前回は、日銀がゼロ金利を解除したが、その後のドル円レートは大方の予想に反して、円高ではなく反対のドル高に動いてしまった。その理由として私が指摘したのは、
- 日本は貿易立国にもかかわらず貿易収支は赤字が常態になっている。
- 海外投資の黒字分を外貨のまま現地に残すことが当り前になってきて、日本に還流させないこと。つまり経常黒字が円高要因ではなくなっている。
- 日本の一般投資家も企業同様賢くなり、成長力の衰えた日本から海外へ投資マネーを移している。
ということを理由に挙げました。
では、このドル円レートを専門家はどう予想していたか、まだ年が明けて3か月も経過していませんが、昨年末に行われた為替のアナリスト達のドル円予想を見てみましょう。ダイヤモンド誌が年末に恒例として行っているアンケート調査の結果です。著名な為替アナリスト8人が予想をしていましたが、そのうち今後1年で円高予想をしていたのが7人、円安予想はたった一人でした。
公表されていることなので名前をあげますと、当たりは「ふくおかファイナンシャル・グループ」の佐々木融氏だけで、今年のドルの予想値は155円で今後はしばらく円安と予想しています。佐々木氏は元日銀マンで、その後JPモルガンで為替のアナリストをしていました。
もちろんまだ3月ですから1年間の結果は出ていませんが、少なくともここまでは大外れで、8人中方向を当てたのはたった一人。それほど為替の予想は難しいということです。
では日銀の政策変更で実際に金利はどうなったかを検証します。短期金利変更はただちに普通預金の金利の変更という影響をもたらしています。3月19日のロイターニュースを引用します。
引用
日銀の政策変更を受け、大手銀行が預金金利を引き上げる。三菱UFJ銀行は19日、日銀の利上げを受けて普通預金金利を0.001%から0.02%に引き上げると発表した。日銀が前回利上げをした2007年2月以来。3月21日から引き上げる。定期預金の利率も見直し、1年物は0.002%から0.025%とする。優良企業に融資する際の最優遇金利、短期プライムレートは1.475%を維持する。同レートは、住宅ローンの変動金利の基準でもある。
三井住友銀行も普通預金金利を年0.02%(従来は年0.001%)に引き上げ、4月1日から適用する。定期預金金利も引き上げを予定しているという。
みずほフィナンシャルグループも、普通・定期預金の金利を引き上げる。木原正裕社長は日銀の利上げ決定後、ビジネスの原資として「預金を持つことの重要性が一層増す」とのコメントを出した。
グループに4行を抱えるりそなホールディングスも、預金金利を引き上げる検討に入ったことを明らかにした。
引用終わり
では三菱銀行に普通預金で100万円を預けていると、1年でいったい金利がいくらになるのでしょうか。
利上げ前 100万円 X 0.001% = 10円
利上げ後 100万円 X 0.02% = 200円
200円だと1回でも振り込み手数料をはらうと吹き飛んでしまう額です。とてもじゃないですがこれで預金をしようと思うような金利ではありません。しかもこれから源泉税を2割取られます。つまり円預金は金利を期待して預けるようなものではないということです。
では預金の代わりに円建てのMMFへの投資はどうか。MMFとは、マネー・マネージメント・ファンドの略称で主な投資対象を国債など国内外の公社債や譲渡性預金、コマーシャル・ペーパーなど、短期金融資産とするオープン型の公社債投資信託で、1円以上1円単位で購入でき、毎日収益が計上され、運用成果は実績に応じて変わりますが、投資とは言え預金にかなり近い投資です。
しかしネットで調べた結果、野村證券のMMF金利は年率0.021%で、預金より0.001%だけ上ですが、とてもこの商品に投資する気にはなれません。
では、ドル建てのMMFはどうか。同じく野村のMMFでは4.739%(予想金利)。これだと金利をしっかりもらえるので投資する気になります。あくまで変動金利のため、日々変動するリスクはありますが。100万円の投資をすると年に4万7390円もらえる勘定です。もちろん為替のリスクはありますし、利回りも変動しますが、この1年あまりは4%台が続いているようです。
ではこの円とドルの金利差はいったいどうして生じるのでしょうか?
一番の理由は、ドルと言う通貨は金利を生む力がある通貨であり、円と言う通貨は金利を生み出す力はないということなのです。
一般の投資家もこのことをうすうす感じ始めていて、円よりドルへの志向が強くなってきているのではないでしょうか。その証拠がNISAによるアメリカ中心となるオルカン投資です。
続く
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