先日、「狂うひと」(梯 久美子著 新潮文庫)を三日がかりで一気に読んだ。副題に ー「死の棘」の妻・島尾ミホ ー とある。「死の棘」は刊行当時大評判になった小説家島尾敏雄の一大長編小説でありミホは彼の妻であった。
「狂うひと」は一言で申せば島尾ミホを主人公としたノンフィクションによる評伝だが読み終えて、ひとまず感じたことは、ミホの夫であるところの敏雄作なる小説の「死の棘」本体より、よほど面白く「事実は小説より奇なり」という俗諺をうべなって余りある感慨が、わたしの中でいよいよ本気で沸き起こってきた。とりもなおさず、そのことは「小説」とか「小説家」というものに対する大いなる失望と不信に他ならなかった。
さきほどニュースで訃報を知った。
彼(1927年生)の主演した映画はどれもこれも印象深く覚えている。
カッコよかった。本当に彼はカッコよかった。
1955年 暴力教室
1958年 手錠のままの脱獄
1963年 野のユリ
1967年 夜の大捜査線
〃 招かざる客