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●漫画・・ 「ウルトラマン」..(3)

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 週刊少年マガジン1966年7月から67年3月まで連載された、TV特撮のコミカライズ、楳図かずお版「ウルトラマン」の文庫復刻、講談社漫画文庫版上下全2巻の下巻収録は、「ミイラ怪獣ドドンコの巻」と「怪彗星ツィフォンの巻」と「メフィラス星人の巻」の3作です。いずれも楳図版ウルトラマンは、漫画テイストが怖い雰囲気の作品。巨人ヒーロー活劇、なんですけど、昭和の恐怖漫画の第一人者が描くと、ウルトラマンも、恐怖テイストが雰囲気として全面に覆い流れてしまう。上巻収録の「バルタン星人の巻」も怖い雰囲気が強かった。えりまき恐竜ジラースの出て来る、「謎の恐竜基地の巻」も怖い雰囲気はありました。まあ、大人になって再読するとそうでもないけど、当時は小学生のちびっ子ですから、そりゃあ怖さは大いにありましたよ。特に侵略もの。原本であるTV特撮でも、侵略宇宙人の出て来るお話は怖かった。いくら、最後はウルトラマンが登場して宇宙人をやっつけて追っ払う、って解っていてもやはり怖かった。「バルタン星人」「ザラブ星人」「三面怪人ダダ」「メフィラス星人」みんな怖かったけど、やっぱりダダが一番怖かったかなあ。メフィラス星人も怖かったしなあ。楳図かずお描く、バルタン星人のお話もメフィラス星人のお話も、まるで魔法のような超能力を使う侵略宇宙人のお話は、小学生のちびっ子には怖かったですね。楳図かずお先生のタッチと画力、ストーリー運びと表現力、独特の怪奇ムードに寄るものも大きかったでしょうけど。楳図かずおが描いたからこそ、楳図漫画版「ウルトラマン」は恐怖漫画テイストあふれる、SF巨人ヒーロー活劇漫画となった。特に、この度の漫画文庫版2巻に収録の3編は、絵柄のリアリティーが増して来ていて、ビジュアル的にもより恐怖心を感じさせるようになっている。何てったって、楳図恐怖劇画の、その恐怖心を抱かせる実力の半分は、やはりその圧倒的画力ですから。

 「ミイラ怪獣ドドンコの巻」の、地底から掘り起こされ科学研究施設の実験室で、優に2メートル以上あるだろうモンスター、ミイラ人間が目覚めるところとか、多分、子供の頃の当時は、本当に怖かったんだと思います。猿人型ミイラ人間は楳図描く、そのリアルなクリーチャー姿態がもろ怪物で怖かった。傷付き瀕死のミイラの断末魔の叫びが、巨大なミイラ怪獣ドドンコを呼ぶ。だいたいに置いて、巨大な怪獣というものはのっしのっしとゆっくりと歩いて移動するものですが、楳図版ウルトラマンの怪獣ドドンコは、全力で走る。もともと造形は、馬ですね。馬というか、昔ながらのキリンビールのシンボルイラストの麒麟、想像上の馬型の鬼動物みたいな、麒麟、あれによく似た造形ですね、ドドンコは。当時のTBS放送の実写特撮ドラマ「ウルトラマン」では、初代シリーズ第12話「ミイラの叫び」というタイトルで66年の10月2日初放送です。僕はTVの「ウルトラマン」が大好きだったので、多分、全39話、初放送で全部見ていると思います。でも、「ミイラの叫び」のお話は、それ程好きな回でもなかったですね。やっぱ、僕はVS侵略宇宙人ものが好きでしたね。第22話の地底人と、地底人が操る地底怪獣テレスドンが出るお話、「地上破壊工作」とかも好きなお話ですね。人間界侵略ものですし。吸血植物ケロニアが登場する回、「来たのは誰だ」のお話とか、僕の好きそうなテイストですけど、この回をよく憶えてないんですね。ひょっとして貴重な、放送を見ていないお話かも知れません。単に忘れてしまっているだけかも知れませんが。何しろ子供の頃のことですし。調べてみると、この、吸血植物ケロニアも、知性を持つ南洋の怪物が人間に化けて日本へやって来て、種族を増やし日本を侵略しようとするお話ですね。やっぱ、唯一の見逃した回かも(?)。

 講談社文庫版2巻収録の2番目、「怪彗星ツィフォンの巻」では3大怪獣が登場します。このお話の初出掲載は、週刊少年マガジン1967年第6号から11号まで6回連載されました。オリジナル実写分のTV放送は、何と67年の新年、1月1日の元日の夜でした。お話は単純といえば、シンプルストーリーかも。雪山の地下に眠る水爆。それを食べてしまったのが雪男モデルであろう、白ゴリラ状形態の怪獣ギガス、と思ったらもう一匹、山の地下に眠っていたレッドキングの方だった。楳図漫画版の方のお話だと、舞台はヒマラヤ山中なんですねえ。とある国が極秘裏に作って地下に貯蔵した水爆が何個かあって、地球衝突が危ぶまれる怪彗星ツィフォンの出している放射線の影響で地球上の水爆が誘発される恐れがある、ということで科学特捜隊のビートル機がヒマラヤ山中に行く。この回ではレッドキングは水爆5個を呑み込んで大暴れするんですが、もともとレッドキングは、TV放映66年9月6日分の第8回、「怪獣無法地帯」のお話で最後にウルトラマンに始末されていますが、ここに来て復活、水爆を胃袋に入れたままウルトラマンと再戦ですね。その前にギガスと戦ってギガスを制した後、ウルトラマンと決戦ですから、67年新年放送のこの「怪彗星ツィフォンの巻」は、主題は怪獣トーナメントのお話ですね。第1試合は、冷凍怪獣ギガスと、地球を掠めた怪彗星ツィフォンから飛来した彗星怪獣ドラゴとの一騎打ちで、勝ち残ったギガスがレッドキングに負ける、と。それにしても、彗星から怪獣が出て来て飛んで来る、という設定がすごいですね。太陽から離れた位置では大部分が氷に覆われた彗星に、身の丈50メートルくらいはあろうかという怪獣が棲息している、という設定がすごい。空気のない彗星の多分、内部に潜む怪獣が、窒素と酸素の地球大気中にいきなり入って来て、そこの山中に棲んでいる雪男状の怪獣と戦う。でも、ドラゴは形状がカッコイイ怪獣です。翼の生えた竜だし。片方の足がカギヅメで片方がぐるぐる巻いたムチ状で、そのムチを伸ばして、ギガスの放り投げた水爆を掴む、なんていうのは少々変ですけど。ちなみにレッドキング初登場の、「怪獣無法地帯」のお話のコミカライズは、講談社の月刊誌「ぼくら」の67年3月号別冊付録初出で、一峰大二さんが描いています。

 ドラゴが棲んでいたのか、乗って来たのか、彗星とは大部分が氷に覆われた、まあ、いってみれば小惑星とか、小惑星でも微小惑星・矮小惑星でしょうね、隕石とか岩石みたいなものですね。ああいうのに大きな生き物が棲んでるだの乗ってるだの、勿論ありえないことでしょうけど、「スターウォーズ」シリーズの77年公開第1作「エピソード-4新たなる希望」か、80年公開第2作「エピソード5-帝国の逆襲」の1シーンで、ルーク・スカイウォーカーが操縦する宇宙空間航空機が、小惑星帯を思わせる場所を通過するとき、空間に浮かぶ矮小惑星群、岩石群状の惑星群でしたけど、その中の一つのでっかい惑星の洞窟状縦穴から、蛇か竜かみたいなひょろ長い怪獣が、まるで海中の岩石の穴からウツボが突然襲い来るみたいに、突然グワッて伸び上がって襲い来るシーンがあるけど、ああいう小さな岩石の塊りみたいな矮小惑星には勿論大気はないし、あんな怪獣が内部に棲んでいることはありえないだろう。まあ、映像効果のアクション・アクロバットシーンの一つだね。いや、彗星も矮小惑星も似たようなもんだしね、と思って。彗星の方が、太陽から離れた位置では氷に覆われているから、何にしろ、もっと生物の棲む可能性は少ないだろう。

 ところで真面目な話になるけど、僕は彗星というのははるか遠く、天王星や海王星のずうっと、向こうから飛んで来るものばかりだと思っていた。いわゆるエッジワース・カイパーベルトですね。太陽系外縁にあるといわれる小惑星帯です。もうだいぶ前の話だけど、“彗星の巣”というものがカイパーベルトや、まだ一応仮説なんだけど、カイパーベルトよりも、もっともっと向こうの“オールトの雲”などという、地球からはるかはるか気が遠くなるほど遠い、太陽系外縁にあるんだという説を聞いて、まあ、読んでかも知れないけど、彗星とはそんな遠い遠い場所から毎度毎度ご苦労にも、ものすごい超遠距離を長年月掛けて飛んで来てまた戻ってるんだ、要するにものすごい遠い遠い長距離軌道を持っているんだ、と信じていた訳です。だって有名なハレー彗星は76年周期でしょ。90年代後半に現れて話題になった大型の彗星、ヘールボップ彗星なんて2534年周期なんてとんでもない長い長い軌道です。96年に発見された百武彗星なんて公転周期は何と、113782年という膨大な数字になる。76年に現れた大彗星、ウエスト彗星なんて558300年にもなる。本当に気が遠くなる距離や年月ですよね。想像も着かない。彗星の軌道は、短周期彗星と長周期彗星というのがあって、公転軌道76年のハレー彗星だって、短周期彗星になるそうです。短周期彗星はホントに短い軌道の、3年とか5年くらいのから10年、100年くらいのものまでいっぱいある訳で、一応、短周期彗星の定義は公転周期200年まで、なんですね。2006年に矮小惑星(準惑星)に降格されちゃった冥王星付近とか、エッジワース・カイパーベルトあたりまでがだいたい短周期彗星の境界線だそうですね。どーも、ハレー彗星は海王星軌道付近から飛んで来てるらしい。海王星軌道付近にも、小惑星帯があるらしいですからね。ベルトというよりは集合体、群体、といった形の、小惑星・岩石の集まりですね。あんな太陽から遠いトコだったら、もう氷の塊も多いんでしょうけど。20年以内の短い周期のヤツは、文字通り、アステロイドベルトから飛んで来てるんでしょうね。火星と木星の間の小惑星帯です。木星の軌道上付近にも、小惑星・岩石の集合体はあるみたいですね。短周期彗星の比較的短い多くは、その辺りから来てるんでしょうね。

 まあ、彗星の話はもういいですね。「ウルトラマン」なんですから。僕も別に天文学に詳しい訳じゃないし。楳図かずお先生は、60年代末の作品、週刊少年サンデー連載の「おろち」あたりから絵柄が繊細で緻密になり、美しいタッチの劇画になりました。世の劇画ブームとは70年代80年代ですし、始まりは60年代末からですからね。楳図先生の絵は精密に仔細に描き込んだ、独特なきれいなタッチの絵柄となった。もう、当時の美少女「おろち」は大好きでした。ちょっと前の頃の、何年か前頃までのしょこたんは、僕、美少女「おろち」に似ているなあ、と思っていたものでした。今の雰囲気はちょっと違うかなあ。この「ウルトラマン」第2巻収録作品あたりが、リアルタッチになった、独特な美しい絵柄の楳図劇画への過渡期くらいでしょうねえ。タイトル「ウルトラマン」も(3)まで来ちゃったんですが、まだまだ終われません。これはまたまた続きます。「ウルトラマン」..(4)へと続く。

 あ、彗星の話で、補足みたいに一つ。よくSF映画で主人公たち人間の乗り込み操縦するロケットとか宇宙船が、小惑星帯に入って、もうそこらじゅういっぱい岩石だらけで、めちゃくちゃ多い岩石の群れの中を、あの岩を避けこの岩を除けして、小回りよろしくジグザグみたくうまく岩々を除けて、飛んで行くシーンがあるじゃないですか。実際の小惑星帯とは、そんな密度はないんだそうです。本当はがらんがらん。確かに遠くから見たら小惑星や岩がいっぱい集まっているけど、近くに行くと全然密度はない。がらんがらんで、ロケットで狙って当たってでも行かない限り、惑星と衝突なんてことは先ずありえない、そんな空な感じの散らばり方なんだそうです。それと、思い出したんですが、ユーミンに「ジャコビニ彗星の日」という歌があって、ユーミン作品の中ではけっこう古い曲です。収録は79年発表の「悲しいほどお天気」のアルバム中ですね。このアルバムでは「ディスティニィ」なんて歌は有名ですけど。僕も好きな曲です。ジャコビニ彗星は公転軌道6.6年だから短周期彗星ですね。よく知らないけど、多分、きっとアステロイドベルト付近かそのあたりから来てるんでしょうね。トロヤ群かも(?)。ちなみに僕は「悲しいほどお天気」は発売されるとすぐに買い求めましたけど、「ジャコビニ彗星の日」はどんな歌だったか全然憶えてません。じゃあ、すぐに調べて聴けよ、って話かも知れないけど。

◆(2011-05/30)漫画・・ 「ウルトラマン」..(1)
◆(2011-06/06)漫画・・ 「ウルトラマン」..(2)
◆(2011-07/16)漫画・・ 「ウルトラマン」..(3)
◆(2011-08/30)漫画・・ 「ウルトラマン」..(4)

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●漫画・・ 「スケバン刑事」

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 和田慎二先生、亡くなられたんですねえ。驚きました。61歳の死は、ちょっと早過ぎます。2011年7月5日、虚血性心疾患により死亡であり、直前まで秋田書店の漫画誌「ミステリーボニータ」に連載を持っていた、ということですから、ほとんど突然死みたいなものなんでしょうねえ。それにしても現代で61歳で逝去されるのは、若過ぎます。まだまだ現役で活躍されていたのに、早い死は勿体ない。ご病気を抱えていらしたのでしょうかねえ。漫画家とは、過酷な職業ですからねえ。特に売れっ子になると、地獄のような重労働ですからね。超不規則な生活、地獄の長時間労働、慢性睡眠不足、不健康極まりない日常生活。売れっ子になると、お金は入っては来るが、それを使う暇なぞない。世間から閉ざされて監獄で生きるような生活。監獄と言っても、仕事場やホテルなどのカンヅメ状態のことですけど。そこでの眠れない長時間労働。断言できる、絶対に身体に悪い生活が延々と続く。まあ、あくまで売れっ子になったら、の話ですけど。逆に大半の売れない漫画家は、今度は食べていけない訳ですけど。過酷な世界です。長年の売れっ子漫画家生活は、先生のお身体を蝕んでいたのかも知れませんね。

 僕自身は、アンチ少女漫画で、アンチといっても、別に少女漫画を否定している訳ではありませんが、子供時分から、どうしても少女漫画がダメなんですね。集中して楽しめない。なじめない。恋愛物語が苦手だからかも知れません。でも、昔から、萩尾望都先生や竹宮恵子先生など、リスペクトする女流漫画作家はいました。篠原千絵先生の絵柄などは大好きです。けど、少女漫画やレディースコミックは駄目なんですよねえ。どーも受け付けないところがあって。いやはや何とも‥。妹が昔から、白泉社の「花とゆめ」の愛読者で、ずうーっと購読していたので、和田慎二先生の「スケバン刑事」や「ピグマリオ」「怪盗アマリリス」等は知っていました。といっても、だいたい少女漫画誌はどっちかというと苦手な方なので、パラパラめくって行く程度に読んでるくらいですが。「忍者飛翔」も有名な作品ですが、僕は読んだことはありません。う~ん、パラパラ見た程度はあるのカモ。ただ、僕が29歳か30歳の頃、もういいオッサンになっていたのですが、当時TV放映で大人気だった、フジTVの実写アクションドラマ、「スケバン刑事」のシリーズを、馬鹿みたく熱中して見ていました。それで、TVドラマオリジナルの設定とストーリーの「スケバン刑事Ⅲ-少女忍法帳伝奇」が、オリジナル漫画版の「スケバン刑事」の設定やストーリーに、80年代前半に人気を博していた、同じく和田慎二作品「忍者飛翔」のテイストを加味して作り上げた、TVドラマ版オリジナルストーリーだったので、「忍者飛翔」のタイトルだけはよく知っていました。

 Kenの漫画読み日記。では既に今から5年前、記事として「スケバン刑事」を取り上げています。当時は、ハロプロの人気アイドル、松浦亜弥さんが主演して実写映画化されて話題になっていたので、漫画記事として取り上げて書き込んだのです。2006年8月17日付けの記事、●漫画&TVドラマ(映画)・・「スケバン刑事」です。まあ、この分の記事は、30歳くらいの当時、イイトシして熱中して見ていた、TVシリーズの「スケバン刑事」について主に書き込んである、内容の記事なんですけど。

 それが、人気があり雑誌や本が売れて巨額のお金が動き、出版社や作家が儲けて、例えば印刷会社など出版業周辺の関係各社やクリエイターなどにお金が入り、経済効果に貢献しひいては国家的に潤う一助となる、という社会的に良い側面が多大だとしても、当の主軸クリエイターである売れっ子漫画作家は、文字通り身を削って世の娯楽を正に必死で紡ぎ出している訳で、その肉体は当然、蝕まれて行く。その代表的な例が、漫画の神様=故手塚治虫先生だろう。売れっ子漫画家は著しく健康を害し、概して早死にが多く、精神を病む者も多い。和田慎二先生も出版娯楽産業の戦士だったんだろうなあ。御冥福をお祈りいたします。

◆2006-08/17 ●漫画&TVドラマ(映画)・・ 「スケバン刑事」

◆2011-11/07 ●漫画・・ 「スケバン刑事」

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