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「ポテト大将」-板井れんたろう・作画-

  “ポテト大将”ことドン吉くんは、学級担任の小川先生が音楽担任の花野先生と結婚することになって嘆いていた。ドン吉くんのお母さんが、めでたいことなのにどうして嘆いているのかを息子に訊くと、ドン吉は何と、担任先生のいない間みっちり四日分の宿題が出るので、それで悩んでいると言う。死ぬより辛い宿題がドッサリ出ると泣いてしまう息子を、お母さんは叱り付けた。

 翌日、ドン吉は広場でクラス仲間と一緒に、みっちり四日分宿題のことで悩んでいた。ドン吉はクラスメートの一人から、小川先生らの結婚式が今日でもう直ぐ始まると聞く。ドン吉は結婚式場に殴り込んででも、四日分の宿題阻止することを決意する。

 一方、苛めっ子ガキ大将のガン太も子分たち共々、みっちり四日分宿題のことで悩んでいた。宿題阻止の方法を何か考えろと子分を蹴飛ばして、機嫌の悪いガン太。ガン太は、ライバルドン吉が宿題阻止方を何か画策していることを知る。

 間抜けなドン吉には無理だから俺に任せろと笑うガン太に、ドン吉は宿題阻止の競争心を燃やす。ドン吉もガン太も何とか結婚式場に入ろうとするが、正攻法では見つかって式場に入れて貰えない。

 ドン吉もガン太も神主や式場カメラマンに変装して入ろうとしたが、結局バレて失敗する。ドン吉が一計を案じ、神主の読む祝詞の原稿をすり替える。

 結婚式が始まり、新郎新婦の前で祝詞を読むと、ドン吉のすり替えた原稿で、担任の小川先生に新婚休暇中の四日分宿題はひど過ぎるから、宿題全部取り下げてと懇願する内容になっていた。

 怒った小川先生はドン吉たちを追っ掛けてドタバタになるが、めでたい日のことなので折れて、生徒みんなの前で宿題を取り下げると約束する。上機嫌になった生徒たちみんなが、小川先生·花野先生新夫婦を祝福する。

 だけどオチがあって、そのあと校長先生がやって来て、担任の小川先生が居ない四日間の間は、ドン吉たちのクラスは校長先生が授業を受け持つことにする、と話す。ドン吉たちはギャフンとズッコケてこの回のお話終了。

 学校帰りに、チマキを食べる子供を見掛けて空腹を覚えるドン吉は、家に帰って来て母親に食べ物をねだる。ドン吉の話を聞こえないふりしてかわす母親に、ドン吉が耳元で大声を出し、母親を怒らせる。家から逃げ出したドン吉は野原で寝転がっていると、空の雲がパンに見え再び空腹を覚える。

 そこに一羽のニワトリがやって来た。迷い鶏かなと思ってたら、そのニワトリが1個卵を生んだ。ドン吉はその1個の卵を家に持ち帰り、フライパンでタマゴ焼きを作って食べる。

 お母さんに見つかりニワトリに卵を返して来いと叱られて、ドン吉は卵を1個持って弟のユー坊と一緒に野原へ行き、先ほどのニワトリを探すが何処にもいない。ニワトリは苛めっ子ガキ大将のガン太が捕まえていた。

 ガン太はニワトリの生む卵が食べたくて、子分たちにニワトリのエサを探しに行かせる。エサを見つけられないガン太の子分たちは、エサ売りのおじさんから鳥のエサを買う。それを見ていたユー坊。

 迷い鶏はドン吉の友達の家のニワトリで、ガン太が捕獲して自分のものにしていた。ガン太の子分たちが鳥のエサ売りのおじさんから買ったエサを食べさせると、ニワトリは気絶してしまった。

 実は、ニワトリのエサ売りはニワトリ泥棒団の一員だった。ガン太の盗んだニワトリも眠らされて、泥棒団に再盗まれした。ドン吉の弟·ユー坊がニワトリ盗賊団の一人を見掛けて跡を着けて、ニワトリ盗賊団一味のアジトを発見する。

 ニワトリ盗賊団は、たくさんのニワトリを盗んで来ては卵を大量に生ませたり、ニワトリ自体を何処かに売りさばいて金儲けしていた。

 ユー坊はドン吉に盗賊団一味のアジトを知らせて、兄弟二人掛かりでアジトを急襲、たくさんの卵をぶつけたり、大量の卵を転がして盗賊一味の運搬車を転覆させてドタバタを起こして、ニワトリ盗賊団に大打撃を与える。

 ニワトリ盗賊団は全員逮捕されたらしく、ドン吉とユー坊兄弟は、ご褒美に篭いっぱいの卵を貰って家に帰り、お母さんを驚かせる。というところでこの回おしまい。

 「ポテト大将」は、昭和の時代の人気月刊児童雑誌「少年」の、1959年から67年まで長期連載された生活ゆかい漫画です。連載期間がはっきりしなくて申し訳ないのですが、雑誌新連載は1960年1月号からかも知れません。連載終了が「少年」67年の何月号なのか解りませんでした。

 「ポテト大将」は、ギャグ漫画の範疇で、当時の等身大の少年たちのドタバタを描いた子供コメディー漫画ですね。当時の生活ゆかい漫画です。主人公のドン吉くんは小学校六年生くらいでしょうか。ガクランぽい前ボタンの着いた黒い上着着てるし、僕らが中学生のときに肩に掛けて提げてた白い横カバンしてるし、中学生ぽい雰囲気もあるんですよね。でも帽子は学生帽でなくて野球帽なんですよね。

 同級生らしいガン太やドン吉の周りの子供たちがみんな私服だから、やっぱりドン吉くんは小六くらいかな。よく一緒に出て来る、ドン吉の弟のユー坊が小学校二年生くらいだろうか。

 僕の子供時代、戦後からの少年月刊雑誌は六誌あって、中でも光文社の「少年」が一番売れていた。僕が漫画を読み始めたのは1962年の暮れか63年初頭頃からで、毎月、月刊誌の購読は「少年」と講談社の「ぼくら」か秋田書店の「まんが王」で、あとの三誌は当時の貸本屋で借りて読んでいた。

 絶対人気の「鉄人28号」と「鉄腕アトム」を看板漫画に持つ月刊「少年」は当時、群を抜いて人気の高い少年月刊雑誌だった。板井れんたろう氏作画の「ポテト大将」は、僕が月刊「少年」を愛読していた時代、ずっと連載されてていつも本誌の後ろの方に掲載されていた。「ポテト大将」が当時の「少年」の別冊ふろくで付いたのは62年の初め頃までで、僕は別冊ふろくの「ポテト大将」は読んだことはない。60年61年頃までは本誌カラーページ掲載から別冊ふろくに続く掲載もよくあったみたいですね。62年頃までは本誌二色カラー掲載もよくあった。僕がリアルタイムで「少年」を愛読していた時代は、「ポテト大将」は多分全部、墨一色掲載だったなぁ。

 当時の、小学生が主人公で小学生の生活空間が舞台のギャグ漫画はみんな、主人公が学校の勉強が苦手で大嫌いでできなくて、いつも宿題をして来なくて廊下に立たされたりしてて、ちょっとずるいことや、板塀から出た枝の柿泥棒とか、ちょっとだけ悪いことを画策するけれど、全部失敗して学校の先生や両親から大目玉を喰うことばかりだけど、基本明るく陽気でくよくよせず、根は良いヤツでけっこう正義感も強かったりする、まぁ、悪ガキ小学生のものがほとんどでしたね。悪ガキなんだけど、苛めっ子ではなくて苛めっ子ガキ大将は他に居る。

 劣等生なんだけど、陽気で明るく呑気でくよくよしなくていつも前向きで、いたずらやちょっとしたずるいことに凄い行動力を発揮して、いつも失敗するけど決してめげないというキャラクターが多かったな。

 「ポテト大将」のドン吉くんも、そういうタイプのキャラの主人公だった。タイトルに“大将”って着いてるだけにガキ大将タイプなんだけど、良心的なキャラで決して弱い者苛めなんてしないで、周りの小学生の友達に頼られるリーダー的性格を持った劣等生だった。 

 「ポテト大将」にはお話のエピソードの中には、ドン吉とユー坊が、泥棒犯罪とか事件に巻き込まれてドタバタになって結果解決する、というストーリーのものもけっこう多かったですね。

 板井れんたろう先生というと、代表作に上げられるのはテレビアニメになった「おらぁグズラだど」や「ドカチン」が有名ですが、僕個人的には板井れんたろう先生というと、何てったって小学生時代に愛読した「スリルくん」と「ポテト大将」ですね。

 「スリルくん」は僕が秋田書店の月刊誌「まんが王」を購読し始めた、小学一年生の終わり頃、既に絶賛連載中でした。月刊「まんが王」の休刊(事実上の廃刊)が1971年の6月号までですが、「スリルくん」もかなり長期連載されたギャグ漫画で、「まんが王」の69年頃まで連載されてたんじゃないでしょうか。「スリルくん」もドタバタの生活ゆかい漫画でしたね。

 「おらぁグズラだど」と「ドカチン」はタツノコプロ制作の連続テレビアニメで、アニメ企画が先で、板井れんたろうさんの雑誌連載はコミカライズですね。「おらぁグズラだど」も「ドカチン」も板井れんたろう先生作画の漫画は、当時の週刊少年サンデーに連載されてて僕は連載をリアルタイムで読んでいます。

 でも板井れんたろう先生というと僕にはやっぱり「スリルくん」と「ポテト大将」ですね。「スリルくん」の主人公、スリルくんは小学校三、四年生くらいの設定かな。スリルくんには確かけっこう年の離れたお兄さんが居たと思う。あのお兄さんって高校生くらいの設定だったんだろうか?

       

     

 「ポテト大将」の新書判コミックスは70年代半ば頃に永岡書店から全5巻で刊行されてます。「スリルくん」の方は70年代前半に曙出版からコミックス全9巻で刊行されてますね。

 僕が板井れんたろう先生の作品を読んだのって、秋田書店の月刊誌「冒険王」に連載されてた「どたまジン太」までかなぁ。僕は「どたまジン太」を月刊「冒険王」で1971年の春先頃まで読んでます。「どたまジン太」の新書判コミックスは曙出版から70年代半ば頃に全9巻で刊行されてます。月刊誌連載のギャグ漫画でコミックス9巻までなったということは、「どたまジン太」も「冒険王」にかなり長期に渡って連載されてたんですね。また「どたまジン太」は1巻だけが秋田サンデーコミックスで70年に刊行されてます。こっちは1巻のみ。

 月刊「冒険王」は、戦後誕生した月刊児童雑誌としては最長に息の長かった漫画雑誌で、休刊(事実上の廃刊)は1983年です。でも冒険王は70年代後半になると、テレビの子供向けの特撮ヒーローものやアニメ作品に特化された雑誌になりましたね。「どたまジン太」はいつ頃まで冒険王に連載されてたんだろう?70年代半ば頃まで連載されてたのかな。

  SF ·ロリコン·不思議系のギャグ漫画、独特の作風で一世を風靡した感があり、後続の亜流ロリコン漫画を多数輩出した、不条理ギャグ漫画作家·吾妻ひでお氏が、板井れんたろう先生の弟子筋というか、アシスタントをやっていたというのは有名な話ですね。

 60年代末から70年代前半の板井れんたろう先生の漫画作品には、吾妻ひでお氏タッチの登場人物が随所に見れますね。また吾妻ひでお先生の絵柄も板井れんたろう先生の影響を受けてるのが解りますね。

 他に、「ポテト大将」のコミックスは、手塚治虫関係の会社·虫プロ商事から、1969年に虫コミックスで1巻だけ刊行されてます。「スリルくん」は89年にペップ出版から“ペップおもしろまんがランド”シリーズ全10巻の中の一冊として、第5巻に刊行されてます。

 板井れんたろう先生は日大出身なんですね。昭和11年生まれで漫画家になった方で大学卒というのはとても珍しいですね。まぁ、昭和5年生まれの横山まさみち氏が明治大学出身など探せばいらっしゃいますけどね。でも戦前生まれで漫画家になった方で大学出は数少ない。

 昭和時代にギャグ漫画で活躍した、板井れんたろう先生は2017年12月に81歳でお亡くなりになられた。また、弟子筋となる吾妻ひでお先生も2019年の10月に波乱の人生を閉じた。吾妻ひでおさんの「不条理日記」と「失踪日記」読みたいな。

おらぁ グズラだど【上】 (マンガショップシリーズ 259) (日本語) コミック (紙) – 笹川ひろし (著), 板井れんたろう (イラスト)

ポテト大将 1~最新巻 [マーケットプレイス コミックセット] コミック (紙)板井 れんたろう (著)

おもしろ算数の歴史―算数がどんどん楽しくなる (学習まんが・ふしぎシリーズ (51)) (日本語) 単行本 – 板井 れんたろう

 
 
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