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●漫画・・ 「アンラッキー幸子」

 ホラーテイストの爆笑四コマ漫画、「アンラッキー幸子」が連載されたのは、秋田書店発行のホラー漫画専門誌、「サスペリア」の90年代末から2000年代初めの期間です。秋田書店の漫画雑誌「サスペリア」は80年代末頃から創刊され、最初は中高生くらいの年代を対象としたホラー漫画の専門誌として出発して、ホラーブームに乗って人気を博していた雑誌でしたが、途中、2000年代に入ってから路線変更して、サスペンス趣向の、探偵ミステリーものコミック雑誌として刊行するようになりました。サスペンス・ミステリー路線も長くは続かず、2010年代に入って休刊というか事実上の廃刊となりました。正確な雑誌の刊行期間は、1987年創刊から2012年までですね。サスペンス・ミステリー路線に変更してからの雑誌名は「サスペリアミステリー」ですね。最初からしばらく、B5判雑誌だったのですが、途中からA5判タイプの分厚い雑誌になりましたね。「サスペリアミステリー」の頃は、最初から分厚いA5判雑誌だったと思います。

 80年代末頃から90年代いっぱい、2000年代初め頃まではホラーブームが続いていて、少女ホラー漫画専門誌「サスペリア」も人気雑誌として、小学生くらいから20代の若い女性まで幅広い読者人気を得ていました。収録漫画は全漫画ともホラー漫画で、幽霊や妖怪、吸血鬼から魔物や伝奇ホラーまで、怪奇テイストの作品に統一されていました。ホラー専門誌だった頃は、この雑誌から話題になった人気作品が幾つも出て来ました。また、80年代末から90年代、2000年代初め頃までは、少女や若い女性読者対象のホラーコミック誌が、秋田書店の「サスペリア」以外にも、いっぱい刊行されてましたね。

 僕自身は、漫画ファンBlogなんかを長々続けて書き込んでいながら、実は少女漫画が苦手で、日本の漫画文化史上、重要な柱の一本である「少女漫画」が苦手でほとんど読んで来ていない、というのは漫画趣味Blogを書いて来ている者としては、片手落ち以上の失格ザマなんですが、ど~も、子供時分から少女漫画が僕はダメで、それでも数えるほどくらいは読んで来てますが、まあ、実質、ほとんど読んで来てないよーなもんなんですね。勿論、全然読んで来なかった訳でもありませんが、まあ、本当に数少ないですね。

 僕は6歳から11歳まで、当時の家の近所の貸本屋に毎日通っていて、この当時、貸本でも「少女漫画」は借りることはしなかったけど、少女漫画の中の「怪奇漫画」はときどき借りて来てました。また、当時の貸本の怪奇オムニバス誌には、短編の怪奇少女漫画も収録されてましたから、それで読んでましたね。そして、60年代や70年代の少女誌の中に掲載された、楳図かずお先生や古賀新一先生の、少女向けの怪奇漫画を読むこともありましたし。

 だから80年代末頃、「サスペリア」が創刊されてしばらくは、「サスペリア」や、朝日ソノラマから刊行されてた「ハロウィン」などは、ときどきですが読んでました。朝日ソノラマの少女向けホラー漫画雑誌「ハロウィン」の創刊は、「サスペリア」よりも早くて1986年1月号からなんですね。80年代末から90年代は他にも、少女向けのホラー漫画雑誌がいっぱいありました。「サスペリア」や「ハロウィン」には、今は大御所の大家、あのトキワ荘出身の漫画家でもある、つのだじろう先生の心霊オカルト漫画も掲載されてました。つのだじろう氏は、トキワ荘出身といっても通い組だったようですが、石ノ森、赤塚、両藤子氏らと同じく、新漫画党の盟友であったことは間違いありません。

 だから、まあ、言ってみれば“アンチ少女漫画”みたいな僕でも、少女漫画内でもホラー分野は、まあ、割と読んで来てるかな、みたいな。“アンチ少女漫画”って、勿論、日本漫画史の大きな一分野を形作って来た、日本の「少女漫画」は当然、リスペクトしてますけど。ただ、絵柄・タッチもなんですが、ストーリーが基本、男女間の恋愛が重要な柱になるからか、何か苦手意識が強くて、ごめんなさい、どーも駄目ですね。僕には。

 「アンラッキー幸子」はストーリー四コマの、ホラー味ギャグ漫画で、ホラー漫画誌「サスペリア」の看板を担うほどの大人気作品という訳ではありませんでしたが、笑わせる面白ギャグ漫画でした。ホラー専門誌としての「サスペリア」には、初期のつのだじろう氏の「学園七不思議シリーズ」などなどの心霊オカルト漫画や、今は大御所の古賀新一氏の、週刊少年チャンピオンに人気を博し長期連載された「エコエコアザラク」の続編の、「エコエコアザラク2」や珠玉の怪奇短編、TV連続アニメ放映もされた、垣野内成美さんの大人気美少女ヒロイック伝奇ホラー、「吸血鬼-ヴァンパイア-美夕」、高橋美由紀さんの「悪魔の黙示録」などなど、少女や若い女性のホラーコミックファンに大人気の漫画が連載されていましたね。忘れていけないのが、僕が大好きだった、千之ナイフ氏の「死太郎君シリーズ」やホラー短編。僕、千之ナイフさんのタッチや、その描く美少女や、ブラックコメディー味の作風が好きでファンだったんですよね。怪奇漫画なんだけど、どこかギャグ風味が効いていて、気味悪く怖いようで笑える、みたいなブラックコメディー感。

 ちなみに「サスペリア」も「ハロウィン」も月刊誌でしたね。だいたい少女向け、というか中高生女子から若い女性向けのホラー漫画専門誌はみんな、月刊誌で、あとは増刊号のような体裁で、ホラー漫画の短編を集めたぶ厚い雑誌が単発で出たりしてましたね。あの、伊藤潤二氏の大人気ホラー増殖美少女怪奇連作巨編、「富江」のシリーズが掲載されていたのは、朝日ソノラマ刊行の「月刊ハロウィン増刊」の「ネムキ」という、隔月刊のホラー漫画短編集雑誌でしたね。

  「アンラッキー幸子」の主人公、福田幸子ちゃんは、聖(セント)バーバラ女学園というお嬢様女子校に通っているんですが、この学校は中学校なのかな女子高なのかな?よく解らないんですが、名前からして私立のカトリック系のお嬢様女子校のようですが、貧乏な生徒は幸子一人だけのようです。ここにセオリーどおり、お嬢様の中の超お嬢様、貴子様が居て、クラスの意地の悪いお嬢様グループのボスで、まあ、多分、学校生徒中の女王で、この貴子様を中心に意地の悪いお嬢様グループが、毎日幸子を苛める訳です。貴子様は毎日、男子生徒からラブレターを貰ったり告白されていて、時には振られた男子生徒に自殺者も出ているということですから、聖バーバラ学園は男女共学なのか?あ、でも学校の正式名は「聖バーバラ女学園」ですからね。貴子様に振られている、大勢の男子生徒は他所の学校の生徒なのかも。

  福田幸子ちゃんの家庭は、時々血まみれになってる、ミイラ怪人のようなお父さん、このお父さんは自身の肉体が腐り掛けてるから、全身包帯で巻いているのかも知れません。継母のお母さん、この継母のお母さんは美人だけど魔女のような女で、幸子には意地悪で残酷です。同じく幸子に残酷な腹違いの妹。こういう家族構成ですね。貧乏な家庭で、幸子は学校が退けた後のアルバイトで、夜の職業のバーのホステスをやらされたりしています。

 「アンラッキー幸子」は、貧しい少女、幸子が昼間の学園と夜の家庭やバイト先で、「幸子」の名前とは真逆の不幸の連続のような生活を送る、ホラーアイテムたっぷりの、ストーリー四コマのギャグ漫画です。

 コミックス刊行は、秋田書店の新書判ホラーコミックス「アンラッキー幸子」第1集で、20005月に刊行されていますが、続きのコミックス第2集以降は発刊されないままみたいですね。「サスペリア」本誌掲載は、コミックス第1集収録以降のエピソードも続いてはいたのでしょうけど。作者の木村和昭さんは、四コマ漫画がメインの漫画家さんで、デビュー当時は秋田書店発行の漫画誌で描いていたようですね。週刊少年チャンピオンにも長期連載を持っていたようです。その後は、いわゆる四コマ漫画雑誌に、イロイロと作品を発表し続けているようですね。

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●漫画・・ 「ハロー張りネズミ」..(2) -1945年夏物語-

 「ハロー張りネズミ」は、講談社の青年漫画誌「ヤングマガジン」に、1983年頃から89年頃まで連載が続いた、大長編連作探偵劇画です。探偵劇画といっても、内容はバラエティー性に富んでいて、推理探偵もの、長編サスペンス、オカルト・ホラーもの、コメディータッチのお話、「ええ話やなあ~」と思わず涙が溜まりそうな人情もの、などなどと主人公の私立探偵・張りネズミを中心に、あかつか探偵事務所の仲間たちと繰り広げる、ベースは探偵もの漫画です。それこそ拳銃の銃弾飛び交う、スパイサスペンスものから、親子や家族の人情劇などヒューマンドラマ、吸血鬼伝説にまつわる伝奇ホラータッチの怖いお話、心霊オカルト、最終話頃には徳川埋蔵金伝説を扱ったお話もあります。

 真夏の八月と言ったら、日本の国は、6日の広島原爆投下の広島平和記念日、9日の長崎原爆投下の長崎原爆犠牲者慰霊式典、そして太平洋戦争の終戦記念日、全国戦没者追悼式ですね。本来、探偵漫画である「ハロー張りネズミ」の数々のお話の中にも、先の戦争に関したエピソードがあります。「ハロー張りネズミ」全編のもう最終話頃のお話ですけど、主人公・張りネズミが終戦間近の、正に渦中の広島にタイムスリップしてしまうお話ですね。 

 1988年の大晦日も近いある真冬の日、ハリネズミが勤めるあかつか探偵事務所は、仕事納めの大掃除で職場の片付けをしていた。探偵事務所の一員、グレさんが事務所の電話を取ると、仕事の出張で広島まで来ている張りネズミからだった。張りネズミは、事務所が正月休みに入るので、広島を観光がてらブラブラしてから帰る旨を伝える。電話相手のグレさんは、実は自分は広島の生まれで子供の頃、広島で育ってそれきり広島へは帰ってないので、自分が子供の頃住んでいた広島の天神町の写真を何枚か撮って帰って来てくれ、とハリネズミに頼む。ハリネズミは快く簡単に「了解」と、頼みを聞き入れる。

 広島市内を観光で歩く張りネズミ。自前のカメラで、原爆ドームなど何枚かの写真を撮る。やがて夜が来て冷え込んで来たので一杯やろうと、飲み屋を捜す張りネズミ。歓楽街の一軒のスナックへとドアを開ける。スナックの中は何とも古めかしい飾り付けで、張りネズミも「これはまたレトロな店だな」と独りごちる。店内のレトロな意匠が徹底していて驚き、ウイスキーを注文すると昔懐かしいワンショットグラスが出て来る。張りネズミが「暖房が効き過ぎてる」と厚手のジャンバーを脱ぐと、スナックのママも「お客さん、あんた変な人じゃね。そげな冬の格好しとるけん暑いんよ」と客を奇妙がる。張りネズミも何から何まで変なことに気付き、スナックのママにレトロ調のラジオを点けて貰う。

 ラジオから流れる放送は、広島上空の敵機の有無を知らせる、中国軍管区情報だった。スナックのドアを開けて外を見ると、鉄砲を肩に旧陸軍の日本兵が行進している。店内に戻った張りネズミがママに今は何年かと尋ねると、ママは「昭和20年」と応える。ここで張りネズミは、自分が広島市街地のとあるスナックのドアを開けたときに、タイムスリップをしてしまったことに気付く。そこへ店に酒類の配達にやって来た中年のオジサンは、グレさんそっくりで名前を小暮という。

 張りネズミの探偵仲間の良き相棒で、親友のグレさんそっくりの男が、グレさんの父親に違いないと気付いた張りネズミは、グレさんの父親を追おうと、即刻店を出ようとするが、スナックのママに「飲み逃げ!」と止められる。料金支払いを急かされ、ハリネズミが現代の福沢諭吉の一万円を出して、ママに「ニセ札だ!」と騒がれる。店の外へ出て早くグレさんを追いたい張りネズミはママに掴まえられ、近所の男衆を呼ばれて、「飲み逃げ犯」と袋叩きの目に合い、翌朝目を覚ますと、道路のゴミ捨て場に捨てられていた。

 途方に暮れて、タイムスリップしてしまった昭和20年の真夏の広島市内をトボトボと歩く張りネズミ。道行くお婆さんに時間を聞くと、何と1945年の8月5日、午後12時15分だった。広島に原爆投下される、調度20時間前だった。

 大勢の市民に、今から20時間後に原爆が投下されて、この街一帯はおろかその周囲遠くまで、壊滅的な焼け野原になることを、信じられないくらいの大勢の人たちが焼け死んでしまうことを教えたいのだが、直接そんな話をしたところで誰も信じてくれないだろうと思い、どうして良いか解らず、ただ焦燥感だけがつのる。

 とにかく、現代1988年での自分の親友、グレさんのお父さんに当たる、先程の人を捜そうと、広島市内の町を、酒屋の小暮さんを尋ねて回る。ようやく小暮さん夫婦を探し出すが、今から十数時間後の明日、上空で新型爆弾が爆発して、一帯が壊滅的焼け野原になる、などと言う話は到底信じてもらえず、酒屋主人の小暮さんから、またしても袋叩きの目に合う。優しい奥さんから介抱して貰う張りネズミ。見ると奥さんのお腹が大きい。優しく綺麗な奥さんのお腹の中には、後の探偵業の盟友、グレさんが居るんだと感動的に気付く。

 翌朝、張りネズミが目を離した隙に、旦那の小暮さんは爆心地となる、市内紙屋町住友銀行へと行ってしまう。とにかくお腹の大きい奥さんだけはと、張りネズミは傷を負った悪い足で自転車を必死でこいで、後ろに乗せた奥さんだけでも爆心地からは離れさせようと頑張る。で、自転車の後ろに乗る奥さんが途中で、やっぱり主人を見殺しにできない戻ると騒ぎ出す。奥さんを怒鳴り付けてでも、強行に市内を離れる張りネズミ。途中で、奥さんが産気づいてしまった。自転車を止め、近所の人を頼る張りネズミ。

 一方、小暮さんご主人は、紙屋町住友銀行に午前八時に着くがまだ開いていないので、玄関前の階段に腰を下ろして開店を待つ。午前8時15分、アメリカの爆撃機B-29、エノラゲイが新型爆弾を広島市上空で投下する。グレさんのお父さん、小暮酒店のご主人は、いわゆるピカドンのピカで消滅し、破壊された住友銀行建物跡の階段跡の、焦げ目の一つとなる。

 爆心地からかなり離れた地域まで逃げて来ていた張りネズミと小暮夫人は、田舎の近隣の人たちに聞いて、近くの産婆さんを訪ね、難産になるが奥さんは何とか“グレさん”を産み出す。しかし、破水後6時間も経っての難産で、母体は衰弱してしまった。子供が生まれて一息ついた張りネズミが、産婆さんの田舎民家の便所へ行って、便所を出ようと便所の戸を開けると、豪奢な感じのホテルのロビーへと出た。フロントの男性に訊くと、ここは広島県佐伯郡の安芸グランドホテルの中だと言う。そして日付けは、1988年の12月30日。張りネズミは現代、88年に戻って来た。

 東京へと帰る新幹線から、あかつか探偵事務所へ電話を掛け、グレさんに、お母さんはグレさんを生んだ後、どうしたのか?を訊いてみると、グレさんが答えるに「俺を生んで二日後に死んだ」だった。新幹線電話ボックスの中で、張りネズミは泣く。・・・

 このお話の舞台は主に真夏の広島ですが、原稿が描かれたというか、エピソード初出は、ヤンマガの冬の号でしょうね。88年の12月発行のヤンマガ初出掲載なんでしょう。

◆[2013-04/23]ハロー張りネズミ..(1)

◆[2015-08/04]ハロー張りネズミ..(2)-1945年夏物語- 

 

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