それで昨日一日おいて本日になって、母親の入っている病院に向かったわけである。何度もいうが病院は隣県の山里にある。自宅より電車で2時間は堪えられるのだが、駅からの交通の便がないのである。6,7キロもあるだろうか。片道を歩いて1時間半はかかる。自動車を使えば文句もないし、実際、この病院に勤めている医師をはじめ職員の方々はみな自動車で通勤しているようだ。病院の隣りに大きな駐車場があって、常時百台はとまっている。数年前までは私ももっぱら自動車を運転してここまで来たものだ。今は車の運転は毛嫌いしている。公共交通機関を利用することをのぞけば、できれば歩いて目的地まで行くのが筋だと思っている。そこで、去年だったか、この病院まで歩いて往復したことがあった。駅からすぐ田園地帯に入り、病院に着くまでずっと道なりに里山が迫っている。その時もたくさんの写真を撮った。実は、駅につくまで歩いていこうか、駅前にある自転車屋さんから自転車を借りようかと迷っていた。だいたい最近は、自転車を借りることにしている。だが、よい写真を撮るには歩くにかぎる。言い訳がましいが、駅に降り立って空を見ると今にも雨がふりそうだった。そこで徒歩をあきらめ、自転車を借りることにしたのである。母は元気そうだった。
夕方、母親が入っている病院の看護士から電話があった。近日中に病院まで来られたしと言う。病院は隣県の山里にある。見舞いも、歩いてなんぼの一日がかりの大仕事である。大正生まれの母は今年83歳になる。今のうちに、一度でも多く会っておきたいのは山々なのだ。だが、明日は雨が降りそうなのでやめておきたい。行けるとしても明後日になると看護師にはそう答えた。