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●漫画・・ 「湯けむりスナイパーⅡ 花鳥風月編」全2巻 ..3

 TV放映の実写版「湯けむりスナイパー」も、09年5月15日の放送で第6回が済み、全12回放映予定ですから残すは後、6回ですね。実写版劇は原作ストーリーに忠実そのものですね。漫画「湯けむりスナイパー」オリジナルの、マンサンコミックス全16巻の毎話の短編エピソードから選んで、週一の1放送回30分ワクに、2話ストーリーを放映している。もともと週刊誌掲載の1回分が20ページくらいで、1エピソードが1話完結式の短編連作ですから、原作に忠実にドラマを作ると、1話分は放映15分くらいのものにしかならない。まあ、1話1話のエピソードは毎回、なんてこともないようなお話なんですけどね。ストーリーに激しい起伏や盛り上がり、なんて全然ないようなドラマですし。

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 現在、「湯けむりスナイパー」シリーズは、実業之日本社マンサンコミックスで、元々のオリジナル、「湯けむりスナイパー」全16巻、その続編、本記事のタイトルに持って来ている「湯けむりスナイパー~花鳥風月編~」全2巻、そして雑誌で07年から連載が今も続く、「湯けむりスナイパーPart3」が既刊1巻、というラインナップですね。シリーズといっても、全部、続編ですね。週刊漫画サンデー誌上で98年から04年まで連載が続いたオリジナル本編が、一応、連載が終了した後、全16巻でコミックス完結し、なおもその後、同作品の人気が高かったので再度、新作連載が復活し、これを後にコミックス2巻にまとめて「花鳥風月編」として刊行、そしてさらに、07年からまた新作の連載が復活なるが、Part3に於いては不定期連載で、現在は、漫画サンデー誌上で約ツキイチ連載らしいですね。

 「湯けむりスナイパー」の主人公、椿屋の源さんこそ、引退した殺し屋なんてぶっそうな非日常的なキャラクターですけど、毎回のエピソードそのものは、秘境の温泉宿を舞台にした、等身大の生活感に近い、日常的と言ってもいいようなエピソードばかりです。主人公が元殺し屋といっても、毎回のお話は特に事件性もヴァイオレンスもアクションシーンも無く、山奥の温泉地というコミュニティーの中の、いかにもありそうな普通の生活感あふれる事柄ですね。ただ、秘境の温泉宿という舞台は、一般的な市民生活から見ると、やはり特殊ではありますけど。そういう意味ではリアリティーのある漫画作品だといえます。

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 「湯けむりスナイパー」の漫画進行形態は、1回エピソード終了の短編連作ですからね。それが同じ一つ舞台のレギュラーメンバーで、小さなお話が重なりながら進んで行く。そういうことではリアルな生活漫画の一種ですね。オリジナル「湯けむりスナイパー」全16巻の前半こそ、やはり主人公が引退した元、超一流の殺し屋なんて非日常的な危険なキャラだけあって、山奥の温泉地の比較的平和で静かな地域で、状況的にひた隠す地の部分が出てしまい、つい激しいシーンを演じてしまうことがあり、何とかバレなくて済みヒヤヒヤ感、というエピソードも入ってますけど、オリジナル後半から第二部の「花鳥風月編」~第3部のPart3まで、ごく普通の等身大の生活感溢れるエピソードばかりの連続ですね。結局、心理面の強調かなあ。何だかみんな良い人ばっかりでね。人情ドラマ的な感もありますね。特に大きな盛り上がりも激しい起伏もなく、秘境の温泉宿のレギュラー人物たちの生活感を通して、人情の機微を描く、というところなんでしょうね。

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 漫画版は、ですが、このドラマは、主人公、椿屋の源さんを通して、秘境の温泉宿という、一般的な市民生活から見れば特殊な、限られた領域の日常生活の中で、そこに生きる人たちの人情の機微を見る、という形態の作品だといえます。だからどのエピソードも必ず最後に、今回の出来事の、源さんの総括的な感想が入る。源さんは、精神的には作者そのものなんでしょうね。だからドラマを見る目は、つまり源さんの目は、昭和の、全共闘世代や団塊世代の者の古い目、ですね。戦後の荒廃からエネルギッシュに奇跡的な復興をやってのけた、企業戦士やモーレツ社員たちの、あるいはもう一つ、その前の戦中戦後を知る老世代までもの目で、現代の断片を見て、21世紀に入った新しい時代に、抵抗的に古いものの見方を語る、というような雰囲気の漫画ではありますね。昭和の硬派が軟弱な現代に文句を着ける、というところもあるんですけど、日常生活の人情が作り上げるユートピアを謳い上げる、という雰囲気も大きいですね。特にオリジナル後半から「花鳥風月編」~Part3。登場人物はみんな良い人ばかり、という感じですもんね。ユートピアとは、夢みたいな雲の上の世界ではなく、普通の地味な一般的な生活の中で、実は、その地域に暮らす人々の優しい心の気遣いなのだ、というトコかな。日々の生活の中の、心の持ち方、毎日の生き方ツキアイ方にこそ、ユートピアが潜んでいる、みたいな。何か、仏教の教えか悟りみたいで。

 マンサンの「湯けむりスナイパー」は、まあ、何か、ビッグコミックやビッグオリジナルの大長編で続いている漫画作品の形態に似たタイプの漫画ですよね。イイ大人が安心して楽しむ漫画。

◆(2009-04/17)漫画・・ 「湯けむりスナイパーⅡ 花鳥風月編」全2巻 ..1
◆(2009-04/18)漫画・・ 「湯けむりスナイパーⅡ 花鳥風月編」全2巻 ..2
◆(2009-05/18)漫画・・ 「湯けむりスナイパーⅡ 花鳥風月編」全2巻 ..3
◆(2009-06/28)漫画・・ 「湯けむりスナイパー」

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