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●漫画・・ 「ハロー張りネズミ」..(1) 

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 弘兼憲史さんの漫画というと、直ぐに思い浮かぶ代表作は「課長・島耕作」シリーズでしょうが、弘兼憲史さんの作品で僕が一番好きなのは「ハロー張りネズミ」です。

 「ハロー張りネズミ」には、「ええ話やなあ~」というオハナシが多い。「ハロー張りネズミ」は連作シリーズの大長編漫画ですから、お話も長編、中篇、短編といっぱいある。中には、思わず涙してしまうような感動作もあります。特に短編にちょっとグッと来ちゃう掌編が多いですね。あと、長編、中篇には、スリリングなサスペンス作品も多い。中には怪奇味のオカルトものもあります。お話がご都合主義で進んで行くというのはありますが、なかなか読ませますね。面白いです。手に汗握るサスペンスにアクション、謎解き。

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 「ハロー張りネズミ」は80年代10年間に渡って、講談社の週刊ヤングマガジンに好評連載され続けた、大長編連作探偵コミックの傑作です。80年代風俗を描く、非常にリアル風味の探偵コミックで、読み始めたらあれよあれよと読み進んでしまう、オモシロ探偵コミックです。謎解き、アクション、スリル、ホラー味、感動、人情、恋愛もユーモアも含めて、楽しさ満載のコミックです。終盤のお話には、徳川埋蔵金探し、なんてオハナシもあるし。人探しも、拳銃バンバンもエッチなシーンもいっぱい。

 

 「ハロー張りネズミ」は、講談社コミックス・ワイド版(ヤンマガKCスペシャル)で全24巻。文庫版で全14巻。こっちは現在は絶版なのかな(?)。2012年12月に、講談社コミックス・KCデラックス版で、寄り抜き傑作集が、全3巻で発行されていますね。メチャ面白い探偵コミックスです。「ハロー張りネズミ」。

 

◆[2013-04/23]ハロー張りネズミ..(1)

◆[2015-08/04]ハロー張りネズミ..(2)-1945年夏物語- 

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●漫画・・ 「ブルンガ1世」

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 「ブルンガ1世」は秋田書店の月刊誌「冒険王」の1968年4月号から69年3月号まで、調度一年間連載された、“神様”手塚治虫先生の漫画作品です。ジャンルとしては、何ていえばいいんだろう? SFといえばそうだけど、伝奇SF的だし。SF本来の空想科学というよりも、ファンタジーで、ダーク・ファンタジー的要素も強い。プロット全体的に、寓話的だし、お伽噺ぽいですね。

 この漫画を読み始めて直ぐに連想したのが、ハリウッド映画「グレムリン」です。物語の導入部がよく似ている。アメリカ映画「グレムリン」の公開が1984年、手塚先生の「ブルンガ1世」の雑誌初出が1968年。単なる漫画作家などではなく、該博な知識と知性を持つインテリだった、“漫画の神様”手塚治虫先生は、西洋の古いお伽噺のような伝説に出てくる、グレムリンやゴブリンの話もよく知っていたのでしょう。そういう、西洋の古い言い伝えやお伽噺に登場する妖精や小鬼など、悪魔系の妖怪をヒントにして、稀代のストーリーテラー手塚治虫は、「ブルンガ1世」という児童漫画を編み上げたのではないでしょうか。

 手塚治虫漫画全集講談社版の「ブルンガ1世」の、巻末の手塚先生の「あとがき」を読むと、この作品はもともとはアニメ化TV放送の予定で構想されたもので、キャラクターセルまで出来、パイロットフィルムまで行かずに、その直前でアニメ化が没になった作品らしいです。当初、アニメ放映の際に考案されていたストーリーは没になり、雑誌連載漫画のお話は大幅に変更された。手塚先生ご自身に寄ると、「ブルンガ1世」は失敗作のようですね。この「あとがき」では、ストーリーが支離滅裂になった、と書かれていますが、どうしてちゃんとした面白い一遍の物語となっております。

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 文庫版巻末解説に寄ると、月刊「冒険王」のB5大型別冊で本誌から付録に続いたのは68年4月号の初回だけみたいですね。最初は、大家のSFとして、ものものしく始まったが、ひょっとして連載は、回を追うごとに人気は落ちて行ってたのかも知れない。昭和の別冊付録付き月刊誌のスタイルで、本誌巻頭から別冊付録に続くのは、当時は、その雑誌の看板漫画でしたからね。手塚先生ご自身も、「アニメ化TV放送」予定がなくなって、作品に対するモチベーションが下がっちゃったのか、全集「あとがき」に寄ると、「やっつけ仕事」になってしまったような意味合いのコトを書いてますね。確かに後半からは、今一人の主人公だった、少なくともサブ主人公だった、片桐太郎て青年は出て来なくなるし、クライマックスから大団円はちょっと、どーかな?って感じはしなくもない。

 この世の中の全ての生き物は、神が作ったものばかりで、イニシエから、悪魔が作った生き物を神に見せても、神は全部却下して来た。それから幾星霜して、長い長い時が経って、悪魔は悪魔の作った生き物の基(モト)、ブルンガとブルンゴの卵みたいな物を人間に預け、悪魔が基を作った生き物を完全体にするために、人間の手を加えさせる。つまり、神に対してのある種、言い訳になるワケで、悪魔の創造した生物とはいえ、あなた方“神”が作った最高の作品、人間が手を加えたものでしょうが、というコトなんですね。ブルンガ・ブルンゴの基みたいな卵様のモノ、それに人間がいろんなネガティブな思いを吹き込む。憎悪とか呪い、恨み、怒り、などなど。特にブルンゴの方に。ブルンガを卵から孵したのが素朴で正直な少年だったし、一緒に居た太郎青年も根っからの悪党でもなかったので、ブルンガの方は、そんな悪い怪物とは育たない。しかし、ブルンゴの方を孵したのが、悪魔的な冷血漢の悪党だったので、ブルンゴは悪魔の思う通りの破壊的怪物に育つ。そして物語結末近くになって、本来メスであるブルンゴが子供を産む。怪物の子供ばかりを大量に作り上げ、ブルンゴはそれら怪物群を率いて人類滅亡へと向かう。最終的にブルンガがそれを喰い止めるために、大量の、実は我が子となるであろう怪物らを始末して行く。悪魔の意思をストレートに反映したブルンゴと、ジローが大好きでジローの言うことを聞くブルンガは何度か対決し合うんですが、物語の結着は、最終決戦で両方が滅びることで終わる。

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 スティーブン・スピルバーグ総指揮の84年映画「グレムリン」と、68年の「ブルンガ1世」は、お話中の騒動のスケールこそ違えど、ストーリー構成もよく似てますよねえ。モグワイとペット形態のときのブルンガは雰囲気がよく似てるし、モグワイから悪魔的なグレムリンが大量に生まれるし。例えばスピルバーグとか、「グレムリン」映画製作関係者に手塚治虫作品の愛読者が居たというコトはなかったんだろうか?などとも思いを巡らせてしまいます。雑誌「冒険王」に「ブルンガ1世」の連載が始まった頃は、もう既に「夕やけ番長」の連載がされていますね。少年時代の僕はもう、本当に「夕やけ番長」が大好きで熱中して読んでました。僕が、数多ある梶原一騎作品の中で一番好きな漫画が「夕やけ番長」です。この頃は僕が小六から中学生の時代ですね。この当時の月刊「冒険王」のラインナップは、永島慎二氏の「豹マン」、石森御大の「サイボーグ009」、中城けんたろう氏の「冒険少年シャダー」とSF冒険ヒーロー漫画陣が揃ってますね。井上智さんの「魔神バンダー」もまだ連載中ですね。この時代は、少年月刊誌ではまだまだ、SF系漫画がけっこういっぱい掲載されてましたね。SFヒーロー漫画。手塚先生作品は、雑誌「冒険王」では、「ブルンガ1世」終了後、アニメ放送に際して、かつて週刊少年サンデーで連載されてた「どろろ」が、冒険王誌上で第二部の連載がされるんですね。

 

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●小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編..(9)α

9.

 住宅地の中に立つ、二階建てのアパートは、細長い直方体の白っぽいビルで、側面上部に“サンライズ・コーポB棟”と黒く銘打たれていた。一階二階にそれぞれ五室づつ部屋があり、ビルの片側に二階へ登る外階段が着いている。二階の一番端の部屋が、“ワカト健康機器産業株式会社”に勤める会社員、藤村敏数の住まいだった。このアパートは全室が同じタイプの2LDKで、ドアを入ると板張りのダイニングキッチンがあり、奥は六畳と四畳半の和室になっている。キッチンの流しの前では、今、エプロン姿の女性がまな板で包丁を使い、何やら野菜などを切っていた。

 「俺も何か、手伝おうか?」

 女性の背後から、敏数が声を掛けた。流しの前に立つ女性が、振り返った。

 「ううん、いいの。敏数クンはそこで、ビールでも飲んで待ってて」

 女性が返事をした。若い女性としては中背で、濃い茶色のミドルヘアをウェーブを掛けてふわりとさせ、髪に包まれた小顔が目立ち、笑顔が可愛い印象の有馬悦子は、また前を向くと、包丁を使うことに勤しんだ。膝まである水色のエプロンの下は、ノースリーブのピンク色のロングシャツに紺色のショートパンツ姿だ。藤村敏数は落ち着かない様子で、エアコンのよく効いた居間に戻って、テーブルの前に座った。テーブルは、冬は暖を取っている、一人用の小さな電気炬燵の兼用だ。敏数はグレイのTシャツに短パンという、ラフな格好だった。

 「敏数クン、テレビでも見てたら」

 有馬悦子の一言に促されて、「うん」と返事をした敏数は、何気なくテレビを点けた。テレビでは、夕方のニュースをやっていた。地方のニュースのコーナーで、二日前の未明に、中央駅近くになる歓楽街路上にて、老婦人が野犬に咬まれる事故があったが、未だ、野犬が発見されていないことを伝えていた。被害者の72歳の女性、杉山孝子さんは、一度は意識を回復したが、現在はまた意識不明の状態が続いている、と男性アナウンサーが語っていた。

 「おタカ婆さん、杉山孝子っていうのか‥」

 敏数は“おタカ婆さん”が、72歳の年齢になると知って驚き、つい独り言が口をついて出た。敏数の驚きとは、“おタカ婆さん”が72歳という年齢で、まだその道で現役で、客を取ろうとしていることに対しての驚きだ。

 「どうしたの?」

 いつの間にか、有馬悦子が傍に来ていて、敏数の前の炬燵の天板の上に、缶ビールとドライフルーツの盛られたガラス皿を置いた。驚き顔をしたままの敏数を、悦子が不思議そうな顔をして見ていた。

 「え? いや‥、何でもないよ」

 突然訊かれたので、敏数は慌てて応えた。コトが“おタカ婆さん”などという、タマには街娼もやるという老ポン引きに関するニュースなので、敏数は焦って、話を誤魔化そうとした。敏数も以前は、同僚の中村達男と共に歓楽街で遊んだ口だ。

 「僕の職場の近くの、歓楽街での事件らしいんで‥。事件というのか、事故というのか」

 悦子がテレビ画面を覗いた時にはもう、画面の中は天気予報に変わっていて、女性の気象予報士が、天気図を指して何事か解説をしていた。悦子はすぐに、敏数の方を向いて、可愛い顔をしかめて、言った。

 「いやーね。仕事場から歓楽街が近いだなんて‥」

 「あはは‥。まあ、僕はあんな場所、行かないけどね。ところで、君はビールを飲まないの?」

 敏数は咄嗟に、話題を変えた。

 「うん。私はまだ、料理があるからね。今日は私、腕に寄りを掛けて頑張っちゃうから。敏数クンはそこ座って、ゆっくりくつろいで待ってて。ちょっと時間掛かりそうだからね。言ってくれたら、ビールもう一本持ってくし、おつまみ何か欲しかったら、ウインナとか何か、炒めものでも作ってもいいよ」

 そう言って、悦子は席を立ち、また台所へと向かった。有馬悦子は保育園に勤める保育士で、七歳くらいは年上の敏数を「クン付け」で呼んでいた。キッチンに戻る悦子の背中に、敏数が声を掛ける。

 「いいよ、いいよ。このナッツもうまいし」

 「それ、ナッツじゃないのよ。ドライフルーツの盛り合わせよ。ひょっとしたら、中にナッツも入ってるかも知れないけど‥」

 悦子がキッチンに戻ってまな板に向かい、包丁を手に取り、また調理作業に精を出し始めていると、突然、ピンポーンとドアチャイムが鳴った。悦子が振り返り、敏数の顔を見た。

 「今頃、誰だろう?」

 敏数は、宅配かあるいは新聞購読の押し掛けセールスかと思ったが、恋人である悦子の前で、ドアの覗き穴の魚眼レンズから外を窺うのは、ちょっと格好悪いという気がして、直接ドアを開けることにした。

 「ああっ!」

 思わず、敏数は声を上げて、驚いた。目の前に立つのは何と、城山まるみだった。前の職場での恋人だった、城山まるみが今、敏数の眼前に立っている。敏数は慌ててサンダル掛けでドアの外まで出て、悦子の視界に城山まるみが入らないように、後ろ手でドアをガチャリと閉めた。

 「困るよ、まるみちゃん‥」

 そう、できるだけ小声で言って、敏数は、城山まるみの様子が尋常ではない、と気付いた。黙って無表情で立っている、まるみの両目が、白目まで全部充血して真っ赤だ。怒っているというふうでもない、いったい今、どういう感情で居るのかも掴めない。ただ、かつて知っていたまるみとは、様子が全然違う。敏数は次の言葉が出ずに、ゴクリと唾を飲んで、呆然とまるみを見ていた。城山まるみは、二階の外付け通路に突っ立って、無表情のまま、真っ赤な両目で敏数を凝っと見ていた。敏数は、ハッと我を取り戻し、何とか、次の言葉を考えて、まるみに話し掛けた。

 「来るんならさあ、電話くらいして来てくれないと、困るよ。まるみちゃん。俺の方にも都合があるし‥」

 藤村敏数の顔を、凝っと見ていた城山まるみの表情が、微かに笑ったように見えた。すると、敏数を見詰めたままで、まるみの口がゆっくりと開いて行った。開きゆくまるみの口の中の、両端の犬歯が異常に長く、伸びているのが目に入った。両目が真っ赤に充血し、大きく開けた口に、まるで獣のような二本の犬歯が覗く、異様なまるみの相貌に、敏数は驚きと共に恐怖心を覚えた。一瞬、恐怖で、敏数の全身が硬直した。

 「敏数クン。誰なの?」

 閉められていたドアが、いきなり開かれ、問い掛けの言葉を発しながら、有馬悦子が顔を出した。最初に、敏数の横顔が目に入り、次に直ぐ、城山まるみの異様な相貌が目に入って来て、驚きと共に感じた恐怖心で、悦子は短い悲鳴を上げた。

 「ヒッ‥!」

 城山まるみは両手を上げて、敏数に、今にも掴み掛からんばかりの態勢を取っていたが、悦子の声に反応して、大きな口を開いたまま、ゆっくり顔を回して、ドア口に顔を覗かせた有馬悦子を、真っ赤な両目でギロリと見詰めた。現れた悦子を真っ赤な目で睨むまるみは、大きく開けていた口を、一度、閉じた。ニヤリと、不気味に笑ったように見えた。微笑気味になって、閉じきってはいない口からは、長い犬歯が覗く。強い恐怖感に慄く悦子は、直ぐさま、部屋の中へ引っ込んだ。

 まるみは大きく一歩、前へ踏み出て、開いたままのドアの端を掴んだ。悦子の身に危険を感じた敏数が、咄嗟にドアを閉めようとした。しかし、まるみの腕力は信じられないくらい強かった。態勢を変えた敏数が、両手でドアを閉めようと、体重まで掛けてドアを強く押したが、女の細腕一本で、掴まれたドアがびくともしない。もう一歩踏み出した、まるみの力でドアは大きく開かれ、体重を掛けてドアを閉めようとする敏数は、踏ん張る両足の摩擦がまるで功を成さず、身体ごと後退させられた。まるみがズイと、部屋の中へ入って行く。玄関を抜け、上がり口まで入ったまるみの背後から、敏数が両肩を掴み、それ以上、部屋の中には入れまいと力を入れる。上背のある敏数が、両腕に力を入れて引っ張り、小柄なまるみは一瞬は、後方へ身体を反らせたが、振り返って片手で、敏数の胸を押した。女性の華奢な片手で、軽く押された敏数の身体は、後ろへ吹っ飛んでしまい、二階通路の鉄柵にぶち当たった。通路に尻餅を着いて、敏数は呻いた。

 有馬悦子はダイニングを抜けて、六畳の座敷まで逃げ込んでいた。悦子を追う城山まるみは、土足のままゆっくり、ジワジワと悦子に迫って行く。悦子はついに、奥の四畳半間に逃げ込み、この部屋のガラス戸にまで追い詰められた。迫り来るまるみが、得体の知れない怪物に見え、悦子は絶叫して助けを呼んだ。

 「来ないでーっ! 誰か助けてーっ!」

 目の前に、真っ赤な両目をした怪物が、仁王立ちで構え、時折口端に二本の牙を覗かせ、両手をジワジワと上げて、悦子に今正に、襲い掛かる態勢を取ろうとしている。まるみの口が大きく開いて、口の両端の野獣の牙のような、異様に長い犬歯が、剥き出しで現れた。恐怖に戦慄する有馬悦子は、まるみの口の上顎から生えた二本の牙を見て、「吸血鬼だ!」と思った。ガクガク震えながらも後ろ手で、ガラス戸のクレセント錠の小さなレバーを手探りする。悦子はもう、クシャクシャの泣き顔で、全身震えていた。

 「助けて‥」

 今にも掴み掛かろうと襲い来る怪物、まるみに対して、無駄だと思いつつ、泣き声で懇願した。正にその時、ガツンという鈍い音と共に、眼前のまるみが俯いてよろけた。悦子の目の前に、長い黒髪と宙を掴もうと探る、まるみの両手が泳いでいる。まるみの背後に、敏数が見えた。敏数は、一振りしたばかりのゴルフのアイアンを、下に構えて、荒い息を吐いていた。

 敏数も、この、常識では考えられないような事態に、頭を混乱させながらも、とにかく恋人・悦子を救わねばと、血相を変えて立っていた。敏数は自分でも自然と、両足が震えているのが解る。号泣して身震いしたまま動けない悦子を見定めると、ゴルフクラブを横に放り出し、片手を伸ばし、悦子の手を取って引いた。まるみは俯いて、前屈みの状態でヨロヨロとしながら、前に伸ばした両手を、宙を探るように泳がせている。敏数は、後ろから頭部をゴルフアイアンで殴り付けるという衝撃を与えて、その衝撃にも失神どころか倒れもしない、まるみの姿をした怪物に驚きながら、無我夢中で悦子の手を引いて、六畳間へと退がった。まるみの方は、ヨロヨロとふらつき、膝を折って畳に手を衝いた。

 敏数が悦子の腕を引いて、ダッシュを掛けた。すると、二人の腕が一直線に、ビンと張って延びきった。うつ伏せに倒れたまるみが、悦子の後ろ足の、足首を掴んでいた。悦子が膝を突き、カーペットの上に倒れ込んだ。敏数の腕が離れた。中腰にまで起き上がったまるみは、倒れ込み姿勢の悦子の背中に、ガバと組み付いた。まるでレスリングで、バックを取った時のような体勢だ。悦子は泣き声で、また絶叫する。片手を精一杯伸ばして、宙を掻き、敏数の名を呼んだ。敏数はキッチンへ走り、流し台に出ていた手鍋の柄を掴んで、悦子のもとへ戻って来た。完全にうつ伏せに寝た状態で、両手で宙を掻き、必死でもがく悦子に覆い被さり、まるみの怪物は、またも大きく口を開け、二本の牙を見せて、今正に悦子の首筋に、噛み付こうとしていた。

 片手を振り上げ、敏数は、思いきり鍋の底で、まるみの頭部を叩いた。衝撃に一度は、まるみの動きも止まったが、たいしたダメージも無さそうに、無表情だ。敏数が続けて、力一杯、何度も手鍋を降り下ろし、鍋の底が変形するほど叩くが、ついに、まるみの怪物は、悦子の首筋に噛み付いてしまった。悦子の一際大きな絶叫。その声は、女性の上げる叫びというよりも、まるで獣の咆哮のようで、長々と尾を引いた。敏数はこの時点で、悦子が「殺された!」と思った。

 敏数はこの状況でもう、自分にはどうすることもできない、と自分の無力を確信した。底のいびつに潰れた、手鍋を持った手をだらりと下げて、重なって、うつ伏せに寝る二人の女を、呆然と上から見下ろしていた。重なる頭部はどちらも、ただ髪の毛しか見えず、表情など全く解らない。下の悦子はもう、叫ぶのを止めて、されるがままだ。悦子の頭部の下のカーペットの上に、小さな血溜まりができている。上に被さったまるみは、どうやら噛み付いた頸動脈から吹き出る血を、ゴクゴク飲んでいるようだ。敏数は随分長い間、この、新旧二人の恋人の惨状を見下ろしていたようだったが、それは、ほんの数秒くらいの僅かな間だった。

 化け物と化したまるみが、悦子の血を吸い終えたら、次は自分の番だ! そう気付いた敏数は、全身が凍りつくような恐怖感を覚えた。敏数は底の潰れた手鍋を放り出して、部屋の出口へ向かって、全力で駆け出した。携帯電話のことなども考えずに、一目散に逃げ出した。あれは、まるみではない。あれは、吸血鬼かゾンビのような怪物だ。悦子はもう、助からない。とにかく警察だ。急いで、拳銃を持っている、警察官のもとへ行くのだ。敏数は慌ててサンダルを突っ掛け、アパート二階通路へと出た。

 外には、誰も居ない。このアパートは全室2LDKだが、割合、独身者が多く、所帯で入っていても子供の居ない若夫婦だ。夕方の時間でまだ、勤めから帰って来てない入居者が多いのだろう、アパート住人には出会わなかった。敏数が無我夢中でアパートの階段を駆け降り、アパート前の通路へ出ると、さすがに周囲の民家から、二、三人の人が出て来ていた。それはそうだろう、部屋奥の窓は閉まっていたが、まるみが闖入して来てから、部屋のドアは開いたままだった。悦子は、何度も何度も絶叫していたのだ。アパート周囲には聞こえていて、異変に気付いて、外へ出て来た人が居ておかしくない。

 敏数は、通りを全力で駆けた。通りに立つ人たちも、やり過ごし、ただただ走った。敏数の頭の中には、大通りに出れば交番がある。とにかくそこまで行くのだ。それしか頭になく、夢中で走った。大通りに出る角の、コンビニの看板が見えた。角を曲がって、大通りの歩道を行けば直ぐに交番だ。

 敏数が、住宅地の通りを駆け抜けていると、角のコンビニの脇から、男が現れた。見覚えのある姿形だ。短く刈り上げて、上の髪を長く残したヘアスタイルに、浅黒い肌。半袖ワイシャツに弛めたネクタイ、グレイのスラックス。小さなバッグを提げている。中村達男だ。今日は勤務の筈だ。定時で退社したにしても、ここまでやって来るにはちょっと早い。通りを慌てふためいた態で、全力で駆けて来る藤村敏数に、中村達男は驚いて、立ち止まった。敏数は、達男の姿に気付いたが、とにかく交番へ行かなければ、と達男の前をやり過ごそうとした。

 今正に、達男の前を駆け抜けた敏数の腕を、達男がしっかりと掴んだ。後方へ引っ張られて、後ろへたたらを踏んで、転びそうになる敏数。

 「どうしたんだよ、藤村?」

 転びそうになった体勢を戻し、背中を丸めて膝に手を衝き、ゼイゼイと荒い息を吐く敏数。

 「何、急いでんだよ?」

 「悦子が殺された。まるみの怪物に殺された!」

 達男の問い掛けに、敏数は、やっとの思いでどうにか応えた。

 「警察呼んで来るから‥」

 喉から振り絞るような声でそう言って、また敏数は、大通りに向かって駆け出した。全力で駆けて行く敏数は、見る見る内に小さな後ろ姿となって、大通り角を曲がって見えなくなった。中村達男は、その場にポカンと突っ立っていた。そして、一人ごちた。

 「はァ? 悦子が、まるみに殺されただァ‥?」

 走り去った敏数の姿が見えなくなっても、しばらく大通りの方向を見ていた達男は、また独り言を言った。

 「あいつ、暑さで頭おかしくなったかな? せっかく藤村ん家で、ビールでも飲もうかなって、会社早退けして来たのに‥」

 中村達男は、今、慌てふためいた態の藤村敏数が、口走っていた言葉を思い出した。

 「あいつ、まるみが悦子を何とか、言ってたな。まァ、しかし、悦子とまるみが鉢合わせしてるんなら、こりゃ面白そうだな‥」

 ニンマリと口元を緩めた達男は、くるりと踵を返し、部屋の主は何処かへ行ってしまったが予定通り、藤村敏数のアパートへ行くことにして、また歩き出した。アパートの近辺には、数人が集まっていて、野次馬様のちょっとした人だかりが出来ていて、アパートを指差し、何やら噂話をしていた。中村達男は素知らぬ顔で、人だかりを素通りして、コーポ・ライジングサン二階端の、藤村敏数の部屋目指して、アパートの階段を上がろうと向かった。階段の手前で、男の声で呼び止められた。達男が振り返ると、人だかりの中の一人が、追い掛けて来ていた。半袖下着のシャツに短パン姿の、頭の禿げた中年のオヤジで、達男に尋ねて来た。

 「あんた。このアパートの、二階の人かね?」

 「いや。友人を訪ねて来たんだけど。何か?」

 「二階の、一番端の部屋な。今、ドアが閉まってるけど、さっきまで開いてたんだわ。中から、女の叫び声が何度も聞こえて、そしたら男が飛び出して来て、血相変えて夢中で走って、何処かへ行っちまった」

 「ドアは、誰が閉めたの?」

 「さあな。中から、誰かが閉めた。事件かの?」

 「解らねえけど、見て来るよ。俺は、あの部屋を訪ねて来たんだ」

 「ああ、そうしてくれ。ワシらも、警察に通報したもんかどうか、迷ってたんだわ」

 「オオゲサだな。三角関係の痴話喧嘩だろう」

 そう言って達男は、アパートの外階段へ向かい、野次馬オヤジは、人だかりの塊へと戻って行った。二階外付け通路を一番奥まで行くと、藤村敏数の部屋に行き当たった。この部屋は過去に、三、四回は遊びに来たことがあった。一度は、藤村敏数と二人ではしご酒をして、しこたま飲んで泥酔し、泊まったこともあった。

 一番最初に来た時は、もう一年以上前で、まだ敏数が城山まるみと付き合っていた頃で、部屋で二人でビールを飲んでいると、途中からまるみがやって来て参加し、三人で楽しく部屋飲みした。達男もその時は、敏数とまるみは相性が良く、やりとりもうまくやっているし、なかなかお似合いのカップルだな、と思ったものだ。その時分は、この二人はゆくゆく、結婚して行くものと想像していた。ところが、それからしばらくして二人は別れた。藤村敏数の方が、城山まるみを振った形だった。

 確かに、達男もあの頃は、敏数を誘って夜の街で遊びまくり、一時は二人で、酒を飲まない夜はない程だったが、その頃の藤村敏数は、夜の歓楽街に繰り出す頻度が上がる度に、比例して、城山まるみを避けるようになって行った。敏数はどーも、まるみの存在を、鬱陶しく思うようになって行ったようだ。そして最近、有馬悦子という、新たな恋人が出来た。悦子は、保育園に保母として勤めていて、まるみよりも二つ三つ年下になる。


「狼病編」·· (9) β へ続きます。

◆(2014-04/09)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編..(9)α
◆(2014-04/09)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編..(9)β [・・αの続き]

 

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●小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編..(9)β [・・αの続き]

*(『狼病編..9α』の続きです。)

「オオゲサだな。三角関係の痴話喧嘩だろう」

 そう言って達男は、アパートの外階段へ向かい、野次馬オヤジは、人だかりの塊へと戻って行った。二階外付け通路を一番奥まで行くと、藤村敏数の部屋に行き当たった。この部屋は過去に、三、四回は遊びに来たことがあった。一度は、藤村敏数と二人ではしご酒をして、しこたま飲んで泥酔し、泊まったこともあった。

 一番最初に来た時は、もう一年以上前で、まだ敏数が城山まるみと付き合っていた頃で、部屋で二人でビールを飲んでいると、途中からまるみがやって来て参加し、三人で楽しく部屋飲みした。達男もその時は、敏数とまるみは相性が良く、やりとりもうまくやっているし、なかなかお似合いのカップルだな、と思ったものだ。その時分は、この二人はゆくゆく、結婚して行くものと想像していた。ところが、それからしばらくして二人は別れた。藤村敏数の方が、城山まるみを振った形だった。

 確かに、達男もあの頃は、敏数を誘って夜の街で遊びまくり、一時は二人で、酒を飲まない夜はない程だったが、その頃の藤村敏数は、夜の歓楽街に繰り出す頻度が上がる度に、比例して、城山まるみを避けるようになって行った。敏数はどーも、まるみの存在を、鬱陶しく思うようになって行ったようだ。そして最近、有馬悦子という、新たな恋人が出来た。悦子は、保育園に保母として勤めていて、まるみよりも二つ三つ年下になる。

 まるみも悦子も、二人ともソフトな雰囲気で、家に入れば家庭的な感じのする女性で、そういう意味では二人は似ているが、タイプは違っていた。決して太っている訳ではないが、色白・丸顔で、黒髪ストレートのワンレングスヘアのまるみは、見た目ふんわりした感じの、しっとり落ち着いた雰囲気の女性だ。まるみよりも小柄な有馬悦子の方は、ウェーブを掛けた茶髪系のミドルヘアにした、目鼻立ちのはっきりした小顔で、体形はほっそりしている。見掛けはおとなしそうに見えるが、芯はしっかりしていて、本当はなかなか気が強そうな気がする。出しゃばらない控え目なまるみに比べれば、けっこう活発そうで明るい。

 達男は、そんなコトゴトを思い出しながら、敏数の部屋の閉じたドアをノックした。数秒間待って、もう一度ノックする。何の返事もない。達男は、ドアノブを握った。ノブが回って、引くとドアが開いた。

 達男が中に入ると、キッチンと座敷の間に、人が倒れているのが目に入った。女だ。小柄な身体が、仰向けに寝ている。部屋の奥に見える、ガラス戸が開いている。エアコンは掛かりっ放しだ。達男が靴を脱いで、ダイニングに上がった。ムッと、血の臭いが鼻を衝いた。倒れている女を見下ろした。有馬悦子だ。

 首の部分がパックリ、穴が開き、頭と首あたりの下に、どす黒く、血溜まりが出来ていた。両目はカッと見開いたままで、白目部分が黄色く濁っていた。有馬悦子は、ピクリとも動かない。素人目にも、既に死んでいると解った。投げ出されたように開いた、動かない両腕の、片方の手の傍に、小さな、どす黒いものが落ちていた。肉片だ。多分、ポッカリ開いた首の穴部分の肉、喉あたりの肉片ではないか。

 中村達男は尻餅を着き、ガタガタ全身を震わせながら、床に衝いた両手で掻いて、尻を滑らせて後退りした。達男はその姿勢で動いて、上がり口に一度落ちて、尚も尻で後退し、ドアを抜けて、外の通路のコンクリの上まで出た。そしてそこで、やっと声を出した。それは、全身のあらんばかりの力を使ったような、絶叫だった。そして、慌てて四つん這いで、自分の靴を取り、無我夢中で履いて、立ち上がって全力で、藤村敏数の部屋から離れた。飛ぶようにして降りた階段の下には、十人以上の人だかりの塊が居て、達男はその中へ倒れ込んだ。

 人だかりの中の人々が、何人もが一斉に「どうしたんだ?」だの、「大丈夫か?」だのと訊いて来た。達男は、人だかりの真ん中で倒れたまま、まるで泡を吹くように慌てふためき、「ひひひ‥」と、どもりながら「人殺しだ!」と叫んでいた。達男の叫びを聞いて、人だかりの誰もが驚いて、何やら噂話のようにお互いが話し始め、ザワザワと騒々しくなった。

 しかし、現場になる、二階の端の部屋まで、行ってみようとする者は出なかった。誰かが、警察に通報したので、もうすぐパトカーが来る筈だ、と応えていた。達男は、アスファルト地面にペタリと座り込んだまま、蒼白な顔をして、放心状態だった。もう誰も、達男には関心を払わず、みんなはアパート二階を指差して、お互いあれこれ噂話をし合ってざわめき、人だかりは、野次馬が増える一方だった。

 アパートの管理人らしき者が現れたと思ったら、パトカーが一台やって来て、アパート前の駐車場に停まった。階段を上がり掛けた管理人は、パトカーから警察官が降りて来るのを待った。パトカーの後部座席からは、Tシャツ短パン姿の藤村敏数が降りて来た。警官と敏数と管理人は、階段下で何事か話し、揃って階段を登り、二階端の部屋を目指した。

 そうしている内に、もう一台、パトカーがやって来た。敏数の通報に事の重大さを考えた警官が、応援を頼んでいたのだろう。敏数が、開いたままのドア越しに、中には入らず、警官に説明していた。警官がおずおずと中に入って行き、管理人の中年男性も敏数と共に、外に立っていた。やがて、応援の警官二名も現場に合流し、部屋の中に入って行った。敏数は最後まで、中には入ろうとせず、通路で立ったままだった。

 それから、パトカーが何台もやって来て、現場検証が始まった。藤村敏数と中村達男とアパート管理人は、アパート下で簡単な事情聴取を受け、その後、敏数と達男の二人は、警察署までパトカーで移送され、さらに詳しく事情聴取を受けることになった。

 中村達男が、現場を訪れた際、藤村敏数の部屋の中には、有馬悦子の死体だけしかなく、藤村敏数が警察への通報の為に、部屋から走り出た時点では、部屋の中に居た筈の、城山まるみが居なくなっており、部屋奥のガラス戸が開いていた。警察は、藤村敏数と中村達男からの聞き取りから、殺人事件の可能性が大きいと見て、部屋奥のガラス戸から逃亡したのではと推測される、城山まるみが重要参考人として、警察に捜索されることになった。

 事は殺人事件の可能性が極めて大きく、城山まるみは県警挙げて、捜索されることになった。敏数と達男は、被害者や重要参考人との関係を仔細に事情聴取されて、敏数は被害者の悦子や、城山まるみとの過去の恋愛関係など、話せることは思い出せる限り、全て警察に話した。藤村敏数の住まいの入るアパートの前は、報道陣や野次馬で騒然となり、テレビでも深夜のニュース番組で報道された。

 翌日の、警察発表の事件の詳細では、被害者は市内保育園勤務の保育士、有馬悦子さん23歳で、死因は喉を周囲の肉ごと咬み取られた時のショック死。傷は他に、右側首筋を咬まれており、この時破れた頸動脈から吹き出た血液が吹き出している筈だが、それにしては床に残る血溜まりの量が、異状に少ないとのことで、目撃者の証言から、加害者が咬み口から血を飲んだのではないか、との推測が立てられる。

 また、首の傷の形状から、咬み跡がまるで獣が咬んだ痕のような、傷跡をしているとのことだった。まるで野犬が咬んだような咬み痕傷だが、しかし目撃者証言では、被害者の首部分に噛み付いたのは間違いなく人間であるということであり、また目撃者の証言から、現場に居た城山まるみ27歳が重要参考人として指名手配され、警察は、殺人事件として捜査を開始した。なお、目撃者である事件現場のアパート居室住人、29歳独身男性は激しく動揺し、混乱・憔悴している模様で、大事を取って緊急入院した。

       *            *

 「あとニ日で終業式、後は夏休みに入る!」そう思うと、吉川愛子は嬉しくて何やら気分が昂ぶる反面、自分一人だけ現在、校区から離れた地域から、電車通学しているので、一抹の寂しさも感じられた。ぎりぎりセーフの時間で登校して来た愛子は、廊下を抜けて行く際、他クラスの教室の開け放った窓を通して、生徒たちのザワつく賑わいが聞こえていた。愛子は単純に「夏休みが近いから、みんな浮かれ気分で、ワイワイやっているんだろうな」と想像した。夏盛りで、教室・廊下の窓は全て開放してある。愛子は、自分のクラスの前まで近付いて来たが、やはり二年四組も、廊下までそのザワつきの賑わいが、よく聞こえて来た。

 吉川愛子がクラスへ入ると、教室の中は三つ、四つのグループが出来ていて、ガヤガヤと話が弾んでいた。と、いうか、クラス内が騒然としていた。勿論、グループに入らずに一人で机に着いて、教科書か何がしか本やノートを開いて、始業を待っている生徒も何人か居る。愛子は教室に入って来て直ぐ、一応「おはよう」と声を出したが、その挨拶に応える者は誰も居なかった。それぞれのグループのみんなが、何事かの話に夢中になっている。グループに塊って話し合う、クラスメイトたちの誰一人、笑い顔がない。語り合い、聞いている生徒たちの様子は、驚き声やひそひそ声が混ざっていて、その話題は、噂話のようでもある。深刻そうな顔も多く見受けられる。女生徒の中には、顔を顰めて話を聞いている者も居る。

 一人の女子が「いやあ~、怖いーっ!」と叫ぶように言った。愛子の視線が、グループの一つに混ざって話をしている、ピー子の姿を捉えた。愛子が自分の机にかばんを置くと、その音に反応してピー子が振り返り、愛子に気付いた。ピー子が真央と共に、自分の席の横で立ったままの、愛子のもとにやって来た。

 「どうしたの、何かあったの? みんな、朝から騒がしいじゃない?」

 クラスのいつもの朝の様子と比べると、異常とも言える、騒然としたクラス内の状況に驚いて愛子が、傍に来たピー子に急いで訊ねた。

 「まだ、新聞にも載ってないし、テレビのニュースにもなってないから、愛子、知らないだろうけど、ビッグニュースよ。驚くわよ‥」

 ピー子が、自身も興奮している気持ちを抑える様子で、何やら勿体を着けて言う。

 「何よ、ピー子。教えてよ」

 焦らされているようで内心、少しイラつきながら、愛子が話を催促する。真央もピー子の横に立って、恐怖心に駆られているような、蒼ざめた表情で居る。不安げな表情の生徒は、真央ばかりではない。ピー子や真央の背後、クラス内を見渡すと、そういう様子の女子は他にも見える。

 ピ-子が決然とした感じで、一言、言ってのけた。

 「あのね。実は、西崎慎吾が死んだらしいのよ」

 ピー子が、この一言を聞いた愛子の様子を、まるで、自分の言い放った一言の効果を確かめるように、観察するように凝っと見詰めた。愛子は、とにかく驚愕した。「えっ!」と小さく叫んで、息を呑む。愛子は、自分の顔が蒼ざめて行くのが解る気がした。傍に立つ真央は、胸の前で両手をギュッと握り合わせて、深刻な面持ちで黙ったまま、驚く愛子の表情を見ている。数秒、間を置いたあと、ピー子が続けた。

 「今朝早く、郊外の田圃の中で発見されたらしいの。朝五時頃、散歩に出た近くの人が見付けたんだって。それもね、西崎一人じゃないらしいのよ」

 ピー子は興奮した様子のまま、話を続けた。愛子は緊張した表情で、黙ったまま聞いている。

 「殺されてたのはね、三人でね。みんな、二年二組の不良たちなの。西崎のグループの連中ね。それでさあ、野犬に食べられてたんだって」

 野犬のくだりで真央が「ヒッ!」と小さく叫んで、両手で顔を覆い、震え出した。恐怖感に襲われた真央は、軽いパニック症状でも起こしたようにして、急いで自分の席まで戻って顔を伏せた。その様子を見ていたピー子は、続きを話そうかどうか迷っていたけれど、凝っとピー子の顔を見詰めている愛子の視線に促されて、話を続けることにした。

 「それでさ。二人は野犬に食べられてて、一人は喉を裂かれてたんだって。怖いよねー。それで、二組の不良の連中って、ほら、二組の太っちょネクラの後能滋夫。あいつを苛めてたじゃん。だからね、今はみんながね、後能のことを不気味に思ってるの‥」

 ピ-子が後能滋夫のことを“太っちょネクラ”と呼んだことを、愛子は「ひどいな」と感じたが、これはピー子だけでなく、ウチの中学の、特に二年生の大勢の生徒が多分、蔑称のあだ名でそう呼んでいるんだろうな、と思い、少しばかり嫌な気分を味わった。後能滋夫には、愛子は度々関わりを持つので、妙に親近感を覚えていた。

 ピー子の話だと、西崎慎吾と、その不良仲間の二組の生徒二名は、今朝五時過ぎくらいの早朝に、散歩している老人に発見されたものらしい。真夏の夜明けは早い。老人の散歩コースである、早朝のヒトケのない産業道路の歩道に倒れている、一名を発見し、さらに、道路下の田圃のあぜ道で倒れている、西崎ともう一名が発見された。歩道上の死体は、首を鋭利なもので切り裂かれていて、田圃のあぜ道の二名の死体は、獣にでも喰い荒らされたような状態で、損壊がひどかったらしい。老人の通報で駆け付けた警察官たちは、一目見ただけで、三名が絶命していると判断したという。また、死体損壊がひどいのは「野犬に喰い荒らされたのだろう」と話していたらしい。

 ピー子は話を続け、多分、今、郊外の産業道路沿いの現場へ行ったら、マスコミ報道陣が殺到して凄いことになっている筈だ、と言った。教室の中の、ザワついた噂話の渦は止まない。それから、しばらく経って、ホームルームの時間になったのだが、担任がやって来ない。生徒たちはみんな、朝のホームルームの時間だと解っていたが、相変わらず席に着かずにお喋りを続けている。騒然としたままだ。多分、他のクラスでもこの状態なのだろう。くだんの二年二組の中は今、どういう状態なんだろう? と愛子は興味深く考えた。

 愛子は、ハチとジャックが西崎たち不良グループの面々を、校舎裏で懲らしめた時のことを思い出していた。五月のことで、あの時は午後からだったが、午後一番の授業で始業時間になってもなかなか担任が来なくて授業が始まらなかった。結局、副担任が来て自習を指示して職員会議に行ってしまい、その後、校内放送で全校早退が指示されて、午後の授業はなかった。

 愛子は、この、今聞いた事件に関しては胸騒ぎがしていた。野犬に殺され、しかも死体を喰い荒らされているという、被害者の三名とは、無論、後能滋夫を苛めていた連中でもあるが、この間の日曜日、市民公園の森の中で後能滋夫に首吊り自殺を迫って苛め、その後現れたサラリーマン風のおじさんを寄ってたかって痛め付けた、メンバーの中の三人ではないか。あのおじさんを殴る蹴るした連中の中でも、特にひどく暴行した者たちだ。あと二人、この中学の卒業生で西崎の用心棒役だという、ニートのヤツらも居たが。

 ピー子は愛子の傍を離れ、もと居た塊の中に戻って、また熱心に話を聞いて情報を得ていた。お喋り好きなピー子は、ここで仕入れた情報をまた別の場所へ行って、また別の新しい人たちに、得意げに話すのだ。“情報屋”という訳ではないが、人見知りがなく誰とでも気軽に会話し、お喋りが好きなピー子は、他所で聞いた話を直ぐに次のところで違ういろんな人たちに話して聞かせるので、自然と、噂話や話題の拡散装置の役割を果たしていた。愛子は真央を心配して移動し、憔悴した様子で机に伏せる真央の傍まで行って、「大丈夫?」と声掛けていた。

 ピー子が慌てた様子で、また愛子の傍へ戻って来た。これ以上真央に事件関係の話を聞かせてはいけないと、ピー子も配慮して、愛子の夏服の袖を引っ張って、真央のもとから二人で幾分離れて、今仕入れた新しい情報を愛子に披露した。それは、今朝早朝に郊外の産業道路脇で死体が発見された、西崎ら二年二組の生徒三人の惨殺の他にも、実は市内でもう一件、殺人事件が起こっていて、殺害方法が西崎の二組の仲間とよく似ていたと言うのだ。死体が発見された場所は駅前の商店街通り付近らしく、昨夜遅い時間に近隣住民が発見して通報したものらしい。

 「愛子、殺されたの、誰だったと思う? 驚いちゃいけないわよ‥」

 今、自分の新しく仕入れて来たトピックの、一番の驚きの部分を、聞かせる相手を焦らすように、勿体を着けて話に間を置くピー子。愛子はゴクリと唾を飲んで、次の言葉を待った。

 「これがね。いや、こっちもね、西崎慎吾の関係者なのよ

 「西崎の関係者?」

 「うん。西崎とつるんでいたヤツらでね。この中学の卒業生で今、ニートやってる不良なの。二人組のワルで、あたしたちより三個か四個年長になるんだってさ」

 ピー子の話を聞いて、愛子の心臓がドクンッと大きく鼓動した。西崎の関係者って、この二人は、あの公園の森でサラリーマン風のオジサンを、西崎慎吾たちと一緒に袋叩きにしていた仲間ではないか。愛子は驚いて言葉が出ず、両目を見開いたまま、凝っとピー子の顔を見ていた。

 「どうしたの、愛子? そんなに驚いた?」

 「ああ、ううん。ちょっとね‥。そいつらも殺されてたんだ?」

 ピー子に言われて愛子は我に返った。放心したような様子で居たらしい。

 「あんたも大丈夫‥?」

 愛子の様子を見て、ピー子は、気分を悪くして塞いでいる真央の方を見やった。

 「ああ、あたしは平気だよ。ただ、ちょっと驚いただけ。だって、西崎の仲間が軒並み殺された訳だもの」

 愛子はピー子の情報の続きが聞きたかったので、自分の平気さを強調した。

 「うん。こっちの二人はね、一人は喉を切られて殺されてるし、もう一人は首を折られてたんだって。発見が昨夜だから今朝の新聞にも載ってたし、今朝のTVのニュースでも言ってたらしいよ。ただこっちの二人は死体が食べられたりしてないって」

 「西崎たちの方と、この中学校のOBニートと、やったのって同じ犯人かな?」

 「さあ‥。事件の詳しいことはまだこれからだろうから‥。ただ、西崎の仲間の一人、歩道で殺されてた方は喉を切られてたって言うから、商店街で殺されてたOBのヤツと殺され方が同じだよね」

 愛子は、強い衝撃を受けて、もう言葉が出て来ないような状態だった。呆然として、一人考え込んでいた。昨夜と今朝、殺害されたという西崎とその仲間、計五人というのは、あの公園の森でサラリーマン風のオジサンを、殴る蹴るして袋叩きにしていた中心人物ではないか。特に、オジサンが気を失うまで蹴り続けていたのが、この五人だ。そう考えると、愛子はブルッと身震いして、真夏の暑い教室の中で悪寒を覚えた。

 それから少し経って、ホームルームの時間も終わろうかというときになって、副担任の教師がやって来て、自習を言いつけてまた戻って行った。他のクラスも同じような態勢のようだった。副担任が去って行った後、生徒たちがおとなしく自習をする訳がなく、やはりガヤガヤとお喋りは続いた。無論、おとなしく自分の席で、言われたとおりに自習している子も居たが、少数だった。それは他のクラスも同じ状態のようだった。

 教師たちは緊急の職員会議をやっているようだった。愛子はやはり、五月の全校早退を思い出していた。今度も午前中で、授業が打ち切りになり全クラス早退になるんだろうか。ピー子が期待するように、「ねえ、もしかして午前中で早退になるんじゃないの。午前中だけじゃなくて、もう二時限くらいでさ」と言った。今、自習になってるのは二年生のクラスだけなんだろうか。一年や三年のクラスはどうなんだろう。この間のときのようにまた、刑事がやって来たりするんだろうか。今回は、学校内は現場ではないから、警察が来たとしても少数で、事情聴取を受けるのは、教師や二年二組の生徒だけになるんだろうか。

 それにしても愛子が一番気になっていることは、やはり、今回の犠牲者たち、西崎慎吾とその仲間、西崎の用心棒役だという、この中学校OBのニートの二人を合わせた計五人、何者かに殺されたのであろうこの五人と、あの公園の森での一件は関係があるんだろうか? ということだった。今、二組の後能滋夫は、どんな気持ちで居るんだろう? スーパードッグのハチやジャックは、この事件に関して何か知ってるんだろうか? ハチが“サイキック”だという弟の和也は、何か知っているコトがあるんだろうか? 愛子は、この二つの事件に関して、もっともっと詳しい情報が知りたいと欲していた。ピー子らクラスメートからは、これ以上の情報を仕入れるのは無理だ。愛子は今すぐにでも教室を飛び出して、二組の後能滋夫や、弟の和也に会いに行きたいと思った。勿論、和也は今、ここからは百メートルほど離れた、小学校の校舎で授業中の筈だ。

 一時限目も後半が過ぎた頃になると、クラスの中も落ち着いて来て、比較的静かになった。クラスの者たちが持ち寄った事件の情報だけでは、話のネタがなくなったので、みんなしぶしぶ自習に取り掛かったようだ。勿論、中には雑談するグループも居たが、日常の他愛もない話題で、先程までに比べれば、クラスの中は静かなものだった。多分、他のクラスの状況も似たようなものだろう。

 一時限目が終わって、休憩時間になった。トイレに行く者など席を立つ者が大半で、またザワザワとしたが、もう特に事件の話をする者も居なかった。二時限目に入ると、みんなは着席して、今日はこの先、どうなるのか教師の指示を待った。一時限目から引き続き、黙々と自習に励む生徒も居た。だらけた様子で、お喋りを続ける生徒たちも居る。ザワつく何人かが、クラス委員の男子生徒に、二時限目以降は生徒はどうすれば良いのか、先生に訊きに行けと言い出した。クラス委員の男の子が「解ったよ」と、職員室まで訊きに、クラスから出て行った。戻って来た委員長が話す、教師からの伝達は「先生が教室に指示に行くまでは、取り合えず、自習を続けていろ」という内容だった。つまり、担任が直接、教室に指示を出しに来るまでは、何時限目までも自習をやっていろ、ということらしい。

 校舎脇の駐車場には、パトカーが二台ばかり、サイレンを鳴らさずにやって来た。私服刑事が数人、校舎へと入って行く。愛子のクラスの中でも、お調子者の男子生徒二人が、偵察と称して、教室外へ様子を窺いに行った。十分ほどして、その二人が教室へ帰って来て、教壇の上からみんなに報告した。彼らの話す情報に寄ると、刑事たちは職員室の隣の応接室に入り、校長や教頭の他、二年生各組の担任教師が応対にあたった。そして、事件の当事者である西崎慎吾他全三名の、二組クラス内でも普段、特に親交の深かった生徒が応接室に呼ばれた、ということだった。

 殺人事件にしろ、野犬に襲われた事故にしろ、被害者の死亡生徒の一人、西崎慎吾の親は、幾つもの会社を経営する県下有数の実業家で、特に市内では絶大な影響力を持つ実力者であるため、いくら学校時間外に校外で起こったコトにしても、学校サイドは、教育委員会から市役所・市議会の幹部まで巻き込むオオゴトとなっていた。午前中早くから、学校や警察署、市役所などには、西崎慎吾の家からの使者が詰め掛けており、事情説明を求めていた。学校側の校長・教頭を始め、学年主任や担任は、学校始まって以来の一大事と、戦々恐々としていた。特に、校長は自分の首が飛ぶかも知れないと頭を抱えている有様だった。

 この日の生徒の授業体制をどうするか、最初は全学年平常どおりでクラブ活動は中止、ということを決めていたが、次に全校生徒午前中のみ授業で、午後から全校早退を決め、それが二転三転として、結局、被害者の所属した二年二組の生徒だけ残し、他は一年も三年も全部、三時限目を終えた時点で早退となった。二年二組の生徒だけは、警察の事情聴取があるので午前中いっぱいは教室待機となった。PTA関係も、夕方から臨時に総会が開かれることになり、これには教育委員会責任者以外にも、市警察署関係者や市議会・市役所幹部までも出席となった。西崎慎吾の父親の威光の、強大さの示すところだろう。

 愛子の居る二年四組は結局、三時限目まで総て自習で終わり、後は副担任がやって来て、通り一遍な事情を説明し、今から直ぐに帰宅するように支持された。クラブ活動などは総て中止で、生徒は学校に残ることは許されない、ということだった。副担任の話も、ちゃんとした詳しい事情説明などはなく、ただ、この学校の生徒が事件に巻き込まれた疑いがあるので、先生たちは全職員が終日、ことに当たっての話し合いがあるため、授業が出来ないから生徒は直ぐに全員帰宅、ということだけが伝えられた。

 愛子は、二組の後能滋夫から、いろいろと話を聞きたいと思っていたが、二年二組の生徒は警察の事情聴取があるから待機中、ということなので、廊下で少し会話することも出来なかった。しかも、後能滋夫は、西崎慎吾ら死亡生徒三名から日常的に苛めに合っていたクラスメートだし、警察もその経緯は、五月の事故の際の事情聴取で既に知っていた事項なので、今度の事件の参考人としては、他の生徒たちに比べて、後能滋夫は重要視されていた。吉川愛子は、仲の良いクラスメートのピー子や真央と一緒に、二年二組の生徒以外の全校生徒ともども、三時限目を終えて直ぐに下校準備して、帰路に着いた。途中までは三人で帰ったが、愛子は電車通学で駅に向かうので、二人と別れて市街地方面へと歩いた。

 中二の吉川愛子は、いつもは小三の弟、吉川和也と共に電車通学している。駅からバスで小学校前のバス停まで和也を送り、そのままバスで中学校まで通学、登校する。帰りは、六月まで所属していた学校の女子バスケットボール部を退部して、現在は、中学の授業が終わった時点で即、下校に着き、途中、小学校近辺で和也を拾うか、駅前で待ち合わせて姉弟で一緒に電車に乗って帰っている。普段は、中学の授業が終わる時間の方が、小学校の下校時間よりも遅いので、和也が小学校内で時間を潰して姉を待っていることが多いが、時には母親の吉川智美がパートの帰り掛けに、自分の軽自動車で和也を拾って帰ることもあった。

 この日は予期せず、愛子は、午前中で中学を下校になったので、小学生の弟を待つにはあまりにも時間が長過ぎた。小学校は定時下校の筈だから、今日の和也の授業が総て終わるのは、早く見ても午後二時を回るのは間違いないだろう。時間を潰して和也を待つにしても、あと、有に三時間以上はある。愛子は徒歩で小学校の前を通り過ぎ、駅に向かって歩きながら、これから三時間をどうしようか、と思案した。

 暇な愛子は駅まで歩いていた。普段は駅から学校まではバス通学だが、帰りは時々、駅まで弟と二人で歩いて行くこともある。中学校から駅までは、ゆっくり歩けばヘタしたら50分くらいは掛かってしまう。それでも和也の下校時間までは時間が余り過ぎる。駅で二時間以上時間を潰さなくてはいけない。愛子は、母親に電話連絡して今日だけ和也を迎えに行ってもらい、このまま一人で先に帰ってしまおうかとも考えた。そうこうしている内にひらめいた。

 「そうだ。家に行ってみよう!」

 愛子は独り言だが、思わず声を出した。六月までは住んでいた、この地域のもともとの、自分の家に久しぶりで行ってみることにした。勿論、母親からは、弟ともども、家に戻るのは固く禁じられていた。絶対に父・和臣に会ってはならない、と言われている。人間が変わってしまった吉川和臣に、子供たちが会うのは大変危険だと、智美は心配しているのだ。考えてみれば愛子も弟・和也も、六月まで住んでいた自分たちの家に、出てからこっち一ヶ月まではならないが、この二十日間くらいの間は、一度も行ったことがなかった。思えば、学校からは近いのだ。いつでも行けたのに。

 駅前まで歩いて来ると、愛子は、自分の家がある住宅地方面のバスに乗ることにした。田舎町では本数が限られているが、調度良く、正午前の住宅地方面行きのバスの発車時刻だった。愛子は慌ててバスに乗車した。意外とバスは混んでいた。午前中に市街地で買い物をした、高齢者の乗客が多いようだ。混んでいるといっても田舎の正午頃のバスだ、充分、愛子はシートに座れた。夏服の濃紺のスカートの膝上に学生カバンを置き、バスに揺られて、十分も経たずに住宅地のバス停に着いた。住宅地の中の路地をしばらく歩くと、つい此の頃まで住んでいた自分の家の、二階部分が見えて来た。

 「昼間だけど、まさか、お父さん居ないよね‥」

 愛子は自然と独り言が出た。自分の家も変わらなければ、隣の家も変わらない。そういえば、隣の義行お兄ちゃんは具合はどうなんだろうか? 愛子は、弟・和也に誘われて宵闇の公園の森に入り、通り魔に大怪我を負わされて入院していた、隣家の長男、本田義行のことを思い出した。入院したのは五月で、確かもう退院はしている筈だが‥。

 家の近くまで来て先を見ると、自分の家の玄関下の門扉の前に立つ人が居た。小柄な女性だ。家の門の前で吉川家の二階家を見上げている。愛子に気が付いたのか、女性が振り返った。茶髪をショートカットにした若い女性が愛子の方を見た。半袖部分だけ水色の薄いクリーム色のシャツに、ショートパンツ姿で運動靴という、ラフな格好だ。女性がこくんと頭を下げたので、慌てて愛子も会釈を返した。女性が門を離れ、愛子の方を見つめながら、こちらに近付いて来そうなそぶりを見せたので、「誰なんだろう?」と思いながら、愛子はおそるおそると自分の家に近づいて行った。

 

小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編 ..(10)へと続く。

 

 ◆(2012-08/18)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編 ..(1)

◆(2013-04/09)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編..(9)α
◆(2013-04/09)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編..(9)β [・・αの続き]

◆小説・・「じじごろう伝Ⅰ」..登場人物一覧(長いプロローグ・狼病編)

 

◆(2012-08/18)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編 ..(1)
◆(2012-09/07)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ 」 狼病編 ..(2)
◆(2012-09/18)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編 ..(3)
◆(2012-10/10)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編 ..(4)
◆(2012-10/28)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編 ..(5)
◆(2012-12/01)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編 ..(6)
◆(2013-01/06)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編 ..(7)
◆(2013-01/25)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編 ..(8)
◆(2013-04/09)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 狼病編..(9)

◆(2012-08/04)小説・・ 「じじごろう伝Ⅰ」 長いプロローグ..(12) 

  

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●漫画・・ 「我ら九人の甲子園」..(2)

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 2013年「Kenの漫画読み日記。」3月分中の、タイトル=●漫画・・「我ら九人の甲子園」..(1)で述べたように、かざま鋭二・作画、高橋三千綱・原作の傑作高校野球青春劇画、「我ら九人の甲子園」は、双葉社の青年漫画誌「週刊漫画アクション」の70年代末頃から80年代前半に好評連載された作品です。主人公の高校生・小林誠一郎だけが、抜群の才能を持つ剛腕投手で、その他はみんな、野球はほとんど素人というメンバーで高校野球チームを結成、ドタバタ四苦八苦しつつも根性で頑張り、九人で力を合わせて甲子園を目指すという青春高校野球ドラマ。しかもチームのメンバーは、野球ギリギリの、総勢たった九人だけ。だが個性的なキャラクターの面々が集まり、笑いを誘うエピソードも随所に盛り込まれながら、若者のジレンマや苦難を描きつつも、それを乗り越える若者の闘志と、友情と恋愛と親子の情などを描ききって、爽やかな高校生スポーツ青春物語となっている。雑誌連載後、双葉社からアクションコミックス全13巻で刊行、後に文庫化もしていますが、残念ながら現在はコミックスも文庫も絶版ですね。電子書籍では読めるようですが。

 子供の頃見てたTV番組の時代劇で、子供心に僕が「面白かった」と記憶しているのが、俳優の栗塚旭さんが主演で、主人公の多門夜八郎役をやっていた連続時代劇ドラマ、「我ら(われら)九人の戦鬼」。このドラマは原作小説があって、戦後昭和30年代40年代の大ベストセラー作家、柴田錬三郎の時代劇小説だった。調べて見ると、TVドラマ「我ら(われら)九人の戦鬼」は、1966年1月から7月までNET(今のテレ朝)放送の連続ドラマですね。夜九時台と記憶してたけど、八時のゴールデン帯ドラマでした。当時は時代劇ドラマ全盛時代ですね。僕は小四とか小五頃のガキ。何だか、子供のくせにこのドラマは好きで、カッコ良くて、ワクワク感持って興奮しながら見てた。と思う。子供時代に初放映の連続ドラマ一回見たきりで、再放送など見たことないのに、どうしてか「ワクワク感」の雰囲気はよく覚えている。後に柴田錬三郎の原作だと知って、大人になってから、確か文春文庫版で上下巻買っていたのだが、度重なる引越しの間に紛失してしまい、結局読まず終い。柴田錬三郎の小説はハイティーンの頃に、二、三冊読んだ覚えがあるが、「我ら(われら)九人の戦鬼」は未だ読んでない。大人になって何冊か、柴田錬三郎先生のエッセイ集を読んで、メチャ面白くて痛快で、シバレンをリスペクト気味に好きになった。でも、小説は読まなかったけど。あ、調べると、文春文庫版は上中下巻の三分冊ですね。集英社文庫版が上下巻だ。僕が持ってたのは昔のコトだから、文春文庫版です。

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 昔々のTVドラマ「我ら(われら)九人の戦鬼」のストーリーの詳細など、忘れきってますが、要するに“悪”を退治するために、多門夜八郎のもとに、魅力的なツワモノどもが集結し、数の上では到底勝ち目のない、権力者に向かって、果敢に挑む話。だったように思う。ある地方の領民=百姓(農民)を苦しめる、圧政を敷く暴君を打倒するために、多門夜八郎とその仲間たち、総勢僅か九人が、圧倒的大多数の城の兵隊相手に戦いを繰り広げ、自分たちも滅ぶのを覚悟で権力者に挑み行く物語、なんだろうか。そういう話。当時は子供心に、この九名のツワモノの戦鬼たちが、ジワジワと、一人、また一人集まって来るところが、メチャ、カッコ良く思えてたんですね。と思うんだけど。

 ネットで、「我ら(われら)九人の戦鬼」を調べていたら、とある女性管理人のサイトで、その方が小五の子供時分に遭遇した小説本、「我ら(われら)九人の戦鬼」を、最初は「大人の読む本だから‥」と恐る恐る読んで、読み進むとメチャメチャ面白くて、物語と主人公・多門夜八郎のカッコ良さに魅了され、虜になり、興奮ぎみであれよあれよと読了し、この時、多門夜八郎様が「初恋の人」となった、と、そーいうふうなことを、サイト主の方が書き込んでおられた。小五!すごいな。小五ったら、だいたい11歳だよ。僕の小五の頃なんて、毎日「ウルトラマン」のことしか頭になかった。僕も、11歳くらいの年齢で「我ら(われら)九人の戦鬼」が読めるくらいの、上質の脳味噌を持っていたら、その後の人生も違ってたんだろうになあ。情けなかあ~。ワシは情けなかあ~。頭の良い子って、小学生高学年くらいでもう、(大人対応の)一般小説くらい読むんだろうなあ。俺は中学一年生でやっとこさ、児童向けの「名探偵シャーロック・ホームズ」を読んだくらいだもんね。ああ~、馬鹿は嫌だね。頭良く生まれたかったよ。育つ環境の問題もあるんだろうケド。

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 「男一匹ガキ大将」のところで余談ながら書き込んだ、昔の週刊プレイボーイに連載された今東光大僧正の人生相談コーナーですが、今東光師が齢79歳で往生された際、この「極道辻説法」の連載が中断されたままだったのだが、特定の出版社に縛られないで執筆する作家の集り、「野良犬会」会長である今東光を引き継いで、「野良犬会」副会長たる柴田錬三郎が、週刊プレイボーイの人生相談コーナーの後釜を引き受けた。当時のお互いのエッセイ文などで、お互いのことが話題によく出て来るように、この二人の作家同士は、互いをリスペクトし合う、師弟のように兄弟のように仲が良かった。特にシバレンは、今東光和尚に対して畏敬の念にも近いような、リスペクト感を持っていたように見受けられた。あくまで、僕が、雑文などで読んで思った感じだけど。それで、誌上連載で代々続く「プレイボーイの人生相談」コーナーでは、亡くなられた今東光和尚の次が、作家・柴田錬三郎の「円月説法」となった。僕は、このシバレンの「円月説法」も大好きで、「極道辻説法」同様、毎週楽しみにして読んでいたし、後々、単行本化された「円月説法」も買って来て、内容を読み返した。シバレン先生は娯楽文学の往年のベストセラー作家で、戦後昭和の時代背景の現代ものも多かったけど、やはり何といってもシバレンの代名詞は、“円月殺法”の「眠狂四郎」ですね。若者人生相談「円月説法」の中には、時代劇で有名なシバレン先生にしては意外な、西洋占星術のコーナーがあった。相談投稿者の生年月日からホロスコープを書いて、いろいろと人生指南するミニコ-ナー。「円月説法」の中で、シバレン先生はよく、英仏文学の古今の有名作家たちのエピソードを引用して、相談者の若者に回答していた。剣豪・時代劇小説のエキスパートのような柴田錬三郎だが、該博な教養を身に着けていて、エッセイ集などを読みながら、当時の僕は今東光ともども最尊敬していた。

 「我ら(われら)九人の戦鬼」の主人公、多門夜八郎役の栗塚旭さんは、あの時代の時代劇ドラマの人気俳優でした。僕は映画でもTVドラマでも、現代劇で栗塚旭さんを見たことがありません。僕の知ってる限り一番最近の栗塚旭さん配役は、「暴れん坊将軍」の山田朝右衛門役ですけど、これとてせいぜい96年くらいまでです。調べたら栗塚旭さんは何と、現在御年75歳になられるのだとか。もう、そんなになるんだ!驚きです。あの、時代劇のクールな二枚目が。僕が知らない(見てない)だけで、90年代後半以降も、そして現代劇ドラマでもご活躍だったんでしょう。栗塚旭さんというと、僕がやはり小学生の頃、熱中してた時代劇ドラマで、タイトル「」というのがありました。「風」の主人公は、お江戸の平和を守るために、悪と闘う忍者の話だったように思う。多分、公儀お庭番だったんじゃないかなあ。忍者特有の黒装束とかではなくて、あくまで町民の格好で、活躍する時は手ぬぐいか風呂敷かを頬かむりして、偵察とか戦闘に行ってた。仲間の女忍者(?)に土田早苗さんが居たっけ。往年の時代劇ドラマでの栗塚旭さんは、メチャ、カッコ良い俳優さんでした。

 「我ら(われら)九人の戦鬼」の話ばかりになりました。いや、劇画原作者の作家、高橋三千綱さんがアクション連載になる野球漫画の構想を考えたとき、「我ら九人の甲子園」というタイトルは、往年の柴田錬三郎の時代劇小説「我ら(われら)九人の戦鬼」から取ったんじゃないかな、と僕が勝手にそう思ったもので。高橋三千綱さんが少年時代かに、柴田錬三郎の小説を読んだ経験があって、野球漫画のストーリーのプロットを考えてたとき、この「我ら(われら)九人の戦鬼」のことを思い出したとか、そういうエピソードをお持ちなんじゃないかな、と僕が勝手に想像したもので。それだけです。※(『我ら九人の甲子園』の“我ら”は漢字表記だけど『われら九人の戦記』のタイトル表示は“われら”とひらがな。)

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 70年代末頃から80年代前半、双葉社の週刊漫画アクションに連載された高校野球漫画の傑作、「我ら九人の甲子園」は、作画担当がかざま鋭二氏で、原作が当時話題の芥川賞作家、高橋三千綱氏でした。高橋三千綱氏の芥川賞受賞は1978年でした。劇画作家、かざま鋭二氏は、貸本末期でデビューした団塊世代の漫画家さんです。佐藤まさあきさんの佐藤プロが発行した貸本短編誌、「ヤングビート」の中で、かざま鋭二さんの短編作品が掲載されているのを見た記憶がおぼろにあるのですが、かざま鋭二さんは佐藤まさあき先生の弟子筋になられるので、多分、主に青春もののオムニバス誌、「ヤングビート」に短編が載っていたのは間違いないと思います。雑誌に移ってからの氏の作品で印象深く憶えているのは、69年に創刊された「少年チャンピオン」が週刊化されて「週刊少年チャンピオン」になった折、新連載された作品が、原作・梶原一騎の学園青春漫画、「朝日の恋人」。この作品は後に、タイトルを「太陽の恋人」と変える。僕は、かざま鋭二先生描くヒロインの少女の絵柄が好きで、よく覚えています。その後また、タイトルが「夕日の恋人」と変わった。読者人気の高かった熱血青春もので、「週刊少年チャンピオン」初期の看板漫画の一つですね。同時代のマガジンの「愛と誠」と同じテイストの劇画かな。あとはもう、80年代から90年代前半に、双葉アクション系連載で、高橋三千綱氏とのタッグを組んだ、熱血スポーツもの作品が人気を博しましたね。

 かざま鋭二氏と高橋三千綱氏とのタッグを組んだ劇画作品は、週刊漫画アクションや別冊アクションで熱血スポーツものが続けて連載され、独特のユーモアで笑いを誘う、豪快味と爽やかさを含んだ熱血スポーツ漫画として好評連載し人気を得ました。特に80年代ですね。高橋三千綱さんが芥川賞を取ってメディアに颯爽と登場した時代は、団塊世代から、僕らよりほんのちょっと年上くらいの戦後生まれ世代のヒーローが、続々と登場して来た時代ですね。52年生まれの村上龍が芥川賞を取って、センセーショナルに登場したのが76年。49年生まれの村上春樹の登場が79年。そして、53年生まれの中島梓(栗本薫)が、群像新人賞と乱歩賞を取って登場するのが79年。48年生まれの三田誠広が、「僕って何」で芥川賞取ったのは77年か。この時代は毎年毎年代わる代わる、新たなる若きヒーローが出て来るので、同世代くらいになる僕も、何かワクワクしてましたね。まあ、僕自身はレベル以下の凡人ですが。八面六臂の中島梓も凄かったが、高橋三千綱もメチャ、カッコ良かった。この時代に登場した若きヒーローたちは、小説家というだけでなく、みんなそれぞれ、美大出身だったり、イラスト描いたり、楽器をやったり、音楽の造詣が深かったり、何らかのスポーツに秀出てるかやってたり、映画を撮ったり、小説書く才能だけでなくて、とにかくカッコ良かったんだよね。みんな、憧れたなあ。この、当時は時代の旗手のように思われた、若きヒーローたちに、あの時代の僕は憧れまくってた。

 高橋三千綱さんも、自分の小説を映画化して、自らが監督をやった作品があって、この作品「真夜中のボクサー」は僕は原作小説も読んで、映画も劇場で見た。確か、僕の見た上映映画館はガラガラだったように記憶する。まあ、ウィークデーの夜だったからね。この映画でひと悶着あった。製作前だけど。映画製作に当たって、最初キャストされてた若い新人俳優を、原作者で監督の高橋三千綱さんが、キャストから外して別の俳優に換えた。これに、最初の新人俳優の若い男がキレて、高橋三千綱目掛けてナイフで突進、ナイフが高橋さんの太腿に突き刺さって重症。そんな事件があった。小説読んで映画も見た「真夜中のボクサー」のお話を、僕はほとんど覚えてない。ただ、主人公がボクシングジムに通う若者だということだけしか記憶にない。週刊漫画アクションで「我ら九人の甲子園」の連載が終了した後、同じタッグの原作・作画チームで、「九番目の男」という漫画が始まった。これはプロボクシングでチャンピオンを目指す青年が主人公の、ボクシング青春ドラマだった。で、「九番目の男」の漫画の中の一場面で、はっきり記憶しているシーンが、主人公の若者が一人で映画館に入って、上映されてる「真夜中のボクサー」を見て、「そうか、解ったぞ。よし」とか何とか、そういうセリフを独白する一場面。何故かここだけをよく覚えている。

 僕の青年時代、村上龍や高橋三千綱など、新たな若きヒーローが登場すると、その著書を何冊も買って来て読んだ。小説、エッセイ集、その人の記事や対談が載った雑誌。そうこうする内にまた、新たなる若き時代の旗手が登場する。まあ、要するにミーハーだね。当時の僕は、つまりミーハー。でも、みんな、カッコ良くて憧れたなあ。高橋三千綱氏の著書もけっこう読んだ。特にエッセイ集を面白く読んだ。でも、作家さんに失礼になるが、小説もエッセイも内容の詳細はほとんど憶えていない。一番印象深く覚えているのは、実は、作画・かざま鋭二氏とタッグを組んだ、週刊漫画アクションの姉妹誌、「別冊アクション」に好評連載されたプロ野球劇画、「セニョール・パ」だ。「セニョール・パ」には笑わされた。痛快で面白い、プロ野球・パ・リーグ舞台のスポーツ劇画だった。

(2013-03/23)漫画・・「我ら九人の甲子園」..(1)

 

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