東北ドライブ旅行の最終日、9月23日朝、福島県棚倉(tanagura)町近くのコンビニから早朝に出立し、茨城県大子町を午前8時ごろ通過した。そのまま八溝山に向かう。大子町はdaigomatiと読む。八溝山の茨城県側の町であり、山を越えた向こうは栃木県は那須地域の黒羽町(現大田原市)である。私の故郷の隣町だ。わたしは18歳まで北西に日光連山、真北に高原山(takaharasan)、北北東に那須連山、そして北東から東に伸びる八溝(yamizo)山系を見ながら育った。高原山は、すぐそばに仰ぎ見ることができたし、高原山の向こう側は塩原温泉である。また「日光」や「那須」は観光地として、とかく話題も多く、長じるにしたがって、なじみの地名となったが八溝山だけは、あの山の向こうは茨城県だと教えられたきり、その他の知識は得ることもないままyamizoという、なんとなく不思議な音名を持つ、その山の所在が気になっていた。改めて地図でみると八溝山は、栃木県と茨城県を分かつだけでなく、福島県との境でもあり、三県にまたがっている。八溝山を見る、それがこたびのドライブの、当初からの、ひそかな目的のひとつであった。
結局、三泊目のネグラは福島県須賀川から茨城県水戸市まで続いているルート118、いわゆる茨城街道上のコンビニの駐車場ということになった。適当な、「道の駅」が見つからなかったのである。福島県棚倉町の手前数キロというあたりだった。広い駐車場には、何台かの長距離トラックなども停留していて朝が来るのを静かにまっていた。
23日、午後1時、宇都宮のレンタカー営業所に着く。車を返却する。メーターを見ると1200キロの道程だった。よくぞ、走ったものである。燃料は20リッターづつを二回入れた。満タンにして返すのがレンタカーのしきたりである。燃費は、なんと1リッターあたり30キロなのである。車がよかったのか、わたしの運転がエコだったのか。自慢したくなるほどの優等生ぶりである。よくよく考えてみるに、やはり全般にわたって道路事情がよかったのである。ひたすら時速60キロをキープしたまま、ほとんど停車することもなく、どこまでもどこまでも走ってこれたのだから。営業所の隣がコンビニだった。さっそくザックをおろして、缶ビールを買い求め、無事の帰還を自分で祝った。