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「ブラック団」つのだじろう・作画 - 1964~66

 

  僕が子供の頃の少年サンデーに連載されてた、つのだじろう先生の「ブラック団」も当時、好きな漫画だったなぁ。毎週読んでゲラゲラ笑ってた。間の抜けた三人組のギャングが現金強奪とかイロイロ強盗犯罪の計画を練って実行するんだけど、計画に穴があったりメンバーの間の抜けた行動や運の悪さで、犯罪はいつも失敗に終わる。もともと三人とも根は善人でお人好しでけっこう優しい人間。運悪く、ときには本物の悪党や大犯罪組織を敵に回す立場に陥り、悪党たちの裏をかいて、犯罪犯すつもりが不本意にも正義的な良いコトしてしまったりする。

 「ブラック団」三人組のメンバーは、ボスがネズミを怖がり、ネズミ大嫌いな加藤骨蔵、通称カポネ。金庫破りの腕前を持つタローは禿げ頭で、太ったお腹のヘソはハートマーク。料理自慢。黒いスーツ姿だけど、痩せてて頬に傷ありでチンピラ然としたジローは、変装の名人で発明が得意。そして、ブラック団三人組を追う警視庁の鬼刑事ヒゲトラが居て、毎回、ブラック団が巻き込まれる事件に絡んで来る。

 ブラック団はギャングなんだけど、お話の中ではよろず何でも屋みたくいろんな相談や頼み事を引き受けて、事件に巻き込まれてドタバタ騒動になってしまうことも多かったですね。本来犯罪集団なんだけど、ある種探偵業やってるみたいな面もあった。

 ボスのカポネさんは黒いソフト帽に白っぽい背広に黒ネクタイ姿で(赤い蝶ネクタイなのかな?)、胸にはバラの花の飾り付けのオシャレもあるし、やることなすこと失敗に終わるけど、犯罪企てても根は真面目性格でリーダーシップがあり、まぁ、カッコ良かったですね。無精髭生えてて。(黒いネクタイだったら葬式出るみたいですね。カポネ親分は白っぽいスーツに黒のワイシャツに赤い蝶ネクタイでした。)

 つのだじろう先生の「ブラック団」は、週刊少年サンデー1964年第44号から66年第30号までおよそ2年間連載されました。面白かったなぁ。悪人になりきれなくてお人好しで間が抜けてて運が悪くて、犯罪計画がいつも失敗する、ドタバタ·コメディーのギャグ漫画。小学生時代、笑わせて貰いましたね。

 「ブラック団」のコミックス単行本化は、67年に朝日ソノラマのサンコミックスで全2巻で刊行されてます。その後77年9月から双葉社のパワァコミックスで全5巻で刊行されました。現在はコミックス単行本は古書しかなく、各社電子書籍で読むことができます。パワァコミックス全5巻が完全版でしょうね。

 

ブラック団(1) Kindle版 つのだじろう (著)

ブラック団(2) Kindle版 つのだじろう (著)

ブラック団〈1〉 (1977年) (パワァコミックス) – 古書, つのだ じろう (著)

ブラック団〈5〉 (1978年) (パワァコミックス) – 古書, つのだ じろう (著)

ブラック団 (1) オンデマンド版 [コミック] オンデマンド つのだ じろう (著)

亡霊学級 Kindle版 つのだじろう (著)

虹をよぶ拳【1】 (マンガショップシリーズ 149) コミックス 梶原一騎 (著), つのだじろう (イラスト)

恐怖新聞全9巻 完結セット (少年チャンピオン・コミックス) コミックス つのだ じろう (著)

うしろの百太郎全6巻完結(ワイド版) [マーケットプレイス コミックセット] コミックス つのだ じろう (著)

つのだじろうオカルト自選集 (1) (中公文庫―コミック版) 文庫 つのだ じろう (著)

霊界通信 (KCスペシャル) コミックス つのだ じろう (著)

空手バカ一代(完全復刻版) 1 (デラックスコミックス) コミックス 梶原 一騎 (著), つのだ じろう (イラスト)

空手バカ一代 コミックセット (講談社漫画文庫) [マーケットプレイスセット] 文庫 つのだ じろう (著)

虹をよぶ拳【2】 (マンガショップシリーズ 150) コミックス 梶原一騎 (著), つのだじろう (イラスト)

うしろの百太郎 全8巻完結セット(マガジンKC) [マーケットプレイス コミックセット] コミックス つのだ じろう (著)

ブラック団(5) Kindle版 つのだじろう (著)

 

 60年代の週刊少年サンデーでは、つのだじろう氏作品は64年の「ブラック団」から66年の「怪虫カブトン」、67年の「グリグリ」、68年の「てなもんな一本槍」とギャグ漫画の連載が続きましたね。ちょっと大きめのイタズラ好きで奇妙なカブトムシ型怪虫、カブトンが人間に悪さして回る中で騒動が起こる、ドタバタギャグ「怪虫カブトン」。カブトンの相棒で、ちょっとお人好しで気弱なグリグリが主役の座に着いた「グリグリ」。「てなもんな一本槍」はTBS 系列の大人気時代劇コメディー「てなもんな三度傘」に変わって放送された、同形コメディードラマ「てなもんな一本槍」のコミカライズのコメディー漫画。

 60年代のつのだじろう氏も児童漫画雑誌各誌に連載を持つ人気漫画家で、ギャグ漫画では他に週刊少年キング連載の「忍者あわて丸」~「忍者ピュンピュン丸」なども人気があり、ストーリー漫画作品では月刊·冒険王の「ライバル左腕」や月刊·まんが王の「赤バットの詩」、草創期の週刊少年マガジンに連載された「逆転王」などの熱血野球漫画でも少年人気が高かったですね。

 僕は子供時代、あんまり少女漫画雑誌を読まなかったので、読んだことはないのですが、つのだじろう氏は当時の少女漫画雑誌にも作品を描いてました。少女誌をパラパラ見ることはあったのでつのだじろう先生の漫画が載っていたのは知っていました。つのだじろう氏はギャグ漫画·ストーリー漫画·少女漫画を描き分ける才能豊かな人気漫画家でしたね。

 月刊·冒険王の69年6月号から連載が始まった、梶原一騎氏とタッグを組んだ熱血少年空手漫画「虹をよぶ拳」が大人気となり、その後、同じく梶原一騎氏原作で週刊少年マガジンで71年の春から連載を始めた、熱血格闘·空手劇画「空手バカ一代」が大ヒット。実在のカリスマ空手武道家·大山倍達をモデルにして、熱血感動ジャンルの娯楽劇画として話を膨らませた虚実混ぜ込みストーリーが、当時の少年·青年層に大ウケして、時代の空手·格闘技ブームに影響したくらいでした。「虹をよぶ拳」「空手バカ一代」の作画担当のつのだじろう氏も、大山倍達総裁率いる空手道場·極真会館に二年通って、空手道の鍛練を行ったほどです。当時の空手道精進の熱血ファンたちには、一種バイブルみたいな漫画でしたね。「空手バカ一代」の漫画を愛読して空手を始めた青少年は当時、全国規模でいっぱい居て、中には後に武道家界で有名な空手家になった人も何人もいます。

 梶原一騎氏と袂を分かち(梶原一騎・真樹日佐夫兄弟とはちょっとしたイザコザがあったみたいですが)、空手・格闘技劇画を卒業したつのだじろう氏は、今度は心霊・オカルトジャンルの作品を描き始めます。根が凝り性というかこれと思ったものにはのめり込むような性格なんでしょうね、空手道も極真会館に通うほどだったし、つのだじろう先生には「5五の龍」という本格将棋漫画がありますが、本人も将棋は相当な腕前のようです。つのだじろう先生は70年代から次々と心霊・オカルトジャンルの漫画を発表して行き、日本コミック界の心霊・オカルト漫画の第一人者と称されるまでになりました。

 つのだじろう先生と言えば、ギャグ漫画や野球・空手などの熱血スポーツ漫画と言うより、先ず心霊・オカルト漫画と挙げられるほどです。中でも代表作は73年から週刊少年チャンピオンに連載された「恐怖新聞」と、同じく73年の週刊少年マガジンで連載が始まった「うしろの百太郎」ですね。この二作は日本漫画界に心霊・オカルトジャンルのホラー漫画ブームを呼び起こしました。

 「恐怖新聞」「うしろの百太郎」の大ヒットから、つのだじろう先生は心霊・オカルトコミック専門の漫画家のように、次々と心霊・オカルト漫画作品を発表して行きます。掲載誌は少年漫画誌にとどまらず、青年コミック誌、少女漫画誌、レディコミ誌、80年代頃から隆盛になったホラー漫画専門誌と、あらゆるコミック雑誌につのだじろう心霊・オカルト作品が載りました。そして、女性週刊誌にも一、二作コミックが掲載されてるものですが、女性週刊誌のコミックでもつのだじろう氏の若い女性が主人公の心霊・オカルト漫画が掲載されることがありました。

 70年代半ばから80年代のつのだじろう先生の心霊・オカルト漫画をざっと挙げると、「呪凶介・霊査室」「メギドの火」「ときめきの墓」「魔子」「蓮華伝説」「真夜中のラブレター」「ホラーペンション」「亡霊学級」などなどいっぱいあります。中でも秋田書店のホラーコミック専門誌・サスペリアに連載されてた「学園七不思議シリーズ」は僕も好んで読んでました。また大ヒット作品の「恐怖新聞」「うしろの百太郎」は好評に応えて各誌に続編が連載されてます。

 つのだじろう先生自身も実際、心霊現象の熱心な研究家でもありましたね。

 画像の中の週刊少年サンデーの表紙画像は、「ブラック団」が連載されてた当時の週刊少年サンデーの一冊の表紙です。

 週刊少年マガジンに傑作熱血感動格闘劇画「空手バカ一代」を大人気連載していた当時、同時期、週刊少年チャンピオンに「泣くな十円」というギャグ漫画を連載してましたが、全く違う絵柄で同時期に格闘劇画とギャグ漫画を描き分けていた才能は凄いですね。

 60年代のギャグ漫画(ゆかい漫画)の等身大主人公たちって、だいたい、学校の勉強ができずイタズラ好きな小学生で間が抜けてて、いつも失敗して父親や先生や近所のうるさいオヤジから怒鳴り散らして怒られて、ときどきガキ大将に苛められるけど、基本的に明るく陽気で呑気な性格で、くよくよすることなぞあんまりなく、根は優しい良い子で、元気で活発な悪ガキってイメージだったけど、71年からチャンピオンで連載された「泣くな十円」の主人公の小学生は、それまでのギャグ漫画主人公の小学生とはキャラがかなり違ってた。

 「泣くな十円」の主人公の小学生、聖徳十円という子供は学校の勉強ができずあわて者で間が抜けたトコがあり、いつも失敗している、というトコロは60年代ギャグ漫画等身大主人公たちと同じなのだが、ガキ大将の苛めに合うのも同じなのだが、根が優しい良い子というのも同じなのだが、全く違うのは漫画のお話全体が暗い。

 聖徳十円は基本的におとなしい方で直ぐに落ち込んでイジイジなる。60年代ギャグ漫画の主人公たちは失敗して怒られて落ち込んでも立ち直りが早く(チェッ怒られちゃったよと言った次のコマではもう立ち直って元気)、基本的に活発で元気で陽気だから、漫画のお話の全体的雰囲気がメチャ明るい。だからカラリと笑える。主人公が落ち込まないから気持ち良くゲラゲラ笑える。深刻じゃないんだよね。

 十円の方は失敗したり不本意にも怒られることになってしまって落ち込んで、十円は可哀想なんだよね。ギャグ漫画なんだけど物語に悲哀感がある。結局失敗したりしてダメージを被る十円は可哀想で、だからタイトルが「泣くな十円」になる。60年代ギャグ漫画主人公と決定的に違うのは、十円は悪ガキではなくて、イタズラとかヒトの嫌がるコトも悪さもしない基本おとなしくて優しい良い子、ってトコロだな。その分、ギャグ漫画でも内容がリアルなのかも知れないな。

 71年の週刊少年マガジンで連載が始まった、松本零士氏の「男おいどん」は、ギャグ漫画というか、ギャグ漫画と呼ぶにはリアリティーがあって、まぁ、内容が笑える漫画でそういう意味ではギャグ漫画なんだけど、ギャグというよりコメディーって感じかな。リアリティーのあるコメディー劇の漫画。この「男おいどん」が人気を博しました。

 マガジン誌上で人気作品となった「男おいどん」は“ペーソスギャグ”漫画と呼ばれました。“ペーソス”とは訳すと「哀愁」とか「もの悲しさ」という意味になります。ギャグに「哀愁」がくっつく。「男おいどん」はペーソスギャグ漫画といういわば新ジャンルの漫画作品でした。

 つのだじろう氏の「泣くな十円」もペーソスギャグ漫画と呼んでいいのかな。ギャグ漫画で笑えるんだけど読み終えると何処かもの悲しさが残るような。何か主人公が気の毒だったり可哀想だったり。でも漫画読んでやっぱり可笑しい笑える漫画。

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