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シマーとブリガドーン現象

 今年1月に「アナイアレーション-全滅領域-」という映画をネット配信で見たんだけど、2018年公開のナタリー·ポートマン主演の米英合作SF映画ですね、SFといっても現代の地球上舞台で特に宇宙人や怪獣は出て来ない。怪物は出て来るけど。普通に地球上に生息する猛獣たちに非常によく似た怪物は。

 主演のナタリー·ポートマンの役は、軍隊に所属してた生物学者で今は大学教授で、亭主が現役の軍人。亭主が特別な任務で軍の仕事に出たきり、戻って来ない。しかしある日その亭主が家に帰って来たが様子が変。

 かなりイロイロ記憶がなくなっていて魂が抜けたようになってる亭主が血を吐いてぶっ倒れる。救急車呼んで主人公は重体の夫と共に病院へ向かってたけど、救急車が軍隊の車に包囲されて、夫婦は軍の施設に連れ込まれる。

 意識不明で重体のままの夫。ナタリー·ポートマンの役の主人公·レナーは軍の施設に軟禁される。やがてこの施設の管理者級の中年女性、心理学者のヴェントレスがやって来て、レナーにイロイロ説明する。

 軍の施設の前方の広大な森林の前に、モヤモヤッとした透明でグニャグニャうごめく壁は、シマーと呼ばれる広大な空間で広い森林をすっぽり覆っている。レナーの亭主は軍の秘密作戦で、部隊でこのシマー中に探索に入って行って、帰還したたった1人の隊員なのだと言う。

 レナーの亭主はシマーの中にいた期間のことは何一つ覚えてなかった。シマーに入る前の記憶もあやふやで、今や危篤に近い状態で意識不明で眠ったまま。

 シマー前の軍施設にいる女性学者たちは、心理学者·ヴェントレスをリーダーに女性ばかり4人で、シマーの中へ調査に入って行く計画があった。

 ネタバレになるんだけど、軍の忙しい任務で家を空けることの多い夫に、レナーは大学の同僚と浮気をしていて、その不貞を亭主に気付かれていた。本心は夫を愛していたレナーは不貞という裏切り行為の負い目心理も手伝って、重体で眠ったままの、愛する夫の謎を解明したいと、ヴェントレスたちの調査隊に参加する決意をする。

 女ばかりの調査隊5人は、森林の前に掛かる、透明だけどモヤモヤ~としてて細かくうごめいてる巨大なカーテンを通り抜けて、森林に入るが、気が付くと5人とも持参した小さなテントで寝てて、先に起きた隊員はもう何日も経っているのだと言う。ただ5人とも、明らかに食事など行った痕跡が残っているのに、その間の記憶が全くない。

 森林の中では一つの植物の茎からさまざまな花が咲いていたりして、シマーの中は普通の地上の状況と違っている。ボート小屋の跡にたどり着き、中に入ると巨大なワニがいて襲って来た。隊員たちで機銃掃射で殺したワニは、歯並びが他の生物の形状になっていて、レナーはシマー内では生物はみんな、普通の地上とは変異してしまっていると気付く。

 やがて5人は放棄されて荒廃した施設にたどり着き、隊長役のヴェントレスがそこで宿泊することを決める。 

 荒廃施設の中に施設の内壁に同化した人間の死体跡を見つけ、女性たちは驚愕する。先に入って帰還しないままの軍の部隊が残したメモリーカードをビデオ機器で再生すると、レナーの亭主が映っていて、瀕死の隊員の腹を切り裂き、腹の中で大蛇のようにズルズル蠢く、でっかい寄生虫のようなものが見える。他にも、植物と同化した前の部隊の隊員の死体跡も発見する。

 交代で見張りに着きながら、女性たちは夜の睡眠を取るが、眠れないレナーは心理学者·ヴェントレスに、シマーの中の異状について話し合う。その間に物音に様子を見に行った1人の女性隊員が、何か野性動物のようなものに連れ去られる。

 翌朝、明るくなって4人で連れ去られた1人を捜索に回る。やがてレナーが連れ去られた隊員を発見するが殺されて食べられた跡だった。

 4人は、誰もいない廃墟となった小さな村にたどり着き、そこで宿泊する。その村には人間の形そのものの樹木のような植物が無数に生えていた。

 女性ばかりの探索隊5人は、各々何だか闇を抱えているんですね。目的地は森を抜けた浜辺の灯台。ある廃屋の二階だったかに宿泊して一夜を明かすけど、その夜中に熊に似た怪物に襲撃され、仲間の1人を失う。先に連れ去られ殺された仲間を襲ったのと同じ怪物だ。

 この廃屋の中で、とにかく目的地まで進むか、シマーに侵入して来た森の入り口まで戻るかで激しい口論になり仲間割れする。銃を向けるような喧嘩ざたになるが、結局、目的地の灯台まで行くことになる。

 ヴェントレスは執念でシマーの謎を探る強い決意があり、自分1人でも目的地へ行くと言う。ネタバレになるけど、隊長役のヴェントレスはガンに侵され、余命宣告された身体だった。

 やがてバラバラに浜辺に出て、灯台に入って行く。灯台の前に仲間が死んで、灯台の中で隊長が死んで、灯台の中は摩訶不思議な状態になってて、レナーは幻想的な空間で不可思議な目に合う。亭主のクローンが出て来るのかな?自分のクローンができるんだっけか?細かなシーンは忘れた。

 特に灯台の中だけど、何か夢見てるような幻想的なシーンは、映画「惑星ソラリス」や「ソラリス」を思い出させる。ポーランドのSF作家-スタニスワフ·レムが1961年に書いた小説が原作の72年のソ連映画「惑星ソラリス」やそのリメイク、2002年のアメリカ映画「ソラリス」の、惑星ソラリスの大半を占める巨大な海が意識を持った生物で、惑星探検隊のロケット内の乗組員の脳の意識に感応~影響して、隊員たちの心に持つ強い気持ちに呼応した幻想を見せる。「アナイアレーション」のシマーの持つ特殊な影響力は、「ソラリス」の海の力と似たものを感じるんだよね。シマーの影響力の方が物理的に変えてしまうほどだから、もっとずっと強力ではあるけど。

 シマー内部では生き物を遺伝子レベルで変換して行ってるんですね。

 僕の個人的な感想で、昔々見た映画「惑星ソラリス」のテーマと似たものを感じたというだけですが。

 「アナイアレーション-全滅領域」という映画は単純に一言で感想言うと、訳の解らない映画ですね。ミもフタもない感想だけど。結局、最後にシマーとはいったい何なのか?謎が解き明かされる訳ではないし。見てて、これは異星人が地球侵略の前線基地として、広大な森をすっぽりシマーという異世界で覆ったんだろうか?とか思いました。

 昔々、地球侵略を狙う異星人が地球の構造そのものを、自分たちが棲めるように変えてしまおうとするSF小説を読んだことがあるし。

 手塚治虫先生の漫画作品に出て来る「魔神ガロン」は惑星を作り変えるロボットだけど、方法は違うけど、シマーによって地球の中の仕組みを変えてしまおうとしているのだろうか?とか想像しましたね。シマーはどんどん拡がって行ってる訳だから。侵略異星人が自分たちの理想の空間に地球上をジワジワ変えて行こうとしてるのかな?とか考えましたね。

 この映画は原作のSF小説があって、原作小説は大長編の3部作で、映画で描いてるのは小説の1冊目の第1部で、映画も続編を作る予定があったけど頓挫したんだとか。だから僕のような凡人の下の部類の頭の悪い者には、訳の解らない映画としてしか捉えられない。シマーの解決編を作って貰わないと、訳解んないまんまで放っぽり出されて困るよなぁ。

 異星人の侵略とかではなくて、他の次元から地球上とは全く違う空間が押し寄せて来たのかな?突然、異次元空間が地球上の空間に扉を開けて、地球上に異次元空間の侵食が始まり、ジワジワと地球上空間の侵食を拡げて行った…、とかね。何かSFとしては有りそうだよね。

 地球の3次元空間と隣り合わせた空間との間に裂け目ができて、そこから異世界空間が地球上空間を侵食し始めた…、とか。

 原作の小説が翻訳されてるのかどうか知らないけど、3部作の大長編の海外のSF小説を読もうとかいう気持ちにもならないし。それでなくとも高齢で目が悪くなり小説の活字読んで行くのに苦労してて、年寄りになってから小説離れしてるのに。勿論、原作を読んで見る気はありません。

 水木しげる先生の貸本漫画時代の墓場鬼太郎シリーズの単行本に、この「シマー」と似たような現象が出て来る。1964年に貸本出版の佐藤プロから刊行された、墓場鬼太郎シリーズ「ボクは新入生」のテーマとなっている“ブリガドーン現象”が、映画「アナイアレーション」の“シマー”とよく似た現象なんですよね。水木しげる先生が自作の中で描いたのが1964年、映画「アナイアレーション」の公開が2018年。

 墓場鬼太郎シリーズ「ボクは新入生」は、ある日、東京都調布市一帯がある空間の中に閉じ籠められ調布市の外側の市街と出入りできなくなる。この怪異現象を物語の中で識者が“ブリガドーン現象”と呼んだんですね。何か巨大な怪しい雲に覆われて調布市はその雲の中に閉じ籠められ、外側の市街からは中の様子が全く見えない。

 隔絶された調布市の中に居る人たちは、そのまま中で普通に暮らして行けてるんだけど、実はその調布市地域は妖怪の棲み家になってしまっている。妖怪に都市が支配されてしまったと言ってもいい。というか調布市民=人間と妖怪=化け物が共生して市民生活を送っているという状況かな。

 詳しくは水木しげる先生の貸本時代の作品「墓場鬼太郎シリーズ」の1巻、「ボクは新入生」を実際に読んで欲しいけど。都市が閉ざされた世界に閉じ籠められるって設定は、大きくは東京自体が怪しい雲に閉じ籠められる、小松左京先生のSF大作「首都消失」とかも似てますね。「首都消失」の巨大雲も中と外側の出入りができなくなる。

 日本SF界のレジェンド·小松左京先生の大作「首都消失」が単行本上梓されたのが1985年、東宝から実写映画として公開されたのが87年ですね。

 「ボクは新入生」の話では、中の調布市民たちは、妖怪たちが支配して妖怪たちが司り営む生活空間に、ムリムリ合わせて順応して行かざるを得ない。中の妖怪たちには“妖怪大学”もできていて、学生は全部、妖怪=化け物たち。ねずみ男も鬼太郎もこの妖怪大学の生徒になる。

 外側では、政府の大臣や高官たちや科学者が慌てふためき、何とか雲に覆われた調布市の中の人たちと連絡を取ろうと四苦八苦している。だが、雲の中に入ることもできなければ全く連絡も取れない。ちなみに映画「アナイアレーション」の異空間“シマー”の方では、中に入って行けましたけど。シマーの方は入って直ぐ意識がなくなり、テントで目が覚めると何日か経ってて、その間の記憶が全くないという現象だったけど。

 政府の高官たちや科学者が名付けた“ブリガドーン現象”の中の様子をどうにかして知りたいと、日本政府はチベットからラマ教の高僧を招聘する。政府高官など日本の要人が後ろで見守る中、高僧のチンポ氏が僧衣の頭巾を剥ぐと、両目の上の額に第3の目があり、しばらく調布市を覆う雲を睨み続ける。

 僕は小学生の頃、近所の貸本屋でこの「ボクは新入生」を3回くらい借りて読んでる。小一·秋~小五·春までほとんど毎日通った貸本屋で、新しく借りる漫画本がないときは一度読んだ好みの漫画をもう一度借りることもあった。貸本の「墓場鬼太郎シリーズ」は好きな漫画だったしね。

 大人になってから貸本漫画の「墓場鬼太郎シリーズ」が漫画文庫で復刻になり、何度も再読している。また水木しげる先生が貸本から市販雑誌に移って、少年マガジンなどで連載や短編読み切りを持ったとき、週刊少年マガジンの「ゲゲゲの鬼太郎」の連載の中で貸本「ぼくは新入生」のリメイク作品も読んでるし、コミックス単行本や漫画文庫分で再読している。マガジン連載の「墓場の鬼太郎」時代か「ゲゲゲの鬼太郎」にタイトル換えしてからかはよく覚えてないけど。

 済みません、引っ越しのとき、「ボクは新入生」の復刻版の漫画文庫を捨ててしまったので、はっきりした内容を確かめることができません。違う出版社から出たものを二冊持ってたんだけど。

 調布市を覆う雲を見て高僧·チンポ氏が何と言ったか記憶してません。「墓場鬼太郎」の文庫版復刻は何度もされてるし、講談社刊行の「水木しげる漫画大全集」の中にも勿論収録されています。この漫画に興味を持った方は一読されてみては。まぁ、古い漫画ファンには有名な漫画だけど。若い人たちが貸本時代の漫画を読むとみんな「絵がヘタクソ」という感想を言うけど。今から60年近く昔の漫画だしなぁ。

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貸本版墓場鬼太郎 水木しげる漫画大全集 (全5巻)

墓場鬼太郎 2 ボクは新入生/アホな男 (水木しげる貸本漫画傑作選) 文庫 – 水木 しげる  (著)

 水木しげる先生の貸本漫画時代の人気作「墓場鬼太郎シリーズ」を、講談社の週刊少年マガジンと別冊少年マガジンでタイトル「墓場の鬼太郎」で1965年から不定期連載を始め、67年にタイトル「墓場の鬼太郎」のまま週刊少年マガジンで毎週レギュラー連載し、68年からタイトル「ゲゲゲの鬼太郎」としてテレビ·アニメ放送が開始されたのを機に、マガジンの連載漫画もタイトル「ゲゲゲの鬼太郎」に変わった。

 マガジンの連載分の中で、貸本時代の「ボクは新入生」のお話は「朧車」のお話としてリメイクされた。“ブリガドーン現象”はマガジン連載分では妖怪·朧車の妖術によって起こされた怪異現象ということに改変された。

 「ブリガドーン現象」の由来はもともとはスコットランドの昔々の伝説的な話からなんですね。「ブリガドーン」ってシンプルな直接な意味は、スコットランドのエアという地域に流れるドン川に架かるドン橋のことです。ブリガはブリッジのこと。ドン川に架かるブリッジでブリガドーン。

 水木しげる先生の1964年の「ボクは新入生」の中で描かれた“ブリガドーン現象”のブリガドーンって、水木先生が造って勝手に名付けたものと思ってたんですが、実は由来があってスコットランドに実在する昔々の小さな石橋で、スコットランドのエア地域に伝わる伝説からだったんですね。

 スコットランドのその伝説は、百年に一度現れる不思議な幻の村がある、というファンタジーな物語らしい。この伝説を元にその後、ミュージカルや映画が作られ、特に1954年に作られたアメリカ映画は、若かりし頃の水木しげる先生も見ているそうですね。

 ブリガドーン現象についてはネットで検索して調べました。wikipediaにもあるし、スコットランド伝説のブリガドーンと水木しげる先生の漫画作品を解説してくれてるサイトもありました。

 百年に一度現れる幻の村、ブリガドーンを訪ねたアメリカ人男性がブリガドーン村の美しい娘と恋に落ちる物語で、ミュージカル化され、やがて映画になったんだとか。

 このアメリカ映画からヒントを得て、当時貸本漫画を描いていた水木先生が、ユーモラスな怪異漫画を作り上げた。それが墓場鬼太郎シリーズの「ボクは新入生」ですね。水木先生の漫画の中にも、恋愛エピソードはちゃんとあって、幹部妖怪の娘·カロリーヌちゃんとねずみ男が恋に落ちる。ブリガドーン現象が解消するとカロリーヌちゃんも消えて、ねずみ男の恋は悲恋に終わるけど。

 週刊少年マガジンの1968年連載分の「ゲゲゲの鬼太郎」に、64年の「ボクは新入生」のリメイクのお話「朧車」の巻が連載されたけど、このお話をベースに東映で劇場版長編アニメ映画が作られた。68年12月公開の「ゲゲゲの鬼太郎-激突!異次元妖怪の大反乱」というタイトルのアニメ映画。68年12月は僕は中一ですね。この映画のことは全然知らなかったです。だから当然見てない。この時代のテレビ放送のモノクロ「ゲゲゲの鬼太郎」は毎週見てたけど。

 漫画の連載もテレビのアニメ放送も、60年代から2020年まで、何度も何度も繰り返し新作が作られて来ましたが、テレビ放送アニメ第6期の作品中にも、“ブリガドーン現象”設定のエピソードがあるそうですね。

 僕はアニメは大人になってからほとんど見ない方なので、タマ~に見ることもありますが、この2018年から2020年まで放送されたアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」第6期も見ていません。だから第6期中に描かれた1エピソードが「ボクは新入生」をベースにしたものか「朧車」をベースにしたものか知りませんけど、とにかく“ブリガドーン現象”の巨大怪奇雲が都市を包み込んで、内部を凶悪な妖怪たちが支配し、鬼太郎たち正義の妖怪がビッグベアード率いる悪の妖怪軍と死闘を繰り広げる、といったお話なんでしょう。多分。

 上記文中に「魔神ガロン」の名前を出したので、「アナイアレーション」とも「ボクは新入生」とも関係ないのですが、「魔神ガロン」が懐かしいので僕自身の懐古趣味で「魔神ガロン」のことを書きます。

 手塚治虫先生のSF漫画「魔神ガロン」は、秋田書店の戦後に出版した児童雑誌「月刊·冒険王」の1959年7月号から62年7月号に連載されました。「冒険王」の創刊が1949年(昭和24年)だから創刊10年目に連載が始まった人気漫画ですね。

 僕が漫画雑誌を読むようになるのが1962年の暮れか63年の初め頃からですから、「魔神ガロン」が連載されてた当時の「冒険王」は読んでいません。「魔神ガロン」は冒険王で連載が終了した後、同じ秋田書店発行の同じく児童月刊誌「まんが王」に、全く同じものが再録されます。再掲載(連載)と言ってもいいか。僕はこの「まんが王」連載分で「魔神ガロン」を読みました。1965年頃だと思います。後に大人になってコミックスや漫画文庫で読んでますが。

 僕が漫画を読み始めた頃の、光文社の児童月刊誌「少年」の看板漫画の一つ、「鉄腕アトム」の調度その当時連載されてたエピソードが「アトム対ガロンの巻」で、僕はこの時期、近所の貸本屋から雑誌「少年」を借りて来て、「アトム対ガロンの巻」を読んでると思うんだけど、後に全く記憶してません。僕の「鉄腕アトム」の一番古い記憶は、「少年」63年3月号から始まった「悪魔のハチの巻(ダーマ宮殿の巻)」からですね。まぁ、まだ6歳でしたからね。「悪魔のハチの巻」のときは7歳になったばかりくらいかな。

 万能ロボット·ガロンは宇宙から送られて来る惑星開拓用ロボットで、宇宙からはバラバラの部品が球形に固められて飛んで来て、地上で無数の部品としてバラバラになる。プラモデルみたいというよりもレゴブロックみたいにバラバラで、それが一つ一つ組み合わせて行ってヒト形の巨人ロボットになる。

 ガロンは惑星開拓用というくらいだからもの凄く強い。戦闘時は無数にバラバラになって一つ一つが空を飛び、自由に組み合わさってガロンになったり部分部分になったりする。バラバラで飛んで行くときは一個一個が岩石みたいですね。

 「アトム対ガロン」のとき、ガロンは惑星開拓用だから、その星の大気の生成も変えるんだっけかな?重力を変えれるんだっけ?温度を変えれるんだっけ?忘れてる。

 少年画報社の月刊誌「少年画報」に連載された「マグマ大使」に登場したときは、ガロンは黒くて、ブラックガロンという名前だった。マグマ大使と対決したときは自由自在にバラバラになったり巨人体型になったりして、マグマを苦戦させた。

 ガロンの心臓には、というかガロンの左胸の部分がフタが開いて、心臓のように中にピックという幼児形の小さなロボットが入るようになってる。この子供ロボット·ピックは自立した意思のあるロボットで、自分で考え行動できる小さな子供の姿のロボット。

 魔神ガロンはこのピックが胸に納まってるときはおとなしくて落ち着いてて穏やかな巨人ロボットだけど、ピックが心臓部に入ってないとピックを探して暴れ回り、都市を破壊する。

 映画「アナイアレーション-全滅領域」とも「墓場鬼太郎シリーズ」とも関係ないけど、子供の頃読んだ漫画「魔神ガロン」が懐かしくて、ついついガロンのことをイロイロ書いてしまった。

 

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隠密剣士

  昭和30年代後半から昭和40年代アタマに小学生だった僕たちに取って、調度その時代は、テレビ·漫画·映画と忍者ブームが巻き起こってました。中でも1962年10月から放送が始まった連続時代劇「隠密剣士」では63年1月からの第2シリーズから“忍者もの”にシフトすると、大人気番組となり当時の“忍者ブーム”を牽引する高視聴率番組としてシリーズが長きに渡って続きました。

  当時の実写剣術·忍者アクション時代劇「隠密剣士」は第2シーズンから、1965年の最終第10シーズンまで全て対敵相手を忍者集団として、主人公は剣の達人のサムライであるものの、正義と悪の忍者合戦ものとして大人気ドラマとして続きました。また65年4月からも主人公の配役を替え「新·隠密剣士」を放送しました。「新·隠密剣士」はやはり忍者アクション時代劇として第3シーズンまで65年12月いっぱいまで放送が続きました。

  僕の4歳5歳頃から小学生いっぱいくらいまではテレビでは時代劇が多く、大人向け時代劇も子供向け時代劇も各番組放送されてました。僕が小学校に上がった頃までは、特に“忍者もの”というのでなく、覆面を被った剣の達人の正義の味方が悪いサムライ集団を斬って斬りまくる勧善懲悪ドラマが多かったですね。剣術ヒーローも“忍者”ではなくて、超能力みたいな“妖術”を使っていた。

  この時代までは子供向け時代劇では“忍術”と“妖術”の区別があいまいで、飛んだり跳ねたりも煙玉を爆発させて消えたりもするが、空中にパッと消えたり大きなガマを出したり刀を巨大化して刀に乗って飛行したり、(モーゼの十戒みたく)海の波や海水を割って陸地の道を作ったり、ムチャクチャな超能力も使ってた。(空中に飛んでパッと消える超能力は現代劇ヒーローもよく使ってた。当時の特撮技術ではやりやすかったんでしょうね。)

  この時代の“忍者ブーム”は大人たちには62年公開の、市川雷蔵主演の大映映画「忍びの者」のヒットが火着け役で、この「忍びの者」は人気映画としてシリーズ化して66年まで8作も作られた。子供たちには週刊少年サンデーに61年から連載が始まった、横山光輝作画の「伊賀の影丸」のヒットが大きいですね。「伊賀の影丸」も66年まで長期連載された。そして連続テレビドラマ「隠密剣士」の長期放送が“忍者ブーム”を支えた。

  2000年代に入ってからこっち、衛星放送とか各ネット動画などで昭和時代のさまざまな時代劇を放映して来てますが、昭和の連続テレビドラマ「隠密剣士」もいろんなところで何度も放映されてますね。ネット動画で今から五十数年前のモノクロ「隠密剣士」が視聴できたりします。

 連続テレビドラマで大人気を得た「隠密剣士」は、劇場版映画が東映で1964年に2本制作されました。テレビドラマも劇場映画もモノクロでしたね。3月公開の「隠密剣士」は対敵が甲賀竜四郎と甲賀忍群、8月公開の「続·隠密剣士」では対敵が風魔小太郎と風魔忍群の全編忍者アクション剣術映画でした。

  漫画版の「隠密剣士」は堀江卓氏の作画で1963年の週刊少年マガジン第23号から32号まで調度10週連載されました。テレビドラマの「隠密剣士」は子供から大人まで大人気で放送されていたのに、どういう訳かコミカライズ「隠密剣士」は短期連載で打ち切りのようにストーリーも中途半端で終わっちゃいましたね。本家·実写時代劇「隠密剣士」に対して少年誌·漫画版はあんまり人気が出なかったのかなぁ?どうしてか理由はよく解りませんが。

  江戸時代中期、宝歴~文政に生きた、江戸幕府老中·松平定信が、徳川御三家の一つ、尾張藩尾張家の幕府に対する動きが怪しいと見て、京都まで出掛ける際、それとなく尾張家の動向を探ることとなった。これに対して尾張方は極秘に伊賀忍者の部隊·百々地十忍を雇い入れ、京都までの道中、松平定信の暗殺を謀ることを企てた。

  松平定信の京都までの長旅の道中の警護は、幕府お庭番·伊賀同心が行い、定信一行を表に影に護衛して行く。ここにルーツは同じ伊賀忍者の幕府·伊賀同心対怪忍者集団·百々地十忍の戦いが幕を開けた。

  先ず、松平定信一行が立って直ぐに百々地忍者隊の襲撃に合うが、敵忍者の襲った籠に乗っていたのは、隠密剣士こと秋草新太郎であった。秋草新太郎は伊賀同心と共に松平定信の護衛の旅に出ていたのだ。老中·松平定信は別行動で旅立っていて、こちらの籠は影武者籠で囮だった。

  秋草新太郎と霧の遁兵衛他伊賀同心対、百々地源九郎率いる百々地十忍の戦いが続く。百々地忍者隊の使うコマ十字手裏剣に苦戦する伊賀同心だったが、柳生新陰流の達人·秋草信之助の必殺剣で敵を退散させる。

  その後も秋草新太郎への襲撃を繰り返す百々地十忍。虫寄せの秘術を使って秋草新太郎を追い詰めた敵頭領·百々地源九郎だったが今一歩のところで新太郎の秘剣の前に返り討ちに合う。その際、片手で秋草新太郎の顔をビタン!と張って逃走する。

  百々地源九郎の顔は粘土質でできていて、どんな顔にも造り変えることができ、顔を張ったときに掌に新太郎の顔を記憶させていて(顔を写し取っていて)、百々地源九郎は秋草新太郎そっくりに化けてしまう。

  秋草新太郎そのものに変装した百々地源九郎は、江戸の花火師父娘の父親の方を試し斬りして殺してしまう。娘は代官所へ訴え出て、本物の秋草新太郎そのものは役人たちに御用として追われることとなる。

  斬り殺された父親の恨みを晴らそうと花火師の娘·おつるは、執拗に秋草新太郎を追う。

  秋草新太郎に化けた百々地源九郎は松平定信一行が宿を取る旅籠町に入るが、伊賀同心·霧の遁兵衛に怪しまれる。

  松平定信の泊まる部屋に秋草新太郎として入った百々地源九郎であったが、部屋の灯りを部屋中に焚いていて、異常な暑さに、熱で源九郎自慢の粘土質の顔が溶け始める。元の顔に戻ってしまった源九郎が定信に斬り掛かると、定信ではなく、松平定信に化けた霧の遁兵衛だった。

  部屋の天井から宿の屋根へと逃げる百々地源九郎。追う伊賀同心との戦いで秘術を使う源九郎の前に現れたのは本物の秋草新太郎だった。竜巻の術と闇渡りの術で逃げてしまった源九郎。

  新太郎のアイデアで源九郎に投げた印籠にハチミツの虫寄せが仕掛けてあり、伊賀同心三人は源九郎の逃走中に落ちたハチミツに群がる蟻を伝って、源九郎の逃走先を探す。一方、百々地十忍は箱根の山岳地帯の谷間の道で松平定信一行の襲撃を画策していた。

  伊賀同心二人は追っ手に気付いた源九郎と配下に寄って返り討ちに合う。逃げる残った伊賀同心は味方に敵の作戦を知らせに戻るが、途中、敵忍者に傷を負わされ、秋草新太郎に出会ったところで息絶える。

  草原で秋草新太郎対百々地十忍の戦いが始まり、敵忍者の忍法に苦戦するが新太郎の必殺剣で敵方忍者三人を倒す。これで百々地十忍は七忍となった。

  白馬の足に爆薬を仕掛けて暴れ馬として、谷間を通る松平定信一行に乱入させる、源九郎発案のひづめ爆弾の作戦は百々地側忍者に化けた秋草新太郎の活躍で空振りに終わり、定信一行は無事に谷を通る。

  秋草新太郎を父の仇と思い込んでる、花火師の娘·おつるは度々新太郎を襲い失敗し、ついに百々地源九郎一味と腕を組む。火薬の扱いに長けているおつるは、海を船で行く松平定信一行を海上で襲撃することを提案する。

  海にハリボテで作った幾つもの偽の岩に、おつると百々地源九郎一味が隠れて、おつるの父親が開発したという新火薬で定信一行の乗る大型の船を襲う。偽岩から現れた忍者たちは弓矢に装着した爆薬で大型船を射ち、船をこっぱ微塵に爆破する。

  松平定信を船ごと始末して目的を果たしたと思った百々地源九郎は、一部始終を目撃している花火師の娘·おつるを殺害しようとする。アイデアと新火薬を提供したおつるは納得が行かず源九郎たちを非難する。

  そこに秋草新太郎が現れ、おつるの命を救う。

  大型船に乗っていたのは秋草新太郎と伊賀同心だけで、松平定信は霧の遁兵衛たちに守られながら小さな漁船で目的地に向かっていた。爆破された大型船で生き残ったのは秋草新太郎だけだった。

  秋草新太郎の柳生新陰流対百々地伊賀忍者たちとの戦いが再び始まり、劣勢の敵忍者団の中、百々地源九郎の粘土質の顔の秘密がおつるにバレる。おつるは実は自分の父親を試し斬りで殺害したのは百々地源九郎だったのだと理解する。

  自分たちの味方をかなり失った百々地源九郎は逃走し、松平定信が到着するであろう浜辺に連絡を送り、浜辺で待機する味方忍者にその地で松平定信一行を始末するよう指令する。

  浜辺で定信一行を待ち受ける敵忍者二人は強敵だった。窮地に立つ源九郎に甲賀の里から臨時召集された甲賀忍者の兄弟だった。浜辺の安全を確かめる伊賀同心たちはたちまち殺された。一人は忍者衣装のふところに小人の兄弟が隠れていて、油断した相手を突然飛び出して刺し殺すのだ。今一方は剣の達人で長い刀を空中で使う剣法で伊賀同心を斬り殺す。

   甲賀忍者の強敵兄弟対秋草新太郎と伊賀同心の浜辺での決戦で、窮地に陥る公儀隠密側だったが、秋草新太郎の必殺剣法で逆転し、新太郎の秘剣が甲賀兄弟三人を斬り倒す。

  浜辺に現れた伊賀百々地 組の頭領·百々地源九郎だったが、忍者志願の子供に「卑怯な戦いはしないで」と諭され、源九郎はこれからは秋草新太郎や伊賀同心と正々堂々と戦うと誓ってこの場を去って行く。

  秋草新太郎の連れていた子供と忍者志願の子供とおつるの三人は江戸に帰ることにして、松平定信一行と秋草新太郎は再び京都を目指しての旅に着いた。

  と、これで週刊少年マガジンに63年に10週連載された、堀江卓氏作画の漫画版「隠密剣士」は終了した。ストーリーは中途半端な終わり方でしたね。

 漫画版の方は突っ込みどころ満載でしたが60年代前半頃の少年漫画誌は、どれも内容が小学生読者対象くらいのレベルでしたからね。子供向け漫画で内容もシンプルだし、そんなにストーリーも凝ってなかったし、中には陳腐な内容があったり信憑性に欠けても、子供漫画として誰も文句を着けなかった。

 

  そもそも、テレビドラマも映画版も漫画も、主人公の剣客·秋草新太郎が子供を連れて旅に出ている。多分、連れてる子供は孤児なんでしょうが、それでもいつ敵忍者に殺されるかも知れない危険な隠密旅に子供連れで回ってる。子供を人質に取られるリスクも大きいのに。

  漫画版ラストの締めくくりも、忍者隊の首領が「これからは正々堂々と戦う」と誓うのはおかしいでしょう。忍者の主な仕事は諜報活動と暗殺ですよね。“忍び”というくらいですからね。スパイ活動や暗殺を正々堂々となんかやる訳がない。奇襲したり騙したり、どんな汚い手を使ってでも目的を果たすのが忍者でしょうに。

 百々地源九郎の“粘土質の顔”というのも、まるでSF のミュータントみたいだし、掌で相手の顔をバチン!と張って顔を掌に写しとるという発想も凄い。

  打ち切りみたくたった10週で突然、ストーリーも中途半端に物語終了するんで、最後のシメはできるだけハッピーエンドに近い形で終わらせたのでしょう。何しろ当時のマガジンの読者対象は小学生ですから。

  この時代の少年漫画誌は小学一年生~五、六年生くらいの子供が読者対象だから、別にストーリーが“子供だまし”みたいのでも世間の誰からも何ら文句は出なかった。むしろ教育熱心な親御さんたちは「漫画なんて低俗だから読むな」と叱ってたくらいでしょう。当時の漫画で特に大人が文句を着けたのは、ハレンチと暴力と残酷さですよね。

  僕が生まれる前から小学校上がる前頃には手塚治虫の漫画も当時のPTA にやり玉に上がったそうだし、僕が少年漫画を愛読してた時代、永井豪の「ハレンチ学園」はハレンチで低俗過ぎると、白土三平の忍者漫画は残酷描写が問題視されて、当時の“良心的な”大人たちから文句を着けられてましたね。

 少年漫画誌の収録漫画の内容のレベルが高くなったのは、僕はマガジンに「巨人の星」の連載が始まってからだと思ってます。それまでにもちばてつやさんの漫画作品は子供向け雑誌の漫画としては、内容がけっこうレベルが高かったですけどね。マガジン·サンデー·キングは60年代後半に入って、それまで雑誌に定着してた子供読者が成長して、その読者たちを持ち上がったために、収録漫画の内容のレベルが高くなったというのはありましたね。小学生読者が中学生·高校生になって行ったから。70年代に入るともう、マガジン·サンデー·キングは大学生や大人も読んでたし(キングはどうだったんだろうな?70年代、キングは失速して行ったからなぁ)。

 マガジン連載の漫画版「隠密剣士」は、テレビドラマ「隠密剣士」の第3部(63年4月から6月いっぱい放送)「忍法伊賀十忍」のお話をベースに堀江卓先生オリジナルで描かれてますね。

※漫画「赤い風車」..(1)2010-9/30

※漫画「赤い風車」..(2)2010-10/18

※雑想バラエティーライフ「少年マガジンの隠密剣士」2017-2/11

※漫画「忍法十番勝負」2017-2/25

    

隠密剣士〔完全版〕 (マンガショップシリーズ 313) (日本語) コミック – 宣弘社【著】 (著), 堀江卓【画】 (著)

忍者シデン〔完全版〕 (マンガショップシリーズ 273) (日本語) コミック – 堀江 卓  (著)

矢車剣之助〔完全版〕―迅雷編―【上】 (マンガショップシリーズ 249) (日本語) コミック – 堀江 卓  (著)

矢車剣之助〔完全版〕―疾風編―【上】 (マンガショップシリーズ (246)) (日本語) コミック – 堀江 卓  (著)

天馬天平〔完全版〕【1】 (マンガショップシリーズ 411) (日本語) コミック – 堀江卓  (著)

◆隠密剣士第3部 忍法伊賀十忍 HDリマスター版DVDメモリアルセット<宣弘社75周年記念>大瀬康一 (出演), 大森俊介 (出演)  形式: DVD

◆甦るヒーローライブラリー「隠密剣士 参」DVD-BOX大瀬康一 (出演), 牧冬吉 (出演), 船床定男、外山徹 (監督)  形式: DVD

◆隠密剣士 第5部 忍法風摩一族 HDリマスター版 DVD3巻セット大瀬康一 (出演), 船床定男 (監督), 大森俊介 (出演)  形式: DVD

◆隠密剣士 第2部 忍法甲賀衆 HDリマスター版 DVD3巻セット大瀬康一 (出演), 船床定男 (監督), 大森俊介 (出演)  形式: DVD

隠密剣士 第1巻 (ジャンプコミックスデラックス) (日本語) コミック – かわの いちろう  (著)

隠密剣士 第6巻 (ジャンプコミックスデラックス) (日本語) コミック – かわの いちろう  (著)

    

 この間、ネット動画で劇場映画版の「隠密剣士」を見ました。初出1964年3月公開の分の映画です。この映画の内容は、連続テレビドラマ「隠密剣士」の第2部(63年1月から3月いっぱい放送)の「忍法甲賀衆」のお話を下敷きに映画オリジナルストーリーで物語を編んでますね。だから映画版の主人公·秋草新太郎と伊賀同心·霧の遁兵衛の対敵は、甲賀竜四郎と甲賀十三忍衆です。しかし物語の内容や舞台は違います。

  映画版のストーリーは、第11代将軍に就いたのは徳川家斉で、家斉はまだ幼少年齢だったため、それを不満に思う尾張徳川は密かに尾張家が将軍に成ろうと画策していた。江戸幕府の松平定信を中心とした幹部老中たちは、幕府お庭番を尾張に密偵として出していた。

  尾張家を将軍職に上げようとする共謀各大名の血印連判状を、尾張のお城から盗み出した公儀隠密伊賀忍者は、江戸まで入ったものの、追っ手である尾張家に雇われた甲賀竜四郎とその配下の甲賀忍者に深手を負わされる。瀕死の中で、釣り遊びに耽る浪人·秋草新太郎に連判状の隠し場所を託す。

  秋草新太郎の浪人の姿は世を忍ぶ仮の姿で、幼き第11代将軍·徳川家斉の腹違いの兄、松平信千代であった。秋草新太郎は連判状の有りかを知るとして、甲賀忍者に狙われる。川底から連判状を見つけ出した新太郎は松平定信に連判状を渡す。

  陰謀の証拠として連判状を尾張藩まで持って行く大役は、公儀隠密·伊賀忍者·組頭の高山太郎佐と決まったが、太郎佐が伊賀屋敷に一人で居るときに甲賀竜四郎と甲賀忍者に襲撃され、殺害されてしまう。

  一度は奪われた連判状だったが、秋草新太郎が奪い返し、今度は秋草新太郎と霧の遁兵衛ら伊賀同心たちで連判状を持って尾張まで行くこととなった。

  甲賀竜四郎配下の女忍者(くノ一)かすみがお恵と偽って、秋草新太郎に近づき、旅中の温泉宿で深夜、新太郎の持つ連判状を奪う。新太郎·伊賀同心対甲賀忍者隊の戦いの中で女忍者かすみは負傷するが、新太郎に介抱されて回復する。新太郎は甲賀忍者から連判状を取り返す。

  この女忍者かすみ役が、若き日の藤純子さん、今の富司純子(寺島純子)、女優の寺島しのぶのお母さんですね。

  この後も、甲賀竜四郎と甲賀忍者隊の襲撃が度々あり、間一髪、新太郎と伊賀同心たちは危機をかわして行く。

  霧の遁兵衛の采配が気に入らない伊賀同心の一人が裏切り、新太郎アイデアの作戦を敵に密告する。二手に別れて行動する新太郎ら少人数の中で裏切り忍者が味方を殺害するが、その伊賀同心裏切り忍者も用無しになったと敵忍者に殺される。

  新太郎に助けられて恩のある女忍者かすみが裏切り、新太郎らと別行動の伊賀忍者らに甲賀竜四郎の企みを教える。新太郎ら一行の元へと合流に走る伊賀忍者たち。

  山中の森の中の木々に囲まれた御堂前の空き地で、秋草新太郎と伊賀同心対甲賀竜四郎と甲賀忍者隊の決戦が始まる。壮絶な忍者対忍者の戦いが繰り広げられ、みんなが死んで行く。

  残ったのは、秋草新太郎と霧の遁兵衛と子供の周作、敵側は首領の甲賀竜四郎ただ一人となった。

  秋草新太郎と甲賀竜四郎の一騎討ちで新太郎の剣が勝つ。竜四郎が自爆の道連れにしようと企むが、女忍者かすみが飛び出して来て新太郎を救い、かすみは竜四郎と共に爆死する。

  尾張家当主は息子を庇い影腹を斬って、松平信千代の前で自害。連判状は秋草新太郎が霧の遁兵衛と周作(孤児)の前で川に捨てて水に流す。

  映画版「隠密剣士」はここで終わりです。

  「隠密剣士」の思い出というと、多分、小学二年生時だと思う、図画の時間で、どういう課題だったのか、自由課題だったのか絵を描かされて、小二だからクレパスだったのかそれとももう水彩使ってたのか、みんなB4くらいの画用紙に絵を描いてた。

  小二の僕は家では漫画浸けで、貸本漫画は毎日二冊借りて読むし月刊誌·週刊誌の漫画本買って読んでるし、漫画第一の子供生活を送ってた。当時の漫画本は忍者漫画がいっぱい載ってた。僕はたくさんの忍者漫画を読んで子供知識で忍者のことも知ってるつもりだった。

  学校の図画の時間に忍者の対決の絵を描いて、双方黒装束で刀と手裏剣なんか持って対峙する構図の絵だった。小二だから平面な絵だけどね。

  すると近くの席の女の子が僕の絵を見て口出しして来た。両方黒装束はおかしい、片方が白い忍者服でないと駄目だと言う。

  「隠密剣士」の影響なのだ。僕が家で読んでる漫画の忍者は全部黒装束なのだ。タマに冬の雪山で戦うときは保護色で白い服着てる。でも他は全部黒装束なのだ。勿論、敵も味方も。

  テレビ大人気の「隠密剣士」の中ではどういう訳か、公儀お庭番·伊賀同心の忍者は全員、白っぽい忍者服を着てた。モノクロ放送だから本当の色は解らないけど限りなく白に近いグレイに映ってた。女の子は「隠密剣士」の影響で、僕に片方の衣装を白色にしろと言って来るのだ。

  気の弱い僕は女の子の言うことに従った。せっかく、お城の石垣か何かバックに黒装束の忍者どおしが刀と手裏剣で構えてほぼ絵は完成してたのに、しぶしぶ僕は片方の忍者の服の色を白に塗り変えた。女の子は満足したのか自分の絵の作成に戻った。

  僕は何か納得が行かなかったのか、図画の時間で先生はそんなこと要求してないのに、画用紙の裏に自分の描いた絵の説明文を鉛筆でびっしり書いた。多分、そのときこれはテレビの「隠密剣士」の一場面を描いたものではないのだ、と訴えたかったんだと思う。僕としては家でいっぱい読んでる忍者漫画の影響を受けたものを描きたかったのだ。それを近くの席の女の子から無理やり「隠密剣士」にされてしまった。

  塗った色を上から塗り変えたくらいだから、クレパスじゃなくて水彩だったんだろうな、多分。

  もう幼少時の記憶だから細かいことは覚えてないが、提出した絵画の裏面にはびっしり鉛筆書きで、どうしてこの白装束と黒装束の忍者がお城の前で対決してるのか?を説明する文を書き込んでた。「隠密剣士」とは違うエピソードで。多分、ちょっとした物語エピソードを書いたんだと思う。何が何でも「隠密剣士」にしたくなかったのだ。家で読んでる忍者漫画の影響を大いに受けたエピソードだったろうけど。

 その後、提出した絵画の評価で先生にメッチャ怒られた。怒られたというか、馬鹿にされて軽蔑される感じで先生に「何こんな馬鹿なふざけたもの描いてるの!?」と、あんた馬鹿じゃないの!?という雰囲気で。確かにこのときは先生の怒る言葉に「馬鹿」が入ってたと思う。

  小学校時代の僕は毎日先生に怒られて毎日叩かれていた。このげんこつが毎日本当に痛かった。小学校は毎日毎日先生に怒られる生活だったから、後の僕の性格が自信がなくて弱気で悲観的な性格になったのだ。あの小学生時代に僕のネガティブ性格は形成されたんだな。

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●漫画&映画・・ 「20 世紀少年」

 実写版「20世紀少年」は3部作の大作映画だけど、スケールの大きさを誇示するには、何か内容は陳腐に見えるよーなシロモノに、僕には見える。SFなのかも知れないが“大作映画”と呼ぶにはお粗末な内容だと思える。

 大長編漫画であるコミックス全22巻の途方もない長さの内容を、実写でお話を取り急ぎ説明した、というだけの内容にも見える。極端な言い回しになるかも知れないが、この大長編SFはこんな物語なんですよ、と紹介しただけの映画に見える。

 浦沢直樹の魂心の力作漫画作品「20世紀少年」は、映画では、あんなものではない、というくらいに表現出来ておらず、作品はやはり漫画でしか生きておらず、作品の面白さ、高度な内容は漫画でしか味わえない。やはり漫画作品と映画は別物だ。

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