メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

藤島武二展

2017-08-16 17:07:18 | 美術
藤島武二展 生誕150年記念
2017年7月23日 - 9月18日 練馬区立美術館
 
藤島武二(1867-1943)のいくつかの絵はよく知っているが、まとめて見たことはなかったように思う。生誕150年というと、明治とともに生まれ育っていった画家ということになる。
 
山本芳翠らに学んだのち、黒田清輝の推薦で東京美術学校洋画科の助教授になったのが29歳という経歴は不思議で、優秀ではあるが、飛びぬけて目立つものがある、というわけでもなさそうに見える。
 
事実、そのころの作品は画題、画風とも黒田を彷彿とさせるが、師にせまるところはない。それでも1905年から数年フランス、イタリアにおそい留学をしてからは、何かぴりっとしたものが現れていて、やはりこの時代、特に洋画にはそれが必要だったか、ということが感じられる。次第にロマン、モダンという要素が多くなっていったようだ。
 
今回初めて知ったのは、藤島がイラストレーターとして先駆ともいうべき存在だったということで、雑誌の表紙、挿絵など数多く展示されており、特に与謝野鉄幹、晶子との関係は興味深い。またこのころすでに紹介されていたらしいミュシャの影響が明らかにみられる。
 
明治から大正、昭和と、こういう画風から見るかぎりバランス感のよい人がの中心にいたことが、洋画全体の発展のためによかった、ということは理解できた。
 
しかし、藤島といえばあの「黒扇」(1908-09 在イタリア時)が思い浮かぶのももっともで、これは画家の全作品の中で、なにかが奇跡的に結晶したのではないだろうか。重要文化財に指定されただけのことはある。
 
残念ながら「黒扇」は今回展示されていないが、これを所蔵しているブリヂストン美術館からきている何点は、たとえば「チョチャラ」、「糸杉」、「港の朝陽」など、全体の中でもさすがにどこか際立ったところがある。
2015年から休館中の同館は2019年秋に新装オープンの予定らしいが、ある意味では、こうして楽しみが増えていくということだろうか。



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