60~90年代名作漫画(昭和漫画主体・ごくタマに新しい漫画)の紹介と感想。懐古・郷愁。自史。映画・小説・ポピュラー音楽。
Kenの漫画読み日記。
「世紀末の牝(メス)シルバー」-武本サブロー・作画(真樹日佐夫・原作)-
空手の女子世界選手権での優勝歴を持ち、法務省外局扱いの全国犯罪調査庁所属でFBI 研修留学経験のある、ナイスバディな日本人女性·白銀純は表向きは女子プロレスラー兼女子格闘家。武道や犯罪調査庁の先輩であり、今は法務省所属の南田雄介に、新たに秘密裏に犯罪調査庁内に発足したマルチョウ部門の専属調査員にスカウトされる。
白銀純は美人レスラーとして日本のリングに上がり、アメリカ本土やハワイではオクタゴン·ゲージの中で格闘技の試合を行っている。全国犯罪調査庁の中に設けられたマルチョウとは、有識者で構成された超法規委員会なるものが審査し判別した、世の中に害を成す国内の巨悪や凶悪を、秘密裏に超法規措置として葬り去るセクションで、まぁ、いわば“必殺仕事人”のような役目のプロの始末屋ですね。
本来なら警察が逮捕して検察が起訴するべき巨悪·凶悪だが、ワル賢くズル賢く法の網を擦り抜けて悪を働き続けて社会に害を成している悪人どもを、秘密裏に始末する仕事屋ですね。
といってそのプロのメンバーは、マルチョウ管理側で繋ぎ役の南田雄介と現場で調査と悪の始末·処理を直接行う、空手の達人·白銀純のたった二人だけ。現場での任務遂行の活動はほとんど白銀純一人の仕事。タマにシルバーこと白銀純が窮地に陥ったとき、上司になるのかな、先輩·南田雄介が助けに入ることもある。
昼間は女子レスラー、夜は必殺仕置き人、シルバー=白銀純は始末屋の仕事のないときは人気女子レスラーとしてプロレス興行のリングに上がり、巡業で地方回りなどもしている。メインの必殺体術は空手道の技々だけど、アメリカ在住時代にブラジリアン柔術の技術も修得している。
仕事人として始末する悪党どもは、表向きは大きな企業の看板掲げて、裏側で麻薬密輸や人身売買、違法賭博や未成年売春などなどの違法商売をやって金儲けをしている連中や、日本の暴力団組織や日本で犯罪を働く海外マフィアの組織など、大規模から小規模までさまざまな悪党ども。
白銀純は拳銃も使えるけど、だいたい格闘技のワザで悪党どもを叩きのめしてやっつけて行きますね。中には敵側の用心棒に何らかの格闘技の使い手が居たりして、リアルファイトの異種格闘技戦になったりもしますけどね。
「仕置の刃-世紀末のメス・シルバー」は原作が真樹日佐夫氏、作画が武本サブロー氏の、凶悪犯罪者打倒の痛快格闘技アクション劇画です。シルバーが潜入捜査などよくやるから、スパイ·サスペンス活劇ものでもありますね。コミックス単行本は全8巻刊行で、リイド社から8巻それぞれが初版発行された時代が1998年末頃から2000年中までの間です。雑誌の初出連載はリイド社の青年コミック誌·リイドコミックですね。
リイドコミックという青年コミック誌は、さいとうたかをのリイド社が発行する隔週刊(月二回刊)雑誌で、1971年創刊で最初は月刊誌だったようですね。定期刊行の雑誌としては2001年に休刊(事実上の廃刊)になってます。リイド社はさいとうたかを先生関係の出版社で、創業から長らくさいとう先生の実兄の方が代表·社長を勤めてました。
僕はリイドコミックという雑誌は多分、一度も購読したことはないと思う。何度か、喫茶店とか何処かの食堂でとかで読んだことはあるとは思うけど。リイドコミックに連載された漫画をコミックス単行本で読んだことは何作もあります。リイドコミックにも、さいとうたかをやさいとうプロ所属作家の作品や、他の有名人気漫画家の作品も数多く連載されてました。収録漫画の漫画作家陣も他のビッグコミックや漫画アクションと遜色なかったですからね。
「仕置の刃-世紀末のメス・シルバー」は青年コミックらしくエッチなシーンも満載で、さいとうたかを劇画タッチで描く武本サブロー氏描画のシルバーのナイスバディーな容姿もセクシーで魅力的だし、格闘アクションシーンも迫力ある作画で楽しませます。原作が空手の達人·真樹日佐夫氏ですしね。漫画のセリフまわしも真樹日佐夫ぽいですね。「ワル」や「けものみち」で味わったあの独特のセリフまわしですね。言わば“真樹日佐夫ぶし”というストーリー展開や格闘シーンに、カッコ良いセリフまわし。
真樹日佐夫さんの小説や原作漫画には、男が熱くなってシビレる独特の“男イズム”が全編に流れててカッコ良いですよね。一方のダンディズムみたいなカッコ良い熱血活劇味というか。「世紀末のメス·シルバー」は主人公が女性になってるから、そういうテイストは「ワル」や「けものみち」などに比べるとちょっと薄まってるかな。
僕は「世紀末のメス·シルバー」をリイド社のSP コミックスで1999年から2000年内にほとんど初版発行で購読していますが、読んだのは全8巻の内、5巻くらいまでだと思います。全巻は読んでないですね。事件ごとの一話完結の連作漫画で、連続する長い一つのストーリーものじゃなかったですからね。
日本漫画界のレジェンドの一人である超大御所漫画家、劇画の代表的存在·さいとうたかを氏は50年代後半、貸本漫画からスタートし、60年代半ば頃から市販雑誌漫画に移り、“劇画”を世に拡張して行く訳ですが、さいとうたかを氏が貸本時代後半、自分のさいとうプロダクションを設立してからこっち何十年と劇画家·さいとうたかをを両腕として支えて来た、さいとう先生の盟友が二人居ました。石川フミヤス氏と武本サブロー氏です。
貸本漫画時代のさいとうたかを氏は、さいとうプロダクションからだいたい毎月一冊、定期的に刊行していたオムニバス貸本誌がありました。「ゴリラマガジン」です。肥満体形でイカツい氏のアダ名が当時から“ゴリラ”で、さいとうたかを氏主催の劇画オムニバス誌だから「ゴリラマガジン」でした。
「ゴリラマガジン」は分業制さいとうプロダクションの作品が主体で、メイン作家はさいとうたかを氏で、さいとうプロ所属の漫画家が短編漫画を発表し、「ゴリラマガジン」には毎号、短編漫画が三作から四作くらい収録されてました。中にはさいとうプロ所属ではない貸本漫画家の作品も時折掲載されてたと思います。
だいたい月一冊刊行の「ゴリラマガジン」には臨時増刊の「別冊ゴリラマガジン」もときどき出ていましたが、どれくらいの頻度か記憶してないのですが(二ヶ月に1巻くらい?もっと?)「ゴリラマガジン別冊·MGシリーズ」という貸本誌が刊行されてました。この“MGシリーズ”の作者が、石川フミヤス氏と武本サブロー氏でした。“MGシリーズ”は両漫画家の共作で「ゴリラマガジン別冊·MGシリーズ」一冊のほとんどを“MGシリーズ”の一話が締めてましたね。余ったページに他の短編作品が一つくらい入ってたかも知れない。
石川フミヤス氏は、さいとうたかを氏が漫画の世界に足を踏み入れた大阪·日の丸文庫時代から、ずうっと行動を共にしたさいとう氏の盟友ですね。日の丸文庫~劇画工房~さいとうプロダクションと常に一緒に漫画作品制作の現場でやって来た劇画仲間です。
石川フミヤス氏は貸本時代は、さいとうプロ以前から一冊一作刊行の貸本単行本も描いてましたし、また、さいとうプロ所属になってからも“MGシリーズ”以外にも、ときどき一作単行本をさいとうプロから出してました。市販雑誌時代に入ってからはほとんどさいとうたかを氏の片腕として、さいとうプロダクション·チーフ作家としての活躍でしたね。
武本サブロー氏も、さいとうたかをプロダクションのチーフ作家の一人です。武本サブロー氏は少年時代からの石川フミヤス氏と旧知の仲で、武本サブロー氏も50年代後半、貸本漫画から出発しました。60年代初めに、同じく漫画作家の道に進んでいた旧友·石川フミヤス氏に相談して、さいとうたかをプロダクションに入りました。さいとうプロでは腕を買われてチーフ作家として活躍した訳です。
僕は小学校一年から小学校五年までほとんど毎日、近所の貸本屋に通ってましたが、「ゴリラマガジン」も大好きな貸本漫画の一つでした。だいたい貸本時代からさいとうたかをの漫画が好きでしたからね。当時の貸本漫画は玉石混淆、絵のヘタクソな漫画家も多かった。小学生時代の僕はストーリーとかよりも絵の上手い漫画本を優先的に借りていた。さいとうたかを氏は貸本漫画家の中でも抜群に絵の上手い漫画作家でした。だいたい、さいとうプロダクションの漫画家はみんな絵が上手かったですね。「ゴリラマガジン」は毎号楽しみに待ってた貸本単行本でした。
さいとうたかを先生は貸本を描き始めた最初、SFを描きたかったそうですが、SFは当時の貸本漫画読者にウケが良くなかった。だから人気の出るアクション劇画を主体にしたそうです。「ゴリラマガジン」もだいたいメイン作品はアクション劇画でしたね。その他には青春ものやときどき学園もの、ごくタマにSF ものとかあったんじゃないかなぁ。青春ものはけっこうシリアスなドラマだったような気がする。タマにホラー作品の短編も載ってたかな。だいたいアクション劇画主体だけど。
石川フミヤス先生·武本サブロー先生共作の“MGシリーズ”も、やはりアクション劇画で、探偵サスペンスものかな。僕は石川フミヤス氏の貸本の一作単行本は覚えてるけど、武本サブローさんの貸本の一作単行本は読んだ記憶はないですね。貸本漫画は描いて本を出してるだろうけど、さいとうプロ所属以降は「ゴリラマガジン」には短編作品を載せてるだろうけど、さいとうプロから単独作品の単行本出してたのかな?僕が知らないだけで多分、描いてはいるんでしょうね。
さいとうたかをプロダクションの全盛期には、もう一人チーフ作家が居ました。甲良幹二郎氏です。往時は石川フミヤス、武本サブロー、甲良幹二郎の三人のチーフ作家で、さいとうプロは3班体制で回してました。
甲良幹二郎さんがいつ頃さいとうプロを離れたのか解りませんが、長いこと、さいとうたかをの劇画作品の表紙絵クレジットには、さいとうたかをの下にチーフとして、石川フミヤス·武本サブロー·甲良幹二郎の名前が記載されてましたね。
さいとうプロの全盛期って、貸本時代もさいとうたかをは人気が高かったし、雑誌に移って直ぐマガジンの「無用ノ助」は大ヒットしたし、60年代後半に入ってからもう、さいとうたかを劇画は雑誌で引っ張りだこでしたからね。60年代末からは青年コミック誌で引っ張りだこになったし。
さいとうたかを劇画は60年代後半から90年代までずーっと売れてましたね。さいとうプロの劇画には中年から高齢者までの男性高年齢世代のファンが定着してますから、2000年代以降も一定の人気は保ってますよね。その中でもさいとうプロの全盛期ってやっぱり70年代·80年代かなぁ。
甲良幹二郎さんも90年代頃さいとうプロダクションを離れたのかな?甲良幹二郎さん単独作品の絵柄もバッチリさいとうたかを劇画タッチの絵柄ですね。さいとうたかをプロで長年仕事して来た漫画家はみんな、さいとうたかを劇画タッチの絵柄になってますね。
さいとうたかを先生の両腕だった、武本サブロー先生は2008年にお亡くなりになり、石川フミヤス先生は2014年にお亡くなりになりました。御大·さいとうたかを先生は2020年10月現在83歳で元気に「ゴルゴ13」など執筆されてます。さいとうたかを先生は11月3日生まれだからもう84歳か。
ちなみに「世紀末のメス·シルバー」は実写映画化されていて、映画のタイトルは「SILVER」だけになってますね。主人公の白銀純役を桜庭あつこ、南田雄介役を羽賀研二がやってます。1999年の制作でVシネマのようですね。僕はこの映画は見たことありませんが。
(下世話なスキャンダル話になるけど、お騒がせ芸能人、羽賀研二が当時、梅宮辰夫の一人娘·梅宮アンナが熱愛交際の芸能記事が話題になってた頃、自ずから羽賀研二と親密交際してたと公表した桜庭あつこの芸能情報が世間を騒がせましたが、件の桜庭あつこと羽賀研二はこのVシネマで知り合って交際に発展してたんですね。羽賀研二と梅宮アンナの熱愛報道はアンナの巨額貢ぎや父親·梅宮辰夫の激怒など当時は世間を騒がす話題となりました。)
桜庭あつこさんてグラビアアイドル出身の女優で後には格闘技の試合にも出場してるようです。あんまりメジャーな女優さんではなかったかな。Vシネマの出演が多く劇場版映画の出演もあるようです。
真樹日佐夫先生はご自身の原作漫画などを積極的に実写映画化してましたね。特に漫画原作の代表作である「ワル」シリーズは全作で十本以上映像化されていると思います。「ワル」の実写映画はVシネマ作品もありますが何本も劇場版映画になってますね。
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ツルモク独身寮
四国·高知の高校を卒業して上京し、ツルモク家具という木工家具製造会社に就職した主人公、宮川正太は会社の独身寮に入る。独身寮の各居室は12畳くらいある広いひと部屋に四人制で、正太の入る部屋には二人の先輩が居た。
イケメンでモテモテの軟派師·杉本京介と、見るからにダサくて女にモテそうになく、粗っぽい雰囲気の田畑重男。正太たち三人は寮で過ごす冬場はいつも、広い部屋の真ん中の炬燵に入って飲み食いしながらダベり合っている。後にこの部屋には正太の後輩となる、平田はじめが入室して四人部屋になる。
ときどき風俗にも通っている田畑重男の趣味は、寮の屋上からの、隣接したツルモク家具の女子寮を覗き見することで、入寮早々、重男の趣味に付き合った正太は、女子寮の一室で着替えをしている下着姿の、姫野みゆきと目が合ってしまう。同じくみゆきと目が合ったと勘違いした重男は恋心を抱き、のぼせ上がってしまう。
本当は家具デザイナー職に憧れていた正太だったが、実際の仕事は工場でのラインに着いての流れ作業で、家具の部分部分を作る単純な作業の連続だった。姫野みゆきは工場内の総務課の事務員で、容姿端麗で魅力があり、正太は一目惚れのような感情を抱いてしまう。
宮川正太は地元の高校生時代、同じ学校の一年後輩の女子、桜井ともみと付き合っていて仲の良い恋人どおしだった。上京した正太はいつもともみのことを思い、故郷に頻繁に電話を掛けていた。ともみも翌年、正太を追って上京することを誓っていた。
姫野みゆきへの一目惚れからの恋心も抱きつつも、故郷のともみを忘れられない正太。部屋の先輩二人を連れて高知へ休暇帰郷して、ともみが地元の男友達と仲良くしているのを目にしたり、社内でしょっちゅう会っている内に姫野みゆきとの仲も進んで行く。二人の女性の間で気持ちが揺れ動き迷う正太。一年が経ち、桜井ともみが上京して来て、別の会社に就職する。
家具製造工場で働き、会社の寮で暮らす主人公の青年、宮川正太が恋する、会社同僚の美人OL 姫野みゆきと、高校の後輩で上京して来た、学生時代からの恋人の美少女·桜井ともみ。二人の恋人の間で揺れ動く、気持ちは純情な勤労青年·宮川正太の恋模様を描きつつも、社員寮で過ごし、工場で働く社会生活の中で出会う、様々な人たちの人間模様を描く青春群像劇。会社勤めの若者たちの日々をリアルに描く、仕事コミックでもあるかな。
リアル社会生活を描いたストーリー漫画だけど、コメディタッチで描いており、ギャグ調もふんだんに盛り込まれた青春漫画。特に寮の部屋の先輩、田畑重男はギャグ要員。ギャグ調のときはかなりデフォルメされたタッチも使われる。また、途中から出て来る大金持ちの令嬢で、プライド高いが超絶ブサイク顔の白鳥沢レイ子、とかもギャグ要員ですね。
僕が漫画雑誌を毎号毎号欠かさず購読してたって、90年代までかな。週刊ビッグコミック·スピリッツは、創刊号の1980年10月の第1号から購読し始めて、人気連載の青春柔道コメディ漫画、浦沢直樹氏の「YAWARA-ヤワラ-」の連載が終了する頃まで、多分毎号欠かさず、購読し続けた。「ヤワラ」のスピリッツ連載終了が93年の初夏くらいですから、その時期にスピリッツ購読をやめて、そこから以降は漫画雑誌を毎号毎号続けて購読することはなかった。ただタマに、ビッグコミック·オリジナルなどを単発的にとか、何号か続けて購読することはあった。でも90年代も後半以降は漫画はコミックス·単行本で読むばかりになって、雑誌を買って来て漫画を読むことはほとんどなくなったな。2000年代以降、入院してた間に、ひまつぶしで病院の売店で漫画雑誌を買うことはあったけど。
「ツルモク独身寮」がビッグコミック·スピリッツに連載されていたのは、88年16号から91年の21·22合併号までの約3年間ですね。僕は「ツルモク独身寮」をスピリッツ連載で読んでます。スピリッツは毎号購読していたから多分、全編読んでますが、正直なところ言うとそんなには印象に残ってないかな。コミックス·単行本で読み返しは全然してないし。
「ツルモク独身寮」は、普通の生活をしている等身大の若者たちを描いた、主人公は居るけど青春群像劇かな。青春ものと言っても学園ものじゃなくて、働いてる若者たちの日常を描いている、というか実際の若者たちの生活でありそうなエピソードを、ユーモアを交えて描いた等身大若者·生活·青春漫画ですね。
“仕事漫画”っていうジャンルがあるけど、確かに主人公たち主要登場人物は家具製作工場で働いてるけど、仕事内容をこだわってコアに描いてる訳じゃないし(中にはそういう部分もあるけど)、仕事漫画ジャンルじゃなくて、けっこうふんだんに若者の恋愛模様も含んだ、若者·生活·青春ドラマのコメディー劇ですね(勿論シリアス味もあるけど)。
「ツルモク独身寮」作者の漫画家、窪之内英策さんは「ツルモク独身寮」の主人公と同じく高知県出身で、作者本人も実際に、高卒で家具製造会社で働いていた経験があるようですね。僕は窪之内英策さんの漫画作品は「ツルモク独身寮」しか読んだことないし、他の作品は知りません。86年、週刊少年サンデー誌上でデビュー以来、2000年代まで小学舘の雑誌の連載が多いようです。特にビッグ·スピリッツには続けて長期連載を描いてますね。
漫画趣向的に僕は、窪之内英策さんが描くような作風のジャンルは、好んで読まなかったですからねぇ。僕は、ハードアクションとかSF やサスペンスとか怪奇幻想とか、人の普通の生活から掛け離れたようなお話が好きですからねぇ。少なくとも、エピソードの中に殺人事件がないと読まないかなぁ。等身大の普通の人たちの、本当の実社会の日常でよくありそうなエピソードの内容とかは、あんまり食指が動かないかなぁ。だから「ツルモク独身寮」みたいな世界観のドラマの漫画は、あんまり読んで来てない。仕事漫画とかもあんまり読んでないなぁ(仕事漫画でも職業・殺し屋の生態を描いた漫画とかなら好んで読むんだろうけど)。
だから、スピリッツに長期連載された聖日出夫さんのサラリーマン漫画「なぜか笑介」なんかも、スピリッツ連載当時は毎号読んでたけど、コミックス·単行本で読み返したことはないし、岩重孝さんの「ぼっけもん」も毎号読みはしてたけど、あんまり印象に残ってないし単行本での再読もしてない。
変わり者の登場人物もいっぱい居たが、普通の等身大の登場人物ばかりの漫画でも、高橋留美子さんの「めぞん一刻」は別で、「めぞん一刻」は連載中も大好きな漫画で、コミックス·単行本で何度も読み返している。ラブコメの青春漫画でしたが「めぞん一刻」は大好きだったなぁ。「めぞん一刻」は別。
「ツルモク独身寮」が連載されてた時代のビッグ·スピリッツの連載漫画陣って、先ず浦沢直樹「ヤワラ」、柴門ふみの「東京ラブストーリー」なんかも乗ってたなぁ。『何ピトたりとも俺の前は走らせねぇ!』が決めゼリフの六田登「F-エフ-」、国民的くらい有名なグルメコミックの雁屋哲·花咲アキラ「美味しんぼ」、楳図かずおの大長編SF ホラー「14歳」。楠みちはるの「湾岸ミッドナイト」ってこの時代のスピリッツに載ってたんだなぁ。何かあんまり印象にないな。六田登の「F」は好んで読んでたけど、同じレーサーコミックでも「湾岸ミッドナイト」はあんまり趣味ではなかったのかなぁ。「F」もコミックス・単行本での再読はしていない。
相原コージの「くまのプー太郎」もこの時代か。何てったって、ギャグだけど話題となって、世間に旋風を巻き起こしたのは吉田戦車の「伝染るんです」。「ぼっけもん」に続く岩重孝の長編連載「ジバング少年」。四コマ「じみへん」もこの時代か。聖日出夫の「なぜか笑介」もまだ続いてたんだなぁ。劇画村塾出身の女流漫画家·中村真理子が狩撫麻礼の原作で描いた「天使派リョウ」も、内容とか記憶してないが漫画はうっすら覚えてるな。安定の長期連載「気まぐれコンセプト」。高橋春男の四コマも載ってたんだなぁ。この時代のスピリッツは、ナンセンスギャグ系四コマ漫画が多いな。くじらいいくこ「マドンナ」とか全く記憶にない。
ビッグ·スピリッツを毎週続けて購読してたのは、小池一夫·池上遼一コンビの「傷負い人」~「クライングフリーマン」を毎号楽しみにしてたのもあったのだが、この時代のスピリッツには、小池一夫·池上遼一ゴールデンコンビの劇画作品は連載されてないですね。原作-史村翔の池上遼一-作画「サンクチュアリ」はビッグコミック·スペリオールの連載だったんですね。「サンクチュアリ」は雑誌で読んだことなくて、全編コミックス・単行本で読んでる。
◆ツルモク独身寮(1) (ビッグコミックス) Kindle版
◆ツルモク独身寮 (Volume2) (小学館文庫) 文庫 –
◆ツルモク独身寮 全11巻完結 [マーケットプレイスセット] コミックス
◆ツルモク独身寮 文庫版 コミック 全7巻完結セット (小学館文庫) 文庫 –
◆ツルモク独身寮(2) (ビッグコミックス) Kindle版
◆ツルモク独身寮(11) (ビッグコミックス) Kindle版
ネットを回って見てると、「ツルモク独身寮」がスピリッツに連載されてた当時、作品をリアルタイムで愛読していた、あの時代に就職を見据えた学生だった人たちや若きサラリーマンだった人たちに取って、バイブルと言ってしまうと大袈裟だけど、「ツルモク独身寮」は、いつまでも忘れられないような印象深く心に刻まれた漫画だったようですね。
スピリッツ連載からもう30年くらい経って、当時愛読していた若者たちも50歳前後になる訳ですからね。地方から出て来て大都市の会社に就職した若者たちに取って、「ツルモク独身寮」という作品は、大きな共感を覚えて愛読した漫画作品だったのでしょう。何しろ「ツルモク独身寮」に出て来るたいていの登場人物は、地方から上京して来て大都会で働き生活している人たちだし、ヒロインの姫野みゆきも愛知出身でツルモクの女子寮生活者だし。
僕はスピリッツ誌上で「ツルモク独身寮」をリアルタイムで読んでいた当時、そんなにこの漫画に思い入れを抱かなかったけれども、この年齢になって、ネット漫画でパラパラ読み返すと、昔を思い出して何だか感慨めいたものが心に起こります。
僕自身も初めて社会人になったとき、上京して会社に就職し、会社の独身寮に入りましたから、自分の昔々を思い出して感慨深いですね。独身寮の中の勝手はツルモク独身寮とはだいぶ違いますけどね。僕が入った寮は六畳間二人ひと部屋だったし。寮の規律も雰囲気も違う。
まぁ、こう爺さんになって来ますと、「ツルモク独身寮」なんかパラパラ見ると、はるか昔のもう二度と戻れない若き日々を思い返して懐かしく、あの若さに戻って若さの持つ元気やエネルギーに任せて、またいろんなことをやってみたいなぁ、って叶わぬ望みを抱いてみたりしますね。コミックスで読み返す人たちも、そういう気持ちで読み返して懐かしさの感慨に耽るのかも知れない。
JESUS -ジーザス-
90年代の週刊少年サンデーに連載されたアクション巨編、「JESUS -ジーザス-」は、同誌の1992年43号より95年20号まで長期連載されました。傭兵として軍事経験を持つ、凄腕の元殺し屋の主人公が、巨大犯罪組織と戦って行くサスペンス・ヴァイオレンスアクション劇画です。
元傭兵でテロリストの、闇社会での凄腕の殺し屋としての通り名、JESUS-ジーザス-は巨大犯罪組織から大量のヘロインを横取りして、自分自身は死亡を装い、死んだことにして既に死亡が確認されている一般人、藤沢真吾に成りすます。ジーザスと仲間の手違いでヘロインを隠した学校用の黒板が、日本の新星高校に納品されてしまった。ジーザスはヘロインを取り返すため(自分らのヘロインを守るため)に、新星高校に歴史教員として就職する。もともと成りすました藤沢真吾が新星高校の教職に内定していたことと、ジーザスは容姿が藤沢真吾とよく似ていた。
ジーザスが担任を受け持つクラスや学校でトラブルや事件が発生し、自分の正体を隠すためやむなくトラブル·事件解決に乗り出したり、担任教師として生徒や同僚教師を守るために凶悪犯罪者と戦うこととなる。また、大量ヘロインをぶん盗られた巨大犯罪組織24(トゥエンティーフォー)から、麻薬奪還と報復のため次々と刺客が送り込まれて来る。学校内や遠足行事の行程が、ジーザスと殺し屋たちとの戦いでたびたび戦場化する。
巨大犯罪組織24の幹部の一人、三崎かおるがジーザスの死を疑い、ジーザスが死亡を擬装して一般人に成りすまして生活しているのではないか、との調査に、腹心の部下、御堂真奈美を藤沢真吾の勤める高校へ、学校の養護教員として送り込む。御堂真奈美もまた、その実体はテロリストであり凄腕のスナイパーだった。
ジーザスが、24から送り込まれて来る数々の殺し屋たちとの戦闘を重ねる内に、ジーザス自身が敵の本拠地、24(トゥエンティフォー)のアジトへ乗り込んで行ったり、学校内で起こる事件的トラブルで生徒たちを守るため、陰に隠れて躍動し凶悪犯罪者を退治したりする中で、本来敵である御堂真奈美と共闘していつしか心を通わせたりする。
90年代の週刊少年サンデーに大人気連載された「JESUS -ジーザス-」ですが、僕はほとんどサンデー誌上で読んだことはなく、全編コミックス単行本で読みました。少年サンデーコミックスで全13巻、面白くてコミックス新刊が出る度本屋さんで買って来て愛読しましたね。何てったって主人公のジーザスがカッコ良くって。
主人公はアフリカ各地の紛争で腕を鳴らした元傭兵で、幼い頃から孤児としてニューヨーク·スラム街で育ち、少年時代はスラム街の不良たちを束ねたワルのグループのヘッドとして荒んだ日々を過ごす。傭兵業を終えて暗黒街の凄腕の殺し屋として活動し、闇社会で“JESUS ”という通り名で恐怖と共にその名を轟かす。
本来、超クールな殺し屋ですが、漫画の物語では、けっこうユーモラスに描かれています。意外と熱血漢で正義感さえ感じさせるキャラです。学校の生徒や女教師を守るべく活躍する姿は正義の味方的なキャラに映る。
長期連載された漫画の物語の中で、数々の刺客たちと命懸けの戦闘を繰り広げて行く訳ですが、ジーザスが敵の殺し屋と戦って相手を倒し、死ぬ間際の敵にトドメを刺すときに、ジーザスが吐くセリフ「JESUS この名を地獄に落ちても忘れるな」という決めゼリフがあります。これは傭兵時代から吐いているセリフのようで、敵の殺し屋との壮絶な殺し合い戦闘の末に、倒れて虫の息の敵に向けて必ず吐かれるセリフです。ココもカッコ良い!
敵味方の間柄ながら、同じ新星高校の教員として生徒や学校を守るために、トラブルに対して共闘して行く内に、ジーザスと同志的に心を通わせ合う、本来は凄腕の殺し屋、御堂真奈美ですが、僕は最初、この御堂真奈美は男性キャラだとばかり思ってました。描き方がガタイが良くて肩幅広く大きいし、髪形も角刈りに近いような短髪なので男キャラだと思い込んでた。でも、途中からそう言えばちょっと胸が出てるかな、とか思い始めて、女キャラだったんですね。男女の闇社会キャラだけど、恋愛関係にはなりませんでしたね。ヒロインは同じ学校の、若くて美貌の英語教師、水谷小百合先生ですね。
「JESAS -ジーザス-」の作者は、原作が七月鏡一氏、作画が藤原芳秀氏です。藤原芳秀先生は修行時代は池上遼一や本宮ひろしという、日本の劇画·漫画界のレジェンドのアシスタントとして画力を磨き、一本立ちしてからは小学館の雑誌で描くことが多かったですね。僕が最初に藤原芳秀さんの漫画を読んだのは、80年代末近くから90年代初期に掛けて週刊少年サンデーに大人気連載された、本格格闘技漫画「拳児」からです。当時の僕は武道·格闘技オタクだったので「拳児」は熱狂して愛読しました。その後、2000年代前半に青年誌の週刊ヤングサンデーに連載された「闇のイージス」も面白く読みましたね。でも「闇のイージス」は途中までしか読んでないかな。10巻くらいまで読んだろうか。まぁ、僕個人の好みとしては「JESUS」の方が面白かったかな。
「JESUS -ジーザス-」は続編が、「JESUS -ジーザス- 砂塵航路」というタイトルで同じ小学館のビッグコミックスで2009年から刊行されて、2012年までで全14巻完結で刊行されてますね。僕はこの作品は未読です。あらすじを調べたのですが面白そうですね。読んでみたいアクション巨編です。
◆JESUS 砂塵航路(1) JESUS 砂塵航路 (ビッグコミックス) Kindle版
◆JESUS砂塵航路 コミック 1-14巻 セット (ビッグコミックス) コミックス – 藤原芳秀・
◆ジーザス(13) ジーザス JESUS (少年サンデーコミックス) Kindle版
◆闇のイージス(1) (ヤングサンデーコミックス) Kindle版
◆闇のイージス (1-26巻セット 全巻) [コミック] ...
オフィス北極星
日本の損害保険会社所属のアメリカ駐在員、時田強士は占い師・シャーに「北極星の目を持っている」と告げられて気持ちを動かされ、保険会社を辞めて独立し、アメリカ国内でリスクマネジメント事務所「オフィス北極星」を立ち上げる。事務所設立に際して雇った事務員の女性は有能だったが、その後、弁護士になる夢を叶えることを決意し、大学へ入学するために事務所を辞める。次に雇った、同性愛者でベジタリアンの二人組の女性コンビの事務員も、二人揃えば有能だが、二人揃わないと調子が狂うという欠点を持つ。その二人組がヘッドハンティングされて辞めた後、事務所に来たブラジル移民の女性も仕事ができる。さらに、時田強士のリスクマネジメントの仕事を進める中で度々タッグを組む、ハーバード大学ロースクール出身の有能な女性弁護士、バーバラ・アンは法廷では強気だが、恋に臆病。時田強士のアメリカ生活では、その周りに、個性豊かなアメリカ人たちがいっぱい登場し、みんなから“ゴー”の愛称で呼ばれて親しまれる。日本人ビジネスマン時田強士を中心に、物語はバラエティー性に富んでスリリングにユーモラスに進んで行く。異文化摩擦の難解なトラブルに果敢に挑んで行くゴーと、敵・味方の個性的なアメリカ人との交流や戦いを描く、海外舞台のホットなビジネスコミック。
「オフィス北極星」は、講談社の青年コミック誌「週刊モーニング」に、原作は真刈信二氏、作画は中山昌亮氏のコンビで、1993年29号から1998年40号まで連載されました。物語のテーマは、アメリカ訴訟社会に於ける企業の取り組み方、乗り越え方ですね。主人公が日本人なだけに、主にアメリカ進出した日本企業が陥る、文化の違いに寄るトラブルに、在米日本人主人公・時田強士がアメリカ訴訟社会を舞台に、日本企業を助けるためトラブル解決に、悪戦苦闘しながらも全力で取り組んで行く姿を描いてます。見方に寄っては法廷劇画的な面も強いです。物語を通して法廷での攻防が描かれるシーンが多い。
僕は講談社の青年コミック誌「モーニング」は読んでなかったので、「オフィス北極星」は講談社コミックスで全巻読みました。コミックス初版発行が1巻が1994年、10巻が98年になってますから、だいたいその当時全10巻読みました。僕の30代半ばから後半の時代ですね。僕個人的には絵のタッチがそれほど好きな絵柄じゃなかったけど、ダイナミックな絵柄で、ストーリーも舞台は、全く知らないアメリカ訴訟社会だし、僕としては自分の知らない海外の情報が知れて新鮮でした。日本では常識的なことや許されてることが、アメリカ社会では訴訟問題となりうるという、この文化の違いに驚き、また、人種のるつぼと言われるアメリカ社会での、人々の生活様式からビジネス界の内容まで、新鮮な情報として受け止めて面白かった(“ビジネス界の内容”というほど詳しく網羅されてる訳でもないけど)。
そういえば僕は講談社系の青年コミック誌を定期購読したことがないんですね。僕が青年コミック誌を読み始めたのってだいたい20歳の頃からですが、当時から小学館・双葉社・秋田書店・少年画報社の青年コミック誌ばかりで、とりわけ小学館と双葉社の青年誌が多かったですね。講談社の青年誌のラインナップは、ヤングマガジン・モーニング・イブニングなどですが、ときどき買って読むことや、洋食屋やラーメン屋などの食堂や喫茶店などに入って飯のついでに読むことはあっても、続けて買って読むことはなかったですね。コミックス単行本は別ですけど。
まぁ僕は、社会人になってからは、漫画本を読むのが最大の趣味みたいなもんだったから、講談社の雑誌に連載されてコミックス単行本になった漫画は、面白い作品は積極的に購入して読んでましたから、講談社の青年誌連載の漫画もコミックスでけっこう読んでる訳ですが。あ、そうだ。月刊アフタヌーンは何回か購読してますね。アフタヌーンには、「ガンスミスキャッツ」や「砲神エグザクソン」、「寄生獣」や「ああ、女神様」とか、真刈信二氏原作になる「勇午」とか載ってましたからね。キムタク主演の時代劇で2017年4月公開のGW 映画「無限の住人」も、原作劇画はアフタヌーン掲載ですね。
「オフィス北極星」はハリウッド映画を見てるような雰囲気がありましたね。アメリカ訴訟社会というものを知りたいという知的好奇心もあって、けっこう面白く読んでた。主人公のゴーも個性豊かな主役だけど、脇に出て来るアメリカ人たちが白人や移民出身の人たちなど、日本人とは違う、日本人に比べると突き抜けて個性豊かな登場人物が多く、勿論普通に常識的な登場人物も居る訳だけど、ドラマの雰囲気が日本舞台で日本人ばかりの登場人物の物語に比べて、お話を真面目に描いていてもダイナミックでユーモラスで、漫画の内容が新鮮で面白かったですね。
漫画が面白かったから「オフィス北極星」全10巻読んだんでしょうが、当時、読んでたときは物語の世界に憧れもあったんでしょうね。アメリカ大都会の厳しいビジネス社会で有能に活躍するカッコ良い主人公への憧れ。英語がペラペラ喋れてアメリカ現地の社会でビジネスのやり取りができる、というカッコ良さ。人種のるつぼのアメリカ社会で、白人も移民も、明るく陽気でアクティブで、お互い自己主張し合いながらもユーモアで摩擦をかわして交渉を進める、ホットな社会で力強く生きる人々と熱く交流して行く、有能で明るく面白い主人公のキャラクターとその活躍への憧れ。
内気で心配症で人見知りが強くて引っ込み思案で神経質で、人に気を遣い過ぎて、発達障害みたく物忘れなどイロイロ欠点を持ち、無能で頭の悪い僕としては、現実には、アメリカ社会で生きて行くなんて先ず絶対無理で、アメリカの大都会の厳しいビジネス社会で余裕でユーモアたっぷりに明るく生きて、ときにビジネス戦線で果敢に戦って行く主人公への、「ああ~、俺もこんなふうにアクティブに活躍して生きてみたいなぁ」という憧れで読んでたのでしょう。面白い漫画は、漫画の世界観への憧れ、というので読むというのも大いにありますね。
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●漫画・・ 「寄生獣」..(3)
90年代を代表するSFホラー漫画の傑作、「寄生獣」の物語は、第1巻・巻頭のコマの、このセリフから始まります。「地球上の誰かがふと思った。人間の数が半分になったら幾つの森が焼かれずに済むだろうか。地球上の誰かがふと思った。人間の数が百分の一になったら垂れ流される毒も百分の一になるだろうか。誰かがふと思った。みんな(生物)の未来を守らねば‥」というセリフが、巻頭の幾つかのコマに添えられ、地上に降って来た、ソフトボールの球大の球体がパックリ割れて、気味の悪い芋虫状の幼虫が、街の各家々へと侵入して行く‥。
物語も終盤に入って、寄生生物パラサイトたちの巣窟となっている、新一の住む街の隣町の市役所の中で、銃装備した機動隊員たちに追い詰められた、パラサイト側の重要人物の一人、市長・広川の言葉。「地球上の誰かがふと思ったのだ。みんな(生物)の未来を守らねばと。環境保護も動物愛護も全ては人間を目安とした歪なものばかりだ。人間一種の繁栄よりも生物全体を考える。そうしてこそ万物の霊長ではないか。正義のためとほざく人間。人間に寄生し生物全体のバランスを保つ役割を担うパラサイトから比べれば、人間どもこそ地球を蝕む寄生虫、いや寄生獣だ」…。
物語の最初に誰の言葉ともなく語られた説明文と、物語も終盤に入って来て、第一のクライマックスを迎えたとき、市長・広川から語られるこの言葉。これは、この漫画「寄生獣」のテーマそのものを語っていますね。
パラサイトが人間の脳を乗っ取って自我が芽生えたとき、パラサイトの個性の意識が生まれた最初に、自分の意識にこだまする天からの声は、「この種(人間)を喰い殺せ!」ということだそうですが、パラサイトの中でも唯一ずば抜けて知的な、いや、パラサイト生物で知的な個性はもう一人居て、新一の右手に寄生したミギーもかなり知的な存在ですが、田宮良子/田村玲子は抜群の知的好奇心と向学心を持ち、自分自身や自分の種や人間と人間社会に対して非常に研究熱心で、大学生となって理系や哲学の講義まで受けています。元々、田宮良子の登場は新一の学校の教師としてですから、最初から知的なキャラクターではあった訳ですが。
敵側パラサイト中唯一と言っていい知的な存在の田村玲子は、試行錯誤を繰り返して自分たちと人間の研究を続けますが、最初は他のパラサイトと同じように人間を狩って食べて自分の栄養源としていたのですが、最終的には田村玲子は人間を食べずに、人間たちと同じように人間の食べている食料品を口に入れて栄養源とし、それでも自分たちパラサイト種も生きていける、ということまで発見している。
パラサイト側の無敵の戦士、“後藤”を作ったのも田宮良子/田村玲子だ。田宮良子はレアケースとして新一の右手に寄生したミギーを知って、脳部分だけでなく人間のいろいろな器官に寄生が可能と解ったのだろう。物語終盤のクライマックスの重要人物、“後藤”は田宮良子/田村玲子の実験作の一つだ。また、多分、新一とミギーを見て、田村玲子はパラサイトの寄生ではなく、パラサイトと人間の共生についても理解したろう。パラサイトは人間の脳を奪って乗っ取ってしまうのではなく、人体の脳以外の器官に寄生して、“共生”して生きる活路があることを知った。
パラサイトの巣窟だった、新一の住む街の隣町の市役所が国家警察に寄って一掃され、残った無敵のパラサイト戦士“後藤”も、新一・ミギーに寄り退治された。漫画「寄生獣」の物語では、その後、パラサイトが鳴りを潜めた。ニュースなどパラサイトのことが表面に出なくなった。だが、リアルに考えると、日本の新一たちが住む限られた地域だけで起こった事件ではなく、多分、地球上のあらゆる場所で起きた現象なんだろうから(違うのかな?)、パラサイトは田村玲子や後藤の仲間たちだけではないのだろう。とすれば、パラサイトは地球全土に、でなくとも、日本全国にまだまだいっぱい居る筈である。彼らは本能として「人間が主食」というものを持っている。しかし、市役所パラサイト一掃のニュースは全国規模で大々的に報じられただろうから、他のパラサイトたちも「しょせん、人間には敵わない」と認識して、鳴りを潜めることにしたのかも知れない。
新一とミギーの関係は寄生ではなく、正しく共生だった訳で、知的で頭が良く無敵なくらい強いミギーは、新一に取っての「ドラえもん」と言えなくもない。物語中、新一はたびたびミギーに助けられている。この漫画「寄生獣」の読者の中には、自分の右手を失ってもミギーのような相棒が欲しいな、とミギーに憧れた人もいっぱい居たと思う。右手を失ったと言っても、ミギーが眠ってるときやミギーが意志を持ってないとき、新一はこれまで通り右手を自由に使えてたのだから。ミギーは相棒としては非常に心強い友達だ。
もし本当にパラサイト寄生生物が現れて、脳を奪われるのは嫌だが、どちらかの手に寄生するというのなら、喜んで片手を差し出す人は多分、けっこう多いと思う。そこらの人間に比べても頭の良いミギーは、万能の相棒にさえ見える。
前回言ったように、パラサイトは一回きり生物だ。こんなことありえない。地球生物史上、一回きりで出現した生き物なんて一つも無いだろう。地球上に現れた生物の目的はみんな、種族繁栄だ。漫画「寄生獣」の物語上、パラサイトが出現したのは、パラサイトの卵が天から降って来た一回きりだ。人間の身体を使っている以上、当然老化が起こり、いつか肉体が滅びる。脳部分というか頭部を乗っ取ったパラサイトの肉体的寿命がどれくらいあるのか?だよね。乗っ取った肉体が老化で動かなくなったら、他の若い肉体に移動する、という方法もある訳だし。いずれにしろ、次世代が生み出せない、というのは生物としてどうしようもない欠陥だよね。放っといても、今の一代が滅びればパラサイトは終わる。それとも新たにまた、天から卵が降って来るのか?
最初に言ったように、漫画「寄生獣」全編の中では、パラサイトは全滅した訳じゃないから、続編を描こうと思えば続編は描けるのだろう。物語の最後の最後、ミギーは半永久的に眠りに落ちるみたいだけど。もし、パラサイト側がもう一度、人間に対して宣戦布告でもすればミギーも目を覚ましてまた新一と共に人間側として戦うのかも知れない。ただ物語中、ミギーが仲間であるパラサイトを殺していたのは、自分自身と寄生本体である新一の命と肉体を守るため、というエゴだった訳だけどね。何も人類を守るなんて大義名分を持って、仲間である他のパラサイトと戦っていた訳ではない。
そういえば宇田さんはどうしたんだろう? 宇田さんの顔の下部から首、胸の上の方らへんまでは、ジョーと呼んでいるパラサイトが寄生していた。宇田さんのエピソードは終盤には出て来なかったよな。物語中、ミギー以外で唯一、人間の脳が残った寄生生物。リアルに考えると、ミギーやジョーのようなケースはかなりレアだけど、他にもありうることかも知れないし。まあ、パラサイトは人間側の反撃が怖くなって、鳴りを潜めているんだろうが、田村玲子が証明して見せたように、人間と同じ食料品を食べて生きてるのかも知れないが、彼らには「この種(人間)を食い殺せ!」という本能があるから、本能を抑えて日々過ごすのは大変なことだろう。まあ、漫画の話ですが。続編を描けば描けるが、この物語の驚き部分はもう出尽くしちゃってるし、再び続編をとなると、またよっぽど新鮮な驚きエピソードを作って物語編んで行かないと、人気を出すのは大変だろうな。多分、「寄生獣」原作物語の作者はもう、続編描こうとは思ってはいないんだろうけど。
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