神奈川県立近代美術館 鎌倉 2013年6月8日-9月1日
松田正平(1913-2004)のまとまった展覧会、首都圏では初めてだそうだが、あまり宣伝してないこともあって、気がつくのが遅れた。
松田正平の絵は、おそらく写真を含め2~3枚くらいしか見ていないと思う。それでも洲之内徹の「気まぐれ美術館」関連で名前と洲之内との関係は印象に残っていて、こうしてまとめて見られるなら、と見に行ってきた。
一見素朴で、うっかりすると子供が書いた絵の雰囲気、こういうのはかのクレーの作品にもあると思う。
ただこうしてまとめてよく見ると、これはまさしくプロの絵で、じっくり見て、その表現を丹念に繰り返して仕上げたものであることはよくわかる。
動物、魚、バラ、そして周防の海、画家の周りを空間的にも時間的にもとりまくものたちを、しっかりと定着していき、その結果としてそれらに対する愛情がそこに入っていく。
表現は違うが、どこか熊谷守一を思い浮かべさせるところもある。近くにずっと置いておきたくなる絵。
画家の名前を知ったのは洲之内徹「気まぐれ美術館」であり、それも松田正平について書かれているのは、私が読んだ新潮文庫の3冊めであるから、それより先に知ったのは第1巻の付録にある白洲正子の洲之内追悼文「さらば気まぐれ美術館」においてである。白洲が書いたものののなかでもいい文章だ。