今アメリカで起きている占拠デモを甘く見ない方がいい。高失業率や経済格差についての怒りの声について、リベラル派が指導しているかのような報道がある。しかし、実際にそうだろうか。リベラル派というのは、どこの国でも、余裕のある勝ち組が中心だ。所得が低い層や、その日暮らしの者からは、怨嗟の対象になる人々である。日本でも、怒れる若者がエキサイトするのは、高給をとっている役人や、マスコミ関係者に対してである。NHK職員が恵まれ過ぎであることが暴露されたりすれば、ネット上で袋叩きになる。冷静な議論を呼びかけたりすれば、かえって火に油を注ぐことになる。オバマ大統領を誕生させたのは、アメリカのサヨクであり、リベラル派ではなかったか。そのオバマが攻撃されているのである。広松渉に「全体主義イデオロギーの陥穽」という論文がある。そこで広松は、クローチェ、ハイデッカーがファシズムに加担したことに言及し、「インテリ層がたとえ思想的に錯乱し自己欺瞞に陥ったのであるとしても、そこにはしかるべき自己了解の内在的論理が介在していた筈であって」と書いた。失う何物も持たない者たちが歴史の舞台に登場するにあたって、イデオロギーもあらかじめ準備されているのだ。そして、彼らが敵として位置づけるのは、ぬくぬくと勝ち組の生活を享受しているリベラル派なのである。
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