル…」と唸るような声を出した。

 半月の月光の下に立つ影はジャックだった。丘の上から路地のヒトオオカミを見下ろしている。月明かりだけでは下からはジャックは黒い影でしかないが、その両目は光っていた。見上げるヒトオオカミとの視線が合った。ヒトオオカミはジャックに訴えるようにウォ~ンと吠えた。ここの住宅地界隈の人間たちには深夜の犬の遠吠えとしか聞こえなかっただろう。

 その遠吠えを聞いた後、ジャックは丘の上でフワリと跳んだかと思うと消えた。後には路地に倒れたトカゲ男の死体と立ち尽くすヒトオオカミの姿しかなかった。

 この、住宅地の空き家と空き家の間の狭い路地は、一ヶ月半ほど前、この地に踏み込んだトカゲ男にじじごろうが忠告した場所である。

 そのとき、じじごろうはトカゲ男に向かって言った。今回トカゲ男と対峙したのが自分(じじごろう)で良かった。もしこれがジャックであったらおまえは命はなかった、と。あのときのじじごろうの忠告を聞かず再びこの地に足を踏み入れたトカゲ男は、じじごろうの言ったとおりにジャックに一瞬にて命を取られてしまったのだ。

 しばし、ジャックの消えた後の丘を見上げていたヒトオオカミは、視線を地面に倒れるトカゲ男の巨体と頭に移した。トカゲ男の太い首は綺麗に平面に切断されている。ジャックは何か長い刃物か、あるいは平たいガラス片か薄く平たい金属片のような物を咥えて、超スピードで一瞬の内に首を切り落としたのであろう。

 ヒトオオカミは改めて自分とジャックやハチとの実力差を思い知った。自分の獣眼をもってしても捉えられない超スピードと、しかもあの丘の上まで軽くひと跳びで上がる。ヒトオオカミのジャンプでも先ず何処かを蹴ってふた跳びしないとあの高さには上がれない。

 ヒトオオカミはトカゲ男の死体を見下ろしながら、さてこの大きな死体をどうしようかと思案した。

 

-「じじごろう伝Ⅰ」狼病編19-はこれで終わります。物語は次回-「じじごろう伝Ⅰ」狼病編20-へと続く。

◆「じじごろう伝Ⅰ」狼病編14(2017-2/24)

◆「じじごろう伝Ⅰ」狼病編15(2018-2/28)

◆「じじごろう伝Ⅰ」狼病編16(2018-8/27)

◆「じじごろう伝Ⅰ」狼病編17(2018-12/31)

◆「じじごろう伝Ⅰ」狼病編18(2019-5/31)

◆「じじごろう伝Ⅰ」狼病編1(2012-8/18)

◆「じじごろう伝Ⅰ」狼病編8(2013-1/25)

◆「じじごろう伝Ⅰ」長いプロローグ編1(2012-1/1)

◆「じじごろう伝Ⅰ」長いプロローグ編2(2012-1/19)

 

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする