60~90年代名作漫画(昭和漫画主体・ごくタマに新しい漫画)の紹介と感想。懐古・郷愁。自史。映画・小説・ポピュラー音楽。
Kenの漫画読み日記。
●漫画・・ 「まぼろし探偵」
桑田次郎先生の「まぼろし探偵」は、少年画報社の児童雑誌「少年画報」に1957年から連載が始まった、当時の大人気冒険探偵活劇漫画です。漫画人気の沸騰から、その後、59年からラジオドラマ化、同じく59年からTV実写ドラマ放映、そして60年には劇場版映画として3作が制作公開された、一時は、国民的子供向け活劇物語というくらいの、大人気を博した作品でした。特にTVドラマでは、当時は大人も子供も誰でも知っている、と言うような、大人気ヒーローものでした。「まぼろし探偵」オリジナル漫画版は、雑誌・少年画報誌上で始まった当初は、タイトルを「少年探偵王」としてました。連載開始から一年くらい経ってから、タイトルを「まぼろし探偵」に改められました。
1950年代の「少年画報」 は当時の児童向け雑誌の王者で、その人気、販売部数共に児童雑誌界をリードしてました。連載漫画も「まぼろし探偵」を初め、「赤胴鈴之助」や「ビリーパック」などなど、当時の子供大人気の漫画を揃えていました。「まぼろし探偵」は大人気の内に、連載が61年いっぱいまで続きます。50年代雑誌の王者「少年画報」も、60年頃には、「鉄腕アトム」「鉄人28号」という二大看板ロボットヒーロー漫画を配する、光文社の児童雑誌「少年」に王座を明け渡しますが。まあ、その後、漫画誌も週刊誌の時代が来て、マガジン・サンデーが爆発的に売れて、60年代後半に入ると児童雑誌の王座に座るのは、講談社の「週刊少年マガジン」になり、やがて70年代後半には後続の週刊漫画誌、「週刊少年ジャンプ」が雑誌の王者となるのですが。
最初「少年探偵王」のタイトルで始まった、桑田次郎先生の傑作少年探偵漫画「まぼろし探偵」は、「少年画報」1957年3月号の連載開始から、ラジオドラマ化やTVドラマ化、劇場版映画化を経て、61年の12月号まで連載が続きます。59年4月から60年3月まで放送された、国民的大人気のドラマだったTV放映が終了してから、少々人気が落ち着いて来て、61年に入るとオリジナルの漫画の方も人気が下り坂となり、61年いっぱいで漫画連載も終了しました。
僕が漫画を読み始めたのって、1962年の終わり頃か63年の初め頃からですから、僕は、この「少年画報」連載中の「まぼろし探偵」を、連載リアルタイムで読んだことはありません。後にコミックスでは何冊か読んでるんですが。ラジオドラマは全く解りませんし、劇場版映画も見たことありませんが、TVドラマは微かに記憶があります。勿論、ヒロイン子役で吉永小百合が出てたなんてことは、全然記憶してません。だから、子役当時の吉永小百合なんて全く知りません。でも、僕が4歳5歳の頃、TV放送を見ていたという記憶があることはあります。だが内容とか覚えていません。TVドラマの「まぼろし探偵」に限っては、再放送を見たという記憶もないみたいだなあ。
以前TVで、専門の識者が、人間の幼児期の脳は、三歳までで一度リセットされるから、子供は三歳までの記憶は全くない、のだとかいうことを話してました。僕も三歳というと多分、全然記憶はありません。僕がものごころ着いたというのか、幼児期の記憶として覚えている、最初の記憶は、多分四歳時の記憶だと思います。僕の、自身で一番古い記憶の一つが、これはけっこうはっきりと事実として憶えてるんですが、多分、僕が四歳の時のことです。僕には僕より七、八歳年上の兄が居ますが、当時の親父がこの兄を連れて、都市部の、当時としては規模の大きな遊園地へ遊びに行っている。多分、親父と兄と、他に別の家族か知人が居て、その人も子供連れだったんでしょうが、ウチの家は母親とまだ四歳くらいの僕が家に残り、親父と兄が遊園地へと行楽に出ている。
で、四歳児というともうかなり解っていますから、留守番になった僕がひがまないように、親父が、当時としては高価なお土産を買って帰ってくれた。これが当時ラジオ・TVで大人気の「まぼろし探偵」の玩具で、“まぼろし探偵変身セット”でした。都市部の、当時としては豪勢な遊園地で遊んで来た兄に、僕がひがんでグジャグジャとワガママ言って、怒って泣いたりすると思って、親父も、当時としては高価な玩具を買って来たのでしょう。
「まぼろし探偵」の、赤いベレー帽と黄色いマフラーと、目の部分に当てる布製の黒いマスク、ガンベルト付きの玩具の拳銃。背広上下の入るような平たい、当時としては豪華感溢れる厚紙の箱に納められていました。僕は飛び上がらんばかりに大喜びしました。というのが、多分、僕の最古の記憶の一つだと思います。どれだけ喜んだかなんて細かいことは覚えてはいませんが、多分幼児ながら、欣喜雀躍だったと思います。もの凄く嬉しくて超喜んだという、微かな感じを覚えている気がする。まあ、四歳時の記憶ですからあいまいですけど。
でも、この“まぼろし探偵変身セット”を使ってどう遊んだか、という記憶は全くない。その変身セットを身に着けて、玩具の拳銃バンバン撃って遊んだ記憶は全然残っていない。その拳銃がどんなシロモノだったかということは、全く憶えていません。子供向けヒーロードラマも、「ナショナルキッド」の記憶はけっこうあるんだけど、「まぼろし探偵」のドラマに関しては、本当におぼろげにしかない。だから、このドラマに子役で吉永小百合が出てたなんて、全く記憶にない。まあ、四歳では、吉永小百合も判別着かないでしょうけど。
「まぼろし探偵」の、雑誌「少年画報」連載リアルタイムでは読んではいなんだけど、後に少年画報社のヒットコミックスで発刊されているので、このとき、僕は全9巻で発刊された分の多分、1巻と2巻を購読しています。ヒットコミックス版「まぼろし探偵」は1970年12月から72年5月に渡って全9巻で刊行されてますが、僕がコミックスの1巻と2巻を買って読んだのは多分、十代の終わり頃でしょうね。「月光仮面」は講談社漫画文庫で刊行されたけど、「まぼろし探偵」は文庫版にはなっていないと思います。
「まぼろし探偵」の単行本は一番最初、「少年画報」連載当時に少年画報社から全11巻で刊行されています。B6判ハードカバー本で128ページ上製本ですね。この単行本の刊行が、58年7月から60年6月までの間に全11巻で発刊されました。まだ新書版コミックスが登場する以前の、昔の貸本B6判タイプですね。勿論、これは見たこともありません。古書価は相当な値が着くんじゃないでしょうか。ヒットコミックスの後が、今度は1991年頃の刊行で、当時のリム出版がA5の豪華版で刊行したのが全8巻。これも僕は当時、1巻と2巻だけ購入しています。リム出版の第1巻の奥付に、初版90年11月、第2巻奥付に初版91年1月とありますから、おそらく91年内には全8巻発刊されたんでしょうね。それからちょっとして、リム出版自体が倒産でなくなっちゃいましたけどね。
実は、桑田次郎先生の「まぼろし探偵」の少年画報連載は61年12月で一度終了して、その後、1964年に新作が復活しています。俗に言う「新・まぼろし探偵」ですが、タイトルは普通に「まぼろし探偵」で連載されました。しかしこのリバイバル連載は、それ程は人気が出なかったのか、連載は半年で終了しました。リム出版全8巻は、“完全版”を謳っていましたが、この“新・まぼろし探偵”分は収録されませんでした。
※(失礼しました。リム出版全8巻の収録タイトルを見るに、“新・まぼろし探偵”分も収録されているようですね。)
“完全版”として復刻されたのが、2007年から08年に発刊された、マンガショップの完全版「まぼろし探偵」全9巻です。全9冊が3巻づつで、第一部・第二部・第三部と分かれていて、第三部の最終巻に、64年65年「少年画報」初出連載分の“新・まぼろし探偵”分が収録されてます。僕は見たことないのですけど、1976年の秋田書店「プレイコミック」の別冊に、「帰ってきたヒーローたち」ということで、帰って来た「まぼろし探偵」が、桑田次郎先生書下ろし短編で掲載されているようですね。この分は単行本未収録ですね。