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黒田君への手紙、速達便にて

2022年12月21日 | 日本の金融政策

  黒田君、5円も円高に振れて嬉しいですか?「為替市場の大きな変動は好ましくない」とさんざん言っていたのはあなたですよ、忘れましたか?

  そして何が何でも物価を上昇させたいと言っていたのに、なんで円高を助長し物価を低下させる金利上昇を選択したんでしょう。説明がありませんね。いや、できないのでしょうね、お気の毒に。あなたのやっていることはマスク君並みに支離滅裂ですね。

  半年前に今回のような金利政策の変更はしないと明言していましたよね。首相は解散についてはウソをついてもよいと言われますが、いつから日銀総裁も金融政策についてウソをついてもよいことになったのでしょうか?

  あなたのおかげで指標銘柄である10年物国債の取引がたびたび成立しないため困っている市場関係者が多いのに、それを意に介しませんでしたよね。債券を笑う者は債券に泣くことになりますよ。今回は遂に市場の反乱に負けましたね。でも、これで済むと思ったら大間違いですよ。オレ様はオールマイティーだと思っている中央銀行総裁など、世界であなただけです。他のみなさんは市場を無理やり捻じ曲げるのではなく、市場との良好なコミュニケーションこそすべてだとして、懸命に対話を続けています。あなたの根拠なきツッパリが日銀の信頼を失うことになるのが、どうして理解できないのでしょう?

 

  もう一つ、大事なコミュニケーションの欠如がありましたね。それは大事な大事な政府とのすり合わせです。今回の変更は2013年の政府と日銀の政策連携の一大変更です。政府関係者は「今回事前に変更の話は一切なかった」と言っていました。何故そんなひどいことをするんでしょう。為替の介入じゃあるまいし、サプライズが効果をもたらすことはありません。ひたすら独走に対する反発と、政府日銀の連携を壊した負の実績が残るだけだけです。

  来年の3月に交代する後任の総裁は利上げせざるを得なくなりますが、その痛みを少しでも和らげるため、あなたが多少の痛みを受け持ったのでしょうか。ならば「今回の変更は超緩和政策の変更などではない」などとウソブクのを止めたらどうでしょう。市場関係者の誰もがあなたの苦しい言い訳を冷ややかな目で見ています。

 

  その昔、日本は毎日の大本営発表により国民は騙され続け、道を大きく間違えました。今回の発表は、まさにウソで固めた大本営発表そのものでしたね。しかし言論統制の効いていた戦中とは違い、「王様あんたは裸だ」とおおっぴらに言うことができます。マスクは自分に批判的な報道関係者をツイッターから追放という形で言論封殺を行いましたが、日本では封殺はできません。昨日の政策変更の記者会見で記者たちは自由に発言し、あなたの過去の言動と正反対の政策変更を責めました。それに対しあなたはミエミエのウソをつきながら、実際にはしどろもどろでしたね。

  2年ですべてを解決して見せるという大ミエはどこにいったのでしょう。あなたはその後も政策の失敗を重ね10年もねばり、日本財政を借金まみれにしました。あなたの目論見と違い、破綻へのマグニチュードは大きくなるばかりです。

 

  アメリカのFRBを長く率いたグリーンスパン氏は退任直後「回顧録」を書き、マエストロとまで呼ばれた指揮ぶりを自画自賛しました。ところがその直後に起こったリーマンショックで彼の名声は一転。すると数百ページの回顧録に対して数十ページの追補を発行し、「ごめんなさい、私の政策の大失敗が招いた金融危機です」と謝罪しました。

 

あなたは正々堂々、回顧録を書けますか?

楽しみにしていますよ!

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (KHAM)
2022-12-21 12:29:34
林先生

いつも拝見してます。
ずいぶん円高が進む一方で、米国債の利回り
はむしろ上がっているように思います。
絶好の買い増しのチャンスだと思いますが、
如何でしょうか。

別件ですが、分散の観点からオーストラリア
国債か州政府の債券を考えています。
ご意見を頂けるとありがたいです。
返信する
KHAMさんへ (林 敬一)
2022-12-21 14:42:59
お久しぶりです。

ご質問の件、以下回答いたします。

>ずいぶん円高が進む一方で、米国債の利回り
はむしろ上がっているように思います。
絶好の買い増しのチャンスだと思いますが、
如何でしょうか。


チャンス到来、そのとおりだと思います。
次回ブログのテーマにするつもりでした。

通常、米国債金利が低下しないと円高にならないところ、クロちゃんがいいチャンスを作ってくれましたね。利用しない手はありません。

>分散の観点からオーストラリア国債か州政府の債券を考えています。
ご意見を頂けるとありがたいです。

分散としては、よい候補だと思います。
しかし国債はあまり多く発行していないため、流通量が少ないのが難点です。

金融会社や事業会社の債券はリスクがあるので避けた方がよいと思います。

それとオーストラリアは資源国ですので、為替は米ドルと全く異なる動きをする場合がありますので、その点も注意してください。
返信する
Unknown (KHAM)
2022-12-22 18:40:24
林先生

お返事ありがとうございました。
次回ブログのテーマ楽しみにしてます!
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