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擬似国債 その4.擬似社債、擬似地方債もあります

2011年04月10日 | 資産運用 
リタイア世代の方にとって年金収入は擬似国債からの金利収入とみなせますが、現役世代のサラリーマンにとって「給与所得は擬似社債」からの金利収入だといえます。フィックストインカムの極意は「キャッシュフローあるところに債券あり」だということを思い出してください。

年収300万円のS君を想定しましょう。ちょっと金額が少ないですが、Dさんとの比較ができますので、この年収を使います。もっと多い方は、ご自分の年収を入れて計算し直してください。今後20年働くと想定して金利で割り込むと、

年収300万円 ÷ 2% = 1.5億円

S君は1.5億円の社債を抱えて、会社と心中となります。でもこれは正しくありません。2%というのは、20年の日本国債の金利です。一応、日本では最も信用リスクが少ないと思われている債券の金利です。S君の会社の信用リスク、もしくは格付機関による格付けによって金利は左右されます。例えば会社は信用リスクがかなりあって、金利は国債プラス2%としますと、4%で割り込まないといけません。
正しくは
年収300万円 ÷ 4% = 7千5百万円・・・社債

となります。コンスタントなキャッシュフローである給与は、債券の価値に換算すると、こうなります。言い換えますと、S君は7千5百万円の社債を保有して、毎年4%の金利を得ているのと同じと考えられるのです。国と会社の安全性の差が、こうした差を生みます。

2%の割引率で計算するのと、4%の割引率で計算するのとでは、社債の資産価値は半分になってしまいました。
『金利が上昇すると、債券価値は下がる』・・・とても大事な概念ですので、覚えておいてください。ここんとこ、あとでテストに出ます(笑)

じゃ、地方公務員のC君の資産はどうか?
国債が2%、社債は4%としたので、その中間のリスクを持つ地方債のリスクは3%としましょう。つまり、地方公共団体の倒産リスクは、国家より高いけど、会社より低い、ということです。雇用の安全性で言えば、地方公務員の雇用リスクは、国家公務員より高いけど、会社員より低い、ということです。

そうです、『金利はリスクの指標』なのです。
割り算は

年収300万円 ÷ 3% = 1億円・・・地方債

このところ破綻しそうになっているポルトガルの国債の金利は8%くらいです。するとポルトガルの国家公務員の資産は、

年収300万円 ÷ 8% = 3,750万円・・・ポルトガル国債

破綻しそうになると、価値はぐっと下がるのがわかります。
金利、つまりは割引率と資産価値の関係、おもしろいでしょう。

『割引いて考える』という言葉の意味は、ここにあるのです!

金利=割引率を並べますと、
日本国債;2%
地方債;3%
社債;4%
ポルトガル国債;8%

(注)上記は例えばの数値です。実際には国債に対して地方債はさほど大きな差はありません。
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