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●エッセイ集&漫画・・ 「カランコロン漂泊記」-水木しげるが見た従軍慰安婦-

 ネットの掲示板まとめサイトで、「水木しげるが、従軍慰安婦には賠償するべき、と言っている…」というような、スレタイ記事が載ってたので、各コメント文を読んでたら、この内容は確か、水木しげる先生の昔の著作物に書かれていたことと同じだな、と思い出した。



 多分、あの本と同じ内容だ。僕はこの本を買って所持している覚えがあったので、押入れを探して見つけ出した。文庫本の本体部分は変色していて、もう随分古びた感じになっていた。「カランコロン漂泊記」。2000年9月初版第一刷発行の、小学館文庫だ。この当時、もう77、8歳の年齢になられてる水木しげる先生が、遠い過去の記憶を思い返し掘り返しして、先生の少年期から青年期、若い時代を中心に、綴り描いているコミックエッセイ本だ。

 

 漫画が九割近くで、中には、イラスト添えの文章だけの箇所もあり、水木先生の兵役時代のエピソードが多い。その中に、従軍慰安婦を扱った章がある。そこのタイトルも、「従軍慰安婦」になっている。でも別に歴史的に政治的に、従軍慰安婦を論じたりしてる訳ではない。青年期、リアルに軍隊体験のある水木先生が、南方の前線基地で遭遇した、慰安所についてコミックで簡単に述べているだけだ。水木先生の軍隊体験も、死線の境界に居た地獄の死活経験だが、水木先生の語る、当時の慰安婦の“仕事”も、正に生き地獄みたいなもんだったろう。



 水木しげる先生が僅か数ページで語る、前線基地の慰安所の内容では、海辺の、ジャングルとの境目に粗末な小屋が幾つか立っていて、一つには一人の日本人慰安婦が居て、その前に兵隊さんが百人くらいが並んで待っている。沖縄出身の慰安婦の前には、九十人くらいが待っている。朝鮮半島出身の慰安婦の前には、八十人くらいの兵隊さんが待っている‥。



 詳しく説明されてる訳ではないので、例えば、日本人慰安婦の小屋の前で列を作る兵隊さんを、いったい何人の日本人慰安婦が処理するのかは、解らない。たった一人で百人の相手というのは、とうてい無理だとは思うのだが、そこまで詳しくは描かれていない。沖縄の慰安婦に並ぶ九十人も、朝鮮人慰安婦に並ぶ八十人についても、同じだ。九十人や八十人をいったい、何人で処理したのか解らない。漫画で、小屋の内部まで詳しく描いている訳でもないから、中で、一度に何人がそういう行為を行っていたのかも、この本だけ見ても皆目解らない。小屋の中の慰安婦はたった一人だったのか、三、四人くらい居たのか。それでも百人、八十人という兵隊さんを相手にするのだ。凄い数だ。



※(この本のかの章を読み返してみたら、『一人の慰安婦で処理していた』とちゃんと書いてありました。どうやら八十人から百人の兵隊さんをたった一人の慰安婦が相手していたみたいです。『一人30分掛かるとして一日ではとても処理しきれず、何日か掛かる‥』ということも書かれていました。)

 この章で、水木しげるさんが、別に自分の思想として「従軍慰安婦」について論じている訳ではないので、この本の原稿書いた当時の、メディアや世間の風潮・論調に準じて、また従軍慰安婦に対する当時の一般的な情報から、自分が軍隊経験時に見た“従軍慰安婦の実態”を思いながら、その過酷過ぎる実態に思いを寄せて、「当時の慰安婦経験者には賠償をするべきだろう」と、自分の意見を述べているのだ。戦後から現在までずっと問題となったままの、核心の、「朝鮮半島出身の慰安婦は強制連行されて来て、強制的に売春行為をさせられていたのか?」という、国際問題にまでなっている、一つの疑問に関しては、この漫画では、その事に関しては全然触れていない。また、当時の下級の一兵卒であった水木しげるさんが、慰安婦が強制的に性奴隷として扱われていたのかどうか?、なんて事まで知らなかったろう、とも思えるし。※(“強制”だと“売春”ではない訳か。)



 戦時中の従軍慰安婦には勿論、日本の本土出身者もいっぱい居て、この漫画で描いているようにやはり、一番人気が高かったのだろう。今の常識では、日本人慰安婦は強制的な性奴隷として戦地に行った訳ではなく、商売として、稼ぐための仕事として“売春”をしに自分の意志で行ったのだ、ということになっているんでしょうね。沖縄出身者も今のところ、表立って問題にはなっていないようですが。問題は国際問題にまでなっている、なかなか解決できない難問となっている、朝鮮半島出身者の旧慰安婦の方たちですね。



 作家の百田直樹さんが、討論バラエティー「そこまで言って委員会」なんかでよく言っていた、「当時の朝鮮半島で、もし強制連行したのなら、自分の女房や娘など近親の女性が戦地で性奴隷として遇されるのに、当時の周囲の男たちが黙って女性を差し出しただろうか?」、という疑問も解るような気がする。百田直樹さんの意見は、「自分たち日本の男たちも、例え殖民支配受けていた被支配者側の立場に居ても、自分たちの身内の女が性奴隷として扱われるために強制的に連れて行かれてたら、女を守ろうと必死で抵抗するだろうし、例え支配者を相手でも死を覚悟してでも戦うだろう」、と続くのですが、僕もそういうふうに感じられる。ただ、勿論僕もですが、多分、百田直樹さんも、当時の日本の被植民地の事情は本当には知らない訳ですけどね。それはやっぱり、自分の女房や娘が無理やり連れて行かれてたら、必死で抵抗しそうですけどね。ただ、銃などで脅されたら解りませんが。男も残る子供たちや老人も、ひどい目に合わせると脅迫されれば、連れて行かれる女性は仕方なく、泣く泣く同行したのかも知れないし。僕も、戦時中の極東アジア地域の歴史を勉強している訳でも何でもないので、本当のところは全く解りませんが、騙されて連れて行かれて、現地で強要されたのだったら、それは当地では解らないですからね。でも、韓国側とは違う、主に日本側の反論として、日本人も朝鮮人も当時の慰安婦は「稼ぎ」として納得して行ったのだ、という説もありますね。それは前金かその都度の賃金かは知らないが、幾ばくかお金を稼ぐ仕事として、戦時下の職業「売春婦」として、自分らが納得して戦地に行ったのだ、という説。要は稼ぎのある職業売春婦だった、という説ですね。韓国側は現在も、うむを言わさぬ強制連行で無理やり連れて行き、性奴隷として使役したのだ、という言い分を譲らない訳ですが。まあ、先程も言ったように、僕も、戦時下の被植民地の事情について歴史勉強している訳ではないので、これ以上は、従軍慰安婦に関しては掘り下げて書きませんが。



 ただ、あの水木先生の漫画の中での描写を見る限り、当時は前線へ出ようとしてる兵隊さんたちを置いても、慰安婦の人たちは、よくあんな生き地獄から逃げようとしなかったな、と思いましたね。もし仕事で来た売春婦ならば、「こんなキツイことはやってられない!」と辞めて逃げることもできたんじゃないかと思うけど、強制的な性奴隷なら逃げることはできず、仕方なく、恐ろしく数の多い相手を毎日続けるという生き地獄に耐えるしかないんだろうな、と思うし。とにかく、毎日のように、数十人から百人とかいう人数を相手にしてたら身体が壊れてしまいますよ。細かい事情は解らないけれど。



 そりゃあ水木さんでなくとも、そんな生き地獄みたいな場面を見たら同情し、記憶に残せば、後々、賠償問題が話題に上がっていれば、あの生き地獄を耐えねばならなかった人たちとして、「賠償すべきだ」と思うでしょうね。



 戦時中の慰安婦は日本人女性もいっぱい居たんだから、当時の事情は、慰安婦経験者に訊けば解りそうな気がしますけどねえ。当時の韓国出身の慰安婦の状況も、水木さんの漫画では、日本人や沖縄出身者の小屋の隣の小屋に居たんだから、ほとんど一緒のような状況だから、日本人の慰安婦経験者の方に訊けば、朝鮮半島出身の方のことも解ったでしょうにね。それとも、戦時下の思い出したくはない悲惨な遠い記憶として、語ろうとしないのかな。そりゃあもう嫌な思い出だし、終戦後の市民生活では秘密にしたままでいたい事柄でしょうからね。仕様がないことでも、人は差別の材料にしますからね。そういう方面では人間は醜いから。



 「カランコロン漂泊記」は、とても面白いエッセイ漫画でした。水木しげるが生き抜いた、正に地獄の、戦時中の生死の境界線上の生活を、ユーモラスに語り、水木さんのそのおおらかでくったくない、しかし生命力溢れる、大変魅力的なキャラクターに、興味津々、笑わせられながら面白く読めます。部分的にはですが、戦争中の軍隊の中が、いかに非人間的な閉鎖域であったか、の情報も教えられるし。戦後・復員後の水木しげるの交遊録エッセイも面白い。

◆カランコロン漂泊記 ゲゲゲの先生大いに語る 単行本

◆カランコロン漂泊記―ゲゲゲの先生大いに語る (小学館文庫) 文庫

※(2015-8月)
 TBS系列「報道特集」2015年7月11日放送分の特集で、戦前、旧帝国日本が支配下に置いていた台湾で、日本人の斡旋で「日本軍に同行して看護の仕事をして欲しい」と言われて、話を承諾して現地へ行くと、実は「従軍慰安婦」の仕事で、軍の担当者に脅されて断れず、嫌々泣く泣く、「従軍慰安婦」の仕事をしていた、という台湾の高齢女性にTBSが現地でインタビューしていた。「慰安婦」を仕事と言って良いのかどうか、考えてしまうが、要するにこの台湾人女性は騙されて連れて行かれて、現地で「慰安婦」を強制された、ということですね。インタビュー内容だけでは、この女性を騙した日本人が軍部の人間か、当時の民間の斡旋業者かどうかは解りませんでしたが。

 当時の韓国の場合も、ど~も、日本の軍部の軍人がいっぱいやって来て、剣や銃で脅して嫌がるのを無理やり連れて行った、というのは考えにくい。やっぱり、軍人だったにせよ、民間の斡旋業者だったにせよ、騙して連れて行って、行ってみれば「慰安婦」だったというケースが多いのではなかろうか。日本の「従軍慰安婦-強制連行」を否定する考えの人たちの主張は、日本人ないし韓国人や中国人の斡旋業者が、募集して連れて行ったのであって、軍部が「強制」で動いた訳ではない、と言ってるんですよね。当時は売春は日本でも、植民地である現地でも“合法”だから、昔ながらのそういう商売をする民間人が居た、と言うのも頷けますしね。だから、現地の人たちにも、お金になる仕事だから、と納得して行った人も、居たでしょうね。勿論、日本人にも。また、日本でも昔から、貧しい農村では「身売り」がありましたしね。戦前の日本や統治下の国々で、家長や保護者に寄る「人身売買」が違法だったのかどうか?僕には解りませんが、実際あったんだろうな、と想像します。

 いづれにせよ、悲しい時代の悲しい歴史ですね。騙されて、考えられないような数の男の相手をさせられた女性は、気が狂わんばかりだったでしょうね。地獄です。現在でも、何処かでまだ、管理売春の「強制」は行われているでしょう。絶対に「人権」は守られねばならない。

 ただ、韓国の主張に異を唱える日本の人たちは、もうかなりの高齢でしょうが、当時、日本人慰安婦だった女性たちに証言を取り付けることができれば、詳しく本当のところが解るんでしょうが、これはプライバシー問題として相当難しいでしょう。悲しい歴史の犠牲者たちも、国内でも旧統治下だった外国でも、もう生き残っている方々も年々数少なくなって行ってるでしょうし、みんなかなりの高齢でしょうからね。

 ここで一つの僕の疑問なんだけど、太平洋戦争の戦争犠牲者の方々って、戦死された方の遺族、しょうい軍人となって復員された方、など国家日本の起こした戦争での犠牲を負った方たち(主に軍人関係)って、戦後に軍人恩給など何らかの補償が支払われたでしょう。水木しげる先生が記されているように、戦時中の前線の手前の軍事基地には慰安所があり、ここには中国人·朝鮮人ら外国出身の慰安婦と共に、日本人や当時の沖縄出身の慰安婦も居た。純粋な国民であるこの本土·沖縄出身の慰安婦には、戦後、何らかの補償は支払われたのか?これは疑問だなあ。この問題は韓国の従軍慰安婦問題に関わって来る重要な問題だと思うが。勿論、日本人の当事者は戦後の社会でそういう過去を公表することは、その後の社会生活において憚られる事柄だろうけど。どこの社会も、人間はそれが仕様がない事柄でも差別対象にして疎外しようとする醜い面があるから。

 要するに慰安所の管理の問題だけど、当時の慰安所は旧日本軍が軍の一施設として軍事基地の近くに慰安所を建てたのか、あるいは慰安所の経営や管理はあくまで個人で、当時の法律では違法ではない売春を商売として個人が運営していたのか?これは戦後70年経った今の従軍慰安婦問題の大きなカギのような気がするんだけど。※(従軍慰安婦は国家の命令で戦地まで行って強制された訳ではなく、あくまで商売で、売春婦が戦地に行って商売の仕事で行っていたのなら、『しょうい軍人的な』戦後の補償はないですよね。)
 

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●漫画・・ 「寄生獣」..(3)

 90年代を代表するSFホラー漫画の傑作、「寄生獣」の物語は、第1巻・巻頭のコマの、このセリフから始まります。「地球上の誰かがふと思った。人間の数が半分になったら幾つの森が焼かれずに済むだろうか。地球上の誰かがふと思った。人間の数が百分の一になったら垂れ流される毒も百分の一になるだろうか。誰かがふと思った。みんな(生物)の未来を守らねば‥」というセリフが、巻頭の幾つかのコマに添えられ、地上に降って来た、ソフトボールの球大の球体がパックリ割れて、気味の悪い芋虫状の幼虫が、街の各家々へと侵入して行く‥。

 物語も終盤に入って、寄生生物パラサイトたちの巣窟となっている、新一の住む街の隣町の市役所の中で、銃装備した機動隊員たちに追い詰められた、パラサイト側の重要人物の一人、市長・広川の言葉。「地球上の誰かがふと思ったのだ。みんな(生物)の未来を守らねばと。環境保護も動物愛護も全ては人間を目安とした歪なものばかりだ。人間一種の繁栄よりも生物全体を考える。そうしてこそ万物の霊長ではないか。正義のためとほざく人間。人間に寄生し生物全体のバランスを保つ役割を担うパラサイトから比べれば、人間どもこそ地球を蝕む寄生虫、いや寄生獣だ」…。

 物語の最初に誰の言葉ともなく語られた説明文と、物語も終盤に入って来て、第一のクライマックスを迎えたとき、市長・広川から語られるこの言葉。これは、この漫画「寄生獣」のテーマそのものを語っていますね。

 パラサイトが人間の脳を乗っ取って自我が芽生えたとき、パラサイトの個性の意識が生まれた最初に、自分の意識にこだまする天からの声は、「この種(人間)を喰い殺せ!」ということだそうですが、パラサイトの中でも唯一ずば抜けて知的な、いや、パラサイト生物で知的な個性はもう一人居て、新一の右手に寄生したミギーもかなり知的な存在ですが、田宮良子/田村玲子は抜群の知的好奇心と向学心を持ち、自分自身や自分の種や人間と人間社会に対して非常に研究熱心で、大学生となって理系や哲学の講義まで受けています。元々、田宮良子の登場は新一の学校の教師としてですから、最初から知的なキャラクターではあった訳ですが。

 敵側パラサイト中唯一と言っていい知的な存在の田村玲子は、試行錯誤を繰り返して自分たちと人間の研究を続けますが、最初は他のパラサイトと同じように人間を狩って食べて自分の栄養源としていたのですが、最終的には田村玲子は人間を食べずに、人間たちと同じように人間の食べている食料品を口に入れて栄養源とし、それでも自分たちパラサイト種も生きていける、ということまで発見している。

 パラサイト側の無敵の戦士、“後藤”を作ったのも田宮良子/田村玲子だ。田宮良子はレアケースとして新一の右手に寄生したミギーを知って、脳部分だけでなく人間のいろいろな器官に寄生が可能と解ったのだろう。物語終盤のクライマックスの重要人物、“後藤”は田宮良子/田村玲子の実験作の一つだ。また、多分、新一とミギーを見て、田村玲子はパラサイトの寄生ではなく、パラサイトと人間の共生についても理解したろう。パラサイトは人間の脳を奪って乗っ取ってしまうのではなく、人体の脳以外の器官に寄生して、“共生”して生きる活路があることを知った。

 パラサイトの巣窟だった、新一の住む街の隣町の市役所が国家警察に寄って一掃され、残った無敵のパラサイト戦士“後藤”も、新一・ミギーに寄り退治された。漫画「寄生獣」の物語では、その後、パラサイトが鳴りを潜めた。ニュースなどパラサイトのことが表面に出なくなった。だが、リアルに考えると、日本の新一たちが住む限られた地域だけで起こった事件ではなく、多分、地球上のあらゆる場所で起きた現象なんだろうから(違うのかな?)、パラサイトは田村玲子や後藤の仲間たちだけではないのだろう。とすれば、パラサイトは地球全土に、でなくとも、日本全国にまだまだいっぱい居る筈である。彼らは本能として「人間が主食」というものを持っている。しかし、市役所パラサイト一掃のニュースは全国規模で大々的に報じられただろうから、他のパラサイトたちも「しょせん、人間には敵わない」と認識して、鳴りを潜めることにしたのかも知れない。

 新一とミギーの関係は寄生ではなく、正しく共生だった訳で、知的で頭が良く無敵なくらい強いミギーは、新一に取っての「ドラえもん」と言えなくもない。物語中、新一はたびたびミギーに助けられている。この漫画「寄生獣」の読者の中には、自分の右手を失ってもミギーのような相棒が欲しいな、とミギーに憧れた人もいっぱい居たと思う。右手を失ったと言っても、ミギーが眠ってるときやミギーが意志を持ってないとき、新一はこれまで通り右手を自由に使えてたのだから。ミギーは相棒としては非常に心強い友達だ。

 もし本当にパラサイト寄生生物が現れて、脳を奪われるのは嫌だが、どちらかの手に寄生するというのなら、喜んで片手を差し出す人は多分、けっこう多いと思う。そこらの人間に比べても頭の良いミギーは、万能の相棒にさえ見える。

 前回言ったように、パラサイトは一回きり生物だ。こんなことありえない。地球生物史上、一回きりで出現した生き物なんて一つも無いだろう。地球上に現れた生物の目的はみんな、種族繁栄だ。漫画「寄生獣」の物語上、パラサイトが出現したのは、パラサイトの卵が天から降って来た一回きりだ。人間の身体を使っている以上、当然老化が起こり、いつか肉体が滅びる。脳部分というか頭部を乗っ取ったパラサイトの肉体的寿命がどれくらいあるのか?だよね。乗っ取った肉体が老化で動かなくなったら、他の若い肉体に移動する、という方法もある訳だし。いずれにしろ、次世代が生み出せない、というのは生物としてどうしようもない欠陥だよね。放っといても、今の一代が滅びればパラサイトは終わる。それとも新たにまた、天から卵が降って来るのか?

 最初に言ったように、漫画「寄生獣」全編の中では、パラサイトは全滅した訳じゃないから、続編を描こうと思えば続編は描けるのだろう。物語の最後の最後、ミギーは半永久的に眠りに落ちるみたいだけど。もし、パラサイト側がもう一度、人間に対して宣戦布告でもすればミギーも目を覚ましてまた新一と共に人間側として戦うのかも知れない。ただ物語中、ミギーが仲間であるパラサイトを殺していたのは、自分自身と寄生本体である新一の命と肉体を守るため、というエゴだった訳だけどね。何も人類を守るなんて大義名分を持って、仲間である他のパラサイトと戦っていた訳ではない。

 そういえば宇田さんはどうしたんだろう? 宇田さんの顔の下部から首、胸の上の方らへんまでは、ジョーと呼んでいるパラサイトが寄生していた。宇田さんのエピソードは終盤には出て来なかったよな。物語中、ミギー以外で唯一、人間の脳が残った寄生生物。リアルに考えると、ミギーやジョーのようなケースはかなりレアだけど、他にもありうることかも知れないし。まあ、パラサイトは人間側の反撃が怖くなって、鳴りを潜めているんだろうが、田村玲子が証明して見せたように、人間と同じ食料品を食べて生きてるのかも知れないが、彼らには「この種(人間)を食い殺せ!」という本能があるから、本能を抑えて日々過ごすのは大変なことだろう。まあ、漫画の話ですが。続編を描けば描けるが、この物語の驚き部分はもう出尽くしちゃってるし、再び続編をとなると、またよっぽど新鮮な驚きエピソードを作って物語編んで行かないと、人気を出すのは大変だろうな。多分、「寄生獣」原作物語の作者はもう、続編描こうとは思ってはいないんだろうけど。

◆漫画・・「寄生獣」..(1)[2014-10/31]

◆漫画・・「寄生獣」..(2)[2015-02/27]

◆漫画・・「寄生獣」..(3)[2015-03/23]

 

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