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2013年からの資産運用 その25、住宅建設ブームは来るか?

2013年05月12日 | 2013年からの資産運用
  前回は、賃貸不動産への直接投資は、不動産市場の価格変動リスクや経済性だけではなく賃貸人とのドラブルなど、コントロール不能な様々なリスクを抱えることになり、また流動性を失うことになるので避けるべきだ、というお話を差し上げました。

  一つ訂正ではないのですが、追加の説明があります。4月末の記事で、私は次の様に申し上げました。

>「戸建て住宅には動意が全くない」ことです。
不動産ブーム到来となれば、戸建て住宅も当然ブームにならないといけませんが、全く報道されていませんし、実際にブームなど全くありません。


  しかし4月末発表の「新設住宅着工数」という指標で若干の明るい兆しが出ていることを追加でお知らせします。着工数には戸建ても集合住宅(マンションなど)も含まれますが、13年3月までの前年度比でプラスになったというニュースです。全体では年間89万3千戸、前年度比プラス6.2%です。そのうち戸建ては3.8%増です。この程度のプラスはここ3年継続していますので、新たな展開ではありません。

  みなさんが頭に入れておくべきことは、この着工数89万戸という数字の持つ意味です。バブル崩壊後の90年代後半から2008年まで一貫しておよそ100万―120万戸を維持してきたのです。それがリーマンショック後の09年に80万戸台に激減し、そこから徐々に回復しつつあるものの定常的な100万戸台にはいまだにはるか遠い数字です。ということで、着工数はプラスですがとてもブームとは言えません。


さて、では不動産全体の今後の見通しについてです。

まず不動産の供給から見て行きましょう。現在建設が盛んに進むセクターは、以下のとおりです。

1. オフィス(兼商業)ビル(都市中心部)
2. 物流施設(港・空港・高速インター近辺で倉庫、仕分け設備など)
3. 商業施設(郊外、モール・アウトレットなど)
4. マンション(都市部、分譲・賃貸)


  このうち住宅セクターではマンションに加え戸建ても増加して来ると思われます。理由は今後見込まれる2回の「消費税増税」です。住宅セクターに対する増税の与える効果は予想できないほど大きなものになる可能性があります。しかし効果が大きければ大きいほど、その反動も大きくなります。しょせんは需要の先取りで、『いってこい』の往復運動です。駆け込み需要がきっかけになり、住宅建設の本格ブームが来ることなどありえません。何故なら、長期的なトレンドとして人口が減少し、住宅需要が減少するのは目に見えているからです。

  前にも触れたことがありますが、耐久消費財である自動車やテレビ購入で見られたエコポイントや地デジ効果と同様、こうしたことに対する日本人の反応は非常に激しいものがあります。特に消費税の場合は2回にわたり値上げされますので、住宅購入を考えている人でそれを計算に入れない人はいません。ですので駆け込みを考える人はゴマンといるでしょう。

  でももしこのブログの読者の方で駆け込み購入をお考えの方がいらっしゃれば、私は消費税値上げ後まで待つことをお薦めします。地デジ騒ぎの時、私はテレビ購入を見送りました。そして地デジ導入直後にエコポイントもなくなってから購入したのですが、40型液晶が騒ぎの最中にポイントも勘案して15万円くらいだったのが、その後すぐたったの7万円になっていました(ニンマリ)。   「人の行く裏に道あり、花の山!」

  もちろん住宅はここまでのディスカウントにはなりませんが、マンションはかなりのディスカウントの可能性があると思われます。特にオイシソウな裏道は、駆け込みで無理に契約をしたものの、実際には払えずにキャンセルという物件でしょう。消費増税分以上のディスカウントをエンジョイできると思います。もっともマンション屋さんも最初の増税のあと売れ残った物件は、次の増税まで必死に継続保有することもありえないことではないでしょう。

またちょっと横道に逸れましたので戻します。

では、住宅セクターに対するアベノミクス効果はどうみるのか?

  私の見方は、「消費税の値上げ効果以外はほとんどないだろう」というものです。何故なら、90年前後の資産大バブルの後遺症は、このセクターに限り終わっていないからです。

  投資可能な金融資産を最も所有している団塊の世代から上の世代の人たちは、不動産では相当痛い目にあっています。老後に大事な流動性を失うような大きな不動産投資をする人はあまりいません。そしてしょせん住宅購入は一生一度か、せいぜい建て替え含めて二度、もしくはすでに説明した都心回帰があるくらいだからです。

  では、若い世代がアベノミクスに反応してローンで住宅を購入するか?
住宅購入はアベノミクスがなくとも一定の需要は必ずあり、それが証拠に十数年も着工数は百万戸台を維持してきたのです。そのレベルに戻るのがせいぜいで、それ以上は難しいと思います。田園都市の一戸建て住宅がどんどん建て替わり、ふたたびテレビドラマの舞台に躍り出ることはありえません。

  たとえアベノミクスに反応し住宅を購入したとしても、それは需要の先取りで、ローンで2軒目を建てるリスクを取る人はいません。賃貸不動産で財をなした金持ちトウサンは、倒産しました(笑)。


  今回は最初に「建設が進むのは4つのセクターだ」とお申し上げ、そのうちの一つである住宅について、私の見方をまず紹介しました。ではあとの3つ、オフィス・物流施設・商業施設は何故建設が進んでいるのか。

  一番大きな理由はそれらがJREITの投資対象だからです。そのJREIT、ここへきて、ちょっと変調をきたしています。

つづく
コメント (2)
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