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隠密剣士

  昭和30年代後半から昭和40年代アタマに小学生だった僕たちに取って、調度その時代は、テレビ·漫画·映画と忍者ブームが巻き起こってました。中でも1962年10月から放送が始まった連続時代劇「隠密剣士」では63年1月からの第2シリーズから“忍者もの”にシフトすると、大人気番組となり当時の“忍者ブーム”を牽引する高視聴率番組としてシリーズが長きに渡って続きました。

  当時の実写剣術·忍者アクション時代劇「隠密剣士」は第2シーズンから、1965年の最終第10シーズンまで全て対敵相手を忍者集団として、主人公は剣の達人のサムライであるものの、正義と悪の忍者合戦ものとして大人気ドラマとして続きました。また65年4月からも主人公の配役を替え「新·隠密剣士」を放送しました。「新·隠密剣士」はやはり忍者アクション時代劇として第3シーズンまで65年12月いっぱいまで放送が続きました。

  僕の4歳5歳頃から小学生いっぱいくらいまではテレビでは時代劇が多く、大人向け時代劇も子供向け時代劇も各番組放送されてました。僕が小学校に上がった頃までは、特に“忍者もの”というのでなく、覆面を被った剣の達人の正義の味方が悪いサムライ集団を斬って斬りまくる勧善懲悪ドラマが多かったですね。剣術ヒーローも“忍者”ではなくて、超能力みたいな“妖術”を使っていた。

  この時代までは子供向け時代劇では“忍術”と“妖術”の区別があいまいで、飛んだり跳ねたりも煙玉を爆発させて消えたりもするが、空中にパッと消えたり大きなガマを出したり刀を巨大化して刀に乗って飛行したり、(モーゼの十戒みたく)海の波や海水を割って陸地の道を作ったり、ムチャクチャな超能力も使ってた。(空中に飛んでパッと消える超能力は現代劇ヒーローもよく使ってた。当時の特撮技術ではやりやすかったんでしょうね。)

  この時代の“忍者ブーム”は大人たちには62年公開の、市川雷蔵主演の大映映画「忍びの者」のヒットが火着け役で、この「忍びの者」は人気映画としてシリーズ化して66年まで8作も作られた。子供たちには週刊少年サンデーに61年から連載が始まった、横山光輝作画の「伊賀の影丸」のヒットが大きいですね。「伊賀の影丸」も66年まで長期連載された。そして連続テレビドラマ「隠密剣士」の長期放送が“忍者ブーム”を支えた。

  2000年代に入ってからこっち、衛星放送とか各ネット動画などで昭和時代のさまざまな時代劇を放映して来てますが、昭和の連続テレビドラマ「隠密剣士」もいろんなところで何度も放映されてますね。ネット動画で今から五十数年前のモノクロ「隠密剣士」が視聴できたりします。

 連続テレビドラマで大人気を得た「隠密剣士」は、劇場版映画が東映で1964年に2本制作されました。テレビドラマも劇場映画もモノクロでしたね。3月公開の「隠密剣士」は対敵が甲賀竜四郎と甲賀忍群、8月公開の「続·隠密剣士」では対敵が風魔小太郎と風魔忍群の全編忍者アクション剣術映画でした。

  漫画版の「隠密剣士」は堀江卓氏の作画で1963年の週刊少年マガジン第23号から32号まで調度10週連載されました。テレビドラマの「隠密剣士」は子供から大人まで大人気で放送されていたのに、どういう訳かコミカライズ「隠密剣士」は短期連載で打ち切りのようにストーリーも中途半端で終わっちゃいましたね。本家·実写時代劇「隠密剣士」に対して少年誌·漫画版はあんまり人気が出なかったのかなぁ?どうしてか理由はよく解りませんが。

  江戸時代中期、宝歴~文政に生きた、江戸幕府老中·松平定信が、徳川御三家の一つ、尾張藩尾張家の幕府に対する動きが怪しいと見て、京都まで出掛ける際、それとなく尾張家の動向を探ることとなった。これに対して尾張方は極秘に伊賀忍者の部隊·百々地十忍を雇い入れ、京都までの道中、松平定信の暗殺を謀ることを企てた。

  松平定信の京都までの長旅の道中の警護は、幕府お庭番·伊賀同心が行い、定信一行を表に影に護衛して行く。ここにルーツは同じ伊賀忍者の幕府·伊賀同心対怪忍者集団·百々地十忍の戦いが幕を開けた。

  先ず、松平定信一行が立って直ぐに百々地忍者隊の襲撃に合うが、敵忍者の襲った籠に乗っていたのは、隠密剣士こと秋草新太郎であった。秋草新太郎は伊賀同心と共に松平定信の護衛の旅に出ていたのだ。老中·松平定信は別行動で旅立っていて、こちらの籠は影武者籠で囮だった。

  秋草新太郎と霧の遁兵衛他伊賀同心対、百々地源九郎率いる百々地十忍の戦いが続く。百々地忍者隊の使うコマ十字手裏剣に苦戦する伊賀同心だったが、柳生新陰流の達人·秋草信之助の必殺剣で敵を退散させる。

  その後も秋草新太郎への襲撃を繰り返す百々地十忍。虫寄せの秘術を使って秋草新太郎を追い詰めた敵頭領·百々地源九郎だったが今一歩のところで新太郎の秘剣の前に返り討ちに合う。その際、片手で秋草新太郎の顔をビタン!と張って逃走する。

  百々地源九郎の顔は粘土質でできていて、どんな顔にも造り変えることができ、顔を張ったときに掌に新太郎の顔を記憶させていて(顔を写し取っていて)、百々地源九郎は秋草新太郎そっくりに化けてしまう。

  秋草新太郎そのものに変装した百々地源九郎は、江戸の花火師父娘の父親の方を試し斬りして殺してしまう。娘は代官所へ訴え出て、本物の秋草新太郎そのものは役人たちに御用として追われることとなる。

  斬り殺された父親の恨みを晴らそうと花火師の娘·おつるは、執拗に秋草新太郎を追う。

  秋草新太郎に化けた百々地源九郎は松平定信一行が宿を取る旅籠町に入るが、伊賀同心·霧の遁兵衛に怪しまれる。

  松平定信の泊まる部屋に秋草新太郎として入った百々地源九郎であったが、部屋の灯りを部屋中に焚いていて、異常な暑さに、熱で源九郎自慢の粘土質の顔が溶け始める。元の顔に戻ってしまった源九郎が定信に斬り掛かると、定信ではなく、松平定信に化けた霧の遁兵衛だった。

  部屋の天井から宿の屋根へと逃げる百々地源九郎。追う伊賀同心との戦いで秘術を使う源九郎の前に現れたのは本物の秋草新太郎だった。竜巻の術と闇渡りの術で逃げてしまった源九郎。

  新太郎のアイデアで源九郎に投げた印籠にハチミツの虫寄せが仕掛けてあり、伊賀同心三人は源九郎の逃走中に落ちたハチミツに群がる蟻を伝って、源九郎の逃走先を探す。一方、百々地十忍は箱根の山岳地帯の谷間の道で松平定信一行の襲撃を画策していた。

  伊賀同心二人は追っ手に気付いた源九郎と配下に寄って返り討ちに合う。逃げる残った伊賀同心は味方に敵の作戦を知らせに戻るが、途中、敵忍者に傷を負わされ、秋草新太郎に出会ったところで息絶える。

  草原で秋草新太郎対百々地十忍の戦いが始まり、敵忍者の忍法に苦戦するが新太郎の必殺剣で敵方忍者三人を倒す。これで百々地十忍は七忍となった。

  白馬の足に爆薬を仕掛けて暴れ馬として、谷間を通る松平定信一行に乱入させる、源九郎発案のひづめ爆弾の作戦は百々地側忍者に化けた秋草新太郎の活躍で空振りに終わり、定信一行は無事に谷を通る。

  秋草新太郎を父の仇と思い込んでる、花火師の娘·おつるは度々新太郎を襲い失敗し、ついに百々地源九郎一味と腕を組む。火薬の扱いに長けているおつるは、海を船で行く松平定信一行を海上で襲撃することを提案する。

  海にハリボテで作った幾つもの偽の岩に、おつると百々地源九郎一味が隠れて、おつるの父親が開発したという新火薬で定信一行の乗る大型の船を襲う。偽岩から現れた忍者たちは弓矢に装着した爆薬で大型船を射ち、船をこっぱ微塵に爆破する。

  松平定信を船ごと始末して目的を果たしたと思った百々地源九郎は、一部始終を目撃している花火師の娘·おつるを殺害しようとする。アイデアと新火薬を提供したおつるは納得が行かず源九郎たちを非難する。

  そこに秋草新太郎が現れ、おつるの命を救う。

  大型船に乗っていたのは秋草新太郎と伊賀同心だけで、松平定信は霧の遁兵衛たちに守られながら小さな漁船で目的地に向かっていた。爆破された大型船で生き残ったのは秋草新太郎だけだった。

  秋草新太郎の柳生新陰流対百々地伊賀忍者たちとの戦いが再び始まり、劣勢の敵忍者団の中、百々地源九郎の粘土質の顔の秘密がおつるにバレる。おつるは実は自分の父親を試し斬りで殺害したのは百々地源九郎だったのだと理解する。

  自分たちの味方をかなり失った百々地源九郎は逃走し、松平定信が到着するであろう浜辺に連絡を送り、浜辺で待機する味方忍者にその地で松平定信一行を始末するよう指令する。

  浜辺で定信一行を待ち受ける敵忍者二人は強敵だった。窮地に立つ源九郎に甲賀の里から臨時召集された甲賀忍者の兄弟だった。浜辺の安全を確かめる伊賀同心たちはたちまち殺された。一人は忍者衣装のふところに小人の兄弟が隠れていて、油断した相手を突然飛び出して刺し殺すのだ。今一方は剣の達人で長い刀を空中で使う剣法で伊賀同心を斬り殺す。

   甲賀忍者の強敵兄弟対秋草新太郎と伊賀同心の浜辺での決戦で、窮地に陥る公儀隠密側だったが、秋草新太郎の必殺剣法で逆転し、新太郎の秘剣が甲賀兄弟三人を斬り倒す。

  浜辺に現れた伊賀百々地 組の頭領·百々地源九郎だったが、忍者志願の子供に「卑怯な戦いはしないで」と諭され、源九郎はこれからは秋草新太郎や伊賀同心と正々堂々と戦うと誓ってこの場を去って行く。

  秋草新太郎の連れていた子供と忍者志願の子供とおつるの三人は江戸に帰ることにして、松平定信一行と秋草新太郎は再び京都を目指しての旅に着いた。

  と、これで週刊少年マガジンに63年に10週連載された、堀江卓氏作画の漫画版「隠密剣士」は終了した。ストーリーは中途半端な終わり方でしたね。

 漫画版の方は突っ込みどころ満載でしたが60年代前半頃の少年漫画誌は、どれも内容が小学生読者対象くらいのレベルでしたからね。子供向け漫画で内容もシンプルだし、そんなにストーリーも凝ってなかったし、中には陳腐な内容があったり信憑性に欠けても、子供漫画として誰も文句を着けなかった。

 

  そもそも、テレビドラマも映画版も漫画も、主人公の剣客·秋草新太郎が子供を連れて旅に出ている。多分、連れてる子供は孤児なんでしょうが、それでもいつ敵忍者に殺されるかも知れない危険な隠密旅に子供連れで回ってる。子供を人質に取られるリスクも大きいのに。

  漫画版ラストの締めくくりも、忍者隊の首領が「これからは正々堂々と戦う」と誓うのはおかしいでしょう。忍者の主な仕事は諜報活動と暗殺ですよね。“忍び”というくらいですからね。スパイ活動や暗殺を正々堂々となんかやる訳がない。奇襲したり騙したり、どんな汚い手を使ってでも目的を果たすのが忍者でしょうに。

 百々地源九郎の“粘土質の顔”というのも、まるでSF のミュータントみたいだし、掌で相手の顔をバチン!と張って顔を掌に写しとるという発想も凄い。

  打ち切りみたくたった10週で突然、ストーリーも中途半端に物語終了するんで、最後のシメはできるだけハッピーエンドに近い形で終わらせたのでしょう。何しろ当時のマガジンの読者対象は小学生ですから。

  この時代の少年漫画誌は小学一年生~五、六年生くらいの子供が読者対象だから、別にストーリーが“子供だまし”みたいのでも世間の誰からも何ら文句は出なかった。むしろ教育熱心な親御さんたちは「漫画なんて低俗だから読むな」と叱ってたくらいでしょう。当時の漫画で特に大人が文句を着けたのは、ハレンチと暴力と残酷さですよね。

  僕が生まれる前から小学校上がる前頃には手塚治虫の漫画も当時のPTA にやり玉に上がったそうだし、僕が少年漫画を愛読してた時代、永井豪の「ハレンチ学園」はハレンチで低俗過ぎると、白土三平の忍者漫画は残酷描写が問題視されて、当時の“良心的な”大人たちから文句を着けられてましたね。

 少年漫画誌の収録漫画の内容のレベルが高くなったのは、僕はマガジンに「巨人の星」の連載が始まってからだと思ってます。それまでにもちばてつやさんの漫画作品は子供向け雑誌の漫画としては、内容がけっこうレベルが高かったですけどね。マガジン·サンデー·キングは60年代後半に入って、それまで雑誌に定着してた子供読者が成長して、その読者たちを持ち上がったために、収録漫画の内容のレベルが高くなったというのはありましたね。小学生読者が中学生·高校生になって行ったから。70年代に入るともう、マガジン·サンデー·キングは大学生や大人も読んでたし(キングはどうだったんだろうな?70年代、キングは失速して行ったからなぁ)。

 マガジン連載の漫画版「隠密剣士」は、テレビドラマ「隠密剣士」の第3部(63年4月から6月いっぱい放送)「忍法伊賀十忍」のお話をベースに堀江卓先生オリジナルで描かれてますね。

※漫画「赤い風車」..(1)2010-9/30

※漫画「赤い風車」..(2)2010-10/18

※雑想バラエティーライフ「少年マガジンの隠密剣士」2017-2/11

※漫画「忍法十番勝負」2017-2/25

    

隠密剣士〔完全版〕 (マンガショップシリーズ 313) (日本語) コミック – 宣弘社【著】 (著), 堀江卓【画】 (著)

忍者シデン〔完全版〕 (マンガショップシリーズ 273) (日本語) コミック – 堀江 卓  (著)

矢車剣之助〔完全版〕―迅雷編―【上】 (マンガショップシリーズ 249) (日本語) コミック – 堀江 卓  (著)

矢車剣之助〔完全版〕―疾風編―【上】 (マンガショップシリーズ (246)) (日本語) コミック – 堀江 卓  (著)

天馬天平〔完全版〕【1】 (マンガショップシリーズ 411) (日本語) コミック – 堀江卓  (著)

◆隠密剣士第3部 忍法伊賀十忍 HDリマスター版DVDメモリアルセット<宣弘社75周年記念>大瀬康一 (出演), 大森俊介 (出演)  形式: DVD

◆甦るヒーローライブラリー「隠密剣士 参」DVD-BOX大瀬康一 (出演), 牧冬吉 (出演), 船床定男、外山徹 (監督)  形式: DVD

◆隠密剣士 第5部 忍法風摩一族 HDリマスター版 DVD3巻セット大瀬康一 (出演), 船床定男 (監督), 大森俊介 (出演)  形式: DVD

◆隠密剣士 第2部 忍法甲賀衆 HDリマスター版 DVD3巻セット大瀬康一 (出演), 船床定男 (監督), 大森俊介 (出演)  形式: DVD

隠密剣士 第1巻 (ジャンプコミックスデラックス) (日本語) コミック – かわの いちろう  (著)

隠密剣士 第6巻 (ジャンプコミックスデラックス) (日本語) コミック – かわの いちろう  (著)

    

 この間、ネット動画で劇場映画版の「隠密剣士」を見ました。初出1964年3月公開の分の映画です。この映画の内容は、連続テレビドラマ「隠密剣士」の第2部(63年1月から3月いっぱい放送)の「忍法甲賀衆」のお話を下敷きに映画オリジナルストーリーで物語を編んでますね。だから映画版の主人公·秋草新太郎と伊賀同心·霧の遁兵衛の対敵は、甲賀竜四郎と甲賀十三忍衆です。しかし物語の内容や舞台は違います。

  映画版のストーリーは、第11代将軍に就いたのは徳川家斉で、家斉はまだ幼少年齢だったため、それを不満に思う尾張徳川は密かに尾張家が将軍に成ろうと画策していた。江戸幕府の松平定信を中心とした幹部老中たちは、幕府お庭番を尾張に密偵として出していた。

  尾張家を将軍職に上げようとする共謀各大名の血印連判状を、尾張のお城から盗み出した公儀隠密伊賀忍者は、江戸まで入ったものの、追っ手である尾張家に雇われた甲賀竜四郎とその配下の甲賀忍者に深手を負わされる。瀕死の中で、釣り遊びに耽る浪人·秋草新太郎に連判状の隠し場所を託す。

  秋草新太郎の浪人の姿は世を忍ぶ仮の姿で、幼き第11代将軍·徳川家斉の腹違いの兄、松平信千代であった。秋草新太郎は連判状の有りかを知るとして、甲賀忍者に狙われる。川底から連判状を見つけ出した新太郎は松平定信に連判状を渡す。

  陰謀の証拠として連判状を尾張藩まで持って行く大役は、公儀隠密·伊賀忍者·組頭の高山太郎佐と決まったが、太郎佐が伊賀屋敷に一人で居るときに甲賀竜四郎と甲賀忍者に襲撃され、殺害されてしまう。

  一度は奪われた連判状だったが、秋草新太郎が奪い返し、今度は秋草新太郎と霧の遁兵衛ら伊賀同心たちで連判状を持って尾張まで行くこととなった。

  甲賀竜四郎配下の女忍者(くノ一)かすみがお恵と偽って、秋草新太郎に近づき、旅中の温泉宿で深夜、新太郎の持つ連判状を奪う。新太郎·伊賀同心対甲賀忍者隊の戦いの中で女忍者かすみは負傷するが、新太郎に介抱されて回復する。新太郎は甲賀忍者から連判状を取り返す。

  この女忍者かすみ役が、若き日の藤純子さん、今の富司純子(寺島純子)、女優の寺島しのぶのお母さんですね。

  この後も、甲賀竜四郎と甲賀忍者隊の襲撃が度々あり、間一髪、新太郎と伊賀同心たちは危機をかわして行く。

  霧の遁兵衛の采配が気に入らない伊賀同心の一人が裏切り、新太郎アイデアの作戦を敵に密告する。二手に別れて行動する新太郎ら少人数の中で裏切り忍者が味方を殺害するが、その伊賀同心裏切り忍者も用無しになったと敵忍者に殺される。

  新太郎に助けられて恩のある女忍者かすみが裏切り、新太郎らと別行動の伊賀忍者らに甲賀竜四郎の企みを教える。新太郎ら一行の元へと合流に走る伊賀忍者たち。

  山中の森の中の木々に囲まれた御堂前の空き地で、秋草新太郎と伊賀同心対甲賀竜四郎と甲賀忍者隊の決戦が始まる。壮絶な忍者対忍者の戦いが繰り広げられ、みんなが死んで行く。

  残ったのは、秋草新太郎と霧の遁兵衛と子供の周作、敵側は首領の甲賀竜四郎ただ一人となった。

  秋草新太郎と甲賀竜四郎の一騎討ちで新太郎の剣が勝つ。竜四郎が自爆の道連れにしようと企むが、女忍者かすみが飛び出して来て新太郎を救い、かすみは竜四郎と共に爆死する。

  尾張家当主は息子を庇い影腹を斬って、松平信千代の前で自害。連判状は秋草新太郎が霧の遁兵衛と周作(孤児)の前で川に捨てて水に流す。

  映画版「隠密剣士」はここで終わりです。

  「隠密剣士」の思い出というと、多分、小学二年生時だと思う、図画の時間で、どういう課題だったのか、自由課題だったのか絵を描かされて、小二だからクレパスだったのかそれとももう水彩使ってたのか、みんなB4くらいの画用紙に絵を描いてた。

  小二の僕は家では漫画浸けで、貸本漫画は毎日二冊借りて読むし月刊誌·週刊誌の漫画本買って読んでるし、漫画第一の子供生活を送ってた。当時の漫画本は忍者漫画がいっぱい載ってた。僕はたくさんの忍者漫画を読んで子供知識で忍者のことも知ってるつもりだった。

  学校の図画の時間に忍者の対決の絵を描いて、双方黒装束で刀と手裏剣なんか持って対峙する構図の絵だった。小二だから平面な絵だけどね。

  すると近くの席の女の子が僕の絵を見て口出しして来た。両方黒装束はおかしい、片方が白い忍者服でないと駄目だと言う。

  「隠密剣士」の影響なのだ。僕が家で読んでる漫画の忍者は全部黒装束なのだ。タマに冬の雪山で戦うときは保護色で白い服着てる。でも他は全部黒装束なのだ。勿論、敵も味方も。

  テレビ大人気の「隠密剣士」の中ではどういう訳か、公儀お庭番·伊賀同心の忍者は全員、白っぽい忍者服を着てた。モノクロ放送だから本当の色は解らないけど限りなく白に近いグレイに映ってた。女の子は「隠密剣士」の影響で、僕に片方の衣装を白色にしろと言って来るのだ。

  気の弱い僕は女の子の言うことに従った。せっかく、お城の石垣か何かバックに黒装束の忍者どおしが刀と手裏剣で構えてほぼ絵は完成してたのに、しぶしぶ僕は片方の忍者の服の色を白に塗り変えた。女の子は満足したのか自分の絵の作成に戻った。

  僕は何か納得が行かなかったのか、図画の時間で先生はそんなこと要求してないのに、画用紙の裏に自分の描いた絵の説明文を鉛筆でびっしり書いた。多分、そのときこれはテレビの「隠密剣士」の一場面を描いたものではないのだ、と訴えたかったんだと思う。僕としては家でいっぱい読んでる忍者漫画の影響を受けたものを描きたかったのだ。それを近くの席の女の子から無理やり「隠密剣士」にされてしまった。

  塗った色を上から塗り変えたくらいだから、クレパスじゃなくて水彩だったんだろうな、多分。

  もう幼少時の記憶だから細かいことは覚えてないが、提出した絵画の裏面にはびっしり鉛筆書きで、どうしてこの白装束と黒装束の忍者がお城の前で対決してるのか?を説明する文を書き込んでた。「隠密剣士」とは違うエピソードで。多分、ちょっとした物語エピソードを書いたんだと思う。何が何でも「隠密剣士」にしたくなかったのだ。家で読んでる忍者漫画の影響を大いに受けたエピソードだったろうけど。

 その後、提出した絵画の評価で先生にメッチャ怒られた。怒られたというか、馬鹿にされて軽蔑される感じで先生に「何こんな馬鹿なふざけたもの描いてるの!?」と、あんた馬鹿じゃないの!?という雰囲気で。確かにこのときは先生の怒る言葉に「馬鹿」が入ってたと思う。

  小学校時代の僕は毎日先生に怒られて毎日叩かれていた。このげんこつが毎日本当に痛かった。小学校は毎日毎日先生に怒られる生活だったから、後の僕の性格が自信がなくて弱気で悲観的な性格になったのだ。あの小学生時代に僕のネガティブ性格は形成されたんだな。

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