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●小説・・「じじごろう伝Ⅰ」..登場人物一覧(長いプロローグ・狼病編)

(登場人物一覧)

吉川和臣: ワカト健康機器産業株式会社社員。営業部所属係長職。40歳。妻・智美と二人の子供、長女・愛子、長男和也が居る。都市部から離れた田舎町の新興住宅地に家を買って四人家族で暮らし、マイカー通勤していた。都市部歓楽街の外れにある一軒のキャバクラ、「ビッチハウス」に通い続けて、半年間掛けてだんだんと人が変わって行った。元は実直で優秀な会社員。家族思いの愛妻家で、仕事は真面目で人望もあり、社会人として申し分なかったが、後に人格破綻し行方不明となる。

中村達男: ワカト健康機器産業株式会社社員。営業部所属。28歳。しっかり者の妻、亜希子と二人暮らし。仕事は普段はだらだらしているが、時々、幸運も味方して大きな仕事を取って来る。仕事的には、どちらかというと、コミックの「釣りバカ日誌」の“ハマちゃん”タイプ。歓楽街で遊ぶの大好きで、趣味はキャバクラ・風俗通い。結婚してからは、賢妻・亜希子がうるさいので、以前ほどは歓楽街に行けなくなっている。

藤村敏数: ワカト健康機器産業株式会社社員。営業部所属。29歳。中途採用で、元は社会福祉施設で現場職員をやっていた。歳は上だが、会社では中村達男の後輩になる。仕事はコツコツと真面目にこなして行くタイプ。中肉中背の中村達男よりも上背があるがスマートな体格で、ハンサム顔だから意外とモテる。一時期は中村達男の歓楽街遊興仲間で、施設勤めの際に恋人だった城山まるみから離れてキャバクラ・風俗に嵌まり、その後、保育士の有馬悦子と結婚を考える恋人どおしとなる。

在吉丈哉: ワカト健康機器産業株式会社社員。営業部所属。22歳。仕事は気が利き要領が良いタイプ。割とスマートに仕事をこなし、世渡りもうまいが出世欲に欠ける。平均よりも背が低いが、高校球児だったため、頭髪を短く刈り込み、細身の筋肉質タイプ。大佐渡真理と恋人どおし。

城山まるみ: 社会福祉施設に勤める事務員。以前、同職場に勤めていた藤村敏数と恋人関係にあった。27歳。あまり自己主張をしない、どちらかというと内気で、しとやかな女性で、集団の中では波風立てないように生きるタイプ。藤村敏数に振られた(捨てられた)格好になっており、その後も敏数を慕い続ける。伯母を見舞いに行った病棟で入院していたおタカ婆さんに咬まれ、感染し、ゾンビ化して敏数と有馬悦子のカップルを襲う。

大佐渡真理: 社会福祉施設現場職員。同職場で元、藤村敏数の後輩。23歳。敏数の企画した合コンにて在吉丈哉と知り合い、恋人どおしとなる。からりとした性格でボーイッシュ。いわゆる霊感が強く、心霊現象や超自然現象によく遭遇する。サイキック。霊障や妖魔を判別する力を持ち、危険を察知できるが、それはとりもなおさず、存在を知られたくない闇の者たちに疎ましく思われる危険もあり、諸刃の剣である。

有馬悦子: 保育施設勤務の保育士。藤村敏数の恋人。敏数のその前の恋人である城山まるみとはタイプが違い、優しく女らしい性格だが、はっきりしていて活発な方。ゾンビ化した城山まるみに喉を咬み抉られて殺害される。

吉川智美: 吉川和臣の妻。愛子・和也の母親。37歳。パートタイムで事務仕事をしている。細身でショートヘアにした活発な美人。見た目ボーイッシュで、おっちょこちょいな面もあるが有能でしっかり者。だんだんと人が変わり行き、人格崩壊して行っている夫・和臣を気持ち悪く思い、危険を感じて、二人の子供を連れて家を出て、実家に居住する。父母は実家で健在。

本田義行: 吉川和臣家の隣の家の長男。公立高校二年生。柔道部所属・柔道二段。県大会で常に上位入賞する程の高校柔道の猛者。和也に頼まれて一緒に行った、夕闇の市民公園の森で通り魔に遭遇、襲われて不覚を取り、スタンガンで失神させらた上に暴行され、肋骨を折る大怪我をして入院してしまう。 

本田忠行: 義行の父親。吉川家の隣家の当主。

吉川愛子: 市立中学校の二年生。女子バスケット部に所属していたが、母親が子供を連れて家を出て、実家生活に入ったのを機に退部した。丸顔でくりくりした目をしていてオカッパ頭にしている。勝気でしっかりした性格で正義感もあるが、考えて行動しムチャはしないタイプ。家庭や学校内外でいろいろな事件に遭遇し、思慮深くなった。弟・和也をのろまで愚図と半ば馬鹿にしていたが、和也の変貌と共に一目置くようになり、和也への態度も変わった。再三、スーパードッグ・ジャックに助けられる。

ピ-子: 愛子の親友。バスケット部所属。ピー子は愛称で、部活の先輩らもそう呼ぶ。明るく陽気で面白く話好きだが、口が軽く何でも喋ってしまい、校内の拡声器的な面がある。同時に陰険な面も持っていて、愛子の部活をサボった件をバスケ部内に告げ口して、一度は愛子を排斥するが、愛子がバスケ部を辞めた後、また仲良くなる。

真央: 愛子の親友。優しく穏やかで女の子らしい性格。良家の子女。文化部に所属し、優等生で勉強ができる。

武田虎太: 愛子が小学校時代、同じクラスメートだった男の子。現在クラスは違うが愛子によく話し掛けて来る。クラブ活動には入ってなく帰宅部。お調子者でカルく、学校内の情報屋。

西崎慎吾: 父親は県内に幾つもの企業を持つ資産家で、警察、教育機関、県政・市政に顔の利く有力者。父親の権力の傘を着るドラ息子。市立中学二年二組生徒。私立の進学校に通っていたが問題を起こし、市立中学に移って来て、学校内に自分のクラスメート中心の不良グループを作り、その不良グループのボスに納まっている。ワガママで残忍な性格で、クラスメートである後能滋夫を執拗に苛めて追い込む。

哲夫: 西崎慎吾の用心棒的存在。同じ中学校OBであり高校中退して、現在は学業も仕事もせずに毎日街をぶらぶらしている不良。同じ境遇の友達といつもつるんで遊び回っている。ニート友達の相棒と共に、西崎慎吾の不良グループの校外行動に着いて回ることが多い。西崎慎吾から小遣いを貰って遊びの資金にしている模様。

後能滋夫: 市立中学校・二年二組の生徒。おとなしくいつも控えめで言葉少なく、内気で暗い雰囲気で居る。家で小鳥を飼っている。苛められっ子で、校内でも多くの生徒が陰で馬鹿にしている。西崎慎吾を中心とした不良グループに、常に執拗な苛めに合い続けているが、苛められても全く反発できないで居る。スーパードッグの存在の件をきっかけに吉川愛子が近付き、吉川姉弟と親しくなる。

杉山孝子: 通称、おタカ婆さん。老ポン引きのやり手婆。72歳。歓楽街の主のような、この道数十年の、客引きを主業とする風俗婆さん。少女の頃から水商売関係、売春などを続けて生きて来ている。つい以前まで、自ら客を取ることもあったという風俗の豪の者。深夜の歓楽街ストリートにて「狼病」に感染してしまいゾンビ化し、病院に収容された後、院内で暴れ、何人かを感染させる。

吉川和也: 吉川和臣・智美夫妻の長男、愛子の弟。市立小学校三年生。父親の強い勧めで地域の少年野球チームに所属するが、自身は家の中でゲームをやったり本を読んだりテレビを見たりと、一人遊びの方が好き。姉・愛子から見るとグズでノロマな弟だったが、スーパードッグ・ハチらと知り合ってから、その秘めた能力がジワジワと開眼し、性格も落ち着いて大人びて来る。スパードッグ・ハチとは友達関係であり、時々会っては会話をしている。母・智美が子供を連れて家を出た際に、少年野球も辞めている。サイキック。妖魔を判別できる。

池田勇人: 市立小学校三年生。地域の少年野球チーム所属。和也のチームメイトだった。

岡石浩司: 和也や勇人ら地域の子供たちが所属する少年野球チームのコーチ。チームの総責任者は、地元在住中年男性のコワモテオヤジ監督が居るが、監督補佐や監督代行の役目を果たし、子供たちに野球技術を教えている。元、甲子園まで行った高校球児で、現在は地域隣接の総合大学の大学院に通う。23歳。爽やかなスポーツマンタイプの好青年。

ヒトオオカミ: 普段の容姿は、小太りで穏やかな顔付きのサエない中年サラリーマン風で、身なりはいつも背広姿や、ワイシャツにネクタイを締めていることが多い。だがその実体は人狼。いつもはおとなしい雰囲気の存在感が薄い、アジア系容姿の中年男性だが、満月が近付く2、3日前から昼間も毛深くなって来て、夜間は全身が獣毛で覆われた狼男の容姿になる。満月の前後4、5日間の夜間は狼男の姿で居るが、この間に毎回人間を1、2人食べる。百年くらい前から食べるのは、犯罪者など社会に害を与えていると思われる人間を、なるべく選んで食べている。怒ったり恨みを持つと、その相手を惨殺するが、その人間を食べることもある。人狼のときは、野生の猛獣以上に俊敏で、爪や牙は高い殺傷能力を有する。「狼病」と呼ばれる風土病を蔓延させようとする蛇女一味を宿敵と見做して、世界中を股に掛けてその後を追い続けている。凶暴な人狼時はいざ知らず、腰が低く温和な人間時は、実力的にはるかに上の、じじごろう・ハチ・ジャックを敬慕している。

蛇姫(奥方様): 古代エジプトでクレオパトラを咬み殺した毒蛇の化身という伝説を持つが、実は数百年前に、アラビア半島で200年以上生きて妖魔となった有毒大蛇の化身。普段は中年女性の容姿で居る。邪悪な精神の持ち主で、いつの時代も世界の各地で東ヨーロッパの風土病である「狼病」を蔓延させて、人間社会を混乱させようとしている。人間の数倍、猛獣以上の力を有し、幾つかの超能力を使う、残忍で冷酷な性格の妖魔。

トカゲ男: 300年近く生きた南洋地域のオオトカゲの化身。妖魔。人間の姿で居るが、容貌は爬虫類のような顔をしており、手指は爪が鋭くトカゲに似た形なので、いつもサングラスやマスク、手袋などで露出を抑えている。牙や爪に毒を持ち、平然と人間を殺す性格。蛇姫を「奥方様」と呼んで慕い、その子分。

ハチ: 濃い茶色の毛をした、小さめの中型犬で、耳の垂れ具合などから洋犬の雑種と見られる。実体はスーパードッグ。何百年と生き続け、人間並みあるいはそれ以上の知能を持ち、野性の動物の何倍もの俊敏さを持つ。普段の性格は温和な方で、ムチャをせずに冷静に見守り考えてから行動する堅実タイプ。義理堅いところもあり、戦国時代に山賊に襲われた村で、可愛がってもらった農民の家族を惨殺された仕返しに、刀や槍で武装した十数名の山賊をわずか数分で皆殺しにしたこともある。サイキックである和也と友達関係となった。ハチ、ジャック、じじごろうは、市の総合運動公園奥の森の中で一緒に居るが、特にチームや共同生活の仲間というものではなく、意識的にはそれぞれ独立して生きている。

ジャック: 白色の大型犬。秋田犬の容姿で、秋田犬にしてはかなり大きい雑種。実体は何百年と生きているスーパードッグ。人間並みの知能を持ち、人の言葉や文化を理解する。ライオンや虎などの野生の猛獣など、比べようもないくらいに強く、その数倍のスピードとパワーを持ち、過去、人間・動物・妖魔に百戦無敗を誇る。明治時代初めの高野山近隣の山奥で、超猿と戦い、たった一度だけ引き分けた。その折り、深手を負って傷着き、山に住む子供の姉弟に助けられ、重症の身体を手当てして介抱してもらい、回復した。その恩義の記憶を忘れず、いつの時代でも、子供が危険にあっている場面に遭遇すれば必ず救う、義理堅い面を持つ。普段は落ち着いているが、ひとたび怒れば荒々しく凶猛な面がある。敵と見做せば逃げず戦うファイターな性格。愛子が、百年以上前に自分を介抱した少女の生まれ変わりに思えて、何かと愛子の窮地を救おうとする。

ロバート・シルバー・ウルフ: (未登場)白人医師。長身で体格良くハンサムで、男の色気を醸し出す、ダンディーなナイスミドル。東ヨーロッパの風土病である「狼病」研究の世界的権威。実体はヒトオオカミであり、毎回満月の前後4、5日間には全身が銀色の獣毛で覆われる人狼の姿となる。アジア系のヒトオオカミよりも大きい。人狼のときには毎回、若い美女を一人か二人食べる。

超猿: (未登場)対妖魔も含め百戦不敗のジャックが唯一引き分けた超猿。人間大の大きさで人間並みの知能を持ち、その跳躍力や動きは野生の獣の数倍の能力がある。近畿地域の山間の全ニホンザルのボスだった。明治初期の高野山山系の峡谷でジャックと同士討ちになり、谷底へ落下したまま、消息不明。

じじごろう: 長身で体格の良い老人男性。一目見た印象は、見る人でそれぞれ異なり、いわく、マウンテン・ゴリラ、原人、猿人、イエティー、ビッグフット、フランケンシュタイン、怪物、怪獣、怪人、幽霊、お化け、宇宙怪物などなど、である。日本のどんな場所でも一年中、フンドシ一枚の裸で過ごす謎の老人。巨大な身体に見えるが、だいたい190センチ近い身長でプロレスラーのような体格をしている。禿げ頭に皺の多い老人顔だが、精悍な雰囲気を醸し出し、落ち着いている。いつも六尺強の樫材か何かの棒を杖代わりに持っているが、足腰はかくしゃくとし、どんな場所でも裸足で居る。不思議な力を持ち、その能力や強さは未知数。一説にはいわゆる「仙人」ではないかという噂もある。少なくとも数百年は生きていると思われるが、不明な点が多い謎の怪人。いつでも裸姿なので、ひと目に付いたときは、大きな乞食やホームレスと思われることも多い。市の総合運動公園にハチ・ジャックと共に結界を張る。滅多に人の前に姿を現さないが、和也には親しくする。ヒトオオカミは人間時に、尊敬を込めて「じじごろう先生」と呼ぶ。

 

■「じじごろう伝Ⅰ」 長いプロローグ編

◆(2012-01/01)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 長いプロローグ..(1)
◆(2012-01/19)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 長いプロローグ..(2)
◆(2012-01/26)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 長いプロローグ..(3)
◆(2012-02/06)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 長いプロローグ..(4)
◆(2012-02/10)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 長いプロローグ..(5)
◆(2012-03/02)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 長いプロローグ..(6)
◆(2012-04/02)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 長いプロローグ..(7)
◆(2012-04/25)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 長いプロローグ..(8)
◆(2012-06/01)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 長いプロローグ..(9)
◆(2012-06/16)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 長いプロローグ..(10)
◆(2012-07/06)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 長いプロローグ..(11)
◆(2012-08/04)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 長いプロローグ..(12)

 

■「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編 (1)~(9)

◆(2012-08/18)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編 ..(1)
◆(2012-09/07)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ 」 狼病編 ..(2)
◆(2012-09/18)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編 ..(3)
◆(2012-10/10)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編 ..(4)
◆(2012-10/28)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編 ..(5)
◆(2012-12/01)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編 ..(6)
◆(2013-01/06)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編 ..(7)
◆(2013-01/25)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編 ..(8)
◆(2013-04/09)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編..(9)α
◆(2013-04/09)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編..(9)β [・・αの続き]

                               ...以降続く。

 

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●漫画・・ 「グランドール」

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 「グランドール」は集英社の月刊児童誌「少年ブック」に、1968年の1月号から9月号まで連載されました。僕が12、13歳の頃です。僕は小学生時代、漫画本の多くは近所の貸本屋で借りて読んでましたが、僕が6歳のときから通っていた貸本屋さんが、僕が11歳の頃、店閉まいしてしまい、当時の月刊誌6冊の内、月に2冊は購読してましたが、あとの4冊は貸本屋さんで借りて読んでたので、購読していた「ぼくら」と「少年」以外は読めなくなりました。だから、「少年ブック」も小五の途中からは滅多に読めなくなった。それでも児童漫画が死ぬほど好きだった僕は、時折「少年ブック」を目にすることもありました。だから、「少年ブック」で1966年2月号から67年10月号まで連載されてた「フライングベン」が終了して、後に「グランドール」が同誌に掲載されていることも知ってました。内容も何となく知っていました。手塚先生お得意のSF漫画だけど、ヒーローものというよりはホラーに近い、と。まあ、SFではあるんですけどね。何か、雰囲気的に怖そうな漫画だなあ、と思ってました。後々「グランドール」はコミックス単行本で読みますけど、いつ頃だろう? 高校生の頃? いや、青年時とか大人になってからか(?)。

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 「グランドール」はSF漫画でも、主人公や人間を助ける、正義の味方というヒーローなぞは登場しません。活躍する主人公は普通の平凡な少年です。物語当初では、別に腕力が強い訳でも何か優れた長所がある訳でもない、ごくごく一般的な、優柔不断でどちらかというと気弱ぎみな中学生少年。インベーダーの存在を知って、だんだんと強くなって行く。強くなるったって、別に特殊能力なんかが着く訳でも何でもなく、ただ、勇気が着いて行動力が着くだけで、普通の少年のままです。まあ、成長する訳なんだけど。

 文化大革命の中国で見つかった小さな人形。それは日本でも見つかる。平凡な中学生、宇津木哲男が拾った手で握るサイズの人形は、首部分を修理すると夜中に人間の姿になってしまった。人形はグランドールと呼ばれる、インベーダー・宇宙人の使う侵略手段の道具だった。インベーダーの組織は、地球侵略・人類征服のため、世界中の大勢の人間の中の随所に、グランドールを紛れ込ませ、人間の騒動や戦闘を煽り、人間どおしを争わせて人間界を混乱に陥れることが狙いだった。インベーダーのその作戦は、ベトナムや中国では部分的には成功していた。そして今度は、学生運動真っ盛りの日本が狙われていた。中学生少年・宇津木哲男や、ジャーナリストである哲男の父親の周囲にも、グランドールの成り変わった偽者の人間が張り巡らされていた。グランドールの存在を知っている宇津木親子は、インベーダーに命を狙われ続ける。優柔不断でひ弱だった哲男少年は、グランドールとの度重なる戦いの中で勇気を身に着けて成長して行く。終盤、結末に向かって、「ええっ!そうなの?」っていう、どんでん返し的な展開で物語が終わって行くんですけどね‥。

 手塚先生の侵略ものSF、「グランドール」は、全集版のあとがきで手塚治虫先生が書かれていますが、何度も映画化されているSFの傑作、ジャック・フィニィ1955年の小説作品「盗まれた町」に影響されているということです。僕は30歳くらいのときに原作小説を読んでますが、映画化された「盗まれた町」は、78年の「SFボディスナッチャー」、93年「ボディスナッチャーズ」、2007年のニコール・キッドマン主演の「インベージョン」と三本見てますが、残念ながら、一番最初の映画化された1956年の「ボディスナッチャー恐怖の街」だけは見てません。原作小説発表の翌年の映画化だから、原作はアメリカ本国で話題になったんでしょうね。長編SF「盗まれた町」は、一説には、あの時代、第二次大戦後の国際社会状況下で、共産主義化・社会主義化された国家そのものの恐怖を描いている作品、という評価もありますね。ジャック・フィニィの「盗まれた町」では、一つの小さな町の中で、隣人たちが一人、また一人と宇宙人と入れ替わって行く恐怖を描いてますね。映画版なんてどれも、もう、ホラーそのものです。あとがきの中で手塚先生も書いてますが、手塚作品中では、お話のこのシチュエイションは、「グランドール」以前には、月刊誌「少年画報」で1965年から67年まで大人気連載された「マグマ大使」の中で、宇宙の魔王ゴアの侵略作戦の一つとして「人間モドキ」という形で使われています。生身の人間が、ゴアの手先である「人間モドキ」にジワジワと入れ替わって行く。隣人が人間モドキに入れ替わっているのに気が付かず、油断したときにその人も人間モドキと入れ替えられる。「盗まれた町」もそうですね。眠ってしまったときに巨大ソラマメの鞘から生まれる宇宙人と入れ替えられる。ジワジワ、ジワジワと隣人や周囲の人間たちが入れ替わって行く、そういうお話進行の侵略SFは、もう、そのものホラーですね。漫画作品だと先に書いた「マグマ大使」の“人間モドキ”、映像にはないけど、楳図かずお漫画版「ウルトラマン」の第一話、「バルタン星人の巻」での団地の住人がバルタン星人化して行ってるシーン。それから南波健二「豹マン」第一話の中で、同じく団地住人たちが異星人に乗っ取られているシーン。などなど、ですね。このシュチュエイションはけっこう怖いですよ。ホラー作品ではヴァンパイアものによく使われますね。一つの町や村ごと、住民たちがだんだん、ジワジワと吸血鬼化して行くお話。スティーブン・キングの「呪われた町」とか小野不由美の「屍鬼」なんかがそう。僕、このタイプのホラー、好きなんですよね。メチャ怖いんだけど、ドキドキ・ハラハラ、スリリングで。こういうシュチュエイションのホラーや侵略もの、好きです。

 雑誌初出60年代後半の「グランドール」はその後、度々コミックス単行本に収録されてますが、ほとんどが絶版で、今現在では、集英社文庫の手塚治虫名作全集17巻「グランドール」と、講談社の手塚治虫文庫全集「フライングベン」の第2巻の後半部に収録されてますね。あとは、講談社の手塚治虫漫画全集第77巻が、まだ手に入るのかも。

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