世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

電柱が消えてうだつのある町並みがすっきりした美濃

2006-01-18 14:59:35 | 日本の町並み
 大林監督の映画のロケ地として有名な土地は尾道ですが、現代劇のロケの場合には現代を表す物があっても差し支えありませんが、時代劇となると電柱などが写ってしまうと困ります。歴史的町並み保存地区では電線の埋設工事などによってすっきりした町並みが戻ってきているようです。今回ははこれらの町の中から岐阜県の美濃市を取り上げました。
 美濃市はJR高山線の美濃大田から第三セクタの長良川鉄道で30分あまりの、美しい町並みの残る町です。かつては、名鉄の支線が岐阜から延びていましたが、関-美濃間が長良川鉄道と並行し、乗客もさほど多くないために、5年程前にその区間が廃止されてしまいました。ただ、名鉄の旧駅舎は記念館として整備保存され、真っ赤と赤白ツートンカラーの幅の狭いかわいい路面電車2両も展示されています。
 美濃と聞くと美濃紙を思い起こすほど美濃は和紙のふるさととして有名です。春の花祭りの時にも「花みこし」といって、しだれ桜を思わせる竹で作った放射状の枝に、和紙で作った花をちりばめたみこしが、町を練り歩くそうです。お祭りは見ることができていませんが、番屋2号館という展示館で「花みこし」の実物を見ることができました。ずいぶんと華やかで、柔らかな感じのみこしでした。
 古い町並みは、駅から花神輿の番屋2号館を通り越して更に数分の一郭で、数年前に町の一部の電柱を撤去して地下埋設化が行われ、さらに無電柱区域を広げる計画があるとのことでした。写真を撮る時に邪魔になる電線が無いので、すっきりとした風景が切り取れます。この町並みは、うだつが多いことでも有名です。徳島県の脇町にもうだつが多いのですが、美濃のほうが数多く残っているのだとか。うだつは、本来は屋根の両端を高くして隣の家との間に設けた防火壁ですが、その分コストがかかることから、うだつは裕福さの象徴だったようです。「うだつがあがる」とは、このうだつをあげられるほど成功したという状況を表現したものです。美濃では、和紙の流通で富をなした商家が競ってうだつをあげたものが残されているようです。
 明治時代に電信が日本にはいってきた頃の電柱は文明の象徴で、相手に届けたいものを電線に縛り付けるという珍事もあったようですが、現在では邪魔者扱いをされることが多いようです。また、かつては自動車電話の車に付けたアンテナが豊かさの象徴でしたが、携帯電話のアンテナは、小型化のため内臓されるなど目立たない存在になっています。時代が変われば、価値観が変化する好例なのでしょうか。