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●小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編 ..(1)

1.

 エレベーターのドアが開いた。中に乗っていたのは中村達男一人だけだった。意気揚々とエレベーターから飛び出した中村達男は、上機嫌で鼻歌をハミングしながら、一階フロアをまるでスキップでもしそうな雰囲気で、ビルの玄関へと抜けて行った。ビル出入り口玄関のすぐ手前に、この15階建てオフィスビルに入るテナント会社の、総合案内となるカウンターがあり、ビル会社が設けてある、このカウンターに受付嬢が一人座っている。玄関の総ガラス張りの自動ドアを出る前に、鼻歌を口ずさみながら中村達男は、受付嬢の女の娘に手を振り軽くウインクした。女の娘がおかしそうに笑った。

 受付カウンターの横には一人、制服制帽の警備員のオジサンが立っていたが、まるで、しょうがねえなあ、とでもいうふうに苦笑いした。ビルから出た中村達男は、表通りまでの数段の階段をリズムに乗って、ステップでも踏むように軽やかに降りた。夕暮れ時の通りは、車輌の交通量が多く、歩道の人通りも混んで来ている。この人通りは、達男のように退社して帰途に着こうとしている者も居るだろうが、まだ今、自分の働いている職場へ戻っているところの勤め人も多いだろう。中村達男は社内で多分、一番先に職場を出た。退社時刻と同時に机を離れたのだ。通りに出て、繁華街方面を目指して歩いて行こうとして、立ち止まった。

 夕暮れ時とはいえ夏場だ。まだまだ明るい。達男は、酒場に飲みに入るのは時間的にちょっと早いな、と思った。それに一人だ。二、三秒考えると、今出て来た自社の入ったビルに後戻ることにした。一階カウンターの受付嬢の顔を思い出したのだ。自動ドアが開いて、中村達男がビルの一階フロアに入って来ると、カウンター隣に立つ警備員が怪訝な顔をした。達男はすかさず、カウンター内に座る受付嬢に、笑顔で手を上げた。それに気付いた受付嬢の娘が微笑みながら、少しだけ頭を下げた。しかし明らかに少々、困惑した表情が含まれている。

 受付嬢の娘は、セミロングの髪型を綺麗に整え、丸顔で、人好きのする可愛い顔立ちをしていた。つかつかと近寄って行く、達男の顔はにやけていた。横から警備員のオジサンが、達男を睨み着ける。達男が受付嬢に話し掛けた。

 「ねえ、何時に終わるの?」

 「は?」 受付嬢がポカンとした顔をした。

 幾つもの企業の入った15階建てオフィスビルの、一階フロアに設置された案内カウンターの中の受付嬢は、白いブラウスの上に紺色の制服を着用して、身なりをきちんと整えている。中村達男はグレイの背広こそ着ていたが、緩めたネクタイが曲がり、全体的に着こなしがだらしなく見えた。

 「だからさあ。終わったら、ちょっと飲みにでも行ってみない? 俺、おしゃれな店、知ってるんだ」

 達男の続けた言葉に、まだ二十歳そこそこに見える娘は、驚いた顔をして達男を見ていた。隣で、警備員のオジサンが大きな咳払いをした。そうするとタイミングよく、エレベーターのドアが開き、ドヤドヤと沢山の人が出て来た。このビルに入る、様々な会社の社員たちだ。残業がなく、定時で帰れる社員たちだろう。一階フロアはみるみる人で溢れかえって来た。続けざまに、もう一機のエレベーターも降下して来て止まり、また沢山の人を吐き出したのだ。

 受付カウンターの前に立つ中村達男は、「ちっ」 と舌打ちをして、苦い顔をした。反対に、受付嬢の女の娘は、助かったようにホッとした表情をした。警備員のオジサンがにんまりと笑う。

 「中村君。あんた何してんの、こんなとこで?」

 フロアを玄関出口へと向かう、沢山の人の流れの中で、一人の女性が声掛けて来た。ベージュ上下のスーツ姿で、軽くウェーブの掛かる、やや長めのショートヘア。身長が低く、ふっくらした体型だ。経理の高山さんだ。高山さんは、経理部門では中堅の人材で、三十を幾つも過ぎてるが独身の女性だ。社歴では勿論、達男の先輩である。

 「退社時間が来て気が着いたら、もう中村君、居なかったからさあ。あんなに早く出て、もう遊びに行ってるものと思ってた。駄目よ。たまには早く家に帰って、奥さんいたわってあげなきゃあ」

 高山さんが早口で捲し立てる。達男が困った渋い顔をしながら、受付カウンターを見ると、受付嬢の娘は、他の、背広姿の若い男と笑顔で話をしていた。またしても達男は、「ちっ」 と舌打ちをした。高山さんもカウンターの方を見て、険しい表情に変わって、また喋り始めた。

 「あら駄目よ、中村君。えっと、結婚何年目だっけ? まだ二年目くらいでしょ。奥さん働いてんでしょ。奥さんに苦労掛けてんのに、浮気なんか考えちゃ駄目よ。あなた、働く主婦って大変なのよ!」

 中村達男は一刻も早く、高山さんの前から立ち去りたかった。高山さんの早口の説教じみた話は、まだまだ続く。

 「ねえ中村君。あんた、結婚式の時何て言ったか覚えてる?」

 達男は、二年前の結婚式の披露宴に、職場の先輩として、高山さんを呼んでたことを思い出した。

 「あんた、花嫁の亜紀子さんに、僕は君を一生守り続ける。一生裏切らない。って、そう言ったのよ。それなのにあんた、毎日毎日定時に会社出て、遊び歩いてんじゃないの? あんな可愛い奥さん、泣かしちゃ駄目よ!」

 達男の妻君は中村亜紀子という。達男は、嫁の名前までよく覚えてるな、と感心した。それよりも何よりも、この場からダッシュで逃げ出したかった。高山さんらと一緒にエレベーターから続々と吐き出され、一階フロアに溢れるように居た沢山の人たちも、ほとんどはビルを出たらしく、達男が辺りを見回すともう、まばらにしか人が居なかった。

 「あたしは今日は用があるから、定時で帰ってるけどさあ。だいたい中村君あんた、毎日毎日会社出るの、早くなーい? みんな残業してるのよ。あたしなんか週に三日、最低でも二日は残業やってるわよ。あんたが残って仕事してるのなんか、あたし見たことないわ」

 高山さんの早口の説教じみた話は、ただの文句のような口調になってしまっている。達男にはただの雑音でしかなく、うるさくてたまらない。ふと、カウンターの受付の娘を見ると、話をしていた男は何処かへ行ったらしく、一人、下を向いている。肩のあたりが小刻みに震えている。カウンターの下を向いて、必死に笑いをこらえているのだ。同じ職場の、やり手のオバサン上司か何かに見える女性から、早口で文句を言われているのが、まるで仕事上で怒られているように見えて、可笑しくてたまらないのだろう。隣の、警備員のオジサンは苦り切った顔で見ている。

 達男は、受付の可愛い娘の手前、恥ずかしくて仕様がなかった。ああ一刻も早く、この場から逃げ出したい。達男はタイミングを探していた。すると、エレベーターのドアが開き、一人の男が降りて来た。ちょっと長めの髪をきれいに整髪して、少し大きめの濃紺のスーツをダボッと着て、白いワイシャツに地味目なネクタイはきちんとしている。見るからにひょろっとして痩せているが、なかなかのイケメンだ。

 「おうっ、藤村。待ってたんだよ!」

 中村達男が片手を挙げて、声掛けた。高山さんから逃げ出す絶好のチャンスだ。高山さんも、藤村と呼ばれた男に気付き、声掛けた。

 「あら、藤村君。今日は早いのね」

 藤村は、二人に近寄って来た。藤村は、中村達男と同じ営業部に所属する同僚だった。フルネームは藤村敏数といい、達男より一つ年上だが、中途入社で、社歴では達男の後輩になる。藤村敏数とて、達男ほど毎日のように定時で帰っている訳ではないが、職場の仕事上では、コツコツと休まず業務を片付けて行く、真面目タイプなので、何となくよく残業しているような雰囲気があった。そういう意味では、経理の高山さんは誤解していた。

 「おう、藤村。まだかまだかって、待ってたんだぞ。よし。行こうか」

 「え?」 藤村敏数は事態が飲み込めず、ポカンとしている。

 「あら藤村君。中村君と一緒にお出掛け?中村君。藤村君をあんまり、悪いところに誘っちゃ駄目よ」

 高山さんは首を左右し、二人に交互に向かって言った。

 「嫌だなあ、高山さん。違いますよ。今日は、藤村が僕に大事な相談事があるって言うから、今から話を聞きに行くだけですよ」

 達男の説明に、高山さんは怪訝な顔をして、藤村敏数の方を見た。

 「本当なの? 藤村君。中村君に大事な相談なんて‥」

 「ええ、まあ‥」

 そして、達男の次の言葉で、高山さんは帰りを促された。

 「高山さん。今日は急ぎの用事で、早く帰るんじゃないんですか?」

 「ああ、そうだったわ。いけない、早く帰らなくちゃ!」

 高山さんは慌てて一階フロアの玄関出口を目指したが、途中振り返り、後ろに並んで立つ敏数と達男に向かって、捨て台詞を吐いてから、自動ドアの向こうに消えて行った。

 「藤村君。相談事もいいけど、中村君の口車に乗って、悪い遊びに嵌まっちゃ駄目よ!」

 藤村敏数自体は、経理の高山さんが思うほど、真面目で品行方正という訳ではなかった。実は、藤村敏数は中村達男の飲み仲間、遊び仲間なのだ。中村達男は仕事中の態度でも、普段から何となくだらしなく見えるが、いつも職場では、コツコツと真面目に仕事しているイメージの藤村敏数も、プライベートでは中村達男に負けず劣らずの遊び人だった。そのギャップが大きいから、職場では想像も着かないのだ。

 ナンパ、合コン、キャバクラなど女の居る飲み屋通い、敏数は達男の遊びの、良きパートナーだった。酒、女、時々ギャンブルでは、二人はいつもつるんでいた。特に達男の方は、藤村敏数が入社して来る前から、夜遊びは派手だった。二年前、結婚した当初は一時期、ピタリと夜遊びは封印していたが、ジワジワとまた夜の歓楽街に出て行くようになり、最近では、敏数とつるんで完全に元に戻ってしまった感がある。

 しかし、独身時代のように金が自由にならないらしく、夜遊びのためならば年上の先輩や上司を誘ってでも、夜の街に出て行っていた。だがこの不景気な時世では、なかなかスムーズに年長者の懐をあてには出来なかった。

 二人は揃って、自社の入る15階建てビルを出て、表通りに立った。

 「藤村、ありがとうな。合わせてくれて」

 「いや。俺も、誰かに話したいことがあってさ。調度良かった。達ちゃんに聞いて貰おうと思って」

 「え? マジかよ。俺は、すぐにでもキャバクラ行って、パーッとやりてえんだけどさ」

 「いや、その前にまだ時間も早いし、俺の話を聞いてくれよ」

 「ちぇっ。何だよ。また藤村の、今の彼女と前の女で揉めてる話かよ。そんなの、自分で何とか片付けろよ」

 「そうじゃないんだよ。仕事上のことなんだよ」

 そう言って藤村敏数は、自社がテナントとして入る15階建てビルを見上げた。つられて中村達男もビルを見上げる。二人が籍を置く会社は、この15階建てビルの、6階と7階の全フロアを借りていた。

 中村達男と藤村敏数の勤める会社は、駅ビル正面から真っ直ぐ伸びる大通りの両サイドに、地方では高層なビルが幾つも立ち並ぶ、この地方小都市の中では最大の大規模オフィス街で、そのビル群の中でも15階建てという、取り分けゴージャスな雰囲気のオフィスビルにテナントとして入っている。二人は、その高層ビルの6階と7階の全フロアを借りている会社の、6階の営業部に所属する。

 二人の籍を置く企業は、社名を、ワカト健康機器産業株式会社といい、車椅子や介護ベッドという基本的なものから、はたまた介護ロボットの開発まで、高齢者や各障害者向けの福祉関係の、各種機器の受注生産・販売・開発を旨とする会社であり、最近では、医療関係の機器の開発までにも乗り出している。この分野では、大手となる株式会社で、通称 『ワカト』 と呼ばれている。

 達男や敏数の勤務する、地方都市中央に位置する最大オフィス街の、高層ビルに入った部署は、この地方、広範な地域の業務全体を統括する、いわば中枢支店本部である。また、実際の商品となる福祉関係の機器や器具の生産は、郊外に自社工場があり、別の地域には開発の研究所まで持っている。達男も敏数も、その支店本部オフィスの営業部に所属する、一介の平社員となる。

 今、二人は、自分たちの机のあるビル6階の窓を見上げていた。

 「そうかあ。仕事の話かあ。あんまり面白くないけど、藤村がそう言うんならまあ、聞いてやるかあ」

 二人は、大通りを繁華街方面へと歩き出した。夕刻のオフィス街通りのこの時間は、会社が退けて帰路に着く者、退社後の遊びに行く者、最近では、様々な習い事やカルチャー教室、ジムに向かう者など、人通りが多い。しばらく歩いて、歓楽街方面へと折れて裏通りに入ると、さらに人通りは多くなった。歓楽街に入ってしまうと、二人はまだ陽があり明るかったが、一軒の居酒屋に入って行った。

 店内はまだ空いていて、がらんとした雰囲気だった。二人は店員に案内されて、二人掛けのテーブルに着いて、「取り合えず生」 と言って、生ビールの中ジョッキを注文した。

 「ギャラクシーの、かえでちゃんがよオー」

 すぐに達男は、藤村敏数が話がある、と言ったことなぞもう忘れて、今ご執心のキャバ嬢の話を始めた。敏数は初めて聞く、ホステスの名前だった。

 「ああ。達ちゃん今、ギャラクシーに通ってんのか」

 「ああ。この、ギャラクシーのかえでちゃんが、これがまた可愛くてさあ。乳もでかいし、お尻もバーンてこう、張っててさあ。セクシーでもう、たまんねえよまったく!」

 達男は、身ぶり手ぶりで、今ご執心のホステスが如何に魅力的かを、敏数にかなり熱っぽく語った。

 「大丈夫なのかい、亜紀子さんは?」

 敏数は、達男の妻君のことを心配した。以前、達男の家にお邪魔した折り、妻君が怒っていて不機嫌な時に出くわし、そういう時はかなりキツいことを知っていた。

 「平気平気。もう、ウチは全然大丈夫だから。藤村が心配することはないよ。それよりおい、ここで少し時間つぶしたらギャラクシー行くぜ」

 「ええーっ! 俺はいいよ、キャバクラは」

 「何だよ藤村。最近、付き合い悪いな。また、結婚とか馬鹿なこと考えてんじゃないのか。止めとけ、藤村」

 「いや、俺も、もうそろそろイイ歳だしね。真面目に結婚も考えないと」

 「馬鹿だなあ、藤村。まだまだ大丈夫だよ。まだまだパアーッと遊ばないと。急いで結婚なんかしちゃうと後悔するぜ」

 「達ちゃん、後悔してるのかい?」

 「いや、俺はそういう訳じゃねえけど‥。何だ、藤村。まるみちゃんにまだしつこく追っ掛けられて、困っているのか?」

 「いや、そういう訳じゃないよ。まあ、正直言って、彼女は簡単には諦めてくんないけどな」

 「ヒューッ、モテる男は辛いな。今の彼女、悦子とか言ったっけ。まるみちゃんと衝突しちゃったのか?」

 「ヒトの彼女、呼び捨てにしないでくれよ。それはない。うまくやってるけど、でもまるみちゃんもいつ、俺のアパートに押し掛けて来ても、おかしくない勢いだからなあ」

 「藤村。おまえも悪いヤツだよ。さんざんまるみちゃんの身体を弄んで、悦子とかいう女が出来たら、紙屑捨てるみたいにポイと捨ててよ」

 「そんなじゃないよ。いろいろあったんだよ。それより、俺の悦ちゃんを呼び捨てにするの止めてくれよ」

 「ふん。今に、おまえとその悦ちゃんが一緒に居るとこ、城山まるみが入って来て刺されるぞ」

 「そういうこと言うの、止めてくれよ。まるみちゃんとは早晩、きちんとカタを着けるよ」

 達男と敏数がそういう、タメの同僚どおしのやり取りをしている内にも、生ビール中ジョッキが運ばれて来て二人は、ビールに口を着け半分ほど飲んでいた。

 「おい。腹減ってるから、何かつまみ適当に頼もうぜ。腹ごしらえしてからギャラクシーへ、いざ出陣。あんな店で、あれこれオードブルとか頼んで、別料金取られちゃ敵わねえからな。あくまでセット料金で押さえて、乳とか尻とかバンバン触りまくらねえとな」

 敏数は困った顔をして、達男の誘いを何度も断った。二人は店員を呼んで、何種類もつまみを頼んで、つまみが運ばれて来る度に、旺盛な食欲で平らげて行った。勿論、生ビールも進んだ。

 「あんまり飲み過ぎて酔っぱらっても、キャバクラで女の娘のお尻触るのも、こっちの感度が鈍るからほどほどにしとかないとな。そろそろ行こうか」

 「だから、俺は行かないって」

 「付き合い悪過ぎるぞ、おまえ」

 「達ちゃんの方こそ、一人で行けばいいじゃんか」

 達男のキャバクラ誘いのしつこさに、敏数も少し腹が立って来ていた。

 「達ちゃん、ひょっとしてあれなんじゃないの?」

 「何だよ、あれって?」

 「総務の二宮主任がこぼしてたぜ。営業の中村君に誘われて、一緒に飲みに行ったは良いけど、お会計の段になって空の財布を開いて見せて、『主任これなんですよ』 って言われたって」

 「失礼なこと言うな、馬鹿。自分の分くらい、自分で払うよ。それより付き合い悪いなあ、藤村。おまえの悩みを聞いてやったじゃねーか」

 二人は居酒屋に入って、もうかれこれ小一時間近く経っていて、生ビールも敏数はまだ二杯目だが、達男は三杯目の中ジョッキをあおっていた。

 「俺の悩みなんて、まだ話してないよ」

 「だから、まるみちゃんと悦子の間で、おまえは苦しんでるんだろう?」

 「悦ちゃんを呼び捨てするな。冗談じゃないよ。達ちゃんが無理やり全部、女の話に持って来んじゃないか」

 「は? じゃ、相談事って何なんだよ?」

 「係長のことだよ」

 「え? 係長って、ウチの係長か。係長がどうかしたのか?」

 敏数が呆れた顔をして、溜め息を吐いた。

 「達ちゃんが、何でもかんでも女の話にしちゃうから、言い出せなかったんだよ。此の頃、ウチの係長って、ちょっとおかしいだろう?」

 「あん? 係長が‥」

 「そうだよ。今日の昼間の事件なんて、社内であれだけ大騒ぎになったじゃないか」

 「事件? 大騒ぎ?」

 「何だ。達ちゃん知らないのか。そうか。達ちゃんは午後から、客回りに行って来るって言って外に出て、ずっと喫茶店で寝てたんだもんな‥」

 「人聞きの悪いこと言うなよ、藤村。ちゃんと客回りはしたんだよ。一件だけど‥。まあ、後は喫茶店で新聞とか週刊誌とか読んで、営業職に必要な、世の中の情報を仕入れてたんだ。俺がキャバクラ通うのも、その一環でだ。で、昼間何があったんだ?」

 敏数は呆れ顔で、達男の弁明を聞いていたが、達男の質問に答えて、おもむろに昼間社内であった騒動を話し始めた。

 「昼休みの給湯室でさ。総務の江口さんて女の娘、あの娘に係長がセクハラしたらしいんだよ」

 「えーっ! あの、総務の可愛い娘ちゃんの、江口恭子ちゃんがセクハラされたのか!? で、何されたんだ?」

 達男は驚いて、声のトーンが二調子分、上がった。係長がセクハラしたということよりも、被害にあったのが、総務課の可愛いOLだったことが驚きだったのが、如何にも達男らしかった。

 「しかしホント、江口さんて可愛いくて魅力的だよな。で、その係長が、どんなことしたんだよ? 早く話せよ藤村」

 何だか達男は、下世話趣味で興味津々のようだ。

 「だから話してるよ。実は、何でもポットにお湯を入れてる時に、係長がお尻を触って江口さんは驚いて、手先を軽く火傷したらしいんだな。調度、給湯室にやって来た他の総務課の女子に見られて、上に報告されたらしい」

 「何だって! 係長、江口さんの尻を触ったのか‥」

 話を聞く達男の様子は、何だか羨ましそうにも見える。

 「解らないけど、ウチの課長に呼ばれて総務課まで捲き込んで、えらい騒ぎになっちゃってる。ひょっとして危ないカモ‥」

 「そんな面白えことがあったんなら、社に居れば良かったな」

 「だいたい最近、係長おかしいだろ?」

 「そうか?」

 「達ちゃん、気が付かないか。机に着いてて、一人でニタニタ笑ってたり。仕事のミスも多いぜ。あの、慎重で丁寧な仕事してた係長が、考えられないよ」

 「へえ~、そんななんだあ」

 「達ちゃん、一緒の部署で仕事してて、気付かないのはおかしいよ。俺なんて、係長のミスで実害被ってるんだから」

 「そんなこともあったんだな‥」

 「ああ。俺の上げた顧客の注文書の品名とか、いろんな数字、係長が間違ってさ。顧客とトラブルになって、俺も一緒に課長から大目玉さ。たまらないよ、まったく。他にも係長の小さなミス、いっぱいあるんだぜ。まあ、その先のオオゴトになる前に、誰かが直したりしてるんだけどさ。だから、何かおかしいんだよ、係長。心ここにあらず、って感じだね」

 「恋でもしてんのかな? まさか相手は、江口さんじゃねえだろうな」

 「いや、そういうんじゃなくて多分、本能が出てしまってんじゃないかな‥」

 「ええっ! ボケ老人みたいだな」

 「冗談でなく、それに近いのかも知れないな。このまま行くと係長、良くて降格か左遷。ヘタするとクビもんカモ‥」

 「そうか。そんなだったんだなー、係長‥」

 「だいたい達ちゃん、一緒の部署に居ておかしいよ。ここんところ俺は、係長のせいでだいぶ実害被ってるぜ。達ちゃん最近、全然仕事してないんじゃないか」

 「馬鹿野郎。俺だって少しは仕事してるよ。ただもともと、あの係長、真面目過ぎてさ。細かいところにうるさかったろ。俺、極力避けてたんだよな。関わるのは仕事の最小限で、あとは眼中になかったからな」

 店員が、酒肴の容器を幾つか下げに来た。敏数は、中ジョッキ二杯でもういっぱいいっぱいだったが、達男の方は、三杯目のジョッキも空になってて、まだ飲みたそうにしていた。しかし、達男には次に本命の目的があるので、これ以上飲むのは我慢した。店員が行った後もしばし、二人とも黙っていたが、おもむろに敏数がまるで独り言のように言った。

 「係長、何だか別人みたいに変わっちゃったよなあ‥」

 突然、達男が立ち上がった。

 「よし。もう、時間も押して来た。行くぞ! いざ、かえでちゃんのもとへ。藤村、用意をせい! かえでちゃんだっこしてソレソレソレって乳も尻も触りまくるぞ!」

 居酒屋の店内はもう随分、混み合っていた。二人が入った時は、がらがらに近いくらいに店内は空いていたが、今はもう空いた席がないくらいに客でいっぱいだ。四方八方から、酔客のオダを上げるような勇ましい声が聞こえる。二人は居酒屋を出た。繁華街は各ネオンや照明で真昼のように明るいが、空を見上げると星が出ていた。

 「藤村、急ごうぜ。八時を回ると、セット料金が千円高くなるんだ」

 達男はあくまで、お目当てのホステスが居るキャバクラへ行くつもりである。

 「いや、達ちゃん。俺、これで帰るよ。ホントもう、今日はそんな、キャバクラ行って騒ぐ気分じゃないんだ」

 「いいじゃねえか、藤村。今の飲み屋も、ちゃんと割り勘で払ったろう。大丈夫。キャバクラ奢って貰おうなんて思ってねえよ。俺の分はちゃんと払うから」

 「いや、そういうことじゃないんだ。今日は乗り気がしないんだよ。何か疲れてたから、生ビール二杯で酔っ払っちゃったよ。だから、もう帰るよ。」

 「馬鹿言え、藤村! ここまで来て帰るなんて、そんなツレナイこと出来るのか。なあ、俺たちは風俗兄弟みたいなもんじゃねえか、藤村。なあ、一緒に行って、パーッと遊ぼうぜ」

 達男はしつこく誘い続け、敏数は断り続ける。そのやり取りの間にも、二人の足は歓楽街の、さらにディープな方へと向かっていた。敏数は嫌だ嫌だと言い続けながらも、達男のしつこさに負けてか、ついつい達男に並んで、風俗店が立ち並ぶ界隈に入って来てしまった。風俗店が立ち並ぶ、といっても、ほとんどはビルの中にテナントとして入っている。

 「おい見ろよ、藤村。あのファッションヘルス、まだやってるぜ」

 見ると、原色ネオンの照明で、風俗店の毒々しい色使いの看板が出て、腹の出た呼び込みのオヤジが、後退した頭髪をテカテカに塗り固め、半袖ワイシャツに蝶ネクタイ姿で、客引きの文句を垂れていた。

 「懐かしいな、藤村。あの店、昔よくお世話になったよな」

 藤村敏数が 『ワカト』 に中途入社した時分、達男はまだ結婚前で、よく一緒に、この風俗街に遊びに来ていた。客引きのオヤジが、達男に声掛けて来た。

 「悪いな、オジサン。俺たちは今日はキャバクラ行くんだよ」

 オヤジは満面の笑顔で、「帰りに寄って」 と言って、離れて行った。敏数が達男の肩を叩いて、注意を引き付けた。

 「達ちゃん、見ろよあれ。あんなところに在吉君だろ? あれ‥」

 達男が、敏数の指差す方を見やった。数メートル離れた四つ角の、人の流れの中に若者が一人立ち、キョロキョロと辺りを見回している。

 「あ、本当だ。在吉君だ」 達男が言った。

 達男がニヤリと笑った。今からキャバクラへ行く仲間が、一人増えたと考えて喜んだのだ。二人は、在吉君に近寄って行った。

 「在吉君!」 敏数が、軽く肩を叩いて呼んだ。

 「ああ、藤村先輩。あれ、中村先輩も‥」

 在吉君は、敏数よりも達男よりも上背は低かったが、薄いグレイのサマースーツをちゃんと着こなしていた。頭髪は短く刈り込んでいて、色は浅黒く、まるで高校球児のような雰囲気がある。達男が言った。

 「在吉君も、隅に置けないな。こんな通りをウロウロして。案外、好き者なんだな在吉君も」

 「ええっ!? いや、違いますよ。迷ったんですよ」

 敏数が尋ねる。

 「道に迷って、こんな風俗ストリートに入り込んだのかい?」

 歓楽街を縦横に走る通りは、どの道も狭い。夕方から夜間は、車輌通行禁止になっている通りも多い。三人は、四つ角の中央で、人の流れを邪魔するように立っていた。

 「実は、係長を追い掛けて来たんですよ。おかしいな‥。確かに、こっちに来た筈なのに。この四つ角から見失ってしまって‥」

 在吉君はまた、キョロキョロとして首を回した。

 「在吉君。せっかく、この風俗街に来たんだ。俺たちと一緒にキャバクラ行って、パーッと騒ごうぜ」

 達男が、上機嫌な表情で言った。

 「いや、イイっすよ。実は俺、今日、彼女と映画見るつもりだったんすよ。七時の回。それが、彼女から携帯に連絡が来て‥。仕事がどうしても終わらないから、映画間に合わないからって。それで仕方なく、辺りの通りをぶらぶら歩いてて‥」

 ここから100メートル近くを西側に歩いて行くと、映画館のハコが幾つも入ったビルがあった。在吉君は、そこから歩いて来たらしい。彼は、『ワカト健康機器産業』 の去年入った若手の社員で、達男や敏数の所属する営業部では最も若い。フルネームを在吉丈哉といい、まだ21歳の青年だ。

 「係長は、何処で見つけたんだい?」 敏数が訊いた。

 「映画館ビルの近くの、サラ金の金貸しATMのボックスから、出て来るとこ見掛けて、何か気になって、跡を着けて来たっす。ほら、今日も社内で事件あったし‥。最近、係長変じゃないっすか」

 「消費者金融のATMって、係長、金に困ってんのかな?」

 達男が言って、達男のお目当てのキャバクラ、ギャラクシーがある方角を見やった。

 「あれ? あの後ろ姿、何か係長に似てないか?」

 達男が、風俗街の通りの奥を指差した。通りの奥の方は、人は数えるほどにしか居ない。その中の一人がぽつんと立って、小さなビルを見上げている。達男らが立つ、十字路に比べて、通りの奥は暗かった。

 「何か、あの辺は、“たちんぼ”でも立ってそうなトコだなあ」

 達男の言葉の後に、在吉丈哉が言う。

 「何だか、あの辺り、不気味なゾーンて感じしますけど、あの背格好シルエットは多分、係長で間違いないっすよ」

 係長と思しき男性の影は、ビルから出て来た、呼び込みらしき男と話をしていた。藤村敏数が二人に聞いた。

 「どうしようか? 取り敢えず、もっと近くまで行ってみよう」

 「ええーっ! 冗談じゃねえよ。俺たちはギャラクシーに行くんだろ? 俺はギャラクシーのかえでちゃんに会いたいんだよ」

 達男が大慌てで、敏数の提案に猛反対する。

 「でもちょっと、見に行きましょうよ。気になるじゃないっすか。近くまで寄ると案外、人違いってこともあるし。だって、ウチの係長のことなんすから」

 「そうだよ。在吉君の言う通りだ。とにかく確認に行こう。それにしても顔ははっきりしないが、着ている背広の色合いといい背格好から、多分間違いないよ」

 「吉川係長っすね?」

 「多分、間違いないと思う。別に、顔合わせたって良いじゃん。適当に話合わせれば」

 「ちぇっ。吉川係長か確認するだけだぞ。かえでちゃんには、今日は必ず行くってメール入れてんだからな」

 達男はしぶしぶだったが、三人は、吉川係長と思しき人と呼び込みの男が立つ、通りの奥の薄暗いところを目指して、近付いて行った。三人はそろりそろりと歩き、目標まで5、6メートルのところまで近寄った。

 「ほら、やっぱり吉川係長っすよ!」 在吉丈哉が叫んだ。

 「声が大きいよ、在吉君!」 敏数が言った。

 「あホントだー。吉川係長だあ」 達男が何だか間の抜けたような、抑揚のない調子で言った。

 声に気付いたのか、吉川係長がこっちを向いた。暗かったが、敏数は目が合ったと思った。しかし、吉川係長は何事もなかったかのように、前を向いて交渉が済んだのだろう、呼び込みの男に促されて、ビルの中に入って行った。

 「係長、シカトかいっ!」 達男が怒ったように言った。

 「行ってみよう」

 敏数の言葉に、三人は吉川係長の入って行ったビルの前まで歩いた。薄暗い中にも、ビルの入り口の回りには毒々しいネオンが光っている。入り口前に電光看板が出ていて、『ビッチハウス』 と書かれている。

 「ビッチハウスって、モロな名前っすね」

 「キャバクラかなあ。キャバクラよりも、もっとエッチな店っぽいな」

 「入んねえぞ。俺はギャラクシーに行くんだかんな」

 「誰も入るとは言ってないよ。しかし驚きだ。あの、吉川係長がキャバクら通いしてるなんて」

 「一人で入るくらいだから、常連なんだろうな。チクショー、係長め! キャバクラ通いしてるんなら一回くらい誘って、奢ってくれても良さそうなものを」

  ビル入り口を入ると、すぐ横に階段がある。奥にエレベーターがあるようだ。この小さなビルは四階建てらしく、壁のテナント案内板を見ると 『ビッチハウス』 は三階にあるらしい。やはり、キャバクラのようだ。

 「俺は、この店には入らないっすよ。もともと、俺キャバクラなんて行かないけど、何かこの店、気持ち悪い感じがする‥」

 苦虫を噛んだような顔で、在吉丈哉が言うと、藤村敏数が応えた。

 「吉川係長が、中でどんなだか気にはなるけど、俺もワザワザお金出してまで、こんな場末のキャバクラ入る気はないよ」

 敏数の言葉に反応して、達男が続けて言った。

 「あたりまえだろ! 高い金払って、こんなキャバクラ入るかよ。今から、かえでちゃんの居るギャラクシーに行くんだよ」

 達男は断固としていた。

 「かえでちゃんて誰っすか?」

 在吉君の問いには、敏数が答えた。

 「キャバ嬢の源氏名さ。中村先輩が現在、ご執心のホステスだ」

 「中村先輩、大丈夫っすか?金、毟り取られるんでないっすか」

 「在吉君。心配なんていらないよ。俺は、遊んでも女に遊ばれる男じゃねえよ」

 達男が得意そうに言った。その時、階段を降りて来る靴音がした。

 「誰か降りて来るぞ。多分、さっきの呼び込みだ。声掛けられるとメンドクサイ。出よう!」

 敏数の言葉に三人は、ビルを出て店を離れた。通りをしばらく歩くと、分岐した細い通りがあった。

 「こっち行くとすぐ、ギャラクシーなんだ。二人とも行こうぜ!」

 敏数と在吉丈哉は、即座に断った。小さな三叉路で、三人は立ち止まったままで、達男の執拗なキャバクラ誘いと二人の絶対拒否が続いた。途中で丈哉が話を変えた。

 「それにしても吉川係長、完全に別人みたく変わっちゃったすね」

 「昔はキャバクラどころか、居酒屋でも滅多に行かない人だったけどな。残業でも定時でも先ず、間違いなく真っ直ぐ家、帰ってたな」

 「マイホームパパっすね」

 「藤村おまえ一度、吉川係長の家、行ったことあるんだろ?」

 「うん。だいぶ前になるけどね。あの時は、本当に良い家庭だと思ったよ。若々しくて綺麗な奥さん。ほっそりしててさ、ボーイッシュな感じで、こうキリッとしててさ。料理も美味しかったし。二人、子供が居てさ。上の子が女の子で、確か愛子ちゃんとかいって、あの時調度、中学入ったばっかりくらいかな。下は、年の離れた男の子で、小学校低学年くらいかな。二人とももう、可愛くてさあ。係長って本当は、もともと温厚な人だろう。優しい働き者の旦那さんに、美人でしっかり者の奥さん。可愛くてすくすく育ってる子供たち。理想的な家庭で、あんな家庭にメッチャ憧れちゃったよ」

 「それが係長、変わっちゃったすか。いったい、家じゃどうしてるんすかね?」

 「会社であれだけ別人になっちゃってるから、家でも相当変わってるんじゃないかなあ‥」

 「何か、俺が入った頃の面影ないっすよ。吉川係長ってダンディー感あったけど、今なんて背広はシワが寄ってヨレッてしちゃってるし、ワイシャツの襟は真っ黒いは、ネクタイは毎日同じものでこれもシワがあるし‥」

 「おいっ! もう係長の話はイイから、早くギャラクシー行くぜ!」

 達男が怒鳴るように言った。もう八時半が近い。急いで目指すキャバクラに行きたくて、焦っているのだ。吉川係長のことは二の次らしい。

 敏数と丈哉は顔を見合わせ、困り果てた表情をした。その時突然、丈哉の携帯が鳴った。電話に出ると、丈哉の彼女からで、残業が終わったので、今、こちらに向かっていると言う。丈哉は、駅で待ち合わせる約束をして、電話を切った。丈哉はニコニコして、達男に別れを告げた。

 これにはさすがの達男も、在吉君をキャバクラに誘うのも、諦めざるを得ない。仕様がない、という感じで 「ちぇっ」 と舌打ちして、腐った表情をした。在吉丈哉が救われた気持ちで、達男の前から辞するのに便乗して、もうこの機会を逃したら後はない、と、敏数が慌てて大きな声で、「じゃあな達ちゃん!」 と、手を挙げながら丈哉に続いた。

 「あっ、おい。藤村、待て!」 達男が怒鳴った。敏数は小走りになり、丈哉を追い越して急いで逃げた。

 一人残された中村達男は、三叉路を細い通りの方へ入って行った。

「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編 ..(2)へ続く。

◆(2012-08/18)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編 ..(1)
◆(2012-09/07)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ 」 狼病編 ..(2)
◆(2012-09/18)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編 ..(3)
◆(2012-10/10)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編 ..(4)
◆(2012-10/28)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編 ..(5)

 

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