アメリカのシリコンバレー・バンク(SVB)の破綻に際し、バイデン大統領は見事に対処していますね。預金者の自己責任を問わず、金融システムを守ることを主眼に預金保護の限度額、「25万ドルを超える預金もすべて保護する」と宣言し、収束を計りました。そして月曜日のNY市場でダウ平均は前週比わずかの下落でスタートし、場中は一貫して上昇に転じ、引け値も寄り付きと同じレベルで終わっています。ところがそれを受けた本日の東京市場は前日比400円ほどの下げで始まり、前場で600円を超える下げになっています。相変わらずのパニックぶりです。
銀行の破綻はいとも簡単に起こりえます。ある日突然噂だけでも破綻します。むかしむかし1973年、女子高生が電車内で「信用金庫は危ない」と話したことから尾ひれがついて預金引き出しに結びつき、豊川信金が破綻寸前に至ったことがあります。特に日本人の場合、オイルショックはまだしも、コロナでもトイレットペーパー買い占めに走る国民性ですからね(笑)。それが相場のプロでも同じで、本日の日経平均暴落につながったというのは実に情けない話です。
そもそもSVBの破綻原因は、低い預金金利で集めたオカネを高い利回りの債券に投資して収益を上げる構造にありました。このこと自体はどの銀行でもある程度は行っているのですが、SVBはやり過ぎたのです。そもそも低金利がいつまでも続くとの見通しも甘かったということです。
銀行は資産の価値を毎日値洗いし、期末にはそれが決算に反映されます。アメリカでは長短金利ともに大きく上昇しています。ということは、銀行にとってのコストである預金金利も上昇している中、保有債券の価格は大きく下落しているということで、最悪のパターンになっていました。SVBは損失への対処として増資を発表しましたが、それがかえって疑心暗鬼を招き、取りつけ騒ぎを招いたのです。以上が一般のニュース内容です。
しかし私の解説はもう一歩踏み込みます。この金利上昇の事態に、お利口さんな銀行は債券先物のヘッジ売りをして損失を避ける行動をとりますが、SVBはきっとそれをうまくマネージできなかったのでしょう。
では、世界で一番債券を保有し、ヘッジ売りもやりようがないという巨大銀行はどこか。もちろんそれは日本銀行です。その債券保有残高は22年末で555兆円。昨年12月に自らの政策変更により10年物金利がわずか0.25%上昇しましたが、それによる評価損は8,800億円です。黒田氏は2月の予算委員会答弁で「日銀は国債を途中売却はせず、満期まで保有するので途中の評価損は問題なし」と豪語しています。
しかしそう簡単には行きません。555兆円の国債を保有するためのオカネの多くを市中銀行が日銀に預けている当座預金に頼っています。その当座預金の金利がインフレに伴い上昇すると、保有国債の平均利回りはわずか0.22%しかないので、すぐ逆ザヤになります。それが続けば、決算に損失は反映されますので、「満期まで持つからいいんだ」などと言っているヒマはなくなります。みずから国債金利を低下させたツケをみずからが払うことになる。
天にツバすればそれはしょせん自分に返ってくるのです。
以上、「世界で一番危険な銀行は日銀だ」でした。
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