2011.02.19 港区
散歩途中で、ふと道路の向こう側を見ると、ガス屋の支店のようなショーウインドォの中に、ほぼ等身大の鏡が据えられてあった。そこに、こちら側から、自分の姿を写してみたのである。
いずれ一興に過ぎないのだが、この際、いささか自分で自分の姿を評してみたい。わたしは享年62歳。清掃アルバイトの、その日ぐらしの男でござる。
帽子と靴だけは新品なのだが、ジーンズといい、コールテンの上着といい、500万画素のカメラといい、すべてこれ、いくつかのリサイクルショップにて中古品を見つけて気に入って身に着けている。ただしマフラーは、二年ほどまえに、どこぞの年上の女性のところに転がりこんだということを聞かされて以来、さっぱり連絡もよこさない長男が置き忘れていったものである。少々、タバコ臭い。
風雪ながれ旅
http://www.youtube.com/watch?v=bkKf1ZC5yhs
都はるみさんが「アンコ椿は恋の花」を歌ってデビューしたのは1964年のことである。当事私は高校生だった。学校から帰ってくると、部屋の角に、新品のテレビが置かれていてびっくりしたのである。テレビの横で母親が満面の笑みをみせていた。わたしは、そのテレビに映し出された「アンコ椿は恋の花」を歌っている都はるみさんの姿を、今でも鮮明に覚えている。
わたしが、星野歌謡曲に驚愕したのは、たった二つの短いフレーズによってである。その一つ、北島三郎さんが歌っていた「なみだ船」の中の・・・ゴムの合羽(かっぱ)にしみとおる。もう一つは、「風雪ながれ旅」の中の・・・鍋のコゲ飯(めし) 袂(たもと)で隠くし・・・というくだり。この二つの短い文節を耳にするたび、なにか、ぞっとするような痛切な快感が全身を駆けぬけていく。