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日本の借金、1千兆円超え

2013年08月21日 | ニュース・コメント
彷徨さんへ

いつも私のブログをおよみいただき、また的を射たコメントをお寄せいただき、ありがとうございます。

彷徨さんのおっしゃる次の懸念は全く同感です。

>1,000兆円の大台を突破した国債残高は、このままでは返すあてなどどこにも見あたらないばかりか、このままでは頼みの引受先である個人金融資産枠もやがて使い果たしてしまう勢いで増加をみせています。

また
>そこで考えたのがインフレマインドを 醸成するための演出としてアベノミクスと異次元緩和の大芝居となったのでしょう。

>そして万が一ハイパーインフレになったら国債は、紙切れ同然(個人金融資産は減価)になってしまうのでどっちに転んでも国は、損することはないと踏んでいる財務官僚と日銀官僚の考え方の違いがそこにあるためと考えるのはうがった見方でしょうか。


こうした見方は「うがっている」とはとても思えないほど現実味を帯びていますよね。私も「国債を毎月7兆円も買うのは、本格的に売れなくなった時の予行演習だ」と申し上げました。3%のインフレも30%のインフレの予行演習かもしれません(笑)。

ただ、彷徨さんの言われる日銀ネットのお話はちょっと「うがった見方」かもしれません。

 この決済インフラは、いわば日本経済のオカネの流れを血流にたとえるなら、心肺機能を担っているものです。国債の決済も基本的には市場での売買より発行・引受決済という根幹を担っています。株の保管振替(ほふり)も同様にこれが担っています。

 これを少しでも歪めると、証券決済で最もあってはならない「フェイル」という事態に立ち至ります。つまり決済不能で、当事者はデフォルト認定されるほどの大ごとです。市場がどんなに荒れようと、いやむしろ荒れて出来高が莫大になればなるほど重要性を増す機能なのです。

 そして日銀ネットに彷徨さんのおっしゃるヘッジファンドの暴走を抑える機能はありません。理由は、国債売買の成立は現物であれば当事者間の相対ですので、売り手と買い手の2者間だけで成立します。成立したあとの決済だけを日銀ネットが実行するだけなのです。取引に制限はかけられません。

また、レバレッジを掛ける比率は一定の率がそれぞれの市場(日本の証取、シンガポールなど)で決められていて、市場の暴走はレバレッジ率を下げるなど取引所の判断で行われます。それにプレッシャーを掛けるにしても、いくら金融当局であってもシンガポールの日本国債先物市場までは手が届きません

ということで日銀ネットについては異論がありますが、一番大切な異次元緩和とアベノミクスについては同感するところ大です。

 国の借金の1千兆円超えに対する世間の反応は、驚くほど軽微ですね。それに関連してむしろテレビで識者・評論家と称する人たちが「国はそもそも破綻することはない」などという幼稚な議論がなされていることに大きな懸念をいだきます。
コメント (24)
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