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●漫画・・ 「ゴルゴ13」-キャノピーからの使者-

 これはいったい通算、第何話になるんだろう? 何しろ、「ゴルゴ13」のビッグコミック連載開始は1969年からですからねえ。今年2015年で、ざっと計算しても46年間のギネス級長期連載、隔週刊雑誌・ビッグコミックで、だいたい前後編2号分で一話終わることが多く、中には3号続く比較的長い中篇のお話もありますが、まあ、一ヶ月で一話終わることが多い。3号続く前中後編分を考慮しても、年に8話から10話くらいか。ちょっと勘定が多くなるけど、年10話としても46年間で460話もあるのか。まあ、そこまでの数のお話本数はないとは思いますけど。ビッグコミックは創刊当時は月刊誌だった時期もあるし。ネットで調べてみたんですけど、どーも、お話の本数は500話を越えているようですね。連作漫画とはいえ、46年間の大長期連載はやはりギネスでしょう。お話も500話越えというのは、本当に驚きで凄いですね。

 今回お題に取り上げた、タイトル「キャノピーからの使者」は、雑誌初出が2011年で、ビッグコミック・別冊・特集ゴルゴ13シリーズのNo.189‐2015年10月13日号の、巻頭掲載された分のお話です。

 「キャノピーからの使者」のキャノピーの意味が解らなかったのですが、お話途中の章題に「樹上-キャノピー-の“事故”」というタイトル名で、キャノピーが“樹上”のことだと解りました。もともと英語の“canopy”で、直訳は“天蓋”になってます。上を覆っているもの、ですかね。庇だとか、建物の張り出しとか、頭上にある出っ張った小さな屋根状の作りとか、かな。“熱帯雨林の林冠”という意味があるから、お話中の意味では、これが一番近いですね。アマゾンのジャングルの地上に立って見上げる、頭上を覆う木々の枝や葉ですか。今回のお話で、ゴルゴに暗殺される生物学者が、調度、ジャングルの木々を渡るケーブルの籠に乗っているときに銃撃を受けるので、正確にはゴルゴが撃つのは籠を吊るすケーブルのロープですけど、その木々の間の籠を、「樹上-キャノピー-」と呼んだのですね。

 また、タイトルの「キャノピーからの使者」とは、熱帯雨林の樹木に生息する、矢毒カエルの毒を指しています。父親を殺された生物学者の娘が、ゴルゴと暗殺依頼人に復讐するために、樹上で生きる矢毒カエルから抽出した毒を用いる。その樹上で取れた“毒”こそが、「キャノピーからの使者」なんですね。または、父親と一緒に熱帯雨林の中で仕事をしていた、娘そのものを指すのかも知れない。

  今回のテーマは“生物多様性”ですね。“生物多様性”というと、“生物多様性”を一言で説明しろと言われても、“生物多様性”にはイロイロな解釈の仕方があるので難しそうですね。まあ、一番簡単な説明となると、人間も含めてこの地球上に存在するあらゆる生き物は、全てが直接・間接に繋がっている、地球上にはいろいろな生命が居て、それはそれで良いんだ、みたいなコトかな。この地球上に存在するあらゆる生命の尊重、みたいなコトだろうか。例えば、直接には人間に取って害悪となるようなもの、例えば毒蛇や毒性を持つカビ、なんてものも、その毒が周り回って、人間の掛かる病気の特効薬になったり、アンチエイジングの化粧品になったりする、というコトも生物多様性の一環ですね。人間が忌み嫌う毒蛇の毒を精製することで、人間の掛かる難病の特効薬が出来たりする、というようなコトですね。だから、ノーベル賞の2015年医学生理学賞を受賞された大村智先生の成果も、ご自分の行き付けのゴルフ場の何でもない土くれから、抽出した微生物が、寄生虫が引き起こすウイルス性の難病の特効薬になって、何億人という人間の命を救い、犬のフィラリアの特効薬となり、飼い犬の寿命を飛躍的に延ばした、これも生物多様性の一環、だと思います。土中の微生物が人間や犬を救う。食物連鎖もそうですね。みんな生物多様性。地球上の生命はどれも存在していて良いし、それが自然で、どの生き物も直接・間接に繋がっている。まあ、そういうコトなのかなあ。それが一番大まかな意味でしょうか。「生物多様性」という概念。

 生物多様性の経済利用というのがありますね。日本人誰もが誇りに思うノーベル賞学者、大村智先生の研究と成果も、確かに、アフリカ最貧困民たちの病苦を、無償で救うプロジェクトもありはしますが、大きくは、第一義は、やはり経済的な成果をもたらし、そこからの人道支援ですね。大村智先生の成果も例外でなく、生物多様性の経済利用だと思います。先ず、製薬会社が儲かって、経済的に潤って、余剰が生まれたからこそ、アフリカ最貧国の人たちの命を無償で救える。そういうことなんでしょうね。

 この地球上の、動物から爬虫類、魚類や昆虫、草木に至るまで、または苔や黴などなどの微生物から、人間や家畜などの難病の特効薬が生まれることは多い。例えばカビ毒を精製したものを抽出して薬品を作り、それまでは人間の難病で、多くの人の命が奪われていた病気の細菌も、カビ毒由来の特効薬で退治して、完全に治療でき、もう難病と言えない治る病気となる。あるいは、病気に掛からない予防薬を作ることもできる。だから、どんな生き物から特効薬の新薬が生まれるとも解らない。製薬企業は、特効薬を一つ創り上げれば莫大な利益が上げられる。確かに作り上げるまでの開発期間は長く、費用が掛かるでしょうが、新薬の開発に成功すれば費用を取り戻して高い利潤を上げて、ボロ儲けできる。これが生物多様性の経済利用の一例ですね。だから、製薬企業は生物の情報が、喉から手が出るほど欲しい。世界中の製薬企業や大学の研究室が、生物の研究を行っていて、特に、新種の生物の情報が欲しい。まだ発見されていない、誰も知らない新たな生物の情報を、誰よりも早く手に入れたい。世界的な大手の製薬企業は、アマゾンのジャングルで発見された新種の昆虫の情報、昆虫そのものを手に入れたい訳です。新たに発見された昆虫が、宝の山を生むかも知れない。だからあらゆる、珍しい昆虫や植物が欲しい。

 中米コスタリカの高地のジャングルで、ジャングルの樹上に棲息する両生類や昆虫を研究し、自然保護活動も行っている老生物学者は、同時にアメリカの巨大製薬企業の研究室に密かに新種の毒性生物を送る、密輸ハンターでもある。この老学者がアメリカ製薬企業の命に逆らい、ヨーロッパの競合企業に新種の生物を売ってしまった。アメリカ企業は裏切りの制裁として、ゴルゴに、博士が樹上で作業するゴンドラを吊るロープを、銃撃で切断することを依頼する。ゴルゴの仕事は成功し、落下した博士は死亡する。

 博士には、ジャングルでの生物採取や保護活動の手伝いをする、一人娘が居た。その娘が、父親は事故死ではなく暗殺されたのだと気付く。復讐を誓った娘は、ゴルゴと暗殺を依頼した製薬会社幹部を密かに殺そうと、暗殺の道具に、ジャングルの樹上に棲息するヤドクガエルの毒を使う。製薬会社専務の暗殺は成功し、ゴルゴは九死に一生を得て生き延び、よみがえる。復讐を果たし、本懐を遂げたと晴れやかな気分になっていた娘だったが、博士に手を掛けた者たちの情報を渡した恋人の男性ともども、実は生きていたゴルゴに、一緒に乗る乗用車を狙撃され、車ごと谷底に落ちて爆破炎上してしまう‥。 ・・・

 というのが、「キャノピーからの使者」のお話の、おおまかな内容ですね。

 「キャノピーからの使者」が収録された、ビッグコミック別冊Special Issue No.189に、収録された「ゴルゴ13」エピソードは全3遍で、他二編は、「スヴァールバル冷たい海岸」と「日・ASEAN会議」となってますね。

 「スヴァールバル冷たい海岸」はロシアのシベリアのまだ上の方、超酷寒の北極・極冠周辺のスヴァールバル諸島がテーマのお話です。近年の地球温暖化で年中、氷に封じ込められた極海地域が、そうでもなくなって来た。氷が溶解して来て、船が航行できる海になれば、例えば海底資源の採掘やイロイロな利権が生まれる。ところがこの極地方は、ロシアやノルウェーなど、国際的な領有権問題が絡んでいる。この国際的な利権問題に絡ませて、ゴルゴの暗躍を描いたエピソードですね。

 「日・ASEAN会議」は、香川県高松市内の新興テーマパークの巨大ビル内で、ASEANの国際会議が開催されることになり、これを面白く思わない中国のテロ組織が、会議開催を邪魔しようと爆破テロを仕掛けることを画策している。この情報を得た、国際会議開催進行担当の国土交通省の幹部は、爆破テロ阻止をゴルゴに依頼する。ASEAN(東南アジア諸国連合)の高松での国際会議は、国家警察の精鋭捜査官の活躍と、ゴルゴのピンホール狙撃の成功により、テロが見事事前に阻止され、無事開催される。というお話です。

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