goo

●漫画・・ 「湯けむりスナイパー」

Photo

 ドラマの「湯けむりスナイパー」は終わっちゃいました。まあ、僕の感想としては、そう、終わってしまったから残念、とか、しかる後、もう一度続編を作って放送して欲しい、とかいう気持ちを起こさせる程のドラマでもありませんでした。それ程、1回からもう一度ドラマを全部見たい、という気も湧かないし。僕としては、まあ、やはり漫画とドラマは違う、と。これが結論です。テレ東深夜ワクのドラマでしたが、視聴率はどうだったんだろうか。まあ、見る人は見てたんだろうけど。当たり前か。万人受けする内容の話じゃないしね。深夜ワクだから視聴率は知れてるだろうけど。漫画は名作ですが。漫画の作品が持っているあの「味」は出ませんね。ドラマは実写ドラマとしてストーリーでスルーしちゃう。漫画では、あの作品独特の「味」があるんだけど。だいいち、主人公の「椿屋の源さん」にしてからが、ドラマの遠藤憲一とは全然違う。どーも、遠藤憲一は、同じクールで同時期やっていたフジのドラマ「白い春」の、ポニョポニョの大橋のぞみちゃん演じるサチの、育てのお父さんである村上康史役が重なってしまって、また、「白い春」の村上という男が小市民の善人で、こっちのイメージの方が「湯けむりスナイパー」の引退した殺し屋、椿屋の源さんに勝っちゃって、ドラマ「湯けむりスナイパー」の主人公にしてはやけに線の細い男になってしまった。原作漫画「湯けむりスナイパー」の主人公、椿屋の源さんはもっと貫禄がありどっしりしてて、元殺し屋の凄みを持っている。遠藤憲一さんの作った役柄は、あれはあれで良いのかも知れないけど、漫画とは雰囲気がまるで違うシロモノですね。ワキのレギュラー陣も、美貌の女将さん冴子役の伊藤裕子はまだ良いとしても、謎の、暗黒街に通じる爺さん、Qも長門裕之では全くイメージが違う。やはり貫禄や凄みが無く、長門裕之では汚い爺ィなだけだ。また、椿屋のベテラン番頭さん捨吉さんが、全然違うんだよなあ。まあ、あの漫画作品の内容は、実写ドラマとして作り返しても面白くはならないよ、というのが僕の感想そのものでした。ドラマはほぼ、原作漫画ストーリーのエピソードを追っていましたが、「湯けむりスナイパー」最終回だけはドラマオリジナルの話でしたね。

Photo_2

 「白い春」というドラマも悲しいドラマでしたね。何だか可哀相で見てられないみたいな‥、という訳でもないんですが、僕は全編見てないんですね。初めの方の回と、後の方とか、見ても途中からだったりと。でもお話の流れと内容はよく解りました。吉高由里子ちゃん、可愛かったですね。ヤクザ者の純愛。最愛の妻の難病治療に掛かる大金を稼ぐためにヒットマンを引き受け、敵組首領を殺し刑務所に入る。刑期を終え出て来て、友は裏切り金を横取りされ、妻は治療出来ずに死んでいた。だが何と、妻は子を残していた。子はカタギで善意の普通の良い人のパン屋で育てられていた。残された一粒種の子が愛おしくてたまらないヤクザ者。しかし元殺人犯の前科者だ。育ての親は真っ当に生きるカタギの普通の人だ。これは辛いお話ですね。現実に、その子の親を名乗れば、将来の不幸が目に見えている。子供は誕生と共に実の母親をなくして不幸だし、実の親は重罪の前科者だし、真っ当なカタギのパン屋で育つのが良いに決まっている。パン屋の男は常識人で優しい心根の持ち主だし、同居するヤクザ者の嫁の実妹も、我が子でもないのに優しくきちんと育児に参加している。この二人はドラマの時点では夫婦ではないが、近い将来は結婚するみたいだね。このお話はこういう終わり方をするしかなかったろうなあ。何となく何回か見たのは、僕が阿部寛という役者が好きだったせいだろうな。阿部ちゃんは、どんな役をやっても何処かユーモラスで、今回はメイクでコワモテ顔を作っていた。しかしこういう救いの無い話は僕は嫌だなあ。まあ、大橋のぞみちゃんのサチが残り、きちんとした家庭で育つ、というのが、まあ、良かったというか希望というか。

 阿部寛の前科者が、子供の頃の不幸を背負う吉高由里子と一緒になって、サチちゃんを引き取って二人で育てるという選択肢はなかったのか。吉高由里子の愛はファザコンであって、ホンモノの愛ではない、という見解になったのか。いづれにしろ、殺人を犯した前科者の元で育つ、というのは相当にリスクが大きいわなあ。複雑な人間社会では、人殺しを犯した者が決して心底悪い人間とは限らなくて、事情や状況によっては仕様が無いじゃないか、と殺人行為も、納得出来そうな場合もある。逆に殺された方のキャラクターが、弱い者を踏み潰して私腹を肥やして生きる強欲者だったり、冷酷な非人間的キャラの者だったりする場合もある訳だし。昔々聞いた話で、実話だそうだが、博打狂いの飲んだくれ親父が働かず、母親や子供に暴力をふるい、母親が無理をして働き爪に火をともす思いで作ったお金を、暴力をふるって巻き上げていき親父の遊興に使う。ある日、あまりの母親への仕打ちに耐えかねて、長女が親父を撲殺してしまった。未成年だったか成人していたか忘れたが、長女は刑務所に入る。そして母親や弟妹など家族が定期的に面会に来る。でも、面会に来る度に母親や弟妹の服装が少しづつ良くなって行っている。長女が親父を殺したので、家族の生活がラクになった、というか人並みに生活出来るようになって行ってるんだ、と長女は納得する。長女は思う。自分は刑務所へ長く入ることになったけれど、父親を殺して良かった。これで、家族が生活出来るようになった、と。もう随分昔の話だけど、この話を聞いたとき、解るなあ、と思ったなあ。よく映画やドラマで、働かずに博打に狂い、飲んだくれて外に女を作ってつぎ込み、女房子供に暴力を働くというヤクザ亭主が出て来るが、そういうシーンを見ると、画面に入って行ってヤクザ親父の頭を金属バットで思い切りぶん殴ってやろうか、という気持ちになる。本当に人殺しそのものが悪なのか?と思うことはある。

Photo_4

 法治社会の中で殺人は重罪な訳ですけど。例えどんな理由があろうとも。しかし話をもっと大きく考えると、大国・先進国の軍産複合体なんて何処かで戦争が起きてなきゃ困る訳だ。人間が死ねば死ぬほど儲かる。逆に世界中がたいらに平和になると、自分たちの死活問題になる。会社が潰れる。富裕層の家系を守るためには、何処か他所の国で是非とも戦争が起きてなくてはならない。これも殺人だと思うんだけど、罪にはならない。企業社会で、アタマが良くてずる賢いワル賢い人間が自分が儲けるために、どんどん儲けて裕福な暮らしを送り一族潤うために、大衆の善良な人々が、間接的にせよ死に追い込まれている、ということも考えられるだろう。オヒトヨシで真面目に労働し親切で欲がなく、ワル賢いアタマの働きなど全くしない善良な一般人は、冷酷で非人間的なペテン野郎に餌食にされ、痛い目、辛い目、大損な目に合わせられる。ここでは詳しくは書かないけど、この間、無罪が確定された、足利事件の冤罪被害の犠牲者、菅家利和さんのケースも、僕はこれに当たるように思う。菅谷さんのことを考えると、官権にも隠れている真犯人にも、腹が立って腹が立ってたまらない。特に真犯人の方は、おまえ早く出て来いよ!とはらわた煮えくり返りますね。時効だろうが何だろうが関係ない、当時の被害者幼女の遺族と菅谷さんの前で土下座して即自害して欲しい。他人に罪を被せて自分は追っ手のない安全圏に入り、ヌクヌクと、のうのうと暮らして来たんだろうから、19年間も、事件に何の関係もない他人に地獄を味合わせておいて、自分は隠れて普通に生活していたんだろうから、ここで出て来るのが人間の理てものだろう。直接取り調べに当たった警察サイドなどにも、嫌と言うほど文句はあるが、ここでははぶいときます。冤罪とは本当に恐ろしい。

 「湯けむりスナイパー」の主人公、椿屋の源さんが、秘境の温泉宿椿屋周辺のレギュラー人物で、たった一度、たった一人だけに、自分の過去を告白するシーンがあり、それは原作漫画だと「湯けむりスナイパー」オリジナル全16巻を終えて、新章「花鳥風月編」全2巻のラストの方なんだけど、TV放映のドラマだと早々と、全12回エピソードの最終回で告白してしまう。どちらも相手は、昔はその世界で鳴らした名ストリッパーであった、今は隠遁生活をしている中年の女性、山岸トモヨさんにだ。原作漫画では源がどうして自分の血塗られた過去を告白する気になったのか、その気持ちがよく解るのだが、TVドラマでは動機付けが弱くてかなり不自然に感じた。30分ワクのドラマ12回の中では、山岸トモヨさん相手にそれ程の親密感が感じられない。ちなみにドラマでは、源は、殺し屋時代に12人殺した、と答えるんだけど、原作の漫画のセリフでは、「7人‥。どの標的も、この社会の寄生虫じみた‥、殺すに足る男たちだった」と告白する。「花鳥風月編」のクライマックスシーンだ。「花鳥風月編」の重要なテーマのクライマックスは、大人の三角関係の恋、ですね。成熟した大人の、精神性を重視した恋心ですけどね。

Photo_3

 椿屋の源さんが殺し屋時代に行った犯罪で、命を取った相手はどれも、社会の寄生虫のような殺すに値するような、つまり相手も悪人な訳ですね。いってみれば何十年も長年お茶の間で大人気を続けているシリーズ、「必殺」とか「仕事人」の世界なんですね。殺しでも、正義の殺しです。でも、これももし本当に現実でやれば、当然、殺人の重罪です。そういえばこの間もありましたよね。一人の女性が、知人のある男のストーカー行為にはたはた困り果てている。時には暴力までもふるわれている。彼女は警察に訴えに行った。二度までは相手にしてもらえず、三度目でようやく調書を取った、というか被害届を受け付けた。だが、警察はその後何の行動も取らず、何日か後、女性はストーカー男に殺された。殺人事件ですね。警察はてんでアテにならない。世の中には危険な人間はうじゃうじゃ居る。ずる賢く悪いヤツも冷酷・酷薄なヤツもいっぱい居る。銭の欲にまみれて権力欲が異常に強く、平然と弱い者イジメが出来て、世間の大衆を踏みつけて生血をすすって何とも感じず、自分だけが肥え太るという、支配層・富裕層に存在する輩たち。本当に、悪いヤツを殺してはいけないのか?と思わず考えちゃうこともありますね。

 ドラマはたいしたことありませんでしたが、原作漫画というか、劇画の「湯けむりスナイパー」は名作です。大人の観賞に耐えうる、本当に良い作品です。原作、ひじかた憂峰はあの伝説の劇画原作者、狩撫麻礼氏。劇画は、僕が昔々から素晴らしく絵がうまいと感動して来た、名劇画絵師、松森正氏。現在、劇画「湯けむりスナイパー」はPart3で第1巻が発刊中。雑誌連載は週刊漫画サンデー不定期連載です。

 

◆(2009-04/17)漫画・・ 「湯けむりスナイパーⅡ 花鳥風月編」全2巻 ..1
◆(2009-04/18)漫画・・ 「湯けむりスナイパーⅡ 花鳥風月編」全2巻 ..2
◆(2009-05/18)漫画・・ 「湯けむりスナイパーⅡ 花鳥風月編」全2巻 ..3
◆(2009-06/28)漫画・・ 「湯けむりスナイパー」

コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする