メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

田中一村 展

2010-09-17 18:47:12 | 美術

田中一村 新たなる全貌
千葉市美術館  8月21日(土)-9月26日(日)
 
ようやくこの目で見ることがかなった田中一村(1908-77)である。50歳で奄美に移ってからの多くの傑作はもちろんその前の主要作品の多くも、田中一村記念美術館が所蔵していて、まとめて見るとなるとそこ(奄美)に行かなければならない。
 
東京美術学校(芸大)に入る前からの多くの作品が集められ、あの晩年の傑作群につながる要素もいくつか見ることができる。奄美に行く前に多くの作品を自ら焼いてしまったことを考えれば、今回これほど展示されているのは驚きである。栃木県の生まれだが、千葉にも20年ほどいて、その間の画風の変遷も面白い。
 
とはいえ、この日本画としてちょっとユニークな面が、深められ、技法として洗練されたところまでいってないことも確かで、芸大同期の東山魁夷などと比べられたら、その頃は不遇をかこったとしてもしようがないだろう。それでも「白い花(やまぼうし)」(1947)は素晴らしい。
 
奄美時代の傑作は、縦長、畳一枚より少し小さい同じサイズのものが多く、これを実際にみると、その美しさは格別である。想像していたよりきれいである。
 
一般には最も有名な「アダンの海辺」(これは記念美術館にはないらしい)ももちろんいいが、先日の日曜美術館でも分析されていた「不喰芋と蘇鐡」、そして何枚かに描かれている「枇榔(びろう)樹」の独特な筆致と雰囲気は、なんとも言い難い。
 
島の外から来た人が、長いこと一つの場所に座って集中して得たものだろうか。

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