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●映画&小説・・「殺人狂時代 -飢えた遺産-」

  精神病院のオーナーである中年の紳士ミゾロギは、影で大日本人口調節審議会なる殺し屋集団を組織している、とても危険な人間だ。ミゾロギは経営する精神病院の入院患者から選んで訓練し、特異な殺人技術を持つ殺し屋を作り上げている。

  終戦前ナチスの高官だった旧知のドイツ人男性がミゾロギを訪ねて来て、殺人集団の力を貸して欲しいと頼む。先ずは殺し屋の腕試しに電話帳無作為に選んだ3名を殺して見ろと言う。承知したミゾロギは殺し屋3人を派遣し、一般市民2人はいとも簡単に殺害してのける。

  3人目の無差別殺害の相手である、大学講師の桔梗信治はヨレヨレ背広でド近眼、水虫に悩み、見た目汚ならしい風采の上がらぬ中年男。派遣されたカード使いの殺し屋は偶然のように返り討ちに合う。

  ミゾロギは旧知のドイツ人男性を疑い始める。無作為と見せ掛け、実は桔梗信治だけは殺害目的があって狙わせたのでは?ミゾロギはドイツ人を拷問に掛ける。

  桔梗信治は事件を警察に届けるカドで、出版社に勤める記者の鶴巻啓子や自動車泥棒の大友ビルと懇意になり、3人で桔梗が狙われた事件の真意を探る行動に出る。

  やがて桔梗信治は大日本人口調節審議会の殺し屋たちから次々と襲撃され、共に事件を探る大友ビルや鶴巻啓子にも危険が及ぶ。桔梗は審議会の殺し屋たちを見た目偶然のように全部返り討ちにして行く。

  かつてナチス高官だったドイツ人は拷問から、実はヨーロッパ戦線でナチスが滅ぶどさくさに紛失した超豪華ダイヤ·クレオパトラの涙の行方を桔梗信治が知っている筈だという情報を洩らす。この拷問でドイツ人は殺されるんだったかな?

 映画のお話の流れに忠実にあらすじを書き込んで行ってるので、最後までストーリー展開は“ネタバレ”になります。ここから結末も書き込んでます。

  数々の殺し屋を倒して行く内に、鶴巻啓子がミゾロギにさらわれてしまう。冴えない中年大学講師から、実はカッコ良い二枚目ダンディーのタフガイの正体を現した桔梗信治は、大友ビルと二人で鶴巻啓子を救うために大日本人口調節審議会の本拠地へと向かう。

  ミゾロギ一派は罠を仕掛けて桔梗とビルを富士の裾野の自衛隊演習場に誘い込む。砲弾爆撃目標のトーチカに鶴巻啓子が居るという誘いに乗り、行って見ると人形で、迫撃砲の砲弾がバンバン落ちて来て爆発が続く。命からがら逃げ伸びた桔梗とビル。襲って来た自衛隊員に化けたミゾロギの部下を倒して脱出する。

  ここで2年前に読んだ松本清張の「黄色い風土」を思い出した。主人公が富士の裾野の自衛隊演習場で砲弾爆撃の嵐に合うシーンがある。「殺人狂時代」の砲弾爆撃をやってたのは正規の自衛隊の演習だったのか、ミゾロギの部下たちが大掛かりな自衛隊武装部隊に化けてやってたのかよく解らなかったな。自衛隊員に扮したミゾロギの部下も何人か居たことは居たんだけど。

  夜間路線バスの中で疲れ果てて眠る大友ビルを残して、ミゾロギに誘われ桔梗は大日本人口調節審議会の本拠地になる精神病院へ単身乗り込む。ミゾロギの部下の殺し屋たちを倒して、いよいよ怪人ミゾロギと桔梗の一騎打ちとなる。

  ナイフを使った格闘の末、卑怯な手段でミゾロギが優勢に出る。だが油断したミゾロギは病院の入院患者の一人に捕まり殺害される。桔梗信治は鶴巻啓子を助け出して病院を出ることに成功する。

  桔梗信治は超豪華ダイヤ·クレオパトラの涙は持っていなくて、桔梗自身がそのダイヤの行方を探していた。

  救い出した鶴巻啓子を自動車で送って行く途中、車を停めて桔梗と啓子が抱擁し合うシーンがあるのだが、ここで啓子が桔梗を毒指輪で殺そうと謀るが、前々から鶴巻啓子に疑いを持っていた桔梗に返り討ちに合い、桔梗殺害に失敗した啓子は自分の武器の毒指輪で自害する。実は鶴巻啓子は怪人ミゾロギの実娘だったのだ。

  桔梗信治は元の水虫に悩む薄汚れた冴えないド近眼の中年大学講師に戻って、大友ビルたちの前に現れ、大日本人口調節審議会事件で活躍した男は自分によく似た弟だったと説明して、映画の物語は終わる。

   

  というのが1967年公開の東宝映画「殺人狂時代」のお話の流れです。あらすじとはいえかなりネタバレしましたが、まぁ、今から50年以上前の映画ですからね。67年2月公開だから66年制作なんだと思いますが、この映画はモノクロです。

  結局、悪役だった、この映画のヒロイン、東宝女優の団令子さん、綺麗でチャーミングな美人ですね。主人公の相棒役の砂塚秀夫さんが若い。他にムチ使いの殺し屋役で、加山雄三の若大将シリーズ·レギュラーで若大将の親友で妹婿になる、江口役の江原達怡。初代ウルトラマンのイデ隊員の二瓶正也がチョイ役で出てる。

  1967年の東宝映画「殺人狂時代」の原作が、都筑道夫氏著作のサスペンス·アクション小説の「飢えた遺産」で、このミステリ小説は後に文庫で出たときタイトルが「なめくじに聞いてみろ」に変わる。

  映画のお話内容と原作小説は、お話の流れはだいたい同じですが、細部は違います。登場人物もだいたい同じですね。僕が小説を読んだときは、主人公·桔梗信治が殺し屋を次々と始末して行く目的は、桔梗の父親が作り上げた殺人技術を継承した各殺し屋を野に放っておくのはあまりに危険で世の中のためにならないから、父親の不始末を拭うためにも、いろいろな殺人技術を駆使する殺し屋たちを、一人一人始末して行き、この世からなくしてしまうためだったと思う。

  僕が原作小説を読んだのはもう相当昔のことだから、大きな一本の筋くらいしか覚えてなく、細部はすっかり忘れてますが、ただ最初からヒロインとして登場し、主人公と親密な関係になり行動を共にする、鶴巻啓子は実は敵の殺し屋の一人で最後に主人公を襲撃する、というのは何となく覚えていました。

  都筑道夫氏の痛快活劇ミステリ小説「飢えた遺産」の書籍の初出刊行は1962年だけど、僕が講談社文庫で読んだのは80年代前半だ。多分、82年頃なんじゃなかろうか?最初「飢えた遺産」で刊行されたこの小説は、講談社文庫では「なめくじに聞いてみろ」というタイトルに改題されていた。

  僕の二十代いっぱいは、漫画も雑誌やコミックス単行本で毎日のようによく読んでたけど、けっこう娯楽小説もよく読んでいた。16歳から遅読ながら小説読書の習慣化していた僕は20代アタマから、ミステリやSFの娯楽小説を習慣的によく読んでた。まぁ、30代40代も娯楽小説は読んだが、20代が一番読んでたように思う。

  二十代の10年間には小松左京や筒井康隆などのSFもよく読んでたが、一番読んだのは都筑道夫の小説じゃないかな。この時代の僕の読書は、SFよりもミステリ小説の方が三倍くらい多いと思うが、作家別だと都筑道夫さんのミステリ小説が一番多いと思う。

  都筑道夫先生はエンターテイメント小説なら何でもござれというマルチ作家で、ミステリの他にホラーもSFも書く。勿論エッセイ集も評論も刊行している。都筑道夫さんのホラー短編集もいっぱい読んだ。SFは「銀河盗賊ビリーアレグロ」くらいかな。ミステリの種類も、サスペンス怪奇風味からハードボイルド、本格謎解きミステリ、ユーモアミステリ小説まで何でもござれだった。本当に娯楽小説では八面六臂の活躍という才能溢れる職人作家だった。

  都筑道夫さんの作品にはキャラクターのシリーズものが多くて、物部太郎&片岡直次郎の横溝正史ばりの本格謎解きミステリ。これはユーモア部分もあるんだけど地方の旧家が舞台の、おどろおどろの怪奇味の本格推理の謎解きミステリだった。ミステリ作品が多いから、素人探偵·キリオンスレイものとか、推理小説読み過ぎ亭主が名探偵かぶれして実力もないのに難事件に各名探偵になりきって首を突っ込み、優秀な女房が尻拭いして事件解決する、探偵もどきシリーズ。ハードボイルドタッチのミステリ、西連寺剛シリーズ。

  読んでることは間違いないんだけどもう昔のことで内容忘れた作品も多い。退職刑事シリーズもちょっとハードボイルドタッチのミステリだったかな。雪崩連太郎ものって怪奇オカルトものだったかな?雪崩連太郎の名前は覚えてるから読んでるのは間違いないと思う。あとシリーズものじゃなくて単作ものも読んでるし、他のシリーズものも全制覇とは言えないが読んでる。

  泡姫シルビアシリーズは僕が読んだ当時のタイトルは“トルコ嬢シルビア”シリーズだった。当時のトルコ風呂に遊びに来たお客さんの相手をしている内に、お客さんが奇妙な話や相談をし始め、トルコ嬢(今のソープ嬢)シルビアが事件解決に乗り出す。シルビアシリーズは短編集だったよな。同じソープ嬢仲間からの相談もあったように思う。キリオンスレイの推理シリーズってアームチェアディティクティブものだったけかな?忘れてる。

  都筑道夫さんの作品は物部太郎&片岡直次郎のシリーズなど長編推理もけっこういっぱいあるが、短編のミステリ小説が圧倒的に多い。小説職人の都筑道夫さんはアイデア豊富な素晴らしい頭脳の持ち主だったんだろうな。ホラー小説はほとんど短編でホラーの短編集もいっぱい刊行されてる。

  都筑道夫のエンターテイメント小説を読み耽って過ごしてた時代が懐かしい。70年代末か80年代アタマ頃から86年くらいまでの間だろうか。僕の20代半ばくらいから30歳までくらい。30歳を越えてから都筑道夫さんの作品は読んでないように思う。16歳から19歳まで五木寛之を読んで20歳を過ぎて読まなくなったようなもんだな。

  都筑道夫さんの作品には時代劇小説もけっこういっぱいあるんだが、僕は都筑道夫先生の時代劇小説は読んだことはない。ただし前述の“探偵もどき”シリーズに時代劇の短編集があって、これは多分読んでると思う。何しろ今から35年から40年前の小説読書体験の記憶だし、20代は一番娯楽小説を読んだ時代だし都筑道夫作品もいっぱい読んでるし。どれも詳細などはっきりした記憶はない。都筑道夫作品は一冊も読み返した小説はないし。

  探偵もどきシリーズの中の短編集の一冊が、多分、半七捕物帖とか人形佐七とか、銭形平次があったかどうか、岡っ引き捕物帖のパロディーのミステリ小説になってたと思う。主人公の町人が時代劇捕物帖のスターにかぶれて、お江戸の町の難事件に首を突っ込むが推理力がさっぱりで、お手上げの亭主の窮地を才気溢れる有能な女房が影で尽力して助ける、ようなお話だったように思うけど。あとは、なめくじ長屋捕物騒ぎシリーズとか都筑道夫先生の代表作の一つでもあるけど、このシリーズだけは僕は読んだことない。

なめくじに聞いてみろ (講談社文庫 つ 2-3) (日本語) 文庫 – 都筑 道夫 (著)

◆殺人狂時代 [DVD] 仲代達矢 (出演), 団令子 (出演), 岡本喜八 (監督, 脚本)  形式: DVD

なめくじに聞いてみろ―昭和ミステリ秘宝 (扶桑社文庫) (日本語) 文庫 – 都筑 道夫  (著)

推理作家の出来るまで 上巻 (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 都筑 道夫 (著)

推理作家の出来るまで 下巻 (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 都筑 道夫 (著)

悪魔はあくまで悪魔である―都筑道夫恐怖短篇集成〈1〉 (ちくま文庫) (日本語) 文庫 – 都筑 道夫  (著)

幽霊通信 (都筑道夫少年小説コレクション (1)) (日本語) 単行本 – 都筑 道夫  (著), 日下 三蔵 (編集)

◆殺人狂時代 【東宝DVDシネマファンクラブ】仲代達矢 (出演), 団令子 (出演), 岡本喜八 (監督)  形式: DVD

泡姫シルビアの華麗な推理 (新潮文庫) (日本語) 文庫 – 都筑 道夫  (著)

三重露出―都筑道夫コレクション パロディ篇 (光文社文庫) (日本語) 文庫 – 都筑 道夫  (著)

※断片日記。2015-12/24 「七十五羽の烏」

 

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