メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

安井曾太郎の肖像画

2009-11-13 22:21:00 | 美術
安井曾太郎の肖像画」 (ブリヂストン美術館、10月31日-1月17日)
 
日本の近代洋画家で、安井曾太郎(1888-1955)は、知ってはいるけれどもあまり強い印象はなく、好きでも嫌いでもないというのが正直なところである。今回のテーマ展示になっている肖像画も、雑誌の表紙が多かったことは知っていたけれども、没年からすると雑誌が出た時に見たのではなさそうだ。
 
モデルになった人たちのうちで、写真などで知っているひともかなりいる。そしてその出来栄えは、そっくりというより、どこか別の特徴をよくとらえていて見事である。おそらくモデルも、褒められもせず、嫌味でない程度に癖がよく出ていて、気に入ったのではないだろうか。
 
肖像画はまず顔なんだろうが、ほとんどがたっぷりした衣裳を着ているにもかかわらず、その体つきの個性がよく感じ取れる。この観察力とその再現力が画家の力なのだろう。
 
有名な「金蓉」(1934)は東京国立近代美術館で何度も見ているが、よく見ると紺の中国服にあった絵の具のひび割れが目立たなくなっている。これは絵の具だか手法だかの理由でなってしまった有名なものだが、それをどうにかしたというニュースを聞いた記憶がある。その結果なのだろうか。
 
そのほかの所蔵品展示も、なじみのものだと思いながらざっと見てみた。少しずつ変化はある。
アドルフ・モンティセリ(1824-1886)「庭園の貴婦人」、前から展示してあったかどうか。なかなか面白い。
こちらに同じ安井の風景や静物もあって、これらもうまいのだが、並んでいる梅原と比べると、分が悪い。
 
順路で最後の部屋に少しずつ増えている現代ものは、この美術館の柱である「近代」とのつながりで収集されているのか、よく見ると何故入手したのか少しわかってくるところがあり、鑑賞体験としてはいいものである。
ザオ・ウーキー(1921- )の2枚など、見るたびに好きになってくる。
 
もっとも、そう簡単には入っていけないものを見ていくことも、それは別に必要ではあるが。
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