世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

8万枚のお経の版木をしっかりと守っている海印寺(へいんさ)(韓国)

2008-01-13 10:06:19 | 世界遺産
 シャルトルの大聖堂は聖母マリアの聖衣を収蔵するために作られましたが、韓国には仏教の経典の版木8万枚余りを収蔵する寺院があります。共に宗教的に大切なものを信仰心の支えによってしっかりと守られてきた遺産です。

 海印寺は、韓国の南部の大邱からバスで1時間半西のほうに走った山の中にあり、ちょっと足の便が悪いせいか、日本人の観光客にはなじみが薄いようです。このバスの終点の一つ手前がお寺の最寄停留所だったのですが、筆者は終点まで乗ってしまい、5分ほど歩いて戻る羽目になりました。どおりで、多くの人が下車するはず、とは後で認識して手遅れでした。

 バス停からちょっと登ったところに博物館があり、事前学習ができます。

お寺は、そこから階段を15分ばかり登ったところに門がありさらに5分ほど登ったところが本殿です。韓国の人は、山登りが好きなようで、このお寺でも苦も無く登ってゆきます。こちらは少々お疲れ気味でしたが、新緑の頃の山道は、しんどいけれども気持ちの良いものでした。

 本殿は、以前に紹介した慶州の仏国寺の伽藍と似た感じで、回廊に囲まれたところにはやや大振り石塔が建っています。日本の寺院では木造の塔に変化する前の原型なのでしょうか。本殿の建物群のひとつの階段の両脇には、虎のような怪獣が彫られていて、ちょとユーモラスです。

 世界遺産に登録されることになった、八万大蔵経の収められている建物群は、本殿から再び階段を登った、お寺の一番奥にあります。

 漆喰の壁に風通し用の格子窓が切られた建物群の中には、書庫のような棚があって、そこに2段積みの版木がずらりと収められています。

13世紀に彫られ、14世紀に海印寺に移されたとのことです。日本にある八万大蔵経のうち増上寺と大谷大学で所有しているものは、この版木で刷られ室町期に伝来したものだそうです。作られてから800年近くを経ていますが、窓越しに見る版木はさほど劣化していないように見えます。

 韓国の学校でも遠足があるらしく、数多くの遠足の児童と一緒になり、にぎやかなことでした。ただ、団体客の登ってくるのにも波があって、一瞬子供たちも居なくなることがあります。山の中にあるお寺の静寂が戻り、軒につるされた風鐸(風鈴)の音が静けさを強調するようでした。
 
 八万枚の版木からなる大蔵経は、当然ながら人出で彫られたわけで、15年間かかったといわれています。信仰心に支えられての大事業だったと思います。しかしながら、手作業ゆえ誤刻や欠落などもあったのではないでしょうか。グーテンベルグの活字の発明で、文字を印字することは格段に楽になりました。さらに、現代ではIT化により活字すら不要になり、活字を作る工房がほとんど無くなってしまったそうです。印刷の版は活字を拾うのではなく、キーボードから入力すればすむ時代です。このため、活字時代ではありえなかった誤変換(筆者もよくやりますが)が多くなり、週刊誌や月刊誌でもかなり見かけます。いったん、電子化されればいくらでもオリジナルと同じコピーが取れ、著作権の問題も複雑になりました。手に入る情報量は飛躍的に多くなりましたが、どうもそれに流されているようです。手間を掛けて印刷したものには、紙くず文明が持たない重みがあるような気もします。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。