ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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米国債ETFへの投資について

2013年08月28日 | 2013年からの資産運用
鋼鉄の男さんへの回答

  私の著書をお読みいただき、ありがとうございます。
超安全志向の方ですと、私の考え方に賛同していただけますね。

 ご質問の件、他の読者の方にも大いに参考になると思いますので、詳しく回答させていただきます。

まずは投資の方針から。

>母親(67歳)の資金運用(1500万円)を任されており、御著書の影響もあって米国債へのシフトを考えております。ただ、年齢のこともあり、毎年のキャッシュフローを重視したいと考えております。

よい考え方ですね。著書にもあるとおり、ご年齢からしてインカムゲインを重視するのが一番です。著書で述べている「年をとったら元本のことなど忘れて、インカムをエンジョイしろ」を地でいっていますね。

>一番良いのは、残存年数が限りなく30年に近い米国債(利付債)で、価格が100を超えて、クーポンが4%を超えるようなものを希望していますが、実際のところないようです。
現実にあるのは、例えば三菱UFJ証券 償還日2042年11月15日、価格82.59、利率(クーポン)2.75% です。もう少し、クーポンが欲しいなぁというところです。


おっしゃるとおり、高クーポンでオーバーパー(100以上の価格)の米国債は日本では貴重品です。私も友人の両親向けの高クーポンを探しましたが、見つけるまでに2カ月もかかりました。もっともその間にちょうど米国債のイールドが上がってきたため、怪我の功名でしたが(笑)

>そこで、次のような米国債ETFを見つけました。
http://jp.ishares.com/product_info/fund/overview/NYSEARCA/TLT.htm
分配金利回りが3%以上あり、現実的な選択としては良い方だと思っていますが、何か見落としていないか心配です。林さんの目から見て、このETFの問題点がありましたら、教えて頂けるでしょうか。もちろん、毎月分配で利殖には不向きであることは理解しております。


鋼鉄の男さんの文章から、とてもよく研究されている様子がうかがえます。

このETF(iシェアーズ米国債20年超ETF)が日本で個人が買えるというのは私も知りませんでした。海外のETFは、日本で個人が買えるものが多くありません。証券会社がフィーで稼げないからです。これですとかなりの証券会社で扱っていますね。

この米国債のETFファンド、とてもよい選択だと思います。理由をいくつか上げます。

・ETFのためコストが非常に安い(年0.15%のみ)

・Black Rock社はとても信用がおける(世界最大の投資顧問会社、元をただせばマーキュリーというイギリスの投資顧問が何度かの買収を経てBlack Rock傘下に入りました)

・過去のトラック・レコードがよい(といってもアクティブにマネージするのではなく、インデックスにリンクするだけですが、インデックスそのものがよいパフォーマンスを示している)

・20年超の米国債を何種類も買ったのと同じ運用を実現できる

・配当がリーゾナブル(日本の投信のように1万円を大きく割り込むタコ足配当をして、いったい儲かっているのか損しているのか、わからなくなるようなことがない。常に100ドルレベルの価格を保つように配当されている。日本のジョーシキは世界の非常識)



>このETFの問題点がありましたら、教えて頂けるでしょうか

 債券のファンドですから一般的には金利が上昇局面にあると損失が出ます。生の債券ですと、最後まで持ちきれば損失はありませんが、ファンドですのでプラス・マイナスは大いにありえます。ファンドのプロスペクタス(英語のみ)を見ると、過去のパフォーマンスが詳細に出ていますが、08年はさすがに大きくマイナス、でもすぐ取り返しています。長期保有が前提ですから、問題はないと思います。

 総評として私はよい選択だと思います。1,500万円と多額の投資ですので、米国金利や円ドルレートの動向を見ながら、少しずつという選択もお考えになるとよいと思います。シリアのことで相場は揺れると思いますが、逆によいチャンスかもしれません。

 追加質問などあれば、なんなりとどうぞ。


コメント (27)
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