世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

北京から遠く離れた避暑山荘は、皇帝があこがれた江南地方の風景をコピーしています(中国)

2013-10-13 08:00:00 | 世界遺産
 ハプスブルグ家の離宮として、ヴェルサイユにも劣らない美しい宮殿がウィーン郊外のシェーンブルンでした。ヴェルサイユにしてもシェーンブルンにしても、離宮は本来の宮殿の比較的近い位置にあるのですが、200km以上も離れているのが、中国の承徳に18世紀初頭に作られた避暑山荘です。今回は、承徳の避暑山荘と外八廟一帯を紹介します。

 承徳は、北京から列車で4時間半、高速列車網の整備が続く中国ですが、山の中を分け入るような路線では評定速度は50km/hそこそこです。この方面には、避暑山荘以外では万里の長城があるくらいで、観光の目玉がありません。このためか、日本からのパッケージツアーは、ほとんど見かけませんし、そもそも日本人観光客の姿もほとんど見かけません。避暑山荘と外八廟とを回ると2日間はかかり、列車の移動を考えると、北京から2泊3日はかかるので、たくさんの観光地を急ぎ足で回るパッケージツアーには向かないのでしょう。ただ、これだけの時間をかけても、見所はいっぱいで、観光客もさほど多くなく、高山のように体力の要る場所ではないので、時間があれば訪問して損は無さそうです。

 
 
 
 避暑山荘は、鉄道駅からバスに乗ると、いったん西に走って川を渡り、北に方向を変えて10分ほどで正門に着きます。長径が3km、短径が2kmほどの北西と南東に長い楕円形の広大な敷地を持っています。入り口は敷地の南端にあって、入り口の近くは、江南の景色を写した庭園と池が広がり、宮殿もこのあたりにあります。池には、観光客を乗せた船が浮かび、湖畔には3層の楼閣が建っていて、蘇州や杭州の水の多い景色を思わせます。この地域を抜けて、北西に行くと草原が広がっていて、これは蒙古の風景を取り入れたようです。さらに、その奥は広大な森で、外界との間には、万里の長城を模した土塁が続いています。

 一方、外八廟は避暑山荘とは川を挟んで東から北にかけて1kmほどの距離に分散しています。八廟と呼ばれていますが、10箇所以上の寺院や廟があり、道路から高みにあったりして巡礼をすると、かなりくたびれます。それぞれのお寺などが特徴のある形をしていますが、どうも既存の他のお寺などをコピーしたものが多いようです。

 
  
 チベットのポタラ宮を写したのが普陀宗乗之廟で、鉄道駅から最も遠い廟の一つですが、遠くから眺めても存在感があります。チベットのように空気が薄いわけでは無いので、小高い場所まで歩いて上がらなければならなくとも、さほど苦にはなりません。

 
 普陀宗乗之廟の手前の東側には須弥山福寿之廟があり、こちらも傾斜地に建っていています。ラマ教のお寺を模したもので、お堂の数がかなり多く、一番高い所に真っ白の八角十三重の石塔0建っています。

 
 さらに東に行くと普寧寺があり、このお寺には22mの世界最大級の木造観音像が安置されています。この像を収める6層のお堂も巨大ですが、このお堂の前面に窓が無いので、観音様のお顔はほとんど見られません。

 
 鉄道駅に一番近く、避暑山荘の東にあるのが普楽寺ですが、バスを降りてからの道のりは長いお寺でした。だらだら坂を1kmほど上った所に、北京の天壇を模した建物が建っています。平地にゆったりと建っている天壇とは、かなり趣が違いますが、高台からの眺めの良いお寺の一つです。

 北京から承徳までの列車に乗るためには乗車券を購入することになりますが、駅での長い行列を覚悟する必要があります。さすがに、手書きの乗車券ではありませんが、停車駅などでしか買えませんし、席を確保するには発駅での発券が必要のようでした。一部の高速列車は、離れた駅でも指定券が買えましたが、なんと手数料が必要でした。日本では、およそ50年前にマルス・システムが稼動をし始めて、どこの駅でも指定席が買えるのは当たり前になりました。それ以前には、各駅から管理センターに電話で問いあわせて手書きの指定券を発行していました。現在のシステムはパソコンと同じような端末ですが、かつての端末は、たくさんの穴が開いた板が本のように綴じられていて、各ページの各々の穴には列車の名前や駅名が刻印されていました。指定券を頼むと、この厚手の本のような板をめくって、目的の穴にピンを差し込んで入力を確定していました。列車の数が増え、指定列車が走る線も増えて、この入力方式では、対応できなくなって、現在の端末になったのでしょうが、かつての端末のほうが、人間臭くって好きでした。


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