5月23日木曜日の株式相場は、ジェットコースター相場でした。午前中に前日比300円高と大幅に続伸して始まり、午後には高値から1,400円も急落。きっと肝を冷やされた方もいらしたことでしょう。翌日24日はまたもやジェットコースターを演じ、1,000円も振れ幅があり、結局100円強戻して14,612円で引けました。急落後にしては、戻りが鈍いと思われます。
じっくりと相場の居所と今後を語ろうと思っている私も、気勢を削がれそうですし(笑)、現在値と言う時、どこを基準に話をすべきか迷うほどです。一応、24日の引けを数字として使います。
この急落劇の引き金は、FRBバーナンキ議長が議会証言で、出口戦略どころか出口の時期について語り始めたことによると思われます。それに日本国債10年物金利の1%台乗せが追い討ちをかけました。中国のPMIは取ってつけた話でしょう。金利についてはまた別途書きます。
さて前回は日経平均株価とPERの推移をアベチャン指数に沿って追ってみました。昨年11月中旬に13倍だったPERがアベクロ政策により24倍まで買われ、決算発表と来期の業績予想が上向いたことで18倍程度になった、との数字を示しました。現在は若干落ちて17倍程度です。もちろん24倍に買われた理由には業績の好転予想もすでに含まれていたと思われます。
11月と現在のPERの上昇分を数値にすると、
17倍 ÷ 13倍 = 1.3 ・・・30%の上昇
PERは30%の上昇でした。ところが株価は8,600円が14,600円と約70%も上昇しています。その差の40%はどうなっているかの見てみましょう。
この乖離を説明するのが、企業が発表する業績見通しの上方修正です。前回1,300社の業績が9月決算時より3月の決算結果で9%の上方修正だったと説明しました。さらに来年3月期の決算はやはり1,300社で24%の増益を予想しています。
両方を合わせると業績の好転分は
1.09 x 1.24 = 1.35 ・・・35%の上昇
そこでPERと企業業績の両方の上昇を掛け合わせると、
1.3 x 1.35 = 1.75 ・・・75%の上昇
こうなります。およそ先ほどの株価の上昇率70%に該当します。
つまり株価の上昇を2つの要素に分解すると、業績分でプラス35%、PERの上昇で30%というわけです。
「業績による上昇の35%は、裏付けがあるので当然だ」といえないことはありません。しかし実際の株価は75%も上昇していて、プラスアルファは「期待分」だということになります。その期待分とは「PERが13倍から17倍になった部分だ」と説明されるのです。
厳密には業績部分とPER上昇分をかけ合わせると75%になりますので、70%の株価上昇とは若干の乖離があります。
それは私が使用できる情報に限界があるからです。実際の株価と予想PERの数値は225種日経平均を使用し、業績見通しは1,300社の公表資料を証券会社がまとめたもので、齟齬がありますので、それは勘弁ください。
こうして分解すると、ざっくりと申し上げれば「株価の7割の上昇の半分は好業績見通し、半分は期待だ」、ということになります。
ここまでは、ガッテンいただけましたでしょうか?
「ガッテン、ガッテン!」
ありがとうございました。
しかし問題は、
1.3割の「期待」部分は過剰な期待か否か
2.今後の株価はどう見通せるのか
まず1.からです。
現在のPERは先ほど17倍だ、と申し上げました。歴史的な平均値(13倍から15倍)からすると、それほどの過剰期待とは思えません。80年代後半の日本の大バブルでは、60倍を超えていたのですから。この10年間くらいを見ると、小泉改革期待では22-23倍で推移したことがあります。そして瞬間的には26倍だったと言われています。
もしそれを単純に当てはめれば、例えば22倍くらいだとあと何パーセント上昇余地があるか、計算します。
22 ÷ 17 = 1.29 ・・・29%
15,600円 x 1.29 = 20,124円
さらに26倍まで買われるとすれば
26 ÷ 17 = 1.53 ・・・53%
15,600円 x 1.53 = 23,868円
かなりの数字になります。
PERの数値で注意を要するのは、利益予想の数字はどの数値を取るかで異なることです。私は会社発表の数値の集計を採用していますが、証券会社は独自の予想を立てて、公表したりします。例えば来期の数字も24%増益というのが会社発表の合計ですが、証券会社によっては36%の増益と出しているところもあり、それだけで1.5倍も違ってくるのです。
つづく