世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

松丸では街道沿いの町並みから30分も走ると星の奇麗な空も広がっていました

2012-02-05 08:00:00 | 日本の町並み
 日本で月間降雨量の最多記録を持つ都市が尾鷲でしたが、尾鷲周辺は山が生みに迫っていて紀伊半島を一周する紀勢線が最後までつらがらなかったところです。2011年の台風でも、大きな被害を受けて再び寸断してしまいました。一方、四国を一周するときに、高知から愛媛まではつながっていますが、徳島から室戸を経由して高知までの鉄道はつながっていません。高知と愛媛を結ぶのは高知の若井駅と愛媛の北宇和島間の宇土線ですが、筆者が学生の頃は高知県側が切れていて、1974年になってやっと全通しました。今回は、その予土線の真ん中あたりにある松丸を紹介します。

 この予土線は、愛媛と高知を結ぶ動脈なのですが、その前身は762mmの軽便鉄道であったため、カーブの多い路線です。非電化単線で優等列車どころか、各駅停車のディーゼルカーですら2~3時間に1本しかやって来ません。こんな不便な線にある松丸駅ですから、プラットホームがぽつんとある駅を想像しますが、2階建ての立派な駅舎です。さすがにホームは1面1線ですが、ホーム側から上る2階部分には足湯まであります。この駅舎、実は「森の国ぽっぽ温泉」と施設を共用していて、ホームと反対側には温泉の入り口もあります。

 
 
 
  松丸は愛媛県南端の松野町の西半分を占め、少し南に行くと高知県です。江戸時代から宇和島と土佐を結ぶ街道沿いに発展した町で、現在の松丸駅周辺の町並みはその名残です。駅の近くには、お店の看板に「松丸街道」の文字を入れたものが立っていました。その街道は、他の街道でも同じようですが微妙に曲がっていて、わざと通りにくくされているようです。土壁に格子のある家や土蔵造りの家などが、妻入り、平入りで並んでいます。通りから分岐する細道の脇には水路があったり、外壁に薪が積まれてあったりで、かつては何処にでも見られたけれど、このところ見かけなくなった風景が広がります。日本家屋に混じって、レトロな洋館も建っていましたが、この洋館が景色に変化を与えて新鮮でした。

 駅の周辺は古い町並みの続く松丸ですが、この松丸駅は、秘境のにおいが濃い滑床渓谷の入り口でもあります。滑床の入り口の森の国ホテルまでホテルの車で30分ほどですが、途中からはガードレールも無い川沿いの行き違いが無理なような細道を走ります。付近には民家はまったく無く、ホテルだけが唯一の建物のようで、周りに光の無い夜空は、星が奇麗でした。滑床渓谷はホテルから遊歩道に沿って流れを遡上しますが、十和田の奥入瀬渓谷より規模の大きな流れや滝が次々と現れます。訪問したのが日暮れの早い2月だったので、残念ながら、あまり奥までは行けませんでした。遊歩道には、当然ながら街灯などは無く、足場も悪いので、暗くなってくると遭難しかねません。

 松丸は鰻料理が名物のようで駅の近くには鰻の鎮魂費も建っています。鰻は日本では蒲焼などで好んで食べられますが、その生態はほとんど分かっていないようです。養殖は盛んですが、卵からではなく稚魚を採ってきて大きくしているに過ぎず、近年に完全養殖に成功しましたが、コストがかさんで商業化はまだまだだそうです。完全養殖が難しい理由の一つは、淡水にすむ成魚が産みに行った後の振る舞いが解明されていないためです。たまたま採取された受精卵や仔魚から産卵場所などを推定しているに過ぎません。鰻の大きさでは、追跡のための発信機は大きすぎ、水深200mを越える深海という産卵場所説では信号を受信するのが難しいのかもしれません。宇宙空間をも席巻するIT技術も、身近な所で難問が多いのかもしれません。