ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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警鐘;マイナス金利解除について その1

2024年03月25日 | 日本の金融政策

 しばらくご無沙汰してしまいました。理由の一つは個人的運用相談が多かったこと。もう一つが花粉症です。3月に入って何度か寝込むほどの花粉症に見舞われました。いつもこの時期は気をつけているので、これほどひどいことはないのですが、今年は格別です。ブログを書くには全力を使うほどの集中力が必要なのですが、症状がひどいと集中力に欠け、持続力もなくなります。書きかけていた投稿をやっと完成させることができましたので、アップさせていただきます。

 

 このところスポーツ界では大ニュースが連続していますね。せっかく大谷翔平がドジャースデビューを果たしたのに、通訳水原一平氏のギャンブル・スキャンダルは暗いニュースとしてとても衝撃的でした。大谷選手にはめげずに頑張って欲しいと思います。

 一方相撲界では110年ぶりの快挙という超明るいニュースがありました。まだ大銀杏を結えないちょんまげ頭の尊富士の優勝、心から「おめでとうございます」と申し上げます。しかも今回優勝争いをしたもう一人の若手大の里も、髷も結えないザンバラ頭で準優勝。驚くしかありません。相撲界はきっとこのあとも二人の活躍で久々に明るいニュースで盛り上がりそうで楽しみです。

 

 では本題です。日銀がマイナス金利を解除し、短期の誘導金利をゼロ近辺にしました。また長期金利を強引に抑える政策を解除する方向に変更しています。

 しかしその結果円は下落しました。市場関係者の大方の予想とは逆の展開です。何故逆かといいますと、円金利の上昇はドルとの金利差を縮小させるためドル選好を弱め、円高要因のハズだからです。

 

 ではどうしてそのような反対の展開になっているのか。多くの為替のアナリストが説明しているのは、「マイナスだった金利がゼロになったり、長期金利が多少上昇したところで、依然として日米の金利差は大きいからだ」という説明をしています。

 

 ちょっと待てよ。そんなことは今さら指摘されなくても事前にわかっていたはずで、日銀が長短金利を予想以上に大きく上げることなどありえません。従ってこれでは説明になっていません。

 

 私の見方は以下のとおりです。

  • 日本は貿易立国にもかかわらず貿易収支は赤字が常態になっていること。
  • 海外投資の黒字分を外貨のまま現地に残すことが当り前になってきて、日本に還流させないこと。つまり海外で稼いだ外貨を、投資機会が少なくかつ金利ゼロの国内円預貯金に戻す理由が見当たらないのです。そのため対外収支統計上の経常収支は黒字でも、稼いだ外貨を国内に還流させていないので、実務上外貨を売って円転換することが少なくなっているのだと思われます。つまり経常黒字が円高要因ではなくなっているのです。
  • 新たにNISA投資が加わりました。日本の一般投資家も企業同様賢くなり、成長力の衰えた日本から海外へ投資マネーを移しています。今回の新NISAの一番人気の投資先が「オールカントリー投信(オルカン)」と呼ばれる海外メインの投信であることを先日書きました。しかも投資の仕方で毎月同じ投信を買い続ける積立投資が多くなっているため、外向きのフローは一過性ではなく、継続することになります。

 

 もちろん為替の変動要因はこれらばかりではないため、今後様様々な雑音も交じりますが、大きな動きをつかむことは大切です。

続く

 

 

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7 コメント

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住宅ローンについて (心穏やかに)
2024-03-26 15:25:32
初めまして。先週、幸運にも林先生のブログに行きつき新刊を購入させていただき、熟読しております。現在、モルガンスタンレー証券に口座開設を申し込み、米国債の購入を進めております。

住宅ローンについてお聞きしたくコメントいたしました。

我が家は夫名義(41歳)で、借入残高148万円、利率1.1(固定3年、来年3月更新)、借入期間27年のローンを抱えております。

もともと地方銀行での借り入れだったため、金利も比較的高かったこともあり借り換えを検討していたのですが、今回のマイナス金利解除を受けて、今後の金利選択について悩んでいます。今のところ、ネット銀行の変動金利か長期の固定金利の2択で考えております。

この先、固定金利に変動金利が追い付くにはさらに数回の利上げが必要になり、それは現状では非現実的であるとある住宅ローン評論家が述べていました。しかし、変動金利には毎月の返済額が変わる他、利率が変わると元本の減り方が変わる等、固定金利にはない煩わしさも伴うの悩んでいます。

最終的にはもちろん個人の判断となると思いますが、資産運用という点で、林先生の見解をお聞かせ願えたらと思います。
何卒よろしくお願いいたします。
返信する
心穏やかにさんへ (林 敬一)
2024-03-27 11:06:11
私のブログと著書をお読みいただき、ありがとうございます。

住宅ローンに関するご質問ですが、かなり大きなローンですね。現在の条件の内容に一部わからない部分がありますので、それをご説明いただけますか?

>我が家は夫名義(41歳)で、借入残高148万円、利率1.1(固定3年、来年3月更新)、借入期間27年のローンを抱えております。

固定3年で、その期限が来年3月に来て、それ以降は全額が変動金利への移行であと27年ということでしょうか?

それと、
>もともと地方銀行での借り入れだったため、金利も比較的高かったこともあり借り換えを検討していたのですが、今回のマイナス金利解除を受けて、今後の金利選択について悩んでいます。今のところ、ネット銀行の変動金利か長期の固定金利の2択で考えております。

地銀とネット銀行の金利はどれくらい違うのでしょうか。
それが変更のコストを払っても得であれば、変更するにこしたことはないと思います。

2択の中でまた変動にする選択をする可能性があるのは何故ですか?

評論家氏の話ですが、
>この先、固定金利に変動金利が追い付くにはさらに数回の利上げが必要になり、それは現状では非現実的であるとある住宅ローン評論家が述べていました。

それは一人のローン評論家の見解ですが、それを丸飲みするのはリスクがあるように思います。理由は以下のとおりです。

例えば現状の変動金利が0.3%で、固定金利が1.3%程度と仮定し、日銀の1回の利上げを0.25%としましょう。すると追い付くには4回の利上げで、それが1年かかるとします。その1年の間に長期ローンの金利も当然上昇すると思いますが、評論家氏はそのことは述べていないのでしょうか。だとすると話自体に欠陥がありますね。

しかもその上昇は残りの年数全体にかかることになるので、支払総額の増加は莫大になる可能性があると思うのですが。

ここまででおよそ察しは付くと思いますが、金利上昇が見えてきた場合に変動金利が安いからと言って、しばらくそれで勝負するということに私は疑問を感じています。

「心穏やかに」ということであれば、フラット35の1.3%程度の固定にすることが一番ですよね。

いかがでしょう?
返信する
借入残高148万円?? (坂東太郎)
2024-03-27 12:02:04
質問ですが「借入残高148万円、利率1.1(固定3年、来年3月更新)、借入期間27年のローン」って
毎月の返済額が「148万」って事ですか?
返信する
Unknown (Unknown)
2024-03-27 15:22:33
>>固定3年で、その期限が来年3月に来て、それ以降は全額が変動金利への移行であと27年ということでしょうか?

変動金利か、再び固定金利の選択となります。今現在で固定金利三年は0.3%程度上昇しています。借入額は148万は間違いで、1480万でした。

>>地銀とネット銀行の金利はどれくらい違うのでしょうか。
それが変更のコストを払っても得であれば、変更するにこしたことはないと思います。

→ネット銀行は諸費用が50万ほどかかるものの、10年固定で0.95、20年固定で1.45でした。

>>2択の中でまた変動にする選択をする可能性があるのは何故ですか?
→しばらく利上げが見込めないのであれば変動金利の方が負担が少ないと思いましたが、林先生の考えを伺って、改めてストレスなく今後の人生を謳歌したいのであれば、返済期間を20年に短縮してフラット35にするのが落としどころだなと思いました。
リスクを取ると、その後の金利に右往左往しなければならないのはやはり望むところではないと改めて感じました。

お忙しい中コメントをいただき大変にありがとうございました。
返信する
Unknown (心穏やかに)
2024-03-27 15:23:52
林先生
すみません、先程の投稿は私です。
よろしくお願いいたします。
返信する
Unknown (心穏やかに)
2024-03-27 15:26:42
林先生、坂東様
すみません、私の書き方が誤解を招いていたようです。
借入残高1480万
毎月の支払い額52000円です。
よろしくお願いいたします。
返信する
心穏やかにさんへ (林 敬一)
2024-03-28 10:46:56
1,450万円とのこと、了解です。

>改めてストレスなく今後の人生を謳歌したいのであれば、返済期間を20年に短縮してフラット35にするのが落としどころだなと思いました。
リスクを取ると、その後の金利に右往左往しなければならないのはやはり望むところではないと改めて感じました。

私の考え方をご理解いただいたようで、よかったです。
その選択に間違いはないと思います。
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