ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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外貨資産の比率はどうすべきか、ななしさんへの回答

2013年05月22日 | 2013年からの資産運用
ななしさん

いつも私のブログをお読みいただき、そして「ファン」とおっしゃっていただき、ありがとうございます。

私もななしさんとのやりとりを心から楽しんでいます(笑)
2日ほど前にいただいていたななしさんからの質問への回答です。


>そんな我が家はその外貨の占める割合を最終的にどのようにすればよいか検討中です。円安リスクも気になりますが、私がいつも気になるのは世界のどこかでおきるかもしれない(外的要因)有事(天変地異や戦争やetc・・)による為替への影響です。それでまさかの円高もありえるのかな・・って心配もあるのです。


  経済要因でない天変地異や地政学的リスクについて、私の考え方をお知らせします。

  こうした可能性は最近「テールリスク」と呼ばれる、可能性はとても低いけどなきにしもあらずの一つですね。テールリスクには市場のリスクも含まれますが、とにかく可能性の非常に小さなリスクです。こうしたことに対しては、損害保険の考え方があてはまります。どうしても心配なら、掛け捨てのとても安い保険を買っておくことです。例えば1万円の保険料で、1,000万円(1万倍)の保険に入っておく、というようなものです。しかし今の金融商品にはそれに該当する商品がありません。

  そこで我々ができる最善の方法は、自分の資産の何割かを世界で一番安全なところに置くことです。安全の条件を列挙すると、

1.天変地異を考えるなら、できるだけ国土が広い国が安全(地域的なリスク分散が自然にできている)

2.地政学的リスクを考えるなら、自国の軍事力が強大でそばに危険な国がないところ

3.食料・エネルギーを自給自足できる国

4.投資にとって重要な資本移動の自由が保証されている国

5.財政破綻などの心配がない国


  こうしたことを考えると、日本は残念ながらほとんどの条件をクリアーできません。これらの条件をおおむね満たせるのは世界でもアメリカとオーストラリアくらいでしょう。ということは、半年くらい前までよく言われた「安全資産の円が買われる」などというのは日本人のひいき目か、エコノミスト達が他に理由をみつけられないときの言い訳にすぎません。最近は言わなくなりましたよね(笑)

>私の素人考えでは、金融資産の外貨対日本円の割合を常に50パーセントずつのニュートラルな状態に維持しておくという考え方も持ってます。
状況を見ながらいつでも出撃できますし・・


  外貨対円で50対50がニュートラルという考えは、実は極めて日本人的考えです。世界標準では、各国のGDP比率で構成比を決めるのが一般的です。もちろん世界には金融市場が整っていない国もあるでしょうから、金融市場の規模割合、つまり債券・株式時価総額構成比に従えば、「ニュートラル」と言えるかもしれません。

  
  でも実はそうした国際的な感覚を身につけている人にとって、いままでの円高は「あー、すっげー得した」となります。ななしさんもあまりあせらず、いままで「得しまくった」と思うことです。(グロソブはべつにして。)そうすれば今後ドル円で100円以上で外貨に投資しても「すっげー損した」気分にはならないと思います(笑)

>金融資産が三千万や五千万の場合と一億とか一億五千万の場合ではやはりこの割合は違うのでしょうか?

  必要最低限の金額を円貨でリザーブすれば、あとは資産の全体額にこだわって外貨比率を決める必要はないと思います。その比率は日本のリスクをどう考えるかによります。私のように日本に大きなリスクを感じていれば、外貨比率はめいっぱい大きくする。日本はアベノミクスで見事再生し財政も再建可能だと見れば、外貨へのシフトは抑え目にするのが妥当でしょう。

>それともそもそもこの「イーブンで」との考えがおかしいのでしょうか?

イーブンとは先ほどのニュートラルと同じでしょうか、それとも単に5分5分のことでしょうか?先ほどのニュートラルが、実はイーブン?
まあいずれにしろ5分5分というのは、資産額に違いがあってもなくても、さほど大きな意味はないと思いますが・・・
  
  とは言えこれまで外貨投資をためらってきた方には、5分5分という比率は心地よいのかもしれませんね。それであれば「ストレスフリーの5分5分」でいきましょう!
コメント (4)
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