このところ、テレビを見る機会が多い。
昼は高校野球から目が離せずに、夜は夜で、映画「人間の条件」が連続放映されている。
この映画は、第一部から六部まで、計十時間ちかい大長編映画なのである。
昨夜は、第三部が放映されていた。
当時日本陸軍が占領統治していた中国東北部、いわゆる満州の鉱山にて労務管理の仕事をしていた主人公梶が、中国人ら工人をかばったところ、いわゆる「赤」であるとレッテルを貼られ、会社を辞めさせられ、関東軍に徴集されてしまう。
ソ満国境ちかくの基地で、軍隊生活が始まり、ここでの、聞きしに勝る愚劣なる人間関係が第三部の中身であった。
いきさつははぶくが映画後半で、ようするに梶は負傷して野戦病院に送られる。
この病院の婦長役で出演していたのが、原泉さんだった。
梶が、広い病室の中で、ベッドからベッドへとふらふらと渡り歩いている場面であった。
この時、入り口から、原さんが登場してくる。
原さんの第一声。梶をさして・・・おまえ、何をやっているのか!
梶・・・はい、歩く練習をやっているのであります。婦長さん
婦長に随行していた病院つきの兵隊が・・・婦長殿といえ、婦長殿と!
梶・・・はい、婦長殿
すると婦長の横のベッドに腰掛けた傷病兵が、にやりと笑った風
原・・・なにが、おかしいのだ!
と、その傷病兵の横っ面を間髪を入れずに、張り倒すのである。
原さんの演技が見事であった。切れ味がある。
まさに軍国看護婦の心身を見事に演じていた。
映画「人間の条件」は1960年公開作品である。
わたしが、この映画を最初に見たのは、東京に出てきたからだから、20代も前半の頃であり、西暦でいうならば70年代が始まったころだった。
見た場所は、おそらく当時池袋にあった映画館「人生座」か「文芸座」のオールナイトだったとおもう。
この婦長殿が・・・「おまえは女の髪のにおいを歌うべからず」と、わたしに無理な注文をつけてきた詩人中野重治の夫人であることを知ったのは、さらに、ずっと後のことだった。
<2011.08.18 記>
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